あおくん 2024/03/26 21:07

3.突然の妊娠七ヶ月宣告に動揺するカップルの覚悟【スポーツクラブ勤務カップルの秘密の恋愛】

あれから、とんとん拍子に同棲の準備は整い、つい先日引っ越しを済ませた。
それでもまだ職場の同僚には彼氏が誰なのかは打ち明けておらず、寧ろそのタイミングを失ったようにも思うがそれは別に気にしない。
そんなある日、彼が職場であるスポーツクラブを辞めると言い出したのだ。

「俺さ、あのクラブから離れようと思うんだよね。七海と本気で将来を考えてるし、そのためにももっとスキルアップしたいんだ。」
「スポーツから離れるの?」
「実はクラブの別部署から誘われてる。今度は大学の方でコーチをしないかって言われて、そうなると日本中色々飛び回ることにはなるんだけど」
「凄いじゃない!大輝もスキルアップできて、収入も増えるなら断る理由なんてないでしょ?」

大学チームに関わると、クラブの代表選手に付き添い、様々な大会へも携わることで今まで通りには行かないことなどわかっていた。
それでも彼自身も元々優秀な選手だし、これからも仕事として水泳に携わることは大賛成だった。
そんな彼にとって最後の出勤日、これからは仕事帰りに待ち合わせてデートをしたり、一緒に食事をして帰ったり、そんな楽しみがなくなってしまう事を寂しく感じていた。
そして同僚の亜紀から、私は驚くことを告げられたのだ。

「七海さ、大輝さんと付き合ってるでしょ?」
「え…っと、何で?」
「気づいてる人は気づいてると思うよ。そのネックレスだって二人でお揃いじゃないの。それに二人でいる目撃情報もあるんだから」
「やっぱ、バレたか…」
「隠してたの?別に悪い事をしてるわけじゃないし、普通に言っちゃえば良かったのに。それに大輝さん異動なんだから、もうお腹の子の事も公にしちゃっていいんじゃないの?」
「何?お腹の子?」
「七海、妊娠してるんでしょ?」
「なっ、してないよぉ!?幸せ太りは認めるけど、大輝は真面目だからいつもちゃんと避妊してるんだよ?」

亜紀は呆れ顔でこちらを見つめた。
そして生理がきちんと来ているのかを問われ、来ていない事を告げると、近日中に産婦人科へ連れて行くと言い出したのだ。

「あのね、それ幸せ太りじゃなくて、多分妊娠してるんじゃないかと思うよ。そこまでお腹ぽっこりして、胎動とかないわけ?」
「ない…と思うよ」
「兎に角、まずは妊娠検査薬で試してみなさいよ。ドラッグストアで買えるんだから、今日寄って帰るんだよ」

何故、亜紀がこんなにも気にかけてくれるのかは分からないが、私は言われた通りドラッグストアに寄って二本入りの妊娠検査薬と、彼へのお疲れ様ケーキをお土産にマンションへと帰宅した。
先に帰宅していた彼は、職場からの大量の荷物に疲れ切ったようでソファーでぐったりしていた。

「ただいま。」
「おかえりー。俺さ、来週送別会開いてもらうんだけど、七海も来るだろ?その時、俺たちのこと公表してもいいかなって思うんだよね。どう?」
「そうね…これからは別々だし良いんじゃない?でも、亜紀は私たちのこと気づいてたみたいだよ。さっき言われたの。それからね…」
「何だよ」

私の不安そうな表情を見て何かを察したのか、彼は私の顔を覗き込みながら尋ねた。

「亜紀が検査薬使えって…買ってきたからさ、一緒に結果見てくれない?もし妊娠してたら…嬉しいけど、色々心の準備ができてないっていうか…」
「あ、え…でも、エッチするときは必ずゴムしてるし、何で…一応聞くけど七海、前に生理来たのいつ?」
「……夏前くらいに、何日か来たよ」
「夏前…、とりあえず検査薬あるなら使ってみようよ」

私はバッグの中から妊娠検査薬を取り出すと、説明書を読み箱を開封した。

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