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キャラ日常話の記事 (12)

TNG 2023/12/18 18:49

キャラクターの日常07

【ある探索前の風景】


「ただいま~と言っても、誰も居ない~♪」

帰宅したボクは、おかしな歌を歌いながら
2階の自室へと向かう。

今日、お父さんは仕事で遠くに行くって言って
いたから、今夜は一人ぼっち。
こんな日は稀にあって、小さい頃は不安だった
けれど、今や立派なレディに成長したボクは
全然平気だ。
まぁ、テレビで怖い番組を見ちゃった日や
雷の日はちょっとだけ怖いけどね。

手早く制服を脱いで、ポールハンガーに
掛けてあるハーフパンツを手に取る。
布地が硬すぎず動きやすい一品だ。
キャミソールの裾を入れてチャックを上げ、
大きなボタンで留める。

(そういえばこれって、小学生の頃から
 履いているような?)

腰回りが普通に入るのは嬉しい事なのか、
あれから全く成長していない証なのか、
少し考えてから気にしない事にする。

次に淡い黄色の半袖ブラウスを手に取り
袖に腕を通す。
これは生地が薄く、暑くなってきた初夏の
今日この頃でも涼しく過ごす事ができる。

(あ、肩の所が少し解れてる)

前のボタンを留めながら考える。
多分、この前茂みの中に入った時、
枝にでも引っ掛けたのだろう。

(帰宅したら縫わなきゃだね)

今度は赤いネクタイに手を伸ばす。
短めのこのネクタイは、ブラウスを着る
時はいつも締めている。

(飛び跳ねた時に、パタパタするのが
 何だか好きなんだよねぇ)

すっかり締め慣れたネクタイの形を整え、
身体を捩って服の状態を眺めて問題が
無い事を確かめる。
そして最後に帽子を目深に被った。
これはお父さんからの誕生日プレゼントで、
とても気に入っていて、外へ出かける時は、
いつも被っている。

「良し、行こうか!!」

もう一度、全身を確認してから、鏡の中の
自分に言う。
まずは、駄菓子屋のお婆ちゃんの所へ行こう。
それでまだ猫の菊ちゃんが帰ってきて
いなかったら、早速探しに行こう。
居なくなってから、もう三日目だから、
お婆ちゃんはかなり心配している筈だ。
早く見つけて、安心してくれたら嬉しい。

「じゃあ、行ってくるねぇ~」

ベッドボードのぬいぐるみ達に手を振りつつ、
ボクは部屋のドアを開け、探索活動に出かけた。

(…………あはは。
 リュックを持っていくのを忘れてたよ)

もう一度階段を駆け上がって部屋に戻る。
ボクの忘れっぽい癖は、まだまだ直りそうに
なかった。


キャラクターの日常の7作目です。
いよいよ、ゲームの姿でおでかけ開始です。

ここから猫探しゲームを作るのも良いかも
知れませんね。
でも、とりあえず今は、作っているゲームを
完成させなくては……。

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TNG 2023/11/17 23:57

キャラクターの日常06

【ある終礼後の風景】


「じゃあ、気を付けて帰れよ~」

そう言い残し、担任教師が教室を出ていく。
隣を見ると、波流香ちゃんがいそいそと
鞄に教科書を入れて帰り支度をしている。

「今日も猫探し?」
「うん!!」

私の問いかけに、手を止めずに頷く彼女。

「駄菓子屋のお婆ちゃん、すごく心配して
 いるから、早く見つけたいんだ」

全て詰め終わったらしい鞄を背負いながら、
こちらを向いて笑顔で答える。
やっぱり、波流香ちゃんは優しいなぁ。

「そうなんだ……。でも、気を付けてね?」
「え?何に?」

笑顔のまま問いかける彼女。
言われて、私は考える。
何故、こんな事を言ったのだろう?
一日中ドタバタしていた彼女の行動に不安を
覚えた?
いや、それは今日に限った事じゃない。
それに心配はいつもしている。
でも今日の、この気持ちは何か違う気がする。
何だろう?漠然とした不安というか……。

「えっと、大丈夫?」

気が付くと、彼女が私の顔を心配そうに
覗き込んでいた。
つい、考え込んでしまっていたようだ。

(ああ、やっぱり可愛いなぁ)

