市街地 2024/08/11 19:45

【R18連載】訳あり侍女の本懐〜第1話(後編)昼の駆け引き、夜の密事〜

※新作の連載です。
※完結後に本文を修正、書き下ろしを加えた完全版をDL siteで販売します。

【あらすじ】

女には誰にも言えない秘密があった。
男には他人を信じられない理由があった。

主人の祖国を目指す旅の道中で、雇った道案内兼護衛に淫らな尋問で秘密を暴かれそうになる侍女の話。

※当作品はpixivにも掲載しています。
pixiv版『訳あり侍女の本懐』


【目次】

・[0.プロローグ]
(プロローグ:尋問・快楽責め・本番なし)

・[第1話(前編) 昼の駆け引き、夜の密事]
・[第1話(後編) 昼の駆け引き、夜の密事]←ここ
(第1話:尋問・快楽責め・対面座位・中出し)


第1話(後編)〜昼の駆け引き、夜の密事〜


男の肩を掴むそれぞれの手に力がこもる。押さえつけておかなければ、恥を捨てて自分で慰めてしまいかねない。

「つらいか?」

「…………」

「こんな敏感な肉体では、耐え続けるのも苦痛だろう」

「……っ…………」

否定はしない。できなかった。言い返すにも声を発しなければいけない。息が喉を通る際に声帯を震わせたら、言葉より先に嬌声が出てしまう。喘ぎの声量を制御できる余裕がないなら、言い返そうとすること自体が愚行でしかない。

性感を煽られて身体が熱い。しっとりと汗ばむ肌が外気に触れてかすかな冷たさを感じるも、しょせんは焼け石に水だった。徐々に息があがり、悩ましげな吐息に熱がこもる。
へその下あたりで外側から子宮を揉むような動きを繰り返す男の手に気を取られていると、もう片方の背中にそえられた手が動いた。
指の腹が背中の中心、縦に走る背筋の窪みを柔らかいタッチで滑るように下方へとたどる。
たったそれだけ。しかし発情しかかった肉体は些細な刺激からも快感を拾いあげ、たまらずリゼはなまめかしく背をしならせた。

「……ふぅ……っ、は……っ……」

膣奥に溜まるもどかしさに頭がおかしくなりそうだ。

「お前はティエナの従者としては優秀だが、それ以外の才能はからっきしだな」

「……っ」

ギルバートの評価をリゼは侮辱と捉えた。じらされてうるんだ瞳で男を睨み上げたが、そのタイミングでクリトリスを撫でられ、刺激に引き結んだ口がだらしなく開いた。

「はふ……っ、……ゃ……っ……」

強気な表情から一変して、快楽に染まった余裕のない顔でイヤイヤと首を横に振る。
その間もクリトリスへの愛撫は止まらない。快楽神経の塊の上をスリスリと指の腹が往復して、ときおり気まぐれに粒を強く押す。
ビクンと身を震わせたリゼを慰めるように、背中にまわされた腕がギルバートの胸板へと小さな身体を抱き寄せた。

「褒めているんだ。お前のティエナへの献身も、感謝している。西の果て、俺たちの手が及ばないところまで連れ去られたティエナを見つけることができたのは、お前のおかげだ」

「…………っ」

嘘だ。騙されるな。甘い言葉は情報を引き出すためのトラップだ。
この男が自分に優しくするなどありえない。尋問に飴と鞭を使い分けるのはどこでも誰でもやっていることだ。
何度も何度も、言い聞かせる。そこに思い当たるうちは、わたしはまだ正気でいられている。

肩に手をついて力いっぱい突っぱねる。ギルバートのシャツ越しに感じた彼の体温が離れた。
うつむいたまま、顔は上げない。互いのあいだにできた隙間を寂しく思う心を見透かされるのが怖かった。

「……強情だな」

呆れたような、それでいて苛立ちの混ざる声が降ってきた。同時にグリリとクリトリスを押し潰される。

「——っ! …………ぅっ……ふぁ、んん……っ!」

強い快楽にギルバートの腰を挟み込む膝がビクビクと震えた。膣が刺激を求めて収縮を繰り返し、肉体の昂りがリゼの自制心を容赦なく粉々にする。
それでもなお必死に理性を手放すまいと踏ん張るリゼに、ギルバートは憐れみのこもった眼差しで見つめていた。

