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WsdHarumaki 2023/04/20 22:00

継母:依頼【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(34/50)

第七章 継母
第四話 依頼

あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に住む黒髪の少女レオノーアに出会う、呪いのために閉じ込められているレオノーアは、洞窟の封印の解除をミナリアに頼む、赤と青と黒の洞窟は攻略に成功する。

「冒険者はあなた? 」
 目の前の男からは血の臭いを感じる。錯覚なのは判るが重苦しい顔を見ていると心配になる、腕が良いと聞いて依頼をしてミナリアの護衛をするので、人物を確認したかった。

「護衛相手は、娘さんでいいのか?」
 真面目な性格なのだろう、性格や行動を細かく聞いてくる。できるだけ丁寧に答えると彼は何度も復唱しながら記憶していた。オスカーと名乗る男は、娘に接触した後は報告すると約束をして帰る。

「腕は一流だと評判です」
 執事が選んできた男なので心配はしていないが、男性だ。ミナリアに手を出さないか心残りだ。

「その……彼は娘に興味を持たないかしら…… 」
「大丈夫です、お嬢様は幼い容姿なので……失礼しました」
 執事は途中で咳をして誤魔化した。男性からすればミナリアは、女性としては見られていないのかもしれないと思える。これでミナリアを守れる、私は安心と共に疲れが出ていた。

「母上、ミナリア姉さんは無事ですか? 」
「護衛を雇ったわ、冒険といっても軽い仕事でしょうから一人で十分でしょう」
 リュカが部屋に入ってくる。息子は葬儀の時も平静で涙も見せない。父親の血が同じなのに、姉とこれほど似てないのが不思議に感じる。巻き毛のある頭髪は父親ゆずりだ。性格も夫に似ている。私が両手を伸ばすとリュカは私を両手で抱きしめてくれる。幸せなひとときを堪能した。

「奥様、封印の件です」
「判りました、リュカまた後でね」
 執事と封印の部屋に行く、そこは離れた屋敷の地下にある。リュカが成人をしたら教える必要があるが、実際は私達は何も出来ない。封印の人は普通の女性では無いからだ。屋敷の階段を降りると地下室の洞窟がある。洞窟は頑丈な扉で封鎖されていた。私たちはその扉の鍵を開けて中に入る。

「こんにちは、何か必要な物はありますか? 」
「いつもありがとう、大丈夫ですよ」
 白い部屋の中に居るのはセレーナ。長い金髪の彼女は100年前に、この屋敷に来たと伝えられている。年齢は成人前の少女にしか見えない。強大な魔法を使える彼女は、何かから逃げてきて屋敷に住んでいる。彼女は記憶が無いのか詳しい話を何もしない。

 そして………ミナリアの母親だ。

WsdHarumaki 2023/04/19 19:42

継母:不審を感じる時【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(33/50)

第七章 継母
第三話 不審を感じる時

あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に住む黒髪の少女レオノーアに出会う、呪いのために閉じ込められているレオノーアは、洞窟の封印の解除をミナリアに頼む、赤と青と黒の洞窟の攻略に成功する。

「それで家を出たの? 」
 クリスタルの洞窟の中で、私は洞窟の主のレオノーアとお茶を飲む。骸骨が給仕する不思議な部屋で、ゆったりとくつろぐ。

「ひどいでしょ。お母様は本当に冷たいわ」
「そうね、母親とか最低だわ…………」
 黒髪のレオノーアは長く美しい髪を触りながら顔をしかめる。母親が嫌いらしい、私の母は継母のイネスしか記憶にない。生みの母は私が小さい頃にお墓に入っていると教えられた。私はイネスの事は嫌いではない。

「まぁ、お母様もご苦労があるのは判るわ、リュカを育てないといけないし」
「あの弟が家を継ぐのね、退屈そうね」
 なぜかレオノーアは私の家族が嫌いなようだ。私は彼女の家庭の事も知りたくなる。次の洞窟の話も聞きたい。

