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WsdHarumaki 2023/02/12 17:10

SS バディハイキング

 私とデュパンは軽いバディハイキングをしていた、古城を見たいというのだ。私は付き合うことにする。

「幽霊が出ると噂だ」
 洋館は十六世紀の伯爵の城だったが、今は未成年の少女が住んでいるだけだ、資産はあるので暮らせるが暗い洋館の中で一人はさみしい。

「デュパン様、お願いしたいのは祖母の部屋で幽霊が出る事です」
 元貴族のデュパンは、しばしば事件解決を頼まれていた。部屋に案内されると埃臭い部屋に大きな鏡がある。

「この鏡に祖母が映ります」
 デュパンは鏡を凝視する、彼は部屋を飛び出すと隣の部屋を開けようとするが鍵がかかっている、私も協力してドアを蹴り破る、その部屋には大きな映写機があった。その部屋は叔父が借りていた。

「あなたの財産を狙う親族が犯人でしょう」
 少女は嬉しそうにデュパンの手を握る、彼は照れくさいのか廊下にある清朝の壺を指さしながら、フランス製の壺と迷鑑定をする始末だ、私は笑いが止まらない。薄暗い館は、今は幸せの色で染まっている。

WsdHarumaki 2023/02/10 21:02

赤の洞窟:赤の封印【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(10/50)

第二章 赤の洞窟
第五話 赤の封印

 あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に居た黒髪の少女レオノーアに出会う、ミナリアは封印を解く仕事をまかされて【赤の洞窟】到着するが、奥に居るのはドラゴンだった。

 封印の祠(ほこら)には巨大なルビーがはめられていた。ギラギラと光る赤い光が私たちを認識すると光が強くなる、まるで生き物のような感じ。ドラゴンは死体のようだ、ぼろぼろの鱗の隙間から肋骨が見える。

「待って」
 レオノーアが叫ぶ。ドラゴンの手足がゆっくりと動き出すと立ち上がる、死んでいると思ったがドラゴンゾンビだった。体から皮膚と鱗がバラバラ落ち始めた。

「業火追撃」
 私は左手の宝石に命令する。炎のカーテンがいきなり立ち上がると三階建ての建物の高さになる。業火の炎がドラゴンゾンビに迫ると……消えた。魔法の消滅。私の魔法が吸収されてしまう。

 私は呆然としている。ドラゴンゾンビの前足が迫る。黒く大きな爪は、一本だけでも人の腕くらいの大きさがある。私は死を直感した。レオノーアが何か叫んでいるが私は痺れるように立ち止まっていた。何も出来ない………

 轟音がするとドラゴンゾンビの指が吹き飛ぶ。

「そこから離れろ! 」
 男性の叫び声だ、轟音が洞窟内を何回も響き渡る。銃使いのオスカーが竜めがけて銃を撃っていた。大口径の銃は、ドラゴンゾンビの腕や体を砕くが痛みが無いためドラゴンは止められない。オスカーは私を追いかけて洞窟に入ったらしい。お宝が目当てだと思う。

「ルビーがあなたの炎の魔法を防いでいるわ! 」
 レオノーアは悔しがる。魔法を吸収するルビーと巨大なドラゴンがセットの封印。あのルビーを破壊しない限り私はドラゴンを倒せない。ドラゴンゾンビが暴れると天井からの落石もある。直撃したら即死だ。

 私は洞窟の壁際まで逃げるが、倒す方法を思いつかない。恐怖が私を痺れさせる。体が冷えると体を動かせない。その時にルビーに近づく影が見えた。

 男の子はルビーに向かって走る。領主の息子のカルリトだ、どこにそんな勇気があるのか判らない。彼は祠に急接近すると巨大な剣でルビーをたたき割る。衝撃でルビーが砕ける。私はチャンスと直感して指輪の魔法を使う。

「渦巻く炎の大蛇」
 呪文の詠唱と同時に指輪から火炎が伸びる、まるで蛇の様にのたうちながらドラゴンゾンビを攻撃した。燃え上がる竜は横倒しに倒れると、そのまま燃え尽きる。

「カルリト、無茶よ」
 私は駆け寄る、助けて貰った台詞ではないが、それでも彼の無茶が怖い、普通に死んでいる場面だ。彼がそこまでする理由が判らない、カルリトは嬉しそうに私に見る。