「そうやって耐えるしか選択肢がない時点でお前自身もわかっているっはずだ。俺と渡り合うには、お前は明らかに役不足だ」

……うるさい。

「ティエナを利用しきれない、自分の甘さを自覚していないわけじゃないだろう」

うるさい。わかったような口をきくな。

黙秘を決め込むリゼは緊張に身を固くする。
ギルバートの手は依然として秘部から離れない。いつまたクリトリスを責めてくるのか、身構えながらもこの身が絶頂に昇り詰めることを望んでいるのもまた事実で、自分の意思の弱さに涙があふれる。
コイツの言葉を聞き流せず、いちいち心を揺らしてしまう自分の弱さが、何よりも腹立たしい。

——泣くな。わたしが矛盾ばっかりなのは、いまに始まったことじゃない。

「……リゼ、お前はどうしたいんだ?」

「…………っ」

名前を呼ばれた。たったそれだけで、こらえきらなかった涙が頬をつたった。

——最悪だ。

百歩譲って肉体が快楽に弱いのは仕方がないかもしれないが、精神面の脆弱は言い訳できない。
リゼなんて、特に深い意味もなく、成り行きで付けたその場限りの適当な呼び名だというのに——。

ギルバートはヘル・シュランゲの思惑ではなく、リゼ個人の望みを訊いたのだとわかってしまったから。ただそれだけのことで、馬鹿みたいに動揺してしまう。

「——リゼ」

二度目の呼びかけには、ギルバートの肩に爪を立てることで抗議した。とはいえギルバートは着衣しているから、シャツの生地越しだ。しかも肩部分のヨークは生地が二枚重ねになっているため、爪を皮膚に食い込ませることも難しい。相手からすれば本当に、わずかな抵抗にすぎなかった。

それでもお前に名前を呼ばれたくないという気持ちは十分ギルバートにも伝わったようで、耳の近くでため息が聞こえた。

「わからん奴だ」

ちいさな呟きに諦めの色を感じて密かに胸を撫で下ろす。
敵愾心を剥き出しにして容赦なく問い詰められるのはいいけれど、優しさをちらつかせて懐柔しにかかってくるのは勘弁してほしかった。

朝はまだこない。次にギルバートがどんな手を使ってくるのか検討がつかず、ひとときも気が休まらない。
ギルバートがリゼの背中にまわる手をするりと滑らせ、腰へと移動させた。

「こちらの譲歩が伝わらなかったか?」

——違う。伝わるとかいう以前に、アンタのことを信用してないのよ。

そもそもだ。リゼだけが裸になって男の膝の上に腰を跨いで座り、急所を曝け出している状態を強いられた状態で譲歩もクソもないだろうに。
反論を口から出すことはない。声にして出さない代わりに、頭の中で次々に言葉が罵詈雑言と共に溢れ返る。
おかげで少し、冷静になれた。
胎内には淫らな熱が燻っているが、淫欲に屈する心配が薄らいだ。喜ばしいことだ。わたしはまだ、がんばれる。

——まだ、がんばらなきゃいけない。まだ……いつまで……?

自分を奮い立たせた途端にネガティブな一面が心を潰してくる。いつものことだ。
どうあがいても前向きになれない自分を悲観することなく、リゼは乱暴に涙をぬぐった。そして赤く充血した目で、まっすぐに男を見上げる。

「譲歩? こっちになんのメリットもない、アンタの優しい態度が譲歩だというなら、こんな笑い話はないわよ。結局、あなたはわたしに何かを譲る気なんて、最初からこれっぽっちももないくせに」

虚勢ともとれるやすい挑発。この男のことだから余裕で受け流してくるだろうと鷹を括っていた。

「——そこまで言うなら行動で示そうか」

だからギルバートがそんなことを言い出すとは思いもしなかった。

「…………ゃっ……」

グジュリと、突如として長い指が膣道に侵入を果たした。
愛液に濡れたそこは嬉々として異物を歓迎して、媚肉をうねらせる。
奥を小突いた指が軽く曲げた状態でゆっくりと引き抜かれ、クリトリスの裏側をグニグニと揉まれる。

