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音リテラシーの記事 (18)

KLV Canvas & 性DEC 2021/05/25 05:11

剣と魔法のファンタジーに使うべきエロい音楽とは。音楽の歴史から考えてみる

はじめに: バッハ大先生ごめんなさい
,_____________、
| なぁに、いいってことよ |
` ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄’

きっかけはしもや先生のツイートでした。

https://twitter.com/moyashi_shimo8/status/1396807412485554181

なるほど、剣と魔法のファンタジーものに突然サックスの効いたいかにもなスケベジャズが流れたら確かに変ですもんね。

まずスケベジャズがスケベジャズたる理由を考えてみました。

https://twitter.com/Klavistr/status/1396837437607870467

ぶっちゃけジャズに限らずビートルズとかもその時期の「ワルでけしからん、不良非行少年少女の模範」だったわけなので、もしかしたら調理次第ではいかがわしい感じのサイケロックをエロRPGに入れるのもアリかもしれません。

https://twitter.com/Klavistr/status/1396837438975201280

https://twitter.com/Klavistr/status/1396838659463159809

https://twitter.com/Klavistr/status/1396839671057977344

https://twitter.com/Klavistr/status/1396839905712480258

https://twitter.com/Klavistr/status/1396840906553131013

https://twitter.com/Klavistr/status/1396843994085265410

たとえば、あらかじめ酒場や風俗街のデザインの時点で今風にしておけば、モロにジャジーな音楽に限らずモダンな響きの和音やアレンジメントを採用できるかもしれません。
非「ぐへへ」な純愛エッチとかなら、モーツァルトやベートーヴェンといった古典派(それでも中世ヨーロッパよりは新しいのですが)のしっとり目の曲を参考にするのがよいでしょう。

音楽のジャンルやスタイルの解説はこないだの記事でちらっと書いた通り隔週記事のネタにしようと思っています。
応援のほどよろしくお願いします…!

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KLV Canvas & 性DEC 2020/12/28 07:33

今さら聞けないし言えない、同人ゲーム作家向けサウンド依頼の方法(でも言う)

はじめに

いつものように「貧乏暇なしだなぁ」とTwitterを眺めていたら(これを暇という)こんなものを見かけました。

https://twitter.com/seventhgraphics/status/1339116690127220736

フォローしているCGクリエイターのひとり、朝倉さんの投稿です。
いえ、氏とは音楽方面で少々リプを飛ばす程度で、第一「最近非常に多いので」というワードにウッという気持ちになる程度には僕から見ればマブしいお方なのですが…

ただでさえサウンドとかいう目に見えないものの発注ってややこしいのに、個人対個人で、ゼロから文面を考えて…というのはなおのこと面倒なものです。
なのである程度テンプレを作ってみようと思い立ちました。これに則って書いていただければ、お互いやりやすいところから話が始められるかなと思います。

依頼 = 見積に必要なこと

ざっくりこんなところでしょうか。

  • 自己紹介
  • 今作っている作品について
  • 欲しい音(BGM/SE)について
  • 予算
  • スケジュール

順を追って見てみましょう。

自己紹介

はじめまして。サークル○○○○の○○○○といいます。
同人ゲームを作って、DLsiteで頒布しています。
《DLsiteのサークルページURL》

現在処女作「○○○○」の制作に取り掛かっています。
《Ci-enの紹介記事URL》
いくつかの曲を書き下ろしで用意したいと考え、お声がけした次第です。

こんな感じでURLがあればわかりやすいと思います。

○○○○さんが公開していた「○○○○」がとても気に入り、「この人になら」と思いました!

とか入ってきたら多少予算がキツくても頑張っちゃおうという気になるかもしれません。

今作っている作品について

「○○○○」はいわゆるサイバーパンクの世界を舞台にしたRPGです。
魔法も登場しますが、この世界では科学技術の結晶として説明のできるものとして扱います。
世界を牛耳り環境破壊を進める悪徳企業の陰謀を打ち砕き、星を救うことが、このゲームの目的です。

これだけでほとんどFF7ってわかりそうなのだからすごいものです。

特に美味しいワードが「いわゆる○○の世界」です。
懇切丁寧に書くより短い言葉で多くの情報を与えられるのでたいへん効果的です。
「サイバーパンク」以外にも「剣と魔法」「近未来SF」「セカイ系」などなど。

