WsdHarumaki 2023/02/20 21:49

弟の憂鬱:大好きな姉【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(11/50)

第三章 弟の憂鬱
第一話 大好きな姉

 あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に居た黒髪の少女レオノーアに出会う、ミナリアは封印を解く仕事をまかされて【赤の洞窟】の攻略を成功させた、祠(ほこら)の宝石をカットしたルビーを報酬に貰う。

「姉さん…………」
 僕は姉を家族として愛している。優しい性格と愛らしい顔は誰からも好かれる筈なのに母は姉を遠ざけようとしていた。僕には判らない、姉もそんな母とは話さない。お互いが誤解しているのかと思う。

 今日は姉に会いに来た。貴族の娘なのにこんな場末の汚れた家に住んでいると思うと僕は悲しい、廊下も汚れ放題だ。ホコリと食べ物の残りが散らばっている。召使いが居ないとこんな状態になるのかと絶望的な気分になる。先ほど下のカウンターで部屋番号を聞いてきたが、宿屋の男性は子供の僕を珍しそうに見ていた。

 何号室なのか扉のプレートを見ながら探す、ここだ。僕は気取って扉を叩く。

「姉さん」
 返事は無い、僕はどうしようか悩む。うら若い女性の部屋だ、姉だからと言って勝手に入れない、そんな事を考えていると扉が開いた。窓から朝日が差し込む、その光で長い金髪がきらめいた、ミナリア姉さんが驚いたような顔をしている。

「リュカ? どうしたの」
 ちょっと不審そうに僕を見ている。僕は動揺を隠すために無表情のままでミナリア姉さん見つめた。

「どうしているのか見に来ました」
 顔がにやけてしまう。大好きな姉さんの顔を見ると安心する。顔がひきつるのを必死に我慢をした。

「家を出て苦労なさっていると思いまして、僕から餞別を……」
 言い終わらないうちに姉が涙を流す。僕は動揺を隠せない。何か変な事を言ったのだろうか? ハンカチを手渡しすると姉が受け取り濡れた目頭を拭う。心労もあるのかもしれない、馴れない仕事で大変だと思う。家が無いなら買えば良い。僕が召使い頭に探させれば物件は見つかる筈だ、僕はその提案をしようとした。

「お願い、帰って……」
 僕を悲しげに見る姉さんはとても美しい。感情的になるのはそれだけ豊かな感性があるからだ。彼女の繊細な心が僕も欲しいと願う。僕は何をしても嬉しくもないし面白くもない。どうすれば姉のようになれるのだろうか? 

「失礼しました、また来ます……」
 僕はくるりときびすを返すと足早に廊下を歩く。姉を泣かしてしまった、心が温かい、家族の交流だ。姉と一緒に居られないのが本当に残念に感じる。

 屋敷に戻る馬車の中で考える、姉のような女性を見つけて婚約できるだろうか? 僕の理想はミナリア姉さんだ。馬車に揺られながら口がほころぶ。姉のために家を探さないといけないと一人でつぶやいた。

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