「っ……、ふぅん……はっ、…………っ」

快感に腰が揺れる。不自由な身を捩ったところで、男の指は性感帯を離れない。

クチュッ、クチュリ……、クチュ、クチャッ……クチ……ッ。

ずっとはぐらかされていた快楽を惜しみなく注ぎ込まれ、急な落差にリゼは慌てた。否応なく呼吸が早くなる。
リゼの弱いポイントは、とっくにギルバートに知られている。これまでも散々イかされてきた。

「はぅっ……ぅ……っ、……ゃ、ぃやぁ……っ」

過去に味わった終わらない絶頂地獄を思い出し、湧き上がった恐怖心とは裏腹に、肉体は貪欲に快感を享受していた。膣に埋まったたった一本の男の指を健気に締め付け、快感を拾い上げ、淫らな欲望のままに昇り詰めようとする。

「いや……か。お前は嘘ばかりだな」

「んんっ……、……っ、…………っ!」

膣内から押し出されるようにしてツンと突き出たクリトリスを、内と外から指で挟み込むように親指でグリリと押された。
強烈な刺激に腰がビクンと大きく跳ねた。一瞬にして頭の中が真っ白になり、リゼは急な絶頂に襲われた。
そろり……、ヒクヒクと痙攣する膣内で、異物が動く。絶頂の余韻に浸る間もなく、二本に増えた指が膣奥の壁を引っ掻いた。

「…………っ、ふぅ……んっ……ぃっ……!」

コリコリ、コリコリ……。

男の指が子宮の入り口に触れている。感覚が鈍い場所なのに、そこを責められているのがわかってしまう。指がそれぞれ交互に、時には同時に膣奥をこねまわす。
達して敏感になった肉体に、膣奥の快感は強すぎた。
声の出せない口をはくはくと開閉させ、目を見開いたリゼは首を振ってギルバートに駄目だと訴える。
ギルバートはそんなリゼを見つめるだけで、膣を責める指を止めない。
ついには耐えきれず男の手首を掴んだが、お仕置きだと言わんばかりにひときわ強くポルチオを揉まれ、リゼは膣奥の刺激で再びイかされた。

「〜〜〜〜っ! ……ぅんっ……っ!」

短いスパンで立て続けに絶頂を味わった肉体は、制御を失いビクビクビクッと打ち震えて最後はくたりと力をなくし、ギルバートの胸板へともたれかかった。

「……っ、ふっ、ん……っ、はっ、はぁ……っ」

身体の痙攣が止まらない。腰にそえられたギルバートの手がわずかに肌を滑るだけで、痺れるような快感が全身を駆け巡った。
そろり。膣奥にとどまる指の動きに合わせて背中がしなる。
柔らかな胸がギルバートの肌に当たり、それも心地よい快感となってリゼを淫蕩な世界から抜け出せなくした。

「その淫蕩さは昼間のお前からは想像もできないな」

「……ん……ぁっ……?」

「俺がお前の飼い主ならば……いや、言ったところで無駄な話か」

「……ぇ…………っんぁ……っ!」

なんと言ったのか、聞き返そうとしたところで膣に挿さる指の本数が増やされた。驚きに発した自身の声にはっとして、咄嗟に両手で口を押さえる。

「まだ狭いが、十分濡れて、痛みはなさそうだな」

膣道をほぐすように指を抜き挿ししながらギルバートが呟く。奥に入り込んだ指がポルチオを揉み、すぐに膣壁の肉を押しながら後退していく。そのままあっさりと、ギルバートは指を引き抜いてしまった。

「……ぁ、…………っ」

またイかされるのかと予想していたリゼは、自らの抱いた淫らな期待に赤面した。
腹の奥にくすぶる発散しきれなかった熱に子宮がキュンと疼く。まだまだイキたりないと、淫欲を持て余す自分自身が信じられない。
自分は快楽に弱いだけで、性欲が強いわけではなかったはずだ。色情魔のごとく男を求めるようになってしまったら、今度こそ使い物にならない。
どうにか理性をたぐり寄せ、深呼吸をして心を落ち着ける。
そんなリゼの目の前でギルバートは信じられない行動に出た。
膝の上にリゼを座らせたまま、男は自らのボトムスのボタンに手をかける。