もっと簡単にするなら「例えば『龍が如く』のような」とか、名前を出してしまってもいいかもしれません。相手に伝われば、の話ですが…(その点Twitterとかで依頼相手が既プレイであることを知っている作品なら成功率も高いでしょう)

他所の作品を引き合いに出すのはプライドとかコンプラとか的にちょっと…という気持ちもあると思いますが、あまり気にしなくてもいいと思います。割とよく使われる手法ですし、真っ当なクリエイターなら「あのサークルは○○のパクリを自覚している」と漏らすわけもありません。

それはそうとこの記事がスクエニやセガにバレた場合は多少怒られるかもしれません。

あと、

演出面ではイラストレーターさん(○○さんを予定しています)の画風に合わせてポップさ、キュートさを出したいと考えています。

などと添えれば、シナリオ/システム面との区別が付けられます。これは後述の「リファレンスについて」でも大事なことです。

欲しい音(BGM/SE)について

書き下ろしていただきたいのはこの4曲です。

・通常戦闘曲
勇ましくてハイテンポなものを希望しています。
この曲で戦うのはこういったザコキャラです。
《イラスト》

・ボス戦闘曲
激しいとかカッコいいとかいった感じにしたいです。
ジャンルのことはよくわからないのですが、たぶんロック?みたいなものを想像しています。

・ラスボス戦闘曲
とびきり荘厳で大げさなオーケストラがいいです。
予算が許せばコーラスも入れたいです。
《カルミナ・ブラーナ》

・ヒロインのテーマ
田舎娘という設定なので、まったりしたものを考えています。
長尺の過去回想シーンにもたびたび使用するため、1ループは長め(5分くらい?)にとってほしいです。
現在組んでいる回想シーンはこんな感じです。
《動画》

この人最近友人のFF7実況に夢中だからって…

イラストや動画で求めている雰囲気や実装先の仕様を示していただけると、とても助かります。

ただ、ジャンル/テンポ/尺に対する指定はあまりツッコみ過ぎない方がいいかもしれません。疑問符つきなら大丈夫です。こちらとしても疑問符が付いているものは「こちらからの提案を待っているんだな」と把握できますしね。

ジャンルとテンポはよほど音楽に慣れていないと、割とすぐ「ロックだと思ったらメタルだった」「シャンソンのことをジャズって呼んでた」「120bpmってこんなに速いの!?」という事態に陥ります。

尺についても、完全に一回だけのムービーとか、音ゲーとかなら別ですが、基本はほんのり遊びを持たせていただけると助かります。
例文でいう「ヒロインのテーマ」の元ネタたる「ティファのテーマ」は、今調べたら2分25秒で1ループでした。本当に5分の音源を用意したら、4分で終わる回想シーンがあったときに曲の途中(何ならラスサビとか)で再生が止まってしまいます。

エアリスのテーマはなんだかこう、めっちゃ「わかってる」発注がされている感じを受けたので、逆算が難しかったのです…孤独を示すようなピアノソロとオーボエソロ、慈しみの塊のようなストリングスセクション…名曲ですねぇ

リファレンスについて

なんか昔作ったスライドがあったので貼ります。
総括すると「リファレンスは多い方がいいし、ちょっとずつズレたものを提示してもらえるとさらに捗る場合もある、というお話です。
オリジナリティはインプットを絞ることよりも、むしろたくさん参考にするからこそできるもの」といった教訓もありますね。




予算

シンプルに

予算は○○万円を想定しています。

もしくは/これに加えて

上記条件の場合、おいくらでしょうか。

と書いていただければ大丈夫です。

どちらかといえば正直なご予算を先にドンと教えていただくのがベターです。
我々(クソデカ主語)としては「これではお仕事にできない…」となれば降りるだけで、まずは声をかけてもらえたことを喜びながらなるべく請けたいものだからです。
前述のように、ちょっとキツくても頑張るといいますか、限られた予算の中で好い仕事をする(≠良い音を作る※)のもプロの気構えですから、そこはハッキリと誠実に来てくだされば大丈夫です。

※良い音を作るにはもうどうあがいても手間暇と良い機材が必要である一方、好い仕事はこれらを使わずともできるわけで。例えば細かいリテイクとかゴージャスなオケは勘弁いただく代わりに、サクサクお安く作るとか。

スケジュール

2021年10月末リリースを予定しているので、8月中には本実装可能なデータを受け取りたいです。
もしかすると9月から10月にかけて細かい調整をお願いするかもしれません。
その場合は新規のお仕事として依頼しようと考えています。
6月中に4曲のラフをいただいて仮実装、くらいを想定しています。

