【ホラー】近畿地方のある神事について(完結)【足裏○問】

 緋袴姿の三ツ花撫子が本当に幸せな笑顔を向けて俺に手を振った。

「ユウジ君、ホントに色々ありがとう! じゃあ、私たち、苦しみ抜いて立派に死んでくるね!」

 裸足の三ツ花が弾むような足取りで他の巫女たちの後に続き、特徴的な円形の建物の中へと入っていく。赤師眞子も一緒だ。

 ここは近畿地方の▓▓県の片田舎にある施設。ホムラ神事「蛆虫の巣」――、通称「裸足の巫女の最終処分場」のためだけに使われるものだ。俺は静川さんとの面談の後、三ツ花たちが探し求めていた「蛆虫の巣」の情報を彼女たちに伝えたのだ。そして、三ツ花たちを神社まで送り届ける役も買って出た。

 三ツ花からしてみれば、俺の妨害すら懸念していたわけだから、俺が豹変して協力的になったことはさぞ嬉しかったに違いない。

 彼女たちは昨日は神社に宿泊した。二十四歳の裸足の巫女たちが集まったわけだが、翌日、自分たちが苦しみ抜いて死ぬことが嬉しくて仕方なかったようで、どんな激痛が、どんな苦しみが待っているのか、どんな地獄を味わえるのかと、巫女たちはまるで女子中学生のように盛り上がっていたらしい。

「みんなでお互いの足裏の見せ合いっこしてたよ。私たちみんなの足の裏が今からグチャグチャに焼け爛れてゴミ以下の汚物になるんだと思うと本当に嬉しい!」

 今朝、三ツ花はそんなことを言ってキャッキャと喜んでいた。楽しそうで何よりだ。

「では、皆さんはこちらに起こし下さい」

 一方、俺たちは施設の二階席へと案内された。「蛆虫の巣」は非公開神事だが、巫女の恋人など、僅かな親近者にだけは観覧権があるようだ。巫女には日給が出るそうだが、俺たち観客には相応の寄付……実質的な観覧料が求められた。結構なお値段だった。

 だが、静川さんはこうも言っていた。

「蛆虫の巣は見る方もとっても楽しめると思いますよ。有堂さんも三ツ花さんが足の裏焼かれて苦しむ姿を生で見てみたいんじゃないですか?」

 それが三ツ花たちに情報を伝えることにした決定打の一つだ。三ツ花の苦しむ様は写真や動画でたくさん見たが、もちろん生でも見てみたいに決まっている。

 円柱の建物の一階部分に巫女たちが集まっている。俺たちの通された観覧席からはガラス窓越しに下の様子が見えた。地面には砂利が敷き詰められ、その上に巫女たちが裸足で立っている。真ん中には一本の柱があり、その柱から水平に棒が伸びていた。柱の上部は鉄パイプ製の円形と連結しており、円形から鎖に吊るされた手枷が下りている。メリーゴーランドのようなものを想像すれば近い。

「いやあ、とっても楽しみですねえ」

 俺の隣の席に座ったのは二十代後半の男性で、今日参加している裸足の巫女の彼氏なのだという。

「あ、ほら、あの子です」

 高藤と名乗った男性がガラス窓から下を指差した。ロングヘアーの清楚な感じの巫女が見えた。名前は水月静瑠(みなづき・しずる)というらしい。

「僕はホムラ神事の追っかけをやってて静瑠ちゃんと知り合ったんです。当時、静瑠ちゃんは二十二歳だったんですけど、二十五歳になるまでに絶対に神事で死にたい! って言ってまして。僕が最終処分場の噂を教えたら、絶対やりたい、探して欲しい、ってお願いされて、一緒に探してるうちに仲良くなって付き合うことになったんです」

 彼らもあらゆる手を尽くした末にようやくこの情報に辿り着いたという。静川さんの言葉を借りて言うなら、「本当に心の底から求めている巫女にだけ、蛆虫の巣が招いてくれるんです」ということなのだろう。これへの参加が許された時、二人は飛び上がって喜んだという。