「ドラゴンを倒して姫様を助ける、一回は体験したかった」
 ガクガクと足が萎える彼はその場に座り込む。これが火事場の馬鹿力? 無我夢中の彼は、無意識のまま飛び込んで私の命を助けてくれた。

「ありがとう、カルリト」
 その言葉を聞くと彼は意識を失う。

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「ルビーは回収したわ、余った石を彼らに渡して」
 カットした宝石は何百倍の値段で売れる。宝石の洞窟で、私はレオノーアから受け取れると知らされた、どんな原理か判らないが、クリスタルの内部で作成した宝石を洞窟で受け渡しが出来た。洞窟の地面の上に袋詰めのルビーの宝石が二つ置いてある。

「ありがとうレオノーア」
 私が洞窟に居る霊体の彼女に笑うと、彼女は少しだけ照れたように横を向く。ルビーを領主の息子のカルリトと銃使いのオスカーに渡せるのが楽しみ。

WsdHarumaki 2023/02/09 18:56

赤の洞窟:か弱い少女【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(09/50)

第二章 赤の洞窟
第四話 か弱い少女

 あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に居た黒髪の少女レオノーアに出会う、ミナリアは彼女から封印を解く仕事をまかされ【赤の洞窟】を目指す旅に出た、洞窟へ向かうためにギルドから仕事を受けて現地の屋敷で仕事をすませると領主の息子のカルリトと同行する約束をして、その帰り道にミナリアを見つめる銃使いの男と出会う。

「オスカーだ、よろしく」
 手を差し出す彼は黒髪で背が高く精悍な顔立ち。無表情なのに悲しそうに見えるのが不思議だ。差し出された手を私は握れない。彼の意図がわからないが、彼は私を騙すような男性には見えない。少しだけ考えてから、おずおずと私は彼の手を握る。

「本当に若い娘は顔しか見ないわね」
 横で幽体のレオノーアは愚痴を言う。

「あの……でも……今は雇えません……本当にお金が無いんです」
 大金を持ち歩いて冒険はしない。彼と契約するにしてもギルド経由にするのは大事だ、払った払わないと後でもめる。

「かまわんよ、今は顔だけ覚えてくれ」
 そのまま彼はくるりと背を向けて歩いて行く。あっけない別れで逆に不安になる、私を助けてくれないの? 少しだけ寂しく感じながら宿に戻る。レオノーアはそんな私を黙って見ていた。

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「さぁ冒険の旅だ」
 領主の息子のカルリトが宿の前で待っている。やけに張り切っている彼は大きな剣を腰に差して立っていた。元気そうなカルリトと一緒に山を越えて、骨竜の谷へ向かう。山は険しくないが山道は整備されていない。道に迷いそうになるが幽体のレオノーアが的確に道を教えてくれた。

「山頂よ……ハァハァ」
 息が切れる。山というか丘だけど標高が低い割に歩く距離が長いために疲れた。たぶん成人男子なら一時間もしないで登れる程度の山登りだ。馬車でも借りれば良かったかと後悔するが、借りたら借りたで料金も高い。

 カルリトを見るともう疲労困憊で私より体力が無い。冒険どころじゃなかった。山頂から見ると骨竜の谷が見える、狭い峡谷で底は深く無い。登ったときと同じくらいの早さで降りられた。洞窟は狭まった奥の場所にある。竜の巣の入り口だ。

「ここがそう?」
 カルリトが足をがくがくさせて立っている。もう彼は限界だ。私は彼にここで待つように頼む。彼は座り込むとうなだれて休むとつぶやいた。

「若い割に体力ないわねぇ」
「剣のせいよ、すっごく大きいから…………」
 幽体のレオノーアが呆れているが、彼は強い武器のつもりで大剣を持ってきた。さすがに登山には向かない。私は彼を置いて洞窟に向かうと中に入る。ごつごつとした入り口は自然に作られた岩肌で、巨大な竜くらいは通れる大きさだ。私はガラス玉で光を生み出しながら、そのガラス玉を壁際の地面に置いて帰り道が判るようにする。そうでもしないと暗闇の洞窟の中で迷うハメになる。ガラス玉は数時間は輝いている。

 私は封印が何なのか知らないのでレオノーアに聞いてみる。
「封印ってどんなものなの?」
「私を封印した魔女は力が強く邪悪だったの、それを解放させないために人が容易に近づかない場所に鍵が置かれている、普通の人では解除できない」
 話を聞く限りは私が封印を破壊できるのか心配になる。レオノーアは指輪ならば破壊可能だと予想している。彼女が百年の封印中に作り上げた魔法の指輪。特別にカットした宝石がはめこまれている指輪は、今は私の指と融合している。