サウンドは制作終盤に実装されることが多いので、このような例文にしてみました。
納品後の調整は程度にもよりますが一応想定できることなので、これについても含めています。バッチリ早い段階で決まりそうなら省いても大丈夫です。
また、ラフや仮実装のタイミングも含めてあると見通しが立ちやすくなります。
「予告トレーラーのためにメインテーマだけは早く欲しい」といった事情などもあれば、ここで書いておきましょう。

例文フル

ここまで書いたことの全部盛りです。
あまり迂遠な書き方だと参考にしづらいと思ったため、なるべくドライな表現にしています。
ですますの具合はお好みでどうぞ。

はじめまして。サークル○○○○の○○○○といいます。
同人ゲームを作って、DLsiteで頒布しています。
《DLsiteのサークルページURL》

現在処女作「○○○○」の制作に取り掛かっています。
《Ci-enの紹介記事URL》
いくつかの曲を書き下ろしで用意したいと考え、お声がけした次第です。

「○○○○」はいわゆるサイバーパンクの世界を舞台にしたRPGです。
魔法も登場しますが、この世界では科学技術の結晶として説明のできるものとして扱います。
世界を牛耳り環境破壊を進める悪徳企業の陰謀を打ち砕き、星を救うことが、このゲームの目的です。

書き下ろしていただきたいのはこの4曲です。

・通常戦闘曲
勇ましくてハイテンポなものを希望しています。
この曲で戦うのはこういったザコキャラです。
《イラスト》

・ボス戦闘曲
激しいとかカッコいいとかいった感じにしたいです。
ジャンルのことはよくわからないのですが、たぶんロック?みたいなものを想像しています。

・ラスボス戦闘曲
とびきり荘厳で大げさなオーケストラがいいです。
予算が許せばコーラスも入れたいです。
《カルミナ・ブラーナ》

・ヒロインのテーマ
田舎娘という設定なので、まったりしたものを考えています。
長尺の過去回想シーンにもたびたび使用するため、1ループは長め(5分くらい?)にとってほしいです。
現在組んでいる回想シーンはこんな感じです。
《動画》

予算は○○万円を想定しています。

2021年10月末リリースを予定しているので、8月中には本実装可能なデータを受け取りたいです。
もしかすると9月から10月にかけて細かい調整をお願いするかもしれません。
その場合は新規のお仕事として依頼しようと考えています。
6月中に4曲のラフをいただいて仮実装、くらいを想定しています。

以上、どうぞご検討ください。

おわりに

差し出がましくもこんな記事を書いてみましたが、いかがでしょう。

あと今更ながら…ほとんどゲームのことになってしまいましたが、書いた内容は音声作品やその他サウンドが絡むものなら大体援用できると思います。

この記事がサウンド演出の充実した様々なコンテンツの増加、ひいては同人シーンの盛り上がりの一助になれば幸いです。

僕くらびすたもご相談お待ちしております!

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KLV Canvas & 性DEC 2019/12/04 05:33

なぜ我々はダンデ戦で泣いてしまうのか 〜 #ポケモン剣盾 におけるLeitmotivの訴求力〜

↑サムネ用ダンデ

フォロワー+支援者の数が151だったので、今流行りでちょうどくらびすたもプレイしているポケモンの特集でも書こうと思います(こじつけ)


多分みんなプレイしながら感極まっていたあのフレーズ

うわ!!!URLで2:04から再生って指定しているのに効いていないやんけ
手動で移動して聴いてください。

https://youtu.be/bUG_NS0xqSY?t=124

※わかりやすい「大サビ」ということもありここを推しますが、よく聴くと開幕から同じフレーズが出ています。探してみよう。

いやまあ観客斉唱ってのがもうズルすぎてズルズキンなんですけど(?)、それを踏まえてもこのフレーズめっちゃ刺さったんですよ。

恥ずかしながら僕はポケモンはRSEしかプレイしたことなかったもので、このフレーズが初代殿堂入りBGMに由来するということを知りませんでした。なるほどねぇ。

https://www.youtube.com/watch?v=zvE7jSiV59c

赤緑殿堂入りはト長調、先ほどのフレーズはハ長調ですが、この2小節はまったく同じです。

これだけでも十分エモいし、赤緑との繋がりを持ちつつ新しい時代へ向かうんだなぁといったアレはあるのですが、それだけでは音屋ブログとしてまるで面白くありません。

そう、ここからが本題。

後出しじゃんけんと思われるかもしれませんが、僕はこの曲を聴いたとき、はじめて聴いたとは思えない何かを感じたんです。RSEしかやっていないから赤緑殿堂入りBGMなんて知らないはずなのに。

