招誤解の表現実験室 2022/12/23 21:55

悪夢の、日本征圧作戦

目が覚めたら白い天井が見えた。
金属パイプで組まれたベッドの上に横たわってた。
辺りを見回すとまるで病院の一室。
なぜかTVがあったが、自分の寝室には本来TVは無かった。
(あれ?自分の部屋で寝たはずだったのに?)
すると突然、扉が開きヘルメットを被った兵士が現れ灰色の軍服を投げ渡して言う。
「それを着て大元帥閣下の部屋まで来い。大至急だ!」
「はぁ!?」
「聞こえなかったか?大至急だ!」
言われるがまま投げ渡された灰色の軍服を着る。
この兵士に銃床で尻をせっつかれながら追い立てられる様に廊下を移動。
着いた先には仰々しい木製の扉。
「御用作家の『招誤解』三等兵をお連れしました」
(え?いつ私が御用作家に成ったの?)
「うむ、入れ」と扉越しに初老男性らしき声が聞こえた。
扉がギィ~と開き、中へ入ると赤絨毯が敷かれた豪華な部屋に巨大な文机。
(マホガニーとかいうやつかな?)
見ただけで素材の樹種を推定できるほどの目利きではなかった。
文机両端に摩天楼の如く積まれた書類の谷間に部屋の主の顔が見えた。
サングラスにパイプ…紫煙をくゆらせている。
(え?まるでダグラス=マッカーサーなんですけど?)
第二次世界大戦における連合軍総司令そっくりの顔だった。
但し、その軍服は独裁国家の高級将校みたいに過剰な装飾が施されていた。
大元帥が口を開く。
「日頃から戦意高揚漫画を描いてくれている事、感謝している」
「は、はぁ…(身に覚えがありません!)」
「我が国は次に日本進出を考えている」
「は、はぁ…(え?我が国?ここ、日本じゃないの?)」
「君には日本征圧戦略を考えてもらいたい」
「はいぃぃぃ!?」
「なるべく安く、速やかに、日本を降伏させるか、無力化する戦略をだ」
「え、えぇぇぇ?」
「明日までに」
「え、えぇぇぇ!?」
「なお、この通達は機密だ。断れば君の親族縁者友人までもが影響を受ける」
(―!?断れない…!)
いつの間にか目覚めた時の部屋へ戻って来ていた。
あまりの衝撃的命令に、どうやって戻って来たか覚えていない。
窓の外は既に夕暮れ。
(家族や友人に危害が及ぶのはヤだな~)
戦うにしても、相手は世界最高水準の練度を誇る自衛隊である。
(なるべく安く、速やかに、日本を無力化?出ぇ来るかぁい!)
元より、天然ボケだのポンコツだの、散々言われてきたのだ。
チェスでも将棋でもTCGでも、むしろ弱い方だ。
(元帥が動かせる戦力を北朝鮮並みだとしたら絶対に勝てないはず…)
ロシアや中国ならば、かなりの軍事力がある事くらいポンコツでも理解していた。
ふとTVへ目を向けると天気予報をやっていた。
『昨日、小笠原諸島で発生した台風13号は中心付近の最大風速が百二十メートル』
「120m!?ほぼ竜巻じゃん!」
『中心付近の気圧が八百五十ヘクトパスカル』
「850hp!?そんな下がる事、有り得るの?」
hpは空気密度だ。この値が小さい程、空気が少ない。
不足分を補う為に周りから空気を引き寄せるから風が吹く。
風の巻き添えで集められた水蒸気が大雨を降らせる。
『勢力を維持したまま、あさってには東京付近に上陸すると思われ…』
(温暖化で台風がパワーアップしてるのか…)
その時、閃いた。
(思いついちゃったかもしれない!安く早く、勝つ方法)
翌日、再び呼び出されて赤絨毯が敷かれた豪華な部屋へ参じる。
大型TVがあり、大きな文机には相変わらず書類が摩天楼を再現していた。
サングラスにパイプ…紫煙をくゆらせているダグラス=マッカーサー似の大元帥。
その他にも十人ほどの将校が居並んでいる。
いずれも独裁国家らしい過剰な装飾が施された軍服だった。
(はぁ、何で、こんな事になったの?)
ため息が出そうになる。
「では、戦略案を発表したまえ」
(日本を攻撃するなんて気が引けるけど、家族や友人の命が懸かっている)
仕方がなかったと自分に言い訳して戦略案を示すことにする。
「え~、攻撃時期について指定をされなかったので、こちらで勝手に解釈させていただきました」
「前置きはいい!」
禿げ頭な東条英機に似た将校に先を促された。
「え~、攻撃目標は国家中枢ならびに防空施設および原発を含むインフラ全てでよろしいですね?」
「ふむ、妥当だな」
「そこへ弾道ミサイルを一斉掃射します」
「それは我々も考えたぞ?全て撃ち落されるのが関の山だ」
「東海・東南海トラフ地震、富士山噴火、首都直下地震、超大型台風などでヘロヘロになった時に」
「「「ヲイ!楽勝じゃないか!!」」」
大災害時に初動対応が遅れる事は、日本の御家芸である。
東日本大震災とか、もっと昔にあった阪神淡路大震災とかで実証済みだった。
名付けて『惨事便乗型侵攻戦略』。
世界最高水準の練度を誇る自衛隊に致命的な隙が生じる瞬間を狙うのだ。
(これで任務は果たした。後は家族や友人に連絡して脱出を促して…)
カタカタカタ。大きな文机上に摩天楼を形成している書類の山が、揺れ始める。
「「「地震だ~」」」
ゴウンゴウン。照明が揺れ、壁に掛かっていた物が落ち、書類の山が崩れる。
皆、硬直したかのように動かない。
3分ほど揺れてから治まった。
「思ったよりも大きいな。震源はどこだ?」
禿げ頭な東条英機に似た将校がTVの電源を入れた。
日本列島の地図が映し出され、太平洋沿岸が赤く縁取られている。
(大津波警報?)
『震源は伊豆半島沖、深さ7キロ、マグニチュードは9と推定されます。震度7が東京から愛知にかけての…』
「えぇ!?」
驚きのあまりポカンとしているとマッカーサー似の元帥が、指輪が入っていそうな小箱を取り出した。
それをパカっと開けると押しボタンが覗いた。
そして、ずいっと差し出して来る。
「さあ、押したまえ」
「な、何のボタンです?」
「核は入っていないが弾道ミサイルの発射ボタンだ。全ての原発を撃つなら通常弾頭でよかろう?」
「何で私が?」
「君が立てた戦略の総仕上げだ。さあ、その手で勝利を掴みたまえ」
「え?でも…」
逡巡していると将校たちが取り囲んできてユニゾンみたいに発射ボタンを掌で指し示す。
「「「「「さ、さ、ここにタッチ!」」」」」
「何で、そんなにノリが軽いんですか!」
「「「「「空気を、読んで押~してよ♪」」」」」
将校全員に懇願された。
同調圧力に押されて、止むを得ずボタンへ少しずつ指を伸ばす。
残り1cm程へ至った瞬間、指先で青白い火花が散った。
バチィッ!
「ぎゃぁっ!」
視界が真っ白に染まった。
天井が見える。
白く、それでいてくすんだ天井。
見慣れた自分の寝室の天井。
指先で散った火花は静電気だったか。
「……何て夢だっ!」