一連の動きをリゼはまばたきを忘れて凝視した。
信じられない。
ボトムス合わせがくつろげられ、取り出されたモノを視界に入れてもまだ理解が追いつかない。
長身の彼の体格に見合った立派なペニス。それがすでに勃起して硬くそそり立っている事実よりもまず先に、ギルバートがこれからしようとしていることがリゼからしたら受け入れられなかった。

これまで深夜の呼び出しはずっと、リゼひとりが快楽に責められ尋問を受けるかたちで終わっていた。これからもそうだと、根拠付きで確信していたのだ。

——だって、この男は、フィーネの民で……。

別に身体を好き勝手されて性欲の捌け口にされることは危惧していない。しかし相手がギルバートとなると話しが変わってくる。

「……っ、ぃ……やっ……っ!」

それはいけない。この男だってわかっているはずだ。
怯んだリゼが男の上から逃れようとするが、背後にまわった片腕ひとつで難なく身動きを封じられる。

「お前は俺の言葉は信じない。態度の軟化も譲歩のうちには入らないとくれば、行動で証明するしかないだろう」

「……だからって……っ」

「話を戻そう。トロスラライの入国審査には抜道がある。お前を祖国に迎えのは、存外難しいことではない。それにこれは、お前たち側にとっても手札が増えることに繋がるだろう」

淡々と、感情を抜きにして紡がれた言葉に言い返せず、リゼは息を呑んだ。
ギルバートの意図をリゼは正確に理解できた。理解できて、しまった。
わかっていたことだ。コイツはわたしと真逆の気質を持っているって。
使命のためなら簡単に自分の心を殺せるし、その身体も、感情に左右されることなく道具のように扱える。
手札が増える。ギルバートはそう言った。
互いに一歩も譲らないこの状況を動かす。それだけの目的で、リゼは男に犯されるのだ。

臀部を掬うようにして身体を持ち上げられ、膣口にペニスの先端があてがわれた。

「……ゃっ、……だめ……っ」

もがいたところで逃げられず、ゆっくりとその身を落とされる。

くぷり……。

亀頭の膨らみが膣口を押し開く。強烈な圧迫感と雄の熱に秘部がジンと痺れた。

「…………っ……」

ギルバートに支えられながら、自重によってペニスを咥え込んでいく。圧倒的な質量が膣壁を広げる割くような痛みにリゼは身をこわばらせる。
痛い、熱い……苦しい。……でも、それだけじゃ、ない……。

いけないことをしていると自覚しながらも、痛みに混ざる快感をこの身はしっかりと拾い上げる。
ギチギチに広がった膣道がナカを埋める雄のカタチを伝えてくる。
まるで灼熱に脳が溶けたみたいに、思考がまともに働かない。男の熱を「気持ちいい」と感じるなど、認めたくないのに……。
ペニスが膣壁を擦る。刺激が電流となって背筋から脳天へと駆け上がった。

「……ひっ……ぃ……ぅっ、……ゃ、ぁ……」

奥へと進む熱棒を待ちわびて、子宮がキュンと疼く。嫌だ嫌だと泣き叫ぶ理性を置いてけぼりにしたまま、肉体は欲望のままに雄を求めていた。心と身体の落差に混乱するあまり、目からボロボロと涙が溢れた。
無意識に震える両手で必死にギルバートにしがみつく。
また一段と身が沈んでペニスが深く突き刺さる。

「……ふっ、ん……っ、……も、やめ……っ」

「大丈夫だ、悪いようにはしない」

——嘘つけどう考えてもこの状況こそが最悪でしょう!

瞬間的に怒りが思考の主導権を握るも、持続力のない一瞬の爆発で終わった。

「……っ! んぅっ……ぁ、ぁうっ」

ギルバートが腕の力を抜いたことで、ズンとペニスに膣奥を突き上げられる。同時にナカを灼熱が埋め尽くした事実を否応なく思い知らされる。

「……奥まで入ったか」

ただの確認。感情のこもらない呟きが聞こえてきた。
言われなくても、胎内で感じる熱と脈動がそれのことをリゼに伝えている。長い剛直の先端に最奥の壁が押し上げられ、子宮がわずかに形を変えていた。