心配そうな波流香ちゃんの顔を見つめ、
そんな感想を抱く。

「うん、ちょっと考え込んじゃった。
 とにかく、色々な事に気を付けてね?
 危ない場所に入っちゃダメだし、
 知らない人に付いて行っちゃダメだよ?」

自分で言っていて「私はお母さんか!?」と
思ってしまう。
鬱陶しいと思われてしまっただろうか?
でも、彼女は……。

「うん、気を付けるよ!!
 心配してくれて、ありがとうね!!」

いつも、そうやって笑顔を返してくれる。
そんな彼女が、本当に大好きだ。

「じゃ、行ってくるね」

そう言って笑顔で手を振る彼女に、
また不安な気持ちが込み上げてくる。
どこか遠くへ行ってしまって、もう二度と
会えないような……。

「あ、待っ……」

私は思わず手を伸ばしたが、それに
気付かない波流香ちゃんは嬉しそうに
教室を出て行ってしまった。

残された私は再び考える。
この気持ちは、本当に何だろう?
胸が苦しいというか、嫌な気持ちが
込み上げてきて止まらないというか。

……予感?
そうだ。これは、悪い予感だ。

「コラッ、廊下を走るな!!また穂樽か!!」
「ひゃっ!!ごめんなさい~~!!」

遠くで波流香ちゃんがまた怒られている。
でも、そんないつもの事じゃなくて、
何かもっと悪い事が起きそうな、
そんな予感がするのだ。

今から追いかけて、彼女を引き止める?

「悪い予感がするから、今日は家で
 大人しくしていて」

そう伝えれば、不審に思いながらも
波流香ちゃんは従ってくれると思う。
だけど、絶対、変に思われる。
それに明日、この気持ちが治まっている
保証も無い。
今後、同じ気持ちになる度に引き止める
なんて出来ない。

そんな感じでウジウジと悩んでいたら、
いつの間にか教室には私一人だけ
取り残されていた。

(……帰ろう)

ゆっくりと深呼吸を数回繰り返して、
気持ちを落ち着かせ、帰り支度を
手早く済ませる。

ふと、隣の席が視界に入る。

「波流香ちゃん……大丈夫だよね?」

呟いてみるが、私の不安な気持ちは
消えそうになかった。


……何故だろう?
前回の内容を実践した結果、ハルをどうやって
描いていたかが分からなくなってしまいました。

「キャラクターの日常02」と並べて見ても、
完全に別人になってしまっています。
ちょっと3Dポーズ人形から見直す必要が
ありそうかも?

さて、この「キャラクターの日常」シリーズは、
ゲームが始まる直前の風景となっています。
つまり、今回の主観(コケシちゃん)が感じて
いる予感は、的中してしまう事となります。

それが杞憂で済むのか否かは、ゲームの
エンディング次第となります。

明日もまた、いつもの「日常」が続けられると
良いですね。
(心にも無い事を……)

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TNG 2023/10/19 11:06

キャラクターの日常05

【ある終礼前の風景】


今日の授業が全て終わり、終礼前の僅かな
休み時間。
私がお手洗いから教室へ戻ろうとしていた時、
階段の踊り場から声が聞こえたので、
何気なく覗き込んだ。

そこにはハルちゃんと、クラスの男子が1人
立っていた。
いつもハルちゃんにちょっかいをかけている
男子で、またやっているのかと思い、
そっと聞き耳を立てる。

「だからな、ハル。その、もう少し色々気を
 付けろって」
「そうかなぁ?ボク、これでも色々気を付けて
 いるつもりなんだけれどなぁ」

ああ、そちらでしたか。
あの男子はハルちゃんが大好きな癖に、
それを自覚していない。
だけど周りの男共にハルちゃんがエロい目で
見られるのは許せなくて、本人に注意を
促している……そんな所か。

私は興味を無くして踵を返したが、
ハルちゃんの言葉に足を止める。

「ほら、スカートが捲れても良いように、
 いつもハーフパンツだって履いてるし」

あ、この流れは……ダメな奴だ!!

私は急いでハルちゃんに駆け寄る。
案の定、ハルちゃんは両手でスカートを
持ち上げようとする所だった。

その上がっていく右手は
何とか押し止める事ができた。
左手も止めなきゃとソチラを見ると、
コケシちゃんがその手を止めている。

流石、コケシちゃん。
……あれ?
アナタ、どこに居たの?

「波流香ちゃん、ダメだよ」
「え?何が?」

ハルちゃんはワケが分からないといった
感じで私とコケシちゃんを交互に見ている。

男子は、そっぽを向いていたが、
耳が真っ赤になっていた。

これは……見ちゃったな?

