WsdHarumaki 2023/04/18 20:01

継母:追放【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(32/50)

第七章 継母
第二話 追放

あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に住む黒髪の少女レオノーアに出会う、呪いのために閉じ込められているレオノーアは、洞窟の封印の解除をミナリアに頼み、赤と青と黒の洞窟は攻略できた。

「奥様、お嬢様が庭の木を黒焦げに……」
 私はため息をつく、娘は昔から自由奔放で父親が亡くなってからは、自由度が上がったのかやりたい放題に見える。召使い達も恐れていた、ミナリアに悪意は無くても注意して報復されたらと考えて誰も近寄らない。

「娘はどこに居ます? 」
「自室に居られます」

 私は陽射しの暖かい廊下を歩きながら、魔法を扱える叔母に相談しようと考えていた。彼女のツテで魔法を使える娘に、抵抗が無い嫁ぎ先があるかもしれない。親の一番の幸せは子供が大きくなる事、そして子供達を支える事だ。この幸せをミナリアにも判って欲しい。母親の幸せを与えたい。

「ミナリア、いいかしら? 」
 戸を叩くと中から返事がする、私は戸ゆっくりと開けて驚く。娘が冒険者の格好していた。

「お母さん、注文してみたの、どうかしら? 」
 ミナリアはもう働くつもりだ。革製の無骨な服を着て重そうにしていた、かわいい少女がこんな格好で歩いていると思うと目眩がする。

「……速く脱いで」
「ダメですか? 」
 私は気持ちを落ち着かせる、みっともないと感じるのと同時に、娘は命のはかなさを理解していないのに驚く。貴族として生まれた奇跡を理解していない。庶民がどれほど大変なのかは、身近に居る使用人を見れば判る筈なのに、想像力が無い。他人の視点から自分の境遇を見られない。

「その服は私の方で処分するので、脱いで召使いに渡しておいて」
「…………私は冒険したいの、自由に野原を歩いて、魔法を使いたい! 」

 小さな男の子みたいな事を言う、私の息子はミナリアよりも年下だが、もっと大人と同じ考え方をする。もちろん息子には貴族の教育をして、家を継がせるための勉強もさせた。ミナリアにも淑女としての教育を出来れば良かった。私がそれを出来ないのは、継母としての負い目でしかない。そのためにミナリアが不幸になるのなら、それは私の責任だ。

「お話し合いは、何回もして無理だと結論を出しました」
「お母さんが命令しているだけじゃない! 」
 ミナリアは、大人しい良い娘だが、この時だけは、父親を葬儀の後で自制心が乱れていたのかもしれない。良い意味で夫の存在は、ミナリアに影響を与えていたが、今はそれも無い。

「働く事はできません」
「働ける、ちゃんと用意したの」
「働くのなら家を出る事になるのですよ? 」
 ミナリアが目に涙を浮かべる、大きな声で騒がないが彼女の場合は大泣きする癖がある、今回も同じだと考えた。私は娘に背を向けると部屋を出る。泣いている時に抱きしめると彼女は落ち着くが、結局は甘やかしているだけになる。

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「奥様、ミナリアお嬢様が屋敷を出て行かれようとしています」
 次の日の朝に使用人があわてた様子で報告する、私も急いでエントランスホール行くと使用人に囲まれたミナリアが屋敷から出ようとしていた、皆が恐れて遠巻きにしている。

「ミナリア、なにごとです? 」
「家を出ます」
 ずっと泣いていたのか目が赤い。どこに泊まるの? 私は急いで召し使いに金貨の詰まった革袋を持って来させた。ミナリアは受け取るとそのまま屋敷を後にした。きっと外の世界の厳しさを知り、すぐに戻ってくるだろうと予想をしていた。

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