WsdHarumaki 2023/04/17 21:32

継母:美しい娘【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(31/50)

第七章 継母
第一話 美しい娘

あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に住む黒髪の少女レオノーアに出会う、呪いのために閉じ込められているレオノーアは、洞窟の封印の解除をミナリアに頼み、赤と青と黒の洞窟を攻略に成功する。

「ミナリア、落ちつきなさい」
 喪服の私は、激しく泣いている父親を亡くしたばかりの娘を慰める。自分も悲しいが感情に流されるわけにはいかない。息子が家を継ぐまでは私が家を管理しなくてはいけない。

「お父様! 」
 棺にすがりつき涙を流す。周囲から見ればどう見えるのだろうか? 悲しみも見せない私と対比して、ミナリアは全身全霊で感情を爆発させていた。私は恐れている。もしミナリアの力が暴走をしたら? 魔法は高度な呪文詠唱と集中力が必要だ。感情が乱れている最中は使えないのが普通。ミナリアは魔法は教えられていないが力を使えている。

 もし周囲に被害を与えたら…………

「もう椅子に座りなさい」
 ミナリアは私の手を払いのける。美しい顔は悲痛で歪んでいる、そこには憎しみを感じる。実の母親ではないから常に負い目を感じた。実の娘ならもっと彼女に愛情を与えられた? もっと厳しくレディーとして育てられた? 魔女でなければ………

「ミナリア、お父様を悲しませないで」
 詭弁だ、愛していた父親を持ち出して盾にする。彼女をより苦しませる。それでも私は今の状態を放置できない。娘の腕をつかむと突然、教会のステンドグラスが大きな音を立てて崩れた。

 周囲が大混乱の中で、私を見つめるミナリアは、もう泣いていない。私を見つめている、私はどこか心の奥の方にある黒い感情を自覚した。それは恐怖だ。自分の子供にもそれを感じる? ミナリアだと感じる?

「奥様、お怪我はありませんか? 」
 私は下僕の腕に支えられながら教会から連れ出される。ミナリアは教会の中に一人で立っていた。

xxx

「奥様、遺産分配の件です」
 家の遺産は全ては息子のリュカが受け継ぐ。それがこの国の決まりだ。私は書類にサインをしながら、ミナリアの事を考える。普通ならば嫁がせる家を探すのだが、魔女と言うだけで打診は全て断られていた。

 より下級の家に嫁がせる事も可能だが、彼女がどう扱われるか心配もある。どこにも行けないなら、この家に住まわせるつもりだ。夫が愛した彼女を放り出せない。扉が叩かれるとミナリアが顔を出した。

「お母様、私は学校に行きたい」
 ミナリアが魔法を覚えたいのは理解していた。しかしそれは許されない、彼女は危険な外の世界で暮らす事の困難さを理解していない。

「何回もお話しした通りです、嫁ぎ先を探しているので安心して」
 悲しそうな顔をするミナリアは、そのまま部屋を出て行く。

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