「……スクワット100回」

コケシちゃんが呟くと、男子は姿勢を正し、

「イエスッ、マムッ!!」

そう言い残して教室へと走っていった。
何?この2人……。

気を取り直し、私はハルちゃんの目を見て、
静かに語りかける。

「ねぇ、ハルちゃん。朝にさ、女の子は
 こういう事しちゃダメって言ったよね?」

私の口調に少し動揺した様子を見せながらも、
ハルちゃんが反論してくる。

「でも、ハーフパンツ履いてるし、
 見えないから大丈夫だよ?」
「履いてるの?」
「……え?」
「3限目の体育でハルちゃん、
 転んで砂だらけになってたけれど、
 そのハーフパンツ、まだ履いてるの?」

私の問いかけにハルちゃんはしばらく
固まって、それから捲り上げたまま止まって
いた両手を勢いよく下げてスカートの前を
パタパタと直した。

「それに、見える見えないじゃなくて、
 スカートを自分で捲り上げる事が
 女の子としてダメなんだよ?」

茹でタコみたいに真っ赤になった
ハルちゃんは、素直にコクンと頷く。
何だかとても可愛らしい。

「ふぅ……。
 本当に~、気を付けてねぇ〜」

私は溜息を吐いてから、いつもの口調で
もう一度だけ注意を促しておく。
私の真面目モードは、長続きしないのだ。

「波流香ちゃん、教室に戻ろ?」

コケシちゃんに促され、私達は廊下を
歩いていく。
そして教室に入る直前、

「ありがとうね」

ハルちゃんに、遠慮がちな笑顔でお礼を
言われた。
ホント、可愛いなぁ。

「ふふ。い〜よ〜」

教室に入ると、さっきの男子が超高速で
スクワットをやっていた。
ホント、何なの……?


キャラクターの日常の5作目です。

今回は、キャラクターの日常02でちょっと
出てきた、ノンビリ口調の女子生徒視点です。

普段はノンビリ話しているけれど、
何かあると普通の口調になります。

髪の色を何色にしようか迷いましたが、
まぁ、アニメキャラ的に暗い緑色に
してみました。

それにしても、コケシちゃんが、だんだん
人間離れしてきている気がします。

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TNG 2023/09/28 23:21

キャラクターの日常04(一部修正)

【あるお昼休みの風景】


『キーンコーンカーンコーン』

ようやくチャイムが鳴り、長かった4限目の
授業が終わる。

社会科のハゲが、やけにゆっくりした動作で
広げた教材を片付けるのを尻目に、俺は全速力で
駆け出した。
目指すは購買のコロッケパンだ。

食べごたえのある大きさ。
ソースの染みたコロッケ。
シャキっと新鮮なレタス。

どれをとっても最高で、急がなければ
アッという間に売り切れてしまう人気商品だ。

「なぁ、ホタルの……見た?」

そんな言葉が耳をかすめ、階段手前のトイレ横で
足を止める。
それは、洗面所で手を洗っている、別クラスの
男共の話し声だった。

「え?うん……見ちゃったよ」
「ブラ、白だったな」

トイレに入り、小便をするフリをする。
そんな俺に気付かず、男共は話を続けた。

「穂樽さんって、ワリと隙だらけだよねぇ」
「そうそう、この前も、もうちょっとで
 パンツ見えそうだったぜ」
「ホント?」

その話の内容に、何故だか俺は無性に苛つきを
覚える。

「今度さ。穂樽を呼び出して頼んでみようぜ?」
「何を頼むの?」
「あいつ、何かチョロそうだし、頼み込めば
 パンツくらい見せてくれそうじゃね?」
「はは、流石にそれは無理じゃない?まぁでも、
 それなら僕は隠れて動画撮るよ」

もちろん、それが本気じゃない事くらい、
分かってはいた。
だけど、どうしょうもなく苛々してしまい、
俺は、また、やってしまった。

「おい、根暗共。ハルに何かしたら、タダじゃ
 おかねぇぞ?」
「え……」

二人が驚いたようにこちらを見て、ヤバイと
いう顔をして俺から離れようとする。
そんな二人の肩に両腕を回して警告する。

「いいな?冗談でも二度と言うんじゃねぇぞ?」
「う、うん。ゴメン」
「分かったって」

コクコクと首を縦に振りながら答える二人を、
もう一睨みしてから解放する。

(はぁ……俺は何をやってんだろな。
 コロッケパンは……もう無理か)

そんな事を考えながら、慌てた様子で走り去る
二人を溜息ながらに見送った。

ハルと俺は、小学四年生からの付き合いだ。
転校してきた俺に、何の遠慮も無く話しかけて
きたのが始まりだった。
ちなみに制服着るまでは、ずっと男だと思って
いた事を、本人にはまだ言ってない。