ドクドクと心臓の鼓動を強める。全身に運ばれる血液は沸騰したように熱く、身体中から汗が噴き出した。それ以上に、子宮はジンと熱を孕んで雄の支配を悦んでいる。
呼吸を荒くするリゼの背中をギルバートが撫でる。優しい手つきに戸惑い、逃げるように身を捩った。

「……っ、ぃ……ゃっ、はなし……っ」

しかし奥まで咥え込んだペニスが楔となって、男の上から自力で退くことができない。さらには上半身を胸元に引き寄せるようにして抱き込まれたことで、身動きそのものを封じられる。
細身のリゼの抵抗など、ギルバートにとっては些細なものだった。

「そこまで取り乱すのは意外だったな。こうなることは、最初から予想できていただろうに」

「そう……だけど……っ、あんた……自分が何しようとしてるのか、わかっているの……っ」

互いに声量は抑ているが、リゼの声色には明らかな焦りがあった。
リゼはこの行為の先に起こる結果を危惧している。しかしギルバートはそんなもの承知のうえだと、リゼの危惧を一蹴した。

「現状、リスクを取らずに盤面を動かせそうにないからな」

「……っ、人のせいみたいに言わないでよっ」

「お前がかたくななせいだろう。少なくともこうなるまでに俺は歩み寄る姿勢を見せた」

「どこがっ……」

こんな状況になっても言葉の応酬ができてしまう。そんな余裕が自分にあることに驚きはするも、場違いな感動は即刻頭の片隅に追いやった。
膝に力を込めて上体を持ち上げペニスを引き抜こうと試みるが、それをギルバートが黙って見ているはずもなく。
背後にまわされている腕に力強く抱き込まれ、わずかに浮いた腰が強○的に沈められる。

「……ぃっ……っ!」

ドチュ——ッ。

ペニスの先端が奥に食い込む。腹の奥から押し出されるようにして、快楽が全身を巡った。
刺激にヒクン、ヒクンッと腰が痙攣を繰り返す。そのたびにペニスが位置を変えてリゼに愉悦をもたらす。
徐々に理性が溶けていく。
気持ちよくて……もっともっと、ほしくなる……。

「よさそうだな」

低い声にはっと我に返る。

「……ほざけ……ぅ、くっ」

深く考えずに否定する。ギルバートへの反抗はもはや条件反射だった。
自分じゃない、組織で訓練を受けた女たちはこの状況においても駆け引きができる。——そうなれなかったから、わたしは「欠陥品」なのだ。

「ふっ、……く……ぁぁ、っ……んぅ」

勝手に腰を揺れて、惨めな気持ちに追い打ちをかける。嫌なのに、腹立たしいのに止められない。
円を描くように腰を回せば、膣壁に竿が擦れて雄の熱をありありと感じられた。亀頭に膣奥を掻き回され、腹の奥からぶわりと快感が湧き上がる。

「はぅ……はっ、ぁ……っ、あ……」

膣道がひっきりなしに愛液を分泌し、さらなる快楽を得ようとペニスに絡みつく。
たらりと膣口からたれた蜜が肌をつたい落ちる感触にすらリゼは快感を拾い、ゾクゾクと背中をわななかせた。
芽生えた劣等感を性の悦びが凌駕する。心の中に暗い影を残しながらもリゼは快楽に泣いた。

「も……ぅ、や……っ、……ぅぁっ……、くっ……ん、んぅ……ぅぅ」

口から発した音を自身の耳で聞き、咄嗟に口を手で覆う。
密事への緊張感に肉体が興奮をおぼえ、ナカの熱棒をきつく締めつけた。そうしてさらなる快感を感じてしまう悪循環ができあがる。

「お前の飼い主は、護衛も付けずによくお前にひとりで外に出したな」

呆れとも感心とも取れる響きで投げかけられたが、言い返している場合じゃなかった。

「はふっ……、ふ……ぅ、…………っ……」

「自分がどれだけ淫蕩な姿をしているか、わかっているのか?」

「……ぃっ、ぁ……っ……ゃぁ……、ぅっ……」

「これが演技なら恐ろしいところだが……」

くっと、ギルバートが息を詰めた。かすかに眉を寄せて、耐えるように深く息を吐き出す。

「……そうでなくても、お前は魔性だ」

「んぁ……ゃっ、……だ、め……っ」

前後左右に揺れていた腰が、ギルバートの誘導に従い少しずつ上下の動きに変えられる。
徐々にペニスの抜き挿しの幅が広くなり、それに合わせて奥を突く衝撃が強まっていく。