「蛆虫の巣は簡単に死ぬことはできないそうですよ。苦しみに苦しみ抜いて、生き地獄を味わい尽くした末にようやく死ねるそうです。静瑠ちゃんが死ぬまで苦しむ姿が見れるなんて本当に楽しみです!」

 前のめりな高藤さんに俺は愛想笑いで応えた。俺は静川さんからこの神事の本当の目的を聞いている。でも、せっかくの期待を壊しては悪いので黙っておいた。

 一階では、今回の主役である処分予定の巫女が七人揃っていたが、そこに神主に連れられて明らかに年齢の若い巫女が一人入ってきた。その子が七人に向かってぺこりと頭を下げる。

「先輩の皆さん、はじめまして。本日、蛆虫の巣で現姫行を務めさせて頂きます、細道環奈(ほそみち・かんな)と言います」

 その少女がニコッと微笑むと、巫女たちが拍手で迎えた。細道環奈、有名人だ。俺もホムラ神事のことを漁っている間、その名は何度も見てきた。

 年齢は十七歳。「ラッキーガール」「神に愛された少女」「奇跡の巫女」などの異名を持つ。ショートカットのボーイッシュな少女で、九州地方の▓▓県の神社の養子。裸足の巫女となるべく育てられた生粋の裸足の巫女だ。

 それで何がどうラッキーなのかと言うと、彼女は十六歳の時に、アライワ記事にもあった▓▓村の神籤の火渡りに参加している。そこでクジ運に恵まれて、なんと二十六回もの火渡りを行ったという。アライワ記事にあった白神水緒の火渡りが十五回だったので、それを遥かに上回るとんでもない記録だ。

 環奈の足の裏は当然ながらむごたらしく焼き尽くされ、酸鼻を極めた。息も絶え絶えとなった環奈を心配し、神主は彼女を病院に緊急搬送しようとしたが、環奈は頑としてそれを拒み、毒油による伝統的な治療を望んだ。

 毒油を塗り込まれて、当然ながら彼女は悶え苦しみ、死の淵に立った。足裏も全治四ヶ月、皮膚移植なしでは絶対に治らないと医学的には判断されたが、奇跡的に彼女は生き残り、毒油だけの治療で足裏も二ヶ月後には綺麗に回復した。そして、足裏が治った直後にすぐに彼女は次の神事に挑み、また足裏を焼き尽くして死にかけた。

 わずか一年の巫女活動の間になんと三回も神事で死にかけており、生存を絶望視されるもその全てで生き残ってきた奇跡の巫女なのだ。神籤の火渡りのように運が絡む神事では常に最悪の結果を味わってきたが、もちろん環奈自身はそれを「超ラッキー」だと喜んでいる。

 そんな見事な実績もあり、ホムラ神事界隈で大型新人扱いされた環奈の人気は絶大で、三ヶ月前に行われた形代祓ではファンが殺到し、なんと三千九百本もの根性焼きを二日間に渡って味わい続けた程だ。

 その環奈が処分予定の巫女たちの前で嬉しそうにニコニコしながら言った。

「皆さん、蛆虫の巣をお楽しみにされていたのに長らくお待たせしてすいません。形代祓で受けた私の足裏の火傷が例年より遥かに重傷で、完治に時間が掛かってしまいました。てへっ」

 神事の追っかけ連中からは大人気の環奈だが、三ツ花も赤師も「でも、生意気でいけすかない子なんだよ」と言っていた。「世界で一番、自分こそが誰よりも足の裏をメチャクチャにできる、って思ってるんだもん」とのことだ。「ま、そんなところが可愛いんだけどね」とも彼女たちは付け加えていたが。裸足の巫女たちは環奈に対し、若き後輩への愛しさと、若さに見合わない実績の小憎たらしさ、その両方の感情を覚えているようだった。

「現姫行を勤める身として、皆さんが苦しみ抜いて死ねるよう、私が責任を持って導きたいと思います。もっとも、皆さんが死んだ後、誰よりも苦しみ抜いて死ぬのは私ですけどね!」

