WsdHarumaki 2023/02/10 21:02

赤の洞窟:赤の封印【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(10/50)

第二章 赤の洞窟
第五話 赤の封印

 あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に居た黒髪の少女レオノーアに出会う、ミナリアは封印を解く仕事をまかされて【赤の洞窟】到着するが、奥に居るのはドラゴンだった。

 封印の祠(ほこら)には巨大なルビーがはめられていた。ギラギラと光る赤い光が私たちを認識すると光が強くなる、まるで生き物のような感じ。ドラゴンは死体のようだ、ぼろぼろの鱗の隙間から肋骨が見える。

「待って」
 レオノーアが叫ぶ。ドラゴンの手足がゆっくりと動き出すと立ち上がる、死んでいると思ったがドラゴンゾンビだった。体から皮膚と鱗がバラバラ落ち始めた。

「業火追撃」
 私は左手の宝石に命令する。炎のカーテンがいきなり立ち上がると三階建ての建物の高さになる。業火の炎がドラゴンゾンビに迫ると……消えた。魔法の消滅。私の魔法が吸収されてしまう。

 私は呆然としている。ドラゴンゾンビの前足が迫る。黒く大きな爪は、一本だけでも人の腕くらいの大きさがある。私は死を直感した。レオノーアが何か叫んでいるが私は痺れるように立ち止まっていた。何も出来ない………

 轟音がするとドラゴンゾンビの指が吹き飛ぶ。

「そこから離れろ! 」
 男性の叫び声だ、轟音が洞窟内を何回も響き渡る。銃使いのオスカーが竜めがけて銃を撃っていた。大口径の銃は、ドラゴンゾンビの腕や体を砕くが痛みが無いためドラゴンは止められない。オスカーは私を追いかけて洞窟に入ったらしい。お宝が目当てだと思う。

「ルビーがあなたの炎の魔法を防いでいるわ! 」
 レオノーアは悔しがる。魔法を吸収するルビーと巨大なドラゴンがセットの封印。あのルビーを破壊しない限り私はドラゴンを倒せない。ドラゴンゾンビが暴れると天井からの落石もある。直撃したら即死だ。

 私は洞窟の壁際まで逃げるが、倒す方法を思いつかない。恐怖が私を痺れさせる。体が冷えると体を動かせない。その時にルビーに近づく影が見えた。

 男の子はルビーに向かって走る。領主の息子のカルリトだ、どこにそんな勇気があるのか判らない。彼は祠に急接近すると巨大な剣でルビーをたたき割る。衝撃でルビーが砕ける。私はチャンスと直感して指輪の魔法を使う。

「渦巻く炎の大蛇」
 呪文の詠唱と同時に指輪から火炎が伸びる、まるで蛇の様にのたうちながらドラゴンゾンビを攻撃した。燃え上がる竜は横倒しに倒れると、そのまま燃え尽きる。

「カルリト、無茶よ」
 私は駆け寄る、助けて貰った台詞ではないが、それでも彼の無茶が怖い、普通に死んでいる場面だ。彼がそこまでする理由が判らない、カルリトは嬉しそうに私に見る。

「ドラゴンを倒して姫様を助ける、一回は体験したかった」
 ガクガクと足が萎える彼はその場に座り込む。これが火事場の馬鹿力? 無我夢中の彼は、無意識のまま飛び込んで私の命を助けてくれた。

「ありがとう、カルリト」
 その言葉を聞くと彼は意識を失う。

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「ルビーは回収したわ、余った石を彼らに渡して」
 カットした宝石は何百倍の値段で売れる。宝石の洞窟で、私はレオノーアから受け取れると知らされた、どんな原理か判らないが、クリスタルの内部で作成した宝石を洞窟で受け渡しが出来た。洞窟の地面の上に袋詰めのルビーの宝石が二つ置いてある。

「ありがとうレオノーア」
 私が洞窟に居る霊体の彼女に笑うと、彼女は少しだけ照れたように横を向く。ルビーを領主の息子のカルリトと銃使いのオスカーに渡せるのが楽しみ。

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