逆神ラニ/D2T 2023/12/06 11:10

未来になれなかったあの夜に

https://www.youtube.com/watch?v=IDcxxXCO_mg

約18年前、大学3年の秋に参加した同人誌の即売会。
その日を最後に僕は創作活動を辞める事を決心しました。


中学3年で「ロードス島伝説」を読んで小説家を志し、18歳の冬に月姫と出会い同人業界の未来と可能性に魅入られました。
高校卒業の直前に同人小説の製作に取り掛かり、初めて即売会に参加したのは大学1年の5月。
ジャンルはいわゆる「型月」と呼ばれるTYPE-MOON作品の2次創作。
若気の至りとはよく言ったもので、この時の僕は自身の才能への過信と妄信に溢れていました。

「同人誌作成をきっかけに、ライトノベルデビューやゲームのシナリオライターになってやるんだ!」

当時は本気で思っていました。
とはいえ、勿論現実はそんなに甘くありません。
初めて参加したイベントでの販売部数は4部。今でもこれははっきりと覚えています。
一度のイベントで最も多く売れたのは大学2年の夏コミで14部。
前後で参加したイベントでも1回あたりの参加で、1桁の販売で終わる事が殆どでした。

ただ有難い事に、イベントに参加さえすればごく少数でも手に取って頂ける方達がいた。
これは非常に嬉しいことでした。
同じく極々少数ではありますが、感想のメールやHPの掲示板にありがたい言葉を頂ける事もありました。

活動当初に抱いた過信・妄信は打ち砕かれていましたが、こうした事は活動をする上での励みに大いになっていました。

そして大学3年の秋、それまで行っていた型月の二次創作から離れて「創作」ジャンルでの参加を決意しました。

ジャンルの枠に頼ることなく、自身が一から考えた一次創作で作品を発表したかったのです。そして短編を何本か合わせた創作小説の短編集を制作しました。
これらの話の内容や出来にはとても大きな自信を持っていました。

しかしながら結果は相反するものとなりました。
開場してから閉場するまでの数時間、只の誰一人もスペースに足を止めてくれる事はありませんでした。
手に取っての立ち読みも勿論ありません。

多くの自信・情熱・資金をつぎ込んで製作した同人誌でしたが、人の手に渡ったのは挨拶で交換した両隣のサークル様と見本誌として運営に提出した分のみでした。

イベントに参加して頒布数が0で終わる、活動して初めての事にショックを受けました。
そして

「ジャンルの後押しの無いお前の作品なんぞ無価値なだけだ」

そんな声に後頭部を強く殴られた気がしました。

折しもこの時の「大学3年生秋」というのは就職活動が本格的に始まる時期です。
折れた創作意欲に目を背け、逃げ出すにはおあつらえ向きのタイミングでした。
「分不相応な夢なんて捨てて、普通に生きよう」

そう思わせるには十分な時期と出来事でした。


しかしながら、成仏することなく折れたままの創作意欲は厄介な感情を生み出します。
自身が感動する作品を見聞きすれば

「あぁ…こうした才能や努力できる力を持つ人達が生きられる世界なんだよな…。やはり俺には似つかわしくないな」

と感嘆する一方で、自身が内容に首を傾げるような作品を見聞きすれば

「なんでこの程度のレベルで表舞台出てるんだよ…、このレベルでいいなら俺の方がよっぽどいいもの作れるわ、むしろ作らせろよ」

と心の中で悪態をついてました。
ただ今思えばこの悪態、心の中だけで済ませておいて本当に良かったと思います。
ネット掲示板とかに書き込んでなくて本当に良かったです。

そんな感嘆と悪態を繰り返す日々の中、ある事に気付きます。それは

「どんな評価を受けるような作品であれ、製作に取り掛かり完成させている」

という事です。
世の中に出る為には実力以外にも運・人脈・コネといった要素もいるかもしれません。
ただ例えコネだったとしても、そこに完成した作品が無ければ世に出ることは叶いません。

曲がりなりにも一つの作品を完成させる苦労を知っておきながら、その数倍の苦労を経て世の中に出た作品をこき下ろす自分の姿。
なんとも滑稽で矮小なものだな、と。

そこを自覚してからはまた作品を見る目が変わりました。
「面白い・面白くない」は自身の感性や癖にも左右されるので、ある意味どうしようもありません。
ただ自分が「面白くない」と思う作品であっても、完成までに至る経緯や努力は否定しないようにしようと。


そんな中、ある転機が訪れます。
2020年夏、僕はコロナに感染してホテル療養をしていました。
治りかけて来た時に、何か良い同人誌はないかとサイトを散策しているとおススメ欄にとある音声作品が。

当時音声作品の事は本当に何となくしか知りませんでした。
試しに体験版を聞いてみたところ、あまりのエロさに脳がやられて即購入していました。

その時ホテルにはイヤホンを持ち込んでいなかったので、自宅に帰還して改めてイヤホンで聞いてみました。そして再度衝撃を受けます。

耳元へダイレクトに襲い掛かる嬌声・囁き・耳舐め………。
これだけの衝撃を受けたのは果たしていつ以来の事か…。
一気に音声作品の虜となり、数多の作品に手を出す日々が始まりました。

そして作品を聞いていく中で、一つの欲が出てきます。

「俺も音声作品作りてぇな…」

以後の流れは前回前々回に記載した通りです。

ここで一つ正直な話をしますと、販売時期は早めようと思えばもう少し早められました。
不備の事はさておき、登録作業に取り掛かるまで半月くらいの間が空いてましたので。

これは登録し販売が始まる事に対して
「夏休みが終わってしまうような切なさ」
を覚えたり、後は

「果たして自分の作品が見向きされるのか…?」

という恐怖心があったからです。

更に正直な事を言えば、高い実力や多くのファンを持たれている御子柴泉様やおとぎりふあ様のご助力頂いているので、0に終わる事はないとも思っていました。
ただそれでも、自身の創作物が人の目に触れてもらえるのか、という猜疑心と恐怖心が消えなかったのも事実です。

それでも、ここで足踏みを続けるわけにはいきません。
ここで止まる事は製作に協力してくれた方々の好意と時間を無駄にしてしまうからです。


発売から3日が経ち、今この記事を書いている現在では

販売数:33
お気に入り数:150

の数字を頂いています。販売ページの閲覧をして頂いている人達の数はこれ以上でしょう。
この数字を多いと見るか少ないと見るかは人それぞれでしょう。
それでも僕は、自身の創作した作品に触れてもらえた事、その事にただただ感謝の念しかありません。

購入してくれた方、
お気に入りに入れてくれた方、
販売ページを見てくれた方、
これから購入してくれる方、

本当に本当にありがとうございます。

18年越しに戻ってきた同人製作、気持ちと資金が尽きない限りは頑張らせて頂きます。
宜しければこの先も、少しで良いので気に掛けて頂けましたら幸いです。


作品の販売ページはこちらです。
「私は悪くないのに… ~side月美~ 私はアナタを歪ませたい」
https://www.dlsite.com/maniax/work/=/product_id/RJ01118970.html

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