放課後のトイレで1
放課後、旧校舎のトイレにひとりでやってきた蓮。
そこには、千尋がうんちをおもらししてしまったショーツがある……。
『先生さようなら、みなさんさようなら』
帰りのショートホームルームが終わって、蓮はぼんやりと今日の放課後をどうやって過ごそうか考えていた。
蓮は、いわゆる鍵っ子だった。
両親が共働きだから、家に帰っても誰にもいない。
それに家にある本は全部読んでしまったので、家に帰ってもなにもやることがなかった。
(いつもみたいに図書室に行こうかな)
自然と、蓮はいつも学校の図書室に入り浸ることになっていた。
図書室の司書教諭にも顔を覚えられてしまったほどだ。
(けど、今日は他に楽しみがあるんだもんね)
蓮は人知れずそんなことを考えながら、カバンに今日の宿題が出た教科書とノートをしまって席を立つ。
ざわついた放課後の教室を出て、廊下を急ぐ。
廊下を歩いているうちに渡り廊下に出て、やがて生徒たちも、人気もなくなり――、
蓮がやってきたのは、放課後の旧校舎だった。
黄金色の夏の夕日を受けて、どこからかカラスの鳴き声が聞こえてくる。
学校の怪談なんかなくても、ちょっと近づきたくない雰囲気を漂わせていた。
「でも、誰も来ないほうが好都合だもんね」
蓮は呟くと、ゆっくりと薄暗い旧校舎へと踏み込んでいくのだった。
☆
蓮がやってきたのは、薄暗い女子トイレだった。
何十年もの長い時間をかけて染みついた女子たちの恥臭が重なり合い、なんとも言えない香りを奏でている。
蓮は女子トイレの電気のスイッチを入れると、たった一つだけの裸電球が灯った。
(蓮ちゃんが入ってたのは、一番奥の個室だったよね)
蓮は、ゆっくりと一番奥の個室へと入り、そして鍵を閉めた。
これでここは蓮一人だけの世界となる。
薄暗い個室――。
目の前にあるのは、ちょこん、とした和式便器。
その先にあるのは、木造の壁だ。
一畳半ほどの、狭く閉塞した空間だった。
ただ、底の見えない汲み取り式の便器からは、時折ゴーゴーと不気味な呻き声が聞こえてきている。
たぶん、外にある換気扇に風があたって低い音を立てているのだろう。
たくさんの本を読んで勉強している蓮は、このくらいのことでは驚いたりしないのだ。
……もっとも、千尋はびっくりして恐怖のあまりにおしっこばかりか下痢まで漏らしてしまったのだけど。
(千尋ちゃん、この壁に背中ついて、おしっこもうんちも漏らしてた……。可愛かったなー)
千尋には悪いけど、蓮は気絶している千尋を見て、不覚にもキュンときてしまった。
いつも守ってくれる白馬の王子様のような千尋が、腰を抜かしておもらししていたのだ。
そのギャップに、蓮の秘めた想いは燃え上がっていた。
(千尋ちゃんの染み、まだタイルに残ってる。これからも、ずっとこの染みは残っていくんだ。……たとえ、私たちが卒業しても)
目をこらせば、今日千尋が漏らしてしまった大きな染みの他にも、他の染みもたくさん残っていた。
きっと、旧校舎にやってきた女子たちが我慢しきれずに、それとも今日の千尋のように恐怖のあまり漏らしてしまった跡なのだろう。
この染みは、この校舎が建て替えられるまで、ずっと残されていくものなのだ。
そう考えると、蓮の鼓動はなぜかトクンと熱くなってしまう。
(これが千尋ちゃんの染み……。知ってるのは私だけなんだ)
性徴期を迎えたばかりだというのに、蓮は信じられないほどに妖艶な笑みを浮かべてみせる。蓮自身も、そのことに無自覚で。
ここに来たのは、もっと別な目的があったのだ。
それは――。
「あった」
個室を一瞥し、蓮はあるものを見つけた。
それはコンビニの白いビニール袋だった。
そう。
千尋に渡して、ショーツを入れておくようにと言った――。
この袋の中には千尋の下痢にまみれたショーツが入っていることだろう。
しかもこの旧校舎では洗えないから、漏らしたときのそのままの状態で。
「千尋ちゃんのショーツ……。どうなってるんだろう?」
蓮はカバンと体操袋を手近なフックにかけると、ビニール袋を持ち上げてみる。
「凄い……。ずっしり重たい」
そのビニル袋は、意外と重たかった。
それだけ蓮の恥ずかしいモノが詰まっているということだ。
それに匂いも漏れないように、ギュッとしっかり結んであった。
「千尋ちゃん、こんなにきつく結ばなくてもいいのに」
そんなことを呟きながら、蓮はきつく結ばれているビニール袋の口を解いていていく。
「よいしょっと」
なんとか結び目を解くと、その瞬間――、
むわわ……っ。
柔らかくも刺激的な茶色い香りが立ち昇ってきた。