 環奈の言葉に巫女たちがカチンと来たのが空気で分かった。「あ、こういうところなんだな」と俺は直感的に理解する。

「環奈ちゃん、気持ちは嬉しいけど、ちょっといいかな」

 三ツ花撫子が頬を軽く引く付かせながら口を挟んだ。

「言っとくけど、一番苦しんで死ぬのは私だから」

 だが、それを聞いた他の巫女たちは聞き捨てならないとばかりに、

「え、私が一番ひどい死に方するんだけど?」
「何言ってんの。一番むごたらしく死ぬのは、わ・た・し!」

 と、よく分からない張り合いを始めた。環奈はそんな先輩たちのやる気溢れる姿を見てニコニコとしている。

「先輩たちのやる気が伝わって環奈もとっても嬉しいです。では、蛆虫の巣、みんなで楽しみましょう!」

 巫女たちは素直に「はーい」と答えて、そこから神事の準備が始まった。
 
 †

 神事の内容は巫女たちには伏せられている。おそらく現姫行を務める細道環奈だけには伝えられているのだろう。「当日までのお楽しみ!」と三ツ花もワクワクしていた。俺は静川さんから概要を事細かに聞いていたが、もちろん三ツ花には伝えていない。

 一階の中央に立てられた柱。そこから水平に伸びる棒の前へと環奈が立った。漫画などで見る、奴○が回す謎の棒のようなものだ。環奈が軽く棒を押すと、連動して柱の上部にある鉄パイプ製の円形が回った。その円形から吊り下がっている鎖と手枷も当然ながら連動して回る。処分予定の巫女たちはその動きを見て、何かを察したようだった。

 環奈を含む巫女たちは男衆から目隠しをされ、腕に点滴のようなものを刺された。点滴パックが括り付けられた背負子のようなものを各自が背負う。さらに環奈以外の巫女は吊り下げられた手枷で両手を縛られた。この点滴の意味も俺は静川さんから聞いている。

「点滴は一つには栄養補給。蛆虫の巣をやってる間は水分補給だけで、食事は一切出ないから。生きるために必要な栄養は全部点滴」

 それともう一つ。

「後ね、あの点滴に入ってる特殊な薬品で聴覚と嗅覚が麻痺するの。昔の神事では団子とかにして経口摂取してたみたいだけど、今では点滴。全く聞こえなくなるわけじゃないんだけど、すごくボヤッとした音になって意味は全然聞き取れない。悲鳴だけは聞こえるし分かるんだけどね」

 つまり、巫女たちは目隠しで視覚を塞がれ、薬品で聴覚と嗅覚を塞がれた状態で、この神事を行うことになる。当然、何をするのか、彼女たちに説明は一切与えられない。

「唯一された説明は終了条件だけ」

 と静川さんは言っていた。

 男衆が肩を押さえて巫女たちを膝立ちで座らせた。環奈と処分予定の巫女たち、計八人の可愛らしい十六の足裏が晒される。そして、男衆が穂群灯……煙草に火を付けて、傷ひとつない真っ白な足裏に、一本ずつ、しっかりと煙草の火を押し付けていく。

 うっ、とか、あっ……、とか、可愛らしい呻きが巫女たちの口から漏れる。静川さんはこう言っていた。

「何をされるか分からないけど、もちろん何をされてもいいと思ってるし、足の裏に痛みが走った時はそれはもう嬉しかったです。あ、これ、根性焼きだ、やった! って。だって形代祓では、私、たったの百本しか根性焼きしてもらえませんでしたから。二千本以上、根性焼きされてた水緒ちゃんが羨ましくて仕方なかったんです。しかも、今回は私が死ぬまでやってもらえるわけですから……一本一本しっかり痛みを味わってましたよ」

 巫女たちの足裏にどんどん煙草が押し付けられていく。当然だが、俺は三ツ花の足裏ばかりを見ていた。三ツ花の足裏に火傷が刻みこまれ、彼女の口から噛み殺した悲鳴が漏れる度に俺は嬉しくてたまらなくなる。

「いやぁ……静瑠ちゃん最高にかわいいな。巫女が足の裏を焼かれて苦しむ様って本当に最高ですよね」

 隣の高藤さんも感慨深げにそう呟いている。俺も同意して頷き、三ツ花の憐れな姿を脳裏に焼き付けようとする。

 片足ずつ百本、両足合わせて二百本の煙草が押し付けられたところで根性焼きは一時終了となる。鎖が巻き上げられ、処分予定の巫女たちの手枷が吊り上げられていき、巫女たちは強○的に立ち上がらされる。バンザイの格好で巫女たちが立ち上がると、

