WsdHarumaki 2023/02/09 18:56

赤の洞窟:か弱い少女【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(09/50)

第二章 赤の洞窟
第四話 か弱い少女

 あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に居た黒髪の少女レオノーアに出会う、ミナリアは彼女から封印を解く仕事をまかされ【赤の洞窟】を目指す旅に出た、洞窟へ向かうためにギルドから仕事を受けて現地の屋敷で仕事をすませると領主の息子のカルリトと同行する約束をして、その帰り道にミナリアを見つめる銃使いの男と出会う。

「オスカーだ、よろしく」
 手を差し出す彼は黒髪で背が高く精悍な顔立ち。無表情なのに悲しそうに見えるのが不思議だ。差し出された手を私は握れない。彼の意図がわからないが、彼は私を騙すような男性には見えない。少しだけ考えてから、おずおずと私は彼の手を握る。

「本当に若い娘は顔しか見ないわね」
 横で幽体のレオノーアは愚痴を言う。

「あの……でも……今は雇えません……本当にお金が無いんです」
 大金を持ち歩いて冒険はしない。彼と契約するにしてもギルド経由にするのは大事だ、払った払わないと後でもめる。

「かまわんよ、今は顔だけ覚えてくれ」
 そのまま彼はくるりと背を向けて歩いて行く。あっけない別れで逆に不安になる、私を助けてくれないの? 少しだけ寂しく感じながら宿に戻る。レオノーアはそんな私を黙って見ていた。

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「さぁ冒険の旅だ」
 領主の息子のカルリトが宿の前で待っている。やけに張り切っている彼は大きな剣を腰に差して立っていた。元気そうなカルリトと一緒に山を越えて、骨竜の谷へ向かう。山は険しくないが山道は整備されていない。道に迷いそうになるが幽体のレオノーアが的確に道を教えてくれた。

「山頂よ……ハァハァ」
 息が切れる。山というか丘だけど標高が低い割に歩く距離が長いために疲れた。たぶん成人男子なら一時間もしないで登れる程度の山登りだ。馬車でも借りれば良かったかと後悔するが、借りたら借りたで料金も高い。

 カルリトを見るともう疲労困憊で私より体力が無い。冒険どころじゃなかった。山頂から見ると骨竜の谷が見える、狭い峡谷で底は深く無い。登ったときと同じくらいの早さで降りられた。洞窟は狭まった奥の場所にある。竜の巣の入り口だ。

「ここがそう?」
 カルリトが足をがくがくさせて立っている。もう彼は限界だ。私は彼にここで待つように頼む。彼は座り込むとうなだれて休むとつぶやいた。

「若い割に体力ないわねぇ」
「剣のせいよ、すっごく大きいから…………」
 幽体のレオノーアが呆れているが、彼は強い武器のつもりで大剣を持ってきた。さすがに登山には向かない。私は彼を置いて洞窟に向かうと中に入る。ごつごつとした入り口は自然に作られた岩肌で、巨大な竜くらいは通れる大きさだ。私はガラス玉で光を生み出しながら、そのガラス玉を壁際の地面に置いて帰り道が判るようにする。そうでもしないと暗闇の洞窟の中で迷うハメになる。ガラス玉は数時間は輝いている。

 私は封印が何なのか知らないのでレオノーアに聞いてみる。
「封印ってどんなものなの?」
「私を封印した魔女は力が強く邪悪だったの、それを解放させないために人が容易に近づかない場所に鍵が置かれている、普通の人では解除できない」
 話を聞く限りは私が封印を破壊できるのか心配になる。レオノーアは指輪ならば破壊可能だと予想している。彼女が百年の封印中に作り上げた魔法の指輪。特別にカットした宝石がはめこまれている指輪は、今は私の指と融合している。

「この指輪で破壊するのね?」
 私は手袋を外して左手の指輪を見る。七色に光り輝く不思議な指輪。ゆっくりと進みながら、洞窟を歩くと行き止まりになる。高い天井のあるドーム状の岩穴は暗く不気味だ。

「あったわ、これね」
 そこには封印の祠(ほこら)と、巨大なドラゴンが居た。

続く

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