「この指輪で破壊するのね?」
 私は手袋を外して左手の指輪を見る。七色に光り輝く不思議な指輪。ゆっくりと進みながら、洞窟を歩くと行き止まりになる。高い天井のあるドーム状の岩穴は暗く不気味だ。

「あったわ、これね」
 そこには封印の祠(ほこら)と、巨大なドラゴンが居た。

続く

WsdHarumaki 2023/02/08 20:43

赤の洞窟:怪しい男【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(08/50)

第二章 赤の洞窟
第三話 怪しい男

 あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に居た黒髪の少女レオノーアに出会う、ミナリアは封印を解く仕事をまかされて【赤の洞窟】を目指す。

「用心しなさいよ、あんたまだ生娘でしょ」
 黒髪の少女レオノーアは横で助言する。転送ゲートから移動してきた土地の領主に届け物を渡すために、城の中に入る。城と言うが実際は大きな屋敷だ。堀すらない。仕事の依頼をしたランバルト家の紋章は竜だ。この付近に昔は竜が生息していて、それを紋章に利用している。過去の領主には竜退治の逸話もある。私は竜の事物を見た事は無い。

「竜とかもう見ないわ……」
「数百年前に絶滅したと聞いたわ、私の頃でも伝説の存在よ」
 幽体のレオノーアは色々と教えてくれる。大きな黒い体を持つ竜は強力な毒で大地を汚した。今でも毒に犯された土地には誰も立ち入らない。そこに封印の【赤の洞窟】があるが場所までは彼女も知らないので調べないといけない。

 ランバルト家の領主さんからギルドの配達証明にサインを貰うと部屋を出た。仕事は簡単だけどお金は安い。安全で気軽な仕事だ。持ち家ならば暮らせるかもしれないが宿屋に泊まるならキツイ値段になる。

「君のお名前は? 」
 領主の廊下を歩いていると短い髪の毛の少年が声をかけてくる。かなり幼いように見えるが、たぶん私と同い年。彼の名前は カルリトと教えてくれる。彼は私の事を熱心に聞いてくる。私も同年齢の男の子と話をするのは楽しい。

「地図あるよ」
 資料室に連れて行かれると古い地図を一杯見せてくれた。幽体のレオノーアは私に指示して資料を見ている。私が見てもよく判らない。奇妙な記号が色々と描かれている。

「これよ……骨竜の谷……古代の文字で赤の洞窟と書かれている」
 この街から北側にある山の中だ、歩いて行くのは大変そう。山登りになるので食料や水をしっかり用意しないと危険だ。

「俺も行くよ」
 カルリトが熱心に私を助けると意気込んでいる。私から見てもかなり頼りが無い、本当に一緒に行けるのだろうか? 私は消極的だ。それでも彼のキラキラしている目を見ていると私は最後に折れた。危なかったら彼を途中で戻そう。

「あんたは暢気すぎよ、封印の種類すら判らない、彼が死んだらどうするの? 」
 レオノーアも心配している、私は赤の洞窟の中には一緒に行くつもりは無いと断言する。私は指輪の魔法で自分を守れるが、彼は一般人にしか見えない。連れていけない。それでも子犬のような彼を見ていると置いていくとかわいそうに思えた。

 領主の城を出て今夜の宿へ向かうと、街の中で私を見ている男性に気がつく。大きな金属の筒を所持している彼は銃使いだ。私たちの国ではまだ少数派の職業で、火薬を使いナマリ玉を発射してモンスターを倒す。銃が高価な事と扱いが難しいので、普及はしていない。

「あの男は危険そうね、あなたを狙っているみたい」
 冗談のようにレオノーアがからかうが、私も成人男性はコワイ。外の世界では、いきなり女性を狙う男性が居る。森の中で襲われたらどうしよう? 私は彼の横を緊張しながら通り過ぎる。

「まて………俺を雇わないか? 」
 いきなり売り込みだ。冒険者は他のパーティに自分から声をかけて仲間に入れて貰う場合もある。それでも私のような歳の少女にいきなり売り込むだろうか?

「ご……ごめんなさい、お金が無くて……」
 私がどこに行くのかすら判らないのに、この怪しい男は何を期待しているのだろう? 私は警戒する。

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