キッシー(岸田総理)が軍備増強を言い出したのでネタに出来ないかなと考えてたら変な夢を見ました。
夢を見てる間は思考力が激減していて、矛盾がたくさん有っても夢だとは気付き難いようです。
ただ、その激減した思考力が捻り出した戦略に、日本の安全保障は手も足も出ずボロ負けする事だけは解りました。

「気付くの遅いよ」と読者様が内心つっこんでそうですけどね。

安全保障って、最大の弱点以上にマシには出来ないんですね。
楽勝できる方法があるのに「敵がそれを使わない」と考えるのは平和ボケでしょう?
戦争では現実逃避したら負けます。
アメリカでさえベトナム戦争で負けましたよね?
現実を見なかったから。

災害から素早く立ち直って、攻め込む隙を与えない。
それを実現する為には減災策をソフト・ハード両面で推し進めるのが先でしょう。

韓国を含め先進国ではシェルターって有りふれた設備なんですが日本ではまず、お目に掛かれません。
被弾を想定しない防御なんて有り得るのでしょうか?
武術の基本も防御からですよね?漫画でも大抵、そう描かれてますけど?

それらを無視して軍備増強するのは侵略攻撃をしたい人だけ。
国民を守る気が無いのでしょう。

私が中学生だった頃、異民族出身の同級生に言われたのが以下の命題。
「入管で外国籍の人を人間扱いしないなら、諸外国は日本国籍の人を人間扱いしなくても良いって事だよね?それが公平な対応じゃん」
考えた事も無かった『公平の原理』を突き付けられました。
日本政府が日本人を守る気があるなら、入国管理局のあの対応は有り得ない。
今後は日本人も海外へ出稼ぎに行く時代になるかもしれないのに。

庶民の財布を痛めつけて軍事費を搾り出す手口は北朝鮮を見習ったのでしょう。

何で変な夢を見たのか解った気がします。

因みに私の場合「これは夢だ」と気付けた瞬間に目が覚めます。
現実へ帰って来てしまうんです。
大抵は見破れたら夢を制御できるらしいのですが私には無理でした。
現実なんて無理ゲーなんだから、夢の中くらい好きにさせろ!と何度思ったことか。

ともあれ、軍備増強ネタを使ったギャグ漫画を思いつけなかったのは何だか悔しい!


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