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WsdHarumaki 2023/05/15 20:37

魔女の過去:宝石が好きな姫【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(41/50)

第九章 魔女の過去
第一話 宝石が好きな姫

あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に住む黒髪の少女レオノーアに出会う、呪いのために閉じ込められているレオノーアは、洞窟の封印の解除をミナリアに頼む、最後の白の洞窟で出会った封印は女性だった、彼女はミナリアの母親のセレーナ。レオノーアに操られたミナリアが封印の宝石を破壊する。

 深い森に大きな城がある、魔物を寄せ付けない頑丈な城壁と魔女達の力で平和は保たれる。十五歳になるレオノーアは、王の第三子として生まれた。一人が好きな彼女は、いつものように宝石の標本室で遊んでいる。『金色』で美しく長い髪の姫が暗く静かな部屋で何時間もじっと宝石を見ていた。使用人には、変な姫として笑われている。

「石ばかり見ているわ」
「手間が、かからなくていいじゃない」

 使用人はわがままな姫よりは、大人しくしている方が助かる。レオノーアは誰からも邪魔されないで、宝石を堪能できた。

「レオノーア、何をしているの?」
「―――石を見ているわ」
 お母様が私を呼びに来る、使用人が呼んでも私は動かない。心配になり見に来たのでしょう。私はゆっくりと椅子から立ち上がる。退屈な毎日でも宝石があれば私は満足できる。

 宝石は美しいばかりではない、カットする事で威力を増す。カットするための技術が確立されていない現在では、美しく光る宝石を作れないが私なら出来る。親から受け継いだギフト(後天的な才能)は、石の特性を理解し実現できる力。

「正方形を多用して内部の呪文の威力を増す事ができるわ」
 王宮の魔女達は理解が出来ない、複雑な幾何学模様を構築しようとは想像もしないし、作るのにコストがかかりすぎる、宝石を消耗品としか見ていない。

「音楽のレッスンや詩のレッスンを休んでいるのね? 」
 私には兄と姉が居る。優秀なお兄様達はお母様の言いつけを守り、常識を身につける事に熱心だ。どこかのサロンにお呼ばれされたら、詩を即興で作り朗読して、楽器を演奏する。求められるのは貴族のたしなみ。いずれ私も、どこかの大貴族の妻となるのに必要な事なのに私は興味が無い。

「ごめんなさい、お母様、難しくて判らないの」
 言い訳をする私の言葉に嘘があるのは判っている。お母様は落胆したような眼差しをする。そこは悲しく感じる、私は母が自慢できる子供になれない。嫌われていると思う。私は自分が好きな事をしたい、平民に生まれたら良かったと思う。

「レオノーア、姫らしくふるまうために別荘を用意しました」
 お母様は、私を捨てるつもりなのは理解できた。どこか遠くの館に押し込めて歳を重ねてお嫁にいけなくなるまで放置するつもり。私はうつむきながらお母様に短く「はい」とだけ返事して自室に戻る。

「やった、これで自由に宝石を作れるわ! 」
 内心は嬉しかった、私は出発するために用意する服や本を選び始める。

WsdHarumaki 2023/05/05 20:11

白の洞窟:白の洞窟【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(40/50)

第八章 白の洞窟
第五話 白の洞窟

あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に住む黒髪の少女レオノーアに出会う、呪いのために閉じ込められているレオノーアは、洞窟の封印の解除をミナリアに頼む、赤と青と黒の洞窟は解除に成功した。最後の洞窟はミナリアの父親の屋敷内に存在していた。

「一緒に行きましょう」
 私は弟の手を握る。暖かい手を引きながら、弟とは触れあうことが少ない事に気がつく。成長してからは手を握る事も無かった。何か幸せな感情が広がる。私がニコニコと笑っていると弟も笑っている。私はこれからの攻略に少しも不安が無い。

「この下よ」
 私以外は見えていないレオノーアが階下を指さす、地下に降りる階段の扉は閉められていた。シーフのラミラが解錠する。地下一階に降りると真っ暗だ、私は光の魔法を使い、ガラス玉に光を入れて廊下に置いていく。

「これが入り口? 」
 頑丈そうな鉄板で補強された木製の扉がある。ラミラがまた解錠して扉を開けた、瞬間だった、白いまぶしい光が廊下を照らした。

「ここが白の洞窟なの? 」
 全員がまぶしそうに腕で光を防ぐ、それはやや広い倉庫に見えるが全てが白い壁だ。異質な部屋の中央にはベッドがあり、人が上半身を起こしている。彼女は、まるで何かを考え込んでいるかのように眉間にしわを寄せていた。私達は彼女の近くまで歩いて行く。彼女は私を見るとつぶやく、か細い声は人とあまり話をしていないと感じた。

「――ミナリア? 」
「彼女は黒の魔女よ! 」
 レオノーアが叫ぶ。怒りの目で金髪の女性を見ている、長く美しい髪の若い彼女は私と同じくらいにしか見えない。

「私はセレーナ、ミナリア、あなたは騙されて封印を解いているのね?」
 私はもう混乱していた、金髪の彼女はとても美しくやさしく見える。私の名前を知っている理由も判らない。封印が人だったのは初めてで、どうすればいいの? と周囲を見回す。銃使いのオスカーが金髪のセレーナに質問する。