絶対に何か刷り込みが起きていたはずだ、なんだっけ、なんだっけと調べたところ、この「懐かしさ」は巧妙に仕込まれたライトモチーフによる効果だったのだと気付きました。

ライトモチーフ(Leitmotiv)とは

「示導動機」と訳される概念。ドイツ語です。leiten「導く」(英語でいうleadに相当?)とmotiv「モチーフ、動機、きっかけ」がくっついたもよう。
ライトモチーフは複数のセクション、複数の曲に現れることでそれぞれを「意味」で繋ぐものであり、また、それ自身が様々に変奏される、その有り様をもって「意味」を示すことができるもの、でもあるのです。(くらびすたなりの解釈も多分にあります)

今回紹介する曲はそれぞれ、1小節とか2小節とかのまとまったフレーズではなくその中の2、3音の集まり=モチーフの数個同士での近似を持っています。このことはまさに先ほど書いた「ライトモチーフはそれ自身が様々に変奏される」という特性にあたります。また、そのことにより「モロに何か、とある曲のアレンジ」というレッテルを付けられないまま、プレイヤーの意識へ溶け込んでいくことに成功しているのです。

※くらびすたの場合、小さいものから

  • マイクロモチーフ(隣り合う2音の関係; くらびすたの造語)
  • モチーフ(3、4音程度の結合)
  • フレーズ(1、2小節程度の集まり)
  • メロディ(1小節から4小節程度の大きめのかたまり)
  • ブロック(Aメロやサビといった、4小節や8小節程度のひとまとまり)

と呼び分けています。Wikipediaなどではモチーフは1小節とされています。この辺は人によるかも。

例のライトモチーフが使われているっぽいフレーズその1: タイトル画面

https://twitter.com/Klavistr/status/1201538806370881538

いきなりです。ピアノの「チャ↓チャン↑」とドラムに紛れがちですが、高音のうにょうにょシンセが赤緑殿堂入りBGMを思いっきり弾いています。

例のライトモチーフが使われているっぽいフレーズその2: スタジアム

https://twitter.com/Klavistr/status/1201544859531661321

Twitterで紹介したときにうっかり最後に上げてしまった分です。ストーリーではこちらが先です。ジムおなじみのフレーズの合いの手として、フレーズがまるっと使われています。

例のライトモチーフが使われているっぽいフレーズその3: ターフタウン

https://twitter.com/Klavistr/status/1201543094975397888

そこはかとなく感じられますか?少し例のモチーフに近いフレーズにアレンジしてみましょう。

弾いてみるとこんな感じ。

リズムがクリソツなのもそうですが、

  • 1小節目の2音目→3音目 = 4度(ド→ファの距離)の動き
  • なんなら1小節目の1音目→2音目もただのオクターブ違いなので実質4度の動き同士で同じ
  • 2小節目の1音目→2音目→3音目 = 4度下降→4度上昇の動き
  • 2小節目の3音目→4音目→5音目→7音目 = 上昇→下降→下降の動き

といった感じで、ざっくりした大枠では音程も同じ動きになっています。

例のライトモチーフが使われているっぽいフレーズその4: バウタウン

https://twitter.com/Klavistr/status/1201543965964521472

ここも結構アレンジが入っていますが、アップ/ダウンの配置にかなり近いものがあることがわかると思います。

ここでぴたりと止んでしまう同一ライトモチーフ採用タウン

聴き落としているものがなければ、他のシティやタウン、施設には類似フレーズはありません

全部の街でやるのはくどいという判断になったのか、スタミナ的にしんどかったのか、冒険感を出すためにもシナリオの進行に合わせて新しいメロディを出したかったのか、「序盤で聴いたフレーズが時間を空けて蘇ってくることによるサプライズ感」を採用したのか、赤緑というシリーズ最初の作品のフレーズを序盤の街に持ってくるというメタ的な含みだったのか、あるいはその全部かと思います。

アイデアというのは複数の問題をいっぺんに解決すること、とは宮本茂さんの言葉。『美しいやり方』『エレガントな設計と実装』が、この「どの角度から見ても『ちょうどいい』」という塩梅を生んだのだと思います。


