WsdHarumaki 2023/03/06 22:08

青の洞窟:老剣士【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(16/50)

第四章 青の洞窟
第一話 老剣士

 あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に居た黒髪の少女レオノーアに出会う、ミナリアは封印を解く仕事をまかされて【赤の洞窟】の攻略を成功させた、祠の宝石をカットしたルビーを報酬として手に入れる。

 今日も老剣士が洞窟の入り口を偵察する。仲間を喰らった洞窟は入り口から青い光が漏れていた、俺は青の洞窟と呼ぶ、村では魔王の墓と恐れられている。

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「一攫千金なのね? 」
「ブルーダイヤやサファイアが大量にあるらしいぞ」

 当時の俺たちのパーティは、クリア出来ないダンジョンが無いと自惚れていた。たかが数回の魔王軍の先兵を倒したくらいで無敵のように感じている。昔は活発だった魔王軍も今は静かだ。戦いにも波はある、魔王軍は力を蓄えて一気呵成(いっきかせい)を考えている可能性もある。その凪(なぎ)の時期に、俺たちは魔王の墓を攻略する。

「たいした魔物も残っていないでしょうね」
 魔法使いの彼女は強力な魔力で数百のモンスターを焼き殺す事ができた。彼女からすれば、どんな敵も虫けらに見える。盾役も回復役も、それぞれが高度なスキルを習得していた。負ける敵は居ない、逆らうモンスターは全滅できる。

 青の洞窟には、扉も無く奥から青い光が漏れ出ている。美しい青色の光に期待が高まる。洞窟の奥に向かい進む、壁は青く光が反射して輝いているので光の魔法がいらない、光源が判らないのが不思議だ。

「トラップがあるな」
 天然の洞窟だが人工的に作られた周囲の壁は石組みで、ナイフの刃すら入らない。精巧に作られた墳墓は、侵入者を防ぐ罠が存在していた。

「転移魔法だな、近くを通るだけで飛ばされる」
 シーフが罠を調べている。墳墓のような財宝を守るタイプのダンジョンは、矢が飛んでくるような仕掛けよりも、行き先が不明な迷わせるタイプの罠の方が効果は高い。出口の無い部屋に飛ばされたらそれで終わりだ。

 罠を少しずつ解除して進む、周囲の壁に隠し扉があり敵が襲ってくるわけでもない、単調で地味な探索を繰り返す。普通の村人なら即死レベルの罠でも、高いスキルがある冒険者に無効だ。

 気が緩んでいたわけでもない、警戒はしていた。奇妙な違和感を徐々に感じていた。通路が広い。初めは三人が並んで通れた通路が、いつのまにか倍の人数が通れる、そして天井も高くなる。

「扇のように広がる通路なのかしら? 」
 ダンジョンの構造として不自然すぎるが、敵も現れないため進み続けた。しばらくすると昆虫型のモンスターが出現する。その頃には、通路ではなく巨大な洞窟の中を進んでいた、壁が遙か遠くに見える。モンスターはノシノシと、六本の足で歩いてきた。背丈が人の高さの二倍はある。黒く大きな体は硬く剣が通用しないように見えた。

「炎々竜巻」
 魔法使いの彼女が魔法を使うと、炎が巻き上がるが昆虫型モンスターには影響を与えない、魔法の威力が小さいのだ。希薄な炎は弱々しく見える。

 俺たちは逃げる事しかできなかった、周囲から同型のモンスターが無数に現れると太刀打ちできない。仲間は次々と倒れる、俺は仲間をかばいならが元の道に戻る、後ろに居る筈の昆虫型モンスターはいつのまにか消えていた。俺は洞窟から外に出る。

「全滅したのか…………」

 中のモンスターは、俺の剣で倒せない、俺は洞窟の秘密を知りたかった、何組か青の洞窟に挑戦するパーティも居たが誰も帰ってこない。俺は今でも入り口を見張っている。戻る奴が居たら、話を聞いてみたい。

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