WsdHarumaki 2023/02/08 20:43

赤の洞窟:怪しい男【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(08/50)

第二章 赤の洞窟
第三話 怪しい男

 あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に居た黒髪の少女レオノーアに出会う、ミナリアは封印を解く仕事をまかされて【赤の洞窟】を目指す。

「用心しなさいよ、あんたまだ生娘でしょ」
 黒髪の少女レオノーアは横で助言する。転送ゲートから移動してきた土地の領主に届け物を渡すために、城の中に入る。城と言うが実際は大きな屋敷だ。堀すらない。仕事の依頼をしたランバルト家の紋章は竜だ。この付近に昔は竜が生息していて、それを紋章に利用している。過去の領主には竜退治の逸話もある。私は竜の事物を見た事は無い。

「竜とかもう見ないわ……」
「数百年前に絶滅したと聞いたわ、私の頃でも伝説の存在よ」
 幽体のレオノーアは色々と教えてくれる。大きな黒い体を持つ竜は強力な毒で大地を汚した。今でも毒に犯された土地には誰も立ち入らない。そこに封印の【赤の洞窟】があるが場所までは彼女も知らないので調べないといけない。

 ランバルト家の領主さんからギルドの配達証明にサインを貰うと部屋を出た。仕事は簡単だけどお金は安い。安全で気軽な仕事だ。持ち家ならば暮らせるかもしれないが宿屋に泊まるならキツイ値段になる。

「君のお名前は? 」
 領主の廊下を歩いていると短い髪の毛の少年が声をかけてくる。かなり幼いように見えるが、たぶん私と同い年。彼の名前は カルリトと教えてくれる。彼は私の事を熱心に聞いてくる。私も同年齢の男の子と話をするのは楽しい。

「地図あるよ」
 資料室に連れて行かれると古い地図を一杯見せてくれた。幽体のレオノーアは私に指示して資料を見ている。私が見てもよく判らない。奇妙な記号が色々と描かれている。

「これよ……骨竜の谷……古代の文字で赤の洞窟と書かれている」
 この街から北側にある山の中だ、歩いて行くのは大変そう。山登りになるので食料や水をしっかり用意しないと危険だ。

「俺も行くよ」
 カルリトが熱心に私を助けると意気込んでいる。私から見てもかなり頼りが無い、本当に一緒に行けるのだろうか? 私は消極的だ。それでも彼のキラキラしている目を見ていると私は最後に折れた。危なかったら彼を途中で戻そう。

「あんたは暢気すぎよ、封印の種類すら判らない、彼が死んだらどうするの? 」
 レオノーアも心配している、私は赤の洞窟の中には一緒に行くつもりは無いと断言する。私は指輪の魔法で自分を守れるが、彼は一般人にしか見えない。連れていけない。それでも子犬のような彼を見ていると置いていくとかわいそうに思えた。

 領主の城を出て今夜の宿へ向かうと、街の中で私を見ている男性に気がつく。大きな金属の筒を所持している彼は銃使いだ。私たちの国ではまだ少数派の職業で、火薬を使いナマリ玉を発射してモンスターを倒す。銃が高価な事と扱いが難しいので、普及はしていない。

「あの男は危険そうね、あなたを狙っているみたい」
 冗談のようにレオノーアがからかうが、私も成人男性はコワイ。外の世界では、いきなり女性を狙う男性が居る。森の中で襲われたらどうしよう? 私は彼の横を緊張しながら通り過ぎる。

「まて………俺を雇わないか? 」
 いきなり売り込みだ。冒険者は他のパーティに自分から声をかけて仲間に入れて貰う場合もある。それでも私のような歳の少女にいきなり売り込むだろうか?

「ご……ごめんなさい、お金が無くて……」
 私がどこに行くのかすら判らないのに、この怪しい男は何を期待しているのだろう? 私は警戒する。

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