きっと我々は序盤の街での刷り込みと、タイトル画面/スタジアムでの反復があったからこそ、チャンピオン戦であのフレーズを聴いたときに胸がいっぱいになるのです。

そして、この感動体験はあからさまな「殿堂入りBGMのアレンジ」ではきっと得られなかったのではないかと思います。敢えてほぐしながら浸透させる、このワザマエですよ。ゲーフリのサウンドスタッフさん、本当にお疲れ様でした。

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KLV Canvas & 性DEC 2019/08/20 22:30

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KLV Canvas & 性DEC 2019/07/04 00:48

サウンド体験(SEX)デザイナーとプルースト効果

やあ(´・ω・`)
実に8か月近く放置していました。その間にそれはもういろいろなことがありまして、全部書くのもアレなのですが、転職したり炎上プロジェクトに参加したり大きなお仕事をいただいたり映画でQueenにハマったりあろうことかボラプを3回観に行ったりM3に参加したりしていました。(順不同)

というかこんなさびれたクリエイターよくフォローしますね皆さん。30名くらい新たにフォローいただいてしまっています。何も更新していないのに。

さて、久しぶりの更新となるこの記事では「サウンド体験(SEX)デザイン」についてお話します。サウンド体験(SEX)ってどういうことなんだという話ですが…

サウンド体験 = Sound EXperience

お前らこういうの好きだろ。

というわけで、とあるイラストレーターさんとのメールで書いた文章から抜粋し、ためになるお話(自称)をさせていただきます。一人称が普段の「僕」から「私」になっているのはご愛敬。


「サウンド体験は『匂い』体験に近い」というものです。

夕方、駅からの帰り道、住宅街で。カレーや煮物の匂いが漂ってきて、懐かしむのは「おかあさん」の背中姿。
そのような体験はよく語られます。「プルースト効果(Proust effect)」と呼ばれるものです。
これとほとんど同じようなことが「思い出のBGM」に起こるのです。

詳しくは脳科学の分野になると思いますが、シンプルな仮説として私は「音も匂いも空気を伝わるから」と考えています。
あるいは「耳鼻科というものがあるように、たぶん耳と鼻はいろいろ近いのだろう」とも。
(五感の中では嗅覚のみが大脳と直結しているため、いずれにせよ嗅覚の特異性は頭ひとつ抜けます)

正直、音楽を真正面から聴くことのコストは―特に一般ユーザーにとって、たとえばTwitterに張り付いてイラストが流れてくるのをぼんやり眺めることに比べると―相対的にかなり大きいものにあたると思います。
大雑把に「見る」だけなら一瞬で済みますが、全体を「聞く/聴く」となれば大雑把であっても30秒なら30秒。5分なら5分。確実に時間を拘束されてしまうのです。
音楽の消費のされ方が年々粗末になっているといわれ、コンテンツ開発における予算や作業の中で後回しにされやすいのも、全部サウンドを真面目に扱う代償の大きさによるものだと私は理解しています。
時間はかかるわ、スピーカーを使うなら2つ必要で場所も取るわ、作業用BGMは流せないわ…わがフィールドながら、なかなかにうんざりします。(こうした事情から他業種の方々を少し妬むことも、ほんの少しだけ、あります)

ただし、熱心にプレイしたゲームや一番印象的なデート、行きつけのラーメン屋さんで流れていて、意識せずに聞いていたサウンドは別です。
これらは音のアート全般が抱える煩雑さのほとんどを吹き飛ばし、当時の情動とともにパッケージされ、脳に焼き付けられるのです。
なぜなら、目的の「ついで」に知らないうちに聞かされて染み付いてしまっただけなのですから。
真面目に聴こうとしていたわけではないが故に記憶に残りやすいとは、なかなか皮肉なものです。

私が楽曲だけでなく効果音やサラウンド音響の制作にも注目しているのは、まさにこの音のプルースト効果をより立体的にするためなのです。
楽曲が料理の匂いなら、効果音は台所の裏側から漂うLPガスの臭いですし、音響全体へのアプローチはその匂いを確実に捉えられるように気流を整えるようなものです。(排ガス→雑音の発生源を除ける、向きを工夫する、など)
これらを丁寧に重ね合わせることがコンテンツをよりイマーシブにし、サウンド体験、ひいてはユーザーの感動体験を濃くするのですね。
ですから私は、私自身のことを一種のUXデザイナーないし「サウンド体験(sound experience)デザイナー」のように思っていますし、SXデザインの優れたゲームが世に広まってほしいと願っています。

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