まぁ、俺だって年頃の男だ。
人並みに女に興味はあるし、エロいのだって
色々見てる。
だが、ハルにそれを求めるのは、何か違う
ような気がした。
何が違うのかは……分かんね。
まぁ、いいや。それより昼飯だ。

美味いパンがまだ残っている事を祈りつつ、
俺は購買へと歩き出した。


かくして、奇跡は、起きた。

最後に1個だけ残ったコロッケパンを手に、
俺はホクホク顔で教室に戻った。

ふと、視界にハルの後ろ姿が映る。
コケシと机を合わせて弁当を食べているようだ。

さっきの事を思い出し、もう少し気を付けろと
言ってやろうと近付いた。
しかし……。

「おい、ハル……って、どうした!?」

俺の声に振り向いたハルは、フォークを咥えて
涙を流していた。

まさか、さっきの男共に何かされたか?
それとも、別の野郎か?

にわかに殺気立つ俺の気なんか知らず、
ハルが呑気に呟く。

「おいひぃ」
「は?」

聞けば、寝坊で朝食を抜いて走って登校して、
3限目の体育で走り回り、腹が減って減って
仕方がなかったそうだ。
それで、弁当を食った感動で涙が出てきた
とか何とか。
馬鹿らしい。

「はっ。お前が作った弁当が、そんなに美味い
 ワケねぇだろ」
「ムッ!?」

安心して自然と出た軽口に、怒った表情で唸る
ハル。
続けて何か言おうと開いた俺の口に、無理矢理
何かが捩じ込まれた。

「んぐっ、てめぇ何しや……が……」

口の中に広がる味に、俺は言葉を失ってしまう。
絶妙な焼き加減の、ふわふわ卵。
噛むと口全体に広がる、出汁の味。
それは今まで食べた中で、間違いなく最高の
出汁巻き卵だった。

「美味い……」
「でしょ!!」

思わず口を出た素直な言葉に、ハルは勝ったと
言わんばかりの笑顔を向ける。
いや、完全に、俺の負けだ。
これは、本当に美味い。

「お前、凄いな」
「へへへ、ボクは料理も天才的だからね」

笑顔が少し照れたような感じに変わり、
更にもう一つこちらへ渡そうとしてくる。

「いや、良いって。お前、腹減ってんだろ」
「あ、そうだね。じゃあ、今度またあげるね」
「おぅ、また頼むわ!!」

そう言って席に戻ると、俺はコロッケパンの
封を開けて口に運んだ。
先程の出汁巻き卵を食ったせいか、楽しみに
していたコロッケパンは少々味気なく感じた。

もう一個、断らずに食うべきだったか?
いや、あのまま居たら、横でずっと睨んでいた
コケシに殺されてたな。

ってか、あいつ、怖ぇよ。


息抜きの4作目になります。

今回は友人の男視点。
こうやって、色々な視点から主人公を見ると、
またキャラに深みが出たりするのかなぁ?
なんて考えたり考えなかったり。

描く度に外観が変わっていく気がする主人公
少女。そして奥のコケシちゃん、ちょっと
怖くしすぎた感がありますかね。

(追記)
諸事情により、内容を一部修正しました。

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TNG 2023/09/16 02:49

キャラクターの日常03

【ある体育授業中の風景】


今日も絶好調で輝く太陽の元、私の班は
交代で休憩に入っていた。
木陰に座って飲む水筒のお茶が、冷たくて
美味しい。

コップに口を付けてチビチビやりながら、
他の班の様子を眺める。
男子と女子で分かれ、二人一組になって
背中合わせで交互に身体を背負っている。
「担ぎ合い」という名前らしい運動をする
その中で、何となく短髪の彼女に目が
止まる。

「あはは!!
 こうしていると、空がよく見えるねぇ~」

オカッパ髪の幼馴染に背負われて、のんきな
セリフを口にしている彼女の事を、私は少し
苦手だと感じている。

天真爛漫で、誰にでも優しくて、困った人が
居たら率先して助けようとして。
でもドジで、調子に乗りやすくて、男子達
からの目に無頓着で。

今朝だって、スカート全開で登校して
きたし、見ているこっちがハラハラする。
彼女は可愛いし、小さいけれど何だか
目立つのだから、もっと警戒するべきだと
常々思っている。そんな彼女の無防備な
行動がいつも目に付いてしまい、正直、
とても疲れる。

「あ、飛行機雲発見!!」

今も相方の背中の上で騒いでいるけれど、
下にいる子が今にも崩折れそうになって
いる事に気が付いていない。
また、何だか嫌な予感がする。

(あ、バランス崩した)

「わわ、フラフラしてるけれど、
 大丈夫!?」
「もう……ダメ……みたい……」
「ごめんね?とりあえず降りるから……って、
 うわわ!!」

(ああ、そんなに動いちゃダメだって!!)