「ひいッ!」

 神主が環奈の足裏に鞭をふるい、環奈が甲高い悲鳴を上げた。それを合図に環奈がふらふら立ち上がる。環奈の手を取った神主が、環奈に棒を握らせた。環奈がその棒を押し始める。

 環奈が棒を押すと、連動して柱の上部の円形が回り始め、処分予定の巫女たちを縛る手枷も動き、巫女たちは歩くことを余儀なくされる。片足ずつ百の火傷が刻まれた素足の足裏で、砂利の敷き詰められた地面の上を歩き始めると、当然ながら巫女たちから、さっきよりも痛ましい呻きが漏れ始める。ここからが蛆虫の巣の本番だ。俺は処分予定の巫女たちを笑顔で見下ろしながら、静川さんの言葉を思い出した。

「現姫行を務める巫女が棒を押して歩き続ける限り、鎖と手枷に繋がれた私たち巫女もずっと歩かなくちゃいけないの。現姫行を務める巫女はホムラ姫様の顕現なのね。要するにホムラ姫様が直々に顕現して、巫女たちが死ぬまで一緒に足裏苦行をしてくれる、ってわけ。だから、現姫行の巫女は、処分予定の巫女が全員死ぬまで棒を押し続けて、最後に自分が死ねばそれが理想なの」

 現姫行を担当する細道環奈の責任は重大だ。なにせ、ここに集まっている巫女たちはみんな今回の神事で苦しみ抜いて死ぬことを目的としている。そんな彼女たちを満足させる……つまり、全員をきっちり殺し切らなければならないのだ。

 環奈は足裏に刻まれた二百の火傷を気にする素振りなど一切見せず、一時間以上も歩みを止めずに棒を押し続けた。処分予定の巫女たちは少なからず呻きや悲鳴を漏らしているが、環奈は口元をニヤニヤさせてずっと嬉しそうにしている。自分が今から処分予定の巫女たちを命がけで殺すのだという使命感に燃えているのかもしれない。

 そうして、二時間が経過すると神主が環奈を止めて、巫女たちを吊り上げていた鎖も緩んだ。巫女たちが痛みに呻きながら膝を下ろすが、これは断じて休憩時間などではない。煙草を持った男衆が巫女たちの足裏に集まってきた。

「二時間に一度、片足に百本ずつ、計二百本の根性焼き。二時間頑張って歩いた私たちへのご褒美ってところね。うふふ! 思い出したら私も嬉しくなってきちゃった!」

 静川さんは当時を思い出しながら楽しそうにケラケラ笑っていた。

 足裏に根性焼きのおかわりをもらった巫女たちは本当に嬉しそうだった。みんな、思い思いに悲鳴を上げ、泣き崩れていく。火傷した足裏を二時間も砂利道で削られ、さらに根性焼きを重ねられる。その苦痛は筆舌に尽くしがたいだろうし、この後の砂利道はさらに悲惨なものとなるだろう。

 現に、四百本の根性焼きを味わった巫女たちの、それからの歩みは格段に痛々しさを増した。呻きや悲鳴は押さえられるものではなくなり、大声で泣き出す者も現れ始めた。そんな中、環奈はなおもニヤニヤとした笑みを口元に浮かべて、止まらずに棒を回し続ける。三ツ花から漏れる悲鳴の悲痛さが俺も嬉しくて仕方ない。今、彼女の味わっている苦痛を思うと、そして、これから彼女が味わう地獄を思うとたまらない気持ちになる。

 静川さんはこうも言っていた。

「蛆虫の巣はね、本当に素晴らしい神事なの。裸足の巫女ならみんな憧れると思うよ。だって、蛆虫の巣には足の裏の痛み以外、何もないの。真っ暗な世界で、何も見えず、何も聞こえず、何の匂いもなく、ずーっと、ずーっと、足の裏の痛みだけを味わい続けるの。そんなの裸足の巫女なら嬉しいに決まってるでしょ? 足の裏の痛みにだけ集中できるんだから。それにどんなに痛くても苦しくても、現姫行の巫女が止まらない限り、私たちは絶対に逃げられない。最高だよね、そんなの」