それは汲み取り式のトイレから立ち昇ってくる香りとは比べものにならないほどに濃厚で、新鮮なものだった。
「ううっ。これが千尋ちゃんの匂いなんだ」
濃厚な匂いにちょっとだけびっくりしてしまうけど、白馬の王子様のような友達の恥ずかしい匂いに、蓮の心拍数は早まっていく。
それでも、匂いだけではもう我慢できなくなっていた。
「千尋ちゃんのショーツ、どうなってるんだろう」
これから禁忌を犯そうとしている。
そのことを蓮も理解はしている。
だけど理性では分かっていても、どうしても好奇心を止めることはできなかった。
「……千尋ちゃんのショーツ……。こんなに重たくなってたんだ」
千尋が愛用している、ピンクと白のしましまショーツ。
すでに黄土色に染め上げられているが……。
その腰ゴムの辺りをつまみ上げて見ると、驚くほどにずっしりと重たくなっていた。
それは、間違いなく千尋のお腹に詰まっていたものの重みだ。
黄土色の下痢によってしましまショーツは染め上げられて、白い部分のほうが少なくなっているほどだ。
よほど、千尋はお腹を下していたのだろう。
「ショーツの内側は、どうなっているんだろう?」
蓮が好奇心を抱くのは、当然のことだった。
それでも、良心の一欠片が咎めるのだ。
このショーツの内側に詰まっているのは、千尋が誰にも見られたくないと思っている、恥部よりも恥ずかしい恥部なのだ。
その禁忌を犯して、果たして今まで通りに千尋のことを好きでいられるのだろうか?
千尋のことを、嫌いになったりしないだろうか?
そんな心配事が脳裏をよぎる。
だけど……、
「私は、そんなことじゃ千尋ちゃんのことを嫌いにならないんだもん。千尋ちゃんのこと全部知りたいんだもんっ」
意を決すると――、
蓮は、しましまショーツの腰ゴムを、両手で摘まみ、ゆっくりと広げていく。
むわわ……っ。
「うっ、うううっ。目に、染みる、よぉ……っ」
ショーツを広げて、その内側を覗き込んだ瞬間だった。
濃密な腐敗臭が、ショーツの内側から立ち昇ってきたのだ。
「うわ……、お尻のところ、こんなに柔らかいのがドロドロになってたんだ……」
蓮は我が目を疑ってしまった。
その目も、あまりの臭気で涙が溢れだしてくる。
涙を堪えながら見つめた、千尋のショーツの内側……。
そこは大惨事になっていた。
お尻の部分はピーナッツバターのような黄土色の下痢が、べっとりと塗られていたのだ。
「千尋ちゃんのお尻、きっとヌルヌルになってたんだね……」
ショーツの内側を覗き込み、蓮はしみじみと呟いてしまう。
黄土色の下痢でベトベトになっていたのは、お尻の部分だけではなかった。
「こんなにたくさん漏らしちゃったんだ……」
きっとたくさん漏らした下痢はお尻の部分だけでは抑えきれなかったのだろう。
黄土色の下痢は、クロッチまでも土砂崩れのように蹂躙し、前のほうにまで広がっていた。
「こんなになってるなんて……。きっと千尋ちゃんはおまたまでドロドロになっちゃったんだね。私が驚かせちゃったから……」
千尋がこの下痢にまみれたショーツを脱ぎ、汚泥によって陵○されたおまたとお尻を晒し、人知れずティッシュで拭っては新しいティッシュを手に取り……。
その姿を想像すると、蓮の理性はついに決壊してしまう。
「千尋ちゃんと同じ感触、味わいたいよ……」
自分でもなにを言っているのか分からなかった。
ただ、千尋と少しでも同じ体験をしたい。
同じ気持ちを共有したい。
千尋と、できることなら同化してしまいたい。
そんな想いが、蓮を突き動かそうとしていた。
「千尋ちゃんのしましまショーツ……穿いてみたい……」
蓮は白のワンピースを捲り上げる。
露わになったのは……、
パンツタイプの紙おむつだった。
蓮は、いつもワンピースの下にはおむつを穿いて生活していたのだ。さすがに、体育の授業を受けるときはショーツを穿くことにしているけど。
今日は体育の授業が終わってから更衣室で着替え、それから誰にも気づかれないように女子トイレに行って、その個室の中でおむつに履き替えた。
今日一日中穿き続けてきた紙おむつは、股間の部分はやや茶色かかったクリーム色に染まっていた。
午前中に漏らしてしまったおしっこは、時間が経つにつれて鮮やかなレモン色から、クリーム色へと変化してしまうのだ。
「おむつ脱いでっと……」
夏場の汗とおしっこに蒸れ返った紙おむつは脱げにくくなっている。
それでも蓮は慣れた手つきで、ゆっくりと紙おむつを下ろしていった。
この小説は、大決壊! 誰にも言えないに収録されている作品です。
フルカラーのイラストもありますので、気になった方は購入してもらえると創作活動の励みになります。