自分を支えている子がフラフラ動き出し、
何とかしようと身体を動かして状況が
悪化し、そしてあっけなく崩れた。

「ふぎゃっ!!」

どちらが発したかは分からないけれど、
珍妙な声が響き、周囲の注目が集まる。

倒れた彼女の姿を見た私は、急いで立ち
上がり駆けつけながら叫ぶ。

「ハル!!前、隠して!!」
「痛たたぁ……。え?何?」
「いいから!!シャツ、捲れてるって!!
 見えちゃってるから!!」

私の声に、彼女は自分の胸元に視線を
落とし……。

「ひゃあっ!!」

ガバッっと起き上がると、両手で胸元を
抱きかかえるように押さえ、それから
シャツの裾を掴んで腰まで引き下げた。

ようやく側に辿り着いた私は、とりあえず
周囲を睨みつける。それと同時に男子共が、
一斉に不自然な動きでサッと横を向く。
深い溜息を付いてから、蹲ったまま真っ赤な
顔をしているハルに問いかける。

「アンタ、キャミソールはどうしたのよ?」
「え、あ、あはは。暑いから脱いじゃった」
「もう、この馬鹿ハル!!」
「ううっ、ごめんなさい……」

シュンと俯く彼女。

「本当に、もう少し気を付けなさいよ」
「ハイ……。気を付けます」
「で、いつまでその子の上に乗っている
 つもり?」
「え?あっ、上に乗っちゃっててゴメンね?
 ……えと、あれ?大丈夫?」

何故か四つん這いで移動する彼女。
そして、倒れたまま、いつまでも起き
上がらない相方に、彼女が少し心配そうに
問いかける。
彼女側からは見えなかったのだろうが、
その子は乗られている間、何故かとても
幸せそうな顔をしていたから大丈夫だ。

ふと彼女が、地面に書かれた文字に気付いて
声を上げる。

「これはダイニングメッセージ!?
 犯人は……ボクだ!!」
「ほら、アンタも馬鹿な事やってないで、
 さっさと起きなさいよ」
「委員長の言う通りだぞ~?
 そろそろ授業、再開させてくれぇ~」

いつの間にか近くに来ていた体育教師兼、
担任の教師が、少し泣きそうな声を出す。
朝に引き続き、本当にお疲れ様です。

「お前ら、ふざけてやってると本当に怪我
 するぞ?」
「「はい、スミマセンでした!!」」

担任の少し真面目な声のトーンに、二人は
サッと立ち上がって頭を下げる。

「ああ、それとな、穂樽」
「はい?」
「それはダイニングメッセージじゃなくて
 ダイイングメッセージ、な?」
「あ……あはははは……」

彼女達を担任に任せ、休憩を再開すべく歩き
出した私は、後ろから駆け寄ってくる足音に
気付いて振り返る。何となく予想がついては
いたけれど、そこにはやはり彼女が居た。

「……何?」
「えっと、さっきは本当にありがとね」

彼女に礼を言われ、私はもう一度深く溜息を
吐き出して、それから彼女の頭に手を置き、
その柔らかい髪を優しく撫でる。

「本当に、気を付けなさいよ?」
「うん!!」

とても良い笑顔で返事をする彼女に、
私は何だか母親か飼い主にでもなったような
気持ちになる。

「じゃあね〜」

手を振って走って戻る彼女を見送る自分が
笑顔になっている事に気付き、私は両頬を
2回、軽く叩いた。
いつもこちらのペースと気持ちを乱して
くる彼女の事を、私は少し苦手だと感じて
いる。


主人公の日常の第三弾です。

今まで、同一人物を何回も描くといった
経験がほぼ無い為か、毎回違う顔になって
しまいます。
同一人物である事を、自分はどうやって認識
しているのだろう?
調べてみると目・鼻・口のサイズと位置も
さる事ながら、眉毛と目の幅も結構重要ら
しい。
現実世界で、メガネを掛けられたり髪型を
変えられたりすると、同一人物と判断する
のが難しくなってしまう自分には、同一
人物を描く事自体が難しいのかもしれない
なぁ……。

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