「封印は何のためにあるんだ? 」
「――私は、封印のダイヤを守りたい、封印の解除は危険なの……」

 封印を解除した時の影響を考えていなかった、私はレオノーアに言われるままに解除を続けた……。その時、私の腕が自然に持ち上がる、指輪をはめた左腕がセレーナに向けられた、彼女に胸元に強い魔法が放たれる。まぶしい光と共に、彼女の胸元の宝石が砕け散る。彼女が倒れると白い部屋は、普通のレンガ作りの倉庫に変わっていた。

「ミナリア、ありがとう」
 レオノーアは、嬉しそうに笑っている。その表情から暗い影を感じた。私は騙されていたの? 黒い髪のレオノーアはゆっくりと姿が薄れていく。そして私の指輪の宝石が砕け散る。私はベッドの上に居る女性を呆然と眺めていた。

WsdHarumaki 2023/05/05 11:51

白の洞窟:姉と一緒に【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(39/50)

第八章 白の洞窟
第四話 姉と一緒に

あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に住む黒髪の少女レオノーアに出会う、呪いのために閉じ込められているレオノーアは、洞窟の封印の解除をミナリアに頼む、赤と青と黒の洞窟は解除に成功した。最後の洞窟はミナリアの父親の屋敷内に存在していた。

「姉さん、どうしました? 」
 姉が僕を呼び出しているとメイドから手紙を貰う。僕はミナリア姉さんの安宿まで出向くと泣いていたのか目が赤い。

「義母さんに、屋敷に入るなと言われたの」
「――そんな……」
 母は前から姉に冷たかった。確かに魔女の力は脅威かもしれないが、姉が人に向けて魔法を使う事は無い。それでも普通の人には怖い存在と思う。でも自分の肉親だ……

「お屋敷内に入れないかしら? 」
「僕と行けば大丈夫でしょう」
「違うのよ、封印の洞窟に入りたいの」

 初めての話を姉から聞かされる。離れの屋敷の地下に洞窟がある、そしてそこにはモンスターが居て封印を守っている。

「そんな……山奥の洞窟みたいなのが僕の家にあるのですか?」
「――うん……、あるみたいなのよ」

 姉も半信半疑であやふやな情報に思えるが、自分の目で確かめれば良い。僕は大きな馬車を用意させると、姉さんの仲間達を隠して屋敷内に戻る事にした。

xxx

「大きな馬車ですな」
「ちょっと買い物をしたので離れの屋敷に向かうよ」
 庭師が不思議そうな顔をしながら、僕たちを見送る。離れの屋敷の玄関先に馬車を停めて攻略パーティを降ろす。僕は洞窟を見たくなる。

「姉さん、僕も見てもいいかな? 中には入らないよ」
「――入り口までなら大丈夫よ、一緒に行きましょう」

姉が僕の手を取ると屋敷の扉を開ける。

WsdHarumaki 2023/05/03 23:31

白の洞窟:侵入【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(38/50)

第八章 白の洞窟
第三話 侵入

あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に住む黒髪の少女レオノーアに出会う、呪いのために閉じ込められているレオノーアは、洞窟の封印の解除をミナリアに頼む、赤と青と黒の洞窟は攻略すると最後の洞窟はミナリアの父親の屋敷内に存在していた。

「ミナリアが屋敷に戻るの? 」
 雇った銃使いのオスカーはむっつりした顔でうなずく。私は安心する、まだ未成年の子供を危険な場所で働かせているだけで心臓に悪い。

「良かった、いつなの? 娘の部屋を用意しないと」
「まって下さい、今回は洞窟攻略のためです」
 私はその瞬間に体が固まる。なぜ洞窟の事を知っているの? 目の前の男は落ち着いた様子だが、洞窟に居る女性の正体を理解しているの?

「――何を言ってるの判らないわ」
「お屋敷内に洞窟があり封印を解く必要が……」
「そんなものはありません! 」
 私は感情的になると怒鳴る。手が震える、心臓の鼓動が激しくなると気分が悪い。私は執事を呼び寄せるために呼び鈴を鳴らした。

「――お話はありません、帰って……」
 銃使いのオスカーは立ち上がると部屋を出て行く。私は混乱をしていた、理由が判らない、なぜ洞窟の事を知っているのか? 誰かが漏らした?ミナリアは母親に会いたいのだろうか?

「奥様どうなされましたか? 」
「厄介ごとよ、娘が白の洞窟に居る精霊に近寄ろうとしている、警戒をして」
「判りました、人を雇います」

 これで出入りは制限できる筈だ。オスカーが私を裏切る場合は面倒だが、金を積めば辞めさせる事もできる。ギルド経由の仕事だ、雇い主が苦情を言えばギルド側も対応してくれる。悪質な場合はギルドからの追放もある。

「母上、ミナリア姉さんが戻ってくるのですか? 」
 嬉しそうな長男のリュカが笑って応接室に入る。私はまた悪寒がしてくる、夫は白の洞窟の女性と結ばれた、生まれた子供がミナリアだ。魔女の力があるのは遺伝なのかもしれない。本当の母親が人ではないと知れば彼女はどう思われる?

「もし壊れてしまったら……」
「何が壊れるのです? 」
「なんでもないわ、ミナリアは戻りません。」

 不審そうな息子を安心させるように抱きしめる。何故かリュカは体を強ばらせていた。

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「奥様、大変です! 」
「何事です? 」
 執事が慌てたように廊下で待っていた。寝ようと仕度をしていたらメイドが私を呼びに来た。真っ青な執事は、洞窟がある館に侵入した者が居ると報告をする。

「坊ちゃんが招き入れたようです」
 私は急いで服を着替えると白の洞窟がある館に向かう。

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