「ねぇ、レオノーアのお母さんはどんな人? 」
「最悪よ」
 何か聞くとまずい予感だけはする。私が話題を変える前に彼女は話を始めた。

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 100年前、私は魔法の勉強していたわ。宝石を消費して魔力を上げられる理由を知りたかった。宝石の内部で呪文が反射して強さが増している。呪文が宝石の内部で反射する事で宝石の内部の結晶を破壊していた。宝石は最後に砕け散るけど反射の効率を上げてより強くすれば少ない宝石で利用できる。

 国宝の指輪を使おうとしたが指輪から魔女が出現して、私をクリスタルに閉じ込めた、そのまま誰も私を助けに来ない。

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「助けるのが難しいとか? 」
「犠牲は自分の娘だけにしたかったのよ、黒い魔女はどこかに消えてしまった」
 レオノーアが母親を憎む気持ちは判る、肉親に捨てられるとか悲しい。継母のイネスから家を追い出されて、弟のリュカから餞別を渡すと言われた記憶が蘇る。両方の眼から大粒の涙が出てくる。切なさでスンスンと泣き出す。

「また? いい加減にして」
 レオノーラは私が泣いていると横を向いてしまう。自分でも泣き虫は困るけど嫌いな性格とは思わない。泣くとすっきりとする、嫌な事をきれいさっぱりと忘れる。

「……次は白い洞窟よ、まったく偶然よね、あなたの屋敷に封印場所があるわ」
 最初は意味がわからなかった、洞窟が実家にある? レオノーラが面白そうに私を見る。私はその偶然が偶然じゃない予感がある。

WsdHarumaki 2023/04/18 23:23

WsdHarumaki 2023/04/18 20:01

継母:追放【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(32/50)

第七章 継母
第二話 追放

あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に住む黒髪の少女レオノーアに出会う、呪いのために閉じ込められているレオノーアは、洞窟の封印の解除をミナリアに頼み、赤と青と黒の洞窟は攻略できた。

「奥様、お嬢様が庭の木を黒焦げに……」
 私はため息をつく、娘は昔から自由奔放で父親が亡くなってからは、自由度が上がったのかやりたい放題に見える。召使い達も恐れていた、ミナリアに悪意は無くても注意して報復されたらと考えて誰も近寄らない。

「娘はどこに居ます? 」
「自室に居られます」

 私は陽射しの暖かい廊下を歩きながら、魔法を扱える叔母に相談しようと考えていた。彼女のツテで魔法を使える娘に、抵抗が無い嫁ぎ先があるかもしれない。親の一番の幸せは子供が大きくなる事、そして子供達を支える事だ。この幸せをミナリアにも判って欲しい。母親の幸せを与えたい。

「ミナリア、いいかしら? 」
 戸を叩くと中から返事がする、私は戸ゆっくりと開けて驚く。娘が冒険者の格好していた。

「お母さん、注文してみたの、どうかしら? 」
 ミナリアはもう働くつもりだ。革製の無骨な服を着て重そうにしていた、かわいい少女がこんな格好で歩いていると思うと目眩がする。

「……速く脱いで」
「ダメですか? 」
 私は気持ちを落ち着かせる、みっともないと感じるのと同時に、娘は命のはかなさを理解していないのに驚く。貴族として生まれた奇跡を理解していない。庶民がどれほど大変なのかは、身近に居る使用人を見れば判る筈なのに、想像力が無い。他人の視点から自分の境遇を見られない。

「その服は私の方で処分するので、脱いで召使いに渡しておいて」
「…………私は冒険したいの、自由に野原を歩いて、魔法を使いたい! 」

 小さな男の子みたいな事を言う、私の息子はミナリアよりも年下だが、もっと大人と同じ考え方をする。もちろん息子には貴族の教育をして、家を継がせるための勉強もさせた。ミナリアにも淑女としての教育を出来れば良かった。私がそれを出来ないのは、継母としての負い目でしかない。そのためにミナリアが不幸になるのなら、それは私の責任だ。

「お話し合いは、何回もして無理だと結論を出しました」
「お母さんが命令しているだけじゃない! 」
 ミナリアは、大人しい良い娘だが、この時だけは、父親を葬儀の後で自制心が乱れていたのかもしれない。良い意味で夫の存在は、ミナリアに影響を与えていたが、今はそれも無い。