トチュ……トチュ……、ズルゥ…………トチュ……。

激しさはない。ゆっくりとしたピストンに口から吐き出す息が震えた。
肉襞をめくりあげてじわじわと竿が抜け出る。そうして咥えるものをなくし切なく収縮する膣道を亀頭に広げられる。
ペニスの先端が最奥へ到達したタイミングで、リゼは自らギルバートの腰に秘部を押しけた。なまめかしい腰使いを、彼女は自覚できていない。子宮に届いた雄の熱に恍惚と顔をとろけさせるだけだ。

「淫乱な奴だ」

そのとおりだと、肉欲に支配されたぼんやりと頭で思う。

「気持ちいいか?」

「ふぁ……ぁっ、はふっ……ぅん……ぁぁ……」

理性が焼き切れ快楽の沼から抜け出せなくなったリゼをギルバートは容赦なく攻めた。
トチュ……トチュと、ゆっくりながらも一定の速度を保っていた抽挿のリズムを崩すように浮いた腰をがっちりと掴まれる。
想定していた膣奥への刺激をいきなりはぐらかされて、リゼは慌てた。
ギルバートの両手を外そうと彼の肩から自らの腰部分へ手を下げたのを見計らい、拘束がとかれる。
ギルバートにしがみつく暇も、下肢に力を入れる暇もなく、自然落下で上体が沈んだ。

——ドチュンッ!

膣の浅いところから最奥へ、勢いよくペニスが穿つ。

「……っ! ——んぁっ……ぅん…………ぅぅっ!」

腹の奥で強烈な快感が弾け、身体を仰け反らせてリゼは達した。
いきなりの絶頂に声をこらえきれなかたが、ギルバートの大きな手が口を塞いだことで難を逃れた。
ふと見上げた先で男の顔が視界に入り、羞恥心が込み上げる。こんな状況でもギルバートは顔色ひとつ変えない。快楽に溺れているのは、わたしだけなのだ。

「ふぅ……んんっ……」

きつく目を瞑って男の手を振り払う。自由になった口には代わりに自らの両手を押しつけて声を封じた。

「……そうだ、そのまま自分で押さえてろ」

淡々とした声が耳に届いたのと同時、ギルバートの両手が背後にまわりおしりを掴んだ。

「そんなに嫌ならさっさと済ませるぞ」

言いながら身体を持ち上げられる。

——いや? なにが……?

疑問は浮遊感と膣奥の衝撃によって瞬く間に霧散する。

「————っ!」

刺激にビクビクと震えるリゼを再びギルバートが浮かせて、落とした。
膣道の中ほどまで引き抜かれたペニスが一気に奥へと埋まり、子宮口を亀頭が叩く。一度では終わらず、何度も、何度も——熱棒は膣の締めつけをものともせず、痙攣する肉壁を抉りながら突き進んだ。

「んぅっ……ん、んっ……ううぅ……っ」

強すぎる快楽に思考を真っ白に染めながら、リゼは必死に声を殺す。まともに呼吸ができず、息苦しさに頭が沸騰しそうだった。
頭と同じぐらい、下腹部も熱い。その最たる元凶である雄の熱棒が膣奥に到達した次の瞬間、ドクリとひときわ強く脈打つのを胎内で感じた。
ギルバートがリゼを持ち上げるのをやめる。リゼのナカで、熱が爆ぜた。

灼熱の奔流が胎内を埋め尽くす。
何をされたのか、見えずとも感覚で理解したリゼの額から玉のような汗が噴き出した。
目を見開く彼女の頬を水滴がつたい落ちる。
夢中で快感を追っていたのが嘘のように、急激に理性が呼び戻される。