 それからも二時間に一度の根性焼き二百本を挟みつつ、巫女たちは砂利の上を火傷した足の裏で無意味にぐるぐる歩き続けた。何の意味もなく、ただ、苦しむためだけに、同じ場所を延々と回り続けた。

 後半になると、流石に環奈の歩みも遅くなり出した。その度に神主が環奈の足裏に鞭を振るって励ます。その鞭の甲斐あってか、前半はあんなに楽しそうだった環奈が後半ではどの巫女よりも苦しそうな顔で呻き、悲鳴を上げるようになった。

 一方、俺たちの観覧席には夕食の幕の内弁当が配られた。三ツ花たちの苦しむ姿もおかずにしながら、俺たちは弁当をつついた。うまい。安い弁当屋の幕の内ではない。これは専門店の味だ。

 夜十時になり、それぞれの巫女の足裏に計千本の火傷が刻み込まれたところで、巫女たちを縛っている鎖が緩み、全ての巫女が砂利の上へと倒れ伏した。環奈も足裏に鞭を一発叩き込まれ、転げ回って苦しんでいるところを踏みつけられて砂利の上へと寝かされた。環奈への合図は全て足裏への鞭で行われるようだ。

 一日の終りに関しても、俺は静川さんから聞いていた。

「蛆虫の巣は毎日千本の根性焼きと砂利道を十時間。それだけ。後は朝まで休憩。蛆虫の巣は裸足の巫女に最大限の苦痛と本当の生き地獄を与えるためのものだから、そんな簡単に死んだりできません。何も見えず何も聞こえず、足の裏の痛みだけしかない世界を、きちんと休憩しながらずーっと味わい続けるの」

 休憩時間とはいえ、火傷し、砂利道で延々と削られ続けた巫女たちの足裏の痛みは尋常ではないのだろう。環奈を含む全ての巫女が砂利の上で呻きながらもがき苦しんでいる。その様を上から見ると、まさに蛆虫が地面を這い回るかのようなおぞましい姿だ。

「いやあ、すごく壮観で目の保養になりますね。静瑠ちゃんもとっても辛そうで笑顔になっちゃいますねえ」
「良いですよね。でもまだ一日目ですからね。彼女たちの地獄はまだまだ続きますよ。高藤さん、有給はしっかり取ってきました?」
「ええ、一応、十日で申請してますが、なんなら仕事辞めてでも最期までしっかり見ますよ。途中で見るの止めて帰ったりしたら静瑠ちゃんが激怒しちゃいますし。私が死ぬところ最期まで見届けてね、って言われてますし、僕も見たいです」
「ですよね。俺も最後まで見届ける予定です」

 俺たちには夕食後のデザートとしてプリンとトロピカルフルーツジュースが配られた。観覧席は安くなかったがサービスが行き届いている。

「静瑠ちゃんたちはご飯どうするんですかね?」
「ああ、今、点滴してるじゃないですか。ご飯はあれですよ」
「あ、なるほど」
「せっかく目隠しして聴覚も嗅覚も麻痺させてますからね。今、彼女たちは足裏の痛み以外の一切の感覚がない状態なんです。食事とかで味覚を刺激するべきじゃないですから」
「そうですね。足の裏の痛み以外、一切与えるべきじゃないですもんね。よく考えられてるな」
「感心しますよね」

 俺たちがプリンを食べ終わった後も、巫女たちは砂利の上で苦しみ、もがき続けている。男衆が巫女たちのオムツを交換し、体の上から毛布をかけたが、すぐに寝られそうな巫女はいない。みんな痛みに呻き続けている。

「じゃあ、俺たちもそろそろ寝ますか」
「そうですね。静瑠ちゃんもまだ死なないだろうし」
「死にそうになった時にウトウトしていたら失礼ですからね」
 俺たちはシャワーを浴びた後、観覧席に用意されたふかふかのベッドへと向かった。見守る方も長丁場だ。

 †

「ギぃゃあああああッッぁ!」

 二日目は巫女たちの絶叫で始まった。

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