「働く事はできません」
「働ける、ちゃんと用意したの」
「働くのなら家を出る事になるのですよ? 」
 ミナリアが目に涙を浮かべる、大きな声で騒がないが彼女の場合は大泣きする癖がある、今回も同じだと考えた。私は娘に背を向けると部屋を出る。泣いている時に抱きしめると彼女は落ち着くが、結局は甘やかしているだけになる。

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「奥様、ミナリアお嬢様が屋敷を出て行かれようとしています」
 次の日の朝に使用人があわてた様子で報告する、私も急いでエントランスホール行くと使用人に囲まれたミナリアが屋敷から出ようとしていた、皆が恐れて遠巻きにしている。

「ミナリア、なにごとです? 」
「家を出ます」
 ずっと泣いていたのか目が赤い。どこに泊まるの? 私は急いで召し使いに金貨の詰まった革袋を持って来させた。ミナリアは受け取るとそのまま屋敷を後にした。きっと外の世界の厳しさを知り、すぐに戻ってくるだろうと予想をしていた。

WsdHarumaki 2023/04/17 21:32

継母:美しい娘【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(31/50)

第七章 継母
第一話 美しい娘

あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に住む黒髪の少女レオノーアに出会う、呪いのために閉じ込められているレオノーアは、洞窟の封印の解除をミナリアに頼み、赤と青と黒の洞窟を攻略に成功する。

「ミナリア、落ちつきなさい」
 喪服の私は、激しく泣いている父親を亡くしたばかりの娘を慰める。自分も悲しいが感情に流されるわけにはいかない。息子が家を継ぐまでは私が家を管理しなくてはいけない。

「お父様! 」
 棺にすがりつき涙を流す。周囲から見ればどう見えるのだろうか? 悲しみも見せない私と対比して、ミナリアは全身全霊で感情を爆発させていた。私は恐れている。もしミナリアの力が暴走をしたら? 魔法は高度な呪文詠唱と集中力が必要だ。感情が乱れている最中は使えないのが普通。ミナリアは魔法は教えられていないが力を使えている。

 もし周囲に被害を与えたら…………

「もう椅子に座りなさい」
 ミナリアは私の手を払いのける。美しい顔は悲痛で歪んでいる、そこには憎しみを感じる。実の母親ではないから常に負い目を感じた。実の娘ならもっと彼女に愛情を与えられた? もっと厳しくレディーとして育てられた? 魔女でなければ………

「ミナリア、お父様を悲しませないで」
 詭弁だ、愛していた父親を持ち出して盾にする。彼女をより苦しませる。それでも私は今の状態を放置できない。娘の腕をつかむと突然、教会のステンドグラスが大きな音を立てて崩れた。

 周囲が大混乱の中で、私を見つめるミナリアは、もう泣いていない。私を見つめている、私はどこか心の奥の方にある黒い感情を自覚した。それは恐怖だ。自分の子供にもそれを感じる? ミナリアだと感じる?

「奥様、お怪我はありませんか? 」
 私は下僕の腕に支えられながら教会から連れ出される。ミナリアは教会の中に一人で立っていた。

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「奥様、遺産分配の件です」
 家の遺産は全ては息子のリュカが受け継ぐ。それがこの国の決まりだ。私は書類にサインをしながら、ミナリアの事を考える。普通ならば嫁がせる家を探すのだが、魔女と言うだけで打診は全て断られていた。

 より下級の家に嫁がせる事も可能だが、彼女がどう扱われるか心配もある。どこにも行けないなら、この家に住まわせるつもりだ。夫が愛した彼女を放り出せない。扉が叩かれるとミナリアが顔を出した。

「お母様、私は学校に行きたい」
 ミナリアが魔法を覚えたいのは理解していた。しかしそれは許されない、彼女は危険な外の世界で暮らす事の困難さを理解していない。

「何回もお話しした通りです、嫁ぎ先を探しているので安心して」
 悲しそうな顔をするミナリアは、そのまま部屋を出て行く。

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