——うそだ……まさか、本当にやってしまうなんて……。

トク、トク……。
ペニスの先端から溢れる熱にヒクンと身がしなる。はふっと短い吐息を漏らし、恐々とギルバートを見上げた。

「な……んで……」

心臓の鼓動がやたら大きく聞こえた。自分の身に起こったことを正確に理解していながら、その事実を否定したくて必死だった。
精液を、胎内に出された。それがどれだけ危険なことか、この男がわからないはずがないというのに。
ギルバートはかすかに目を細め、リゼを抱き上げる。あっさりと肉棒を抜きさり、彼女をベッドへと移動させた。
シーツの上に降ろされたリゼは座り込んだまま動けない。絶頂の余韻も忘れて、唇を震わせながらギルバートに問いかける。

「身篭るかもしれないのよ……わたしが」

「孕ませるつもりで犯したのだから当然だろう」

「馬鹿なの……っ、本当にできたらどうするつもりよ」

「どう動くかはお前次第だろう」

ギルバートの視線がリゼの腹部へと落とされる。

「子供ができればトロスラライへの入国審査も格段と通りやすくなる。俺の保証があればまず除外されることはありえないだろう」

そうなるとお前はどうする? 腹部から胸へ、胸から顔へじわじわと戻された視線に問いかけられる。

「……あいにくと、自分から檻に入るほど愚かじゃないの」

トロスラライに入国できるからなんだ。その資格を得たところで、リゼがフィーネの民にとって敵と認識される事実は変えられない。
こちらの答えは想定どおりだったのだろう。そうか、とギルバートはすんなりうなずいてみせた。

「気が変わった、と言えばお前は信じるか」

「無理ね」

切り捨てたはずが、構わずギルバートは話を続けた。

「これでも感謝しているんだ。……お前はティエナを、俺の元まで連れてきてくれた」

「よくそんな嘘がすらすら吐けるわね」

毒づきながらはたと気づく。リゼは察しがいいほうだ。

「……わたしを抱くことを、あんたは謝礼だと言うつもりかしら」

ギルバートから否定はない。
部屋の空気が、心なしか張り詰めた。

「お前がティエナを諦めるなら、俺の子種ぐらいいくらでもくれてやる。孕んだならさっさと俺たちの前から消えろ。一度なら見逃してやる」

「…………っ」

「それで組織を納得させればいい。産まれる子供の血の半分はフィーネの民だ。ハーフとはいえ、フィーネの民は金にな——っ」

聞きたくない。最後まで言わせなかった。

リゼがギルバートに殴りかかる。平手ではなく、きつく握られた拳で——。

パキッ。

小枝を割るような音と共に、男の左頬を狙ったリゼの渾身の一撃は、防御壁によっていともたやすく防がれた。
野盗が放つ矢をギルバートが魔法で対処する場面を、これまで何度も見てきたはずだ。この男は呼吸をするのと同じぐらい簡単に、無意識の領域で守りの壁を発動できる。
自らの衝動的な行動に思考がついていかず、リゼはしばらく動けなかった。しかしそれはギルバートも同じようで、自身に迫った右手に瞠目していた。
驚きの表情が、リゼの攻撃を想定していなかったことをありありと教えてくる。

「……クソ野郎」

手を引っ込めたリゼが地を這うような憎しみのこもった声で言った。
ギルバートは防御壁をといて目を伏せるだけで、言い返してこない。
なんとなく、もう一発殴れば今度は通りそうな気がしたが、同時にそれはギルバートが自分を「クソ野郎」だと認めたうえで、甘んじて攻撃を受ける姿勢を見せていることを意味するわけで。

——つまりは最低なことを自覚しての発言だったと……?

冷静さを取り戻すにつれ鈍い痛みは遅れてやってきた。カウンター機能つきの防御壁に触れた手の皮膚が破れ、じわじわと血が滲む。
手首をつたい肘からポタリと落ちた赤い水滴を前にして男が息を呑んだのを、リゼは見逃さなかった。

——そんな顔するんじゃないわよ。

どうせなら最後まで悪辣に、挑発に乗ってしまったわたしを嘲笑してくれたほうがよかった。罪悪感なんて持たないでよ。余計に惨めになる。
部屋の空気に耐えられず、急いでベッドから降りて床に散らばる衣服をかき集める。服の生地に血が付着して赤く汚れるが、気にしてはいられなかった。

「おい……」

かけられた声には応えない。男が立ち上がる気配を背中に感じながら、逃げるように部屋をあとにした。



【続く】

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