恵夢字状/荒湯制作所 2024/03/05 07:12

パンドラの密瓶(5/)

 脱線した話をするのなら、ハヤトの行動は無駄足が多かった。そして、足を掬われることになる。
 逆に言うなら、現代は効率化を全面に打ち立てた焦りによって狂っているのだ。子供達が駆け回る砂利道は舗装され忙しそうにエコカーが往来している。時代の変化に取り残された者が路肩に車輪を取られリタイアしている。ミミズが運悪くアスファルトの上で干からびている。
「バカじゃないのか?」
 昭和が終わり、平成も終わり。令和が始まったといえども、社会は依然として真新しさに憧れる田舎人の行進で成り立っている。義父の云う「バカ」とは現実に戸惑いや疑念を感じる生き方への叱咤であった。それが、社会人が持つべき自身の価値を構築するための分担作業を黙々とこなす処世術の答えだった。
 頭が良ければ、大金を稼げるような職場で業務をこなして生計を立てられるはずだ。鼻を利かせて人付き合いに苦労したり、干されたり、急かされたりしない。本当の安定職に就けるはずだ。
 昭和の農民漁民の憧れ。平成の箱モノ市民の憧れ、令和のデジタルネットワーカーの憧れ。いくら社会が重要だと資金を注ぎ込んでも、家族を満足に養えない苦悩が存在し続けているのだった。
 人や土地や資金の貸し出す融通が効く側が勝者で、競争を強いられる側は敗けの挽回すらリスクの高い伸び代の乏しい将来を同業者同士で奪い合っている。
 汚れた環境を受け入れる度胸が必要なのか、環境改善に熱意を注ぐ誇りが必要なのか。バカに成りきれない愚か者がハヤトの実態だった。

フォロワー以上限定無料

キラキラ

無料

【 いや~んポロリ 】プラン以上限定 支援額:100円

吹きすさぶ風

このバックナンバーを購入すると、このプランの2024/03に投稿された限定特典を閲覧できます。 バックナンバーとは?

この記事が良かったらチップを贈って支援しましょう!

チップを贈るにはユーザー登録が必要です。チップについてはこちら

最新の記事

月別アーカイブ

記事を検索