咲崎弧瑠璃 2024/04/07 21:47

届かないキミと①

また、イラストはアフロディ様に描いて頂いております。
https://www.pixiv.net/users/148906
こちらでは添付できませんでしたが、文字無し版をFantiaやFanboxにて一般公開しているため是非ご覧ください
https://fantia.jp/posts/2670116
https://sakizakikoruri.fanbox.cc/posts/7737087

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──彼女がいる、その巡り合わせに感謝します。
 どんな滑稽な目に遭っても、みっともない姿を晒しても、その一つ一つが讃美歌になるよう努めます。

 ……でもなんで僕は、こんなことを祈っているんだろう?


 §
 電車のドアに、小さな人影。窓に映る、子供の影。
 背の丈は140cmを数えてそれきり。少し色素の薄い、少女然とした子供。
 それが少し、緊張の面持ちをたたえている。
 ピンチだった。
 女の子にじっと見つめられ、気圧されていたのだ。

「…………?」
 違和感を覚えたのか、子供特有の遠慮のなさで凝視してくる少女。それに見つめられ、当惑したまま動けないでいるもう一人。動こうにも電車内、何よりわざわざ動くほどのことでもない。うつむいて、ベージュの髪の中に視線を隠す。一方の小学生は、なお見つめたまま。
 絶妙な居心地の悪さの中、ようやく、ドアが開いて。

「よかった、電車、間違ったかと思ったよ……♪」
 絹のように細く滑らかな声。やってきたのは、スラリと背の高い美少女だった。
「る、瑠菜……!」
 振り返れば、フリルシャツを着たお姉さん。それがこちらに駆け寄ると、安堵の笑みを見せたのだ。紅茶色の髪を揺らし、ひらひらと手を振っている。そして、カーディガンを翻しやってきた。
「……どうしたの?」
「いや、どうもしてないんだけど……」
 子供に見つめられて絶妙に居たたまれない、だなんて、ちょっと恥ずかしくて言えなかった。その様を子供はなお見つめている。
 それから、一言。
「お姉さんの妹?」
「ううん、恋人♪」
 僕を抱き上げ、少女に言った。
「ちょ、ちょっと、瑠菜……!」
 真っ赤になる僕を見て、それから瑠菜を見て。少女はクスクス笑っている。冗談と思ったらしい。当然の反応だった。
「ね? 嘘じゃないよね~……♪」
 首にすがる僕に頬を擦り寄せて、瑠菜は僕に笑うのだった。


 ⁂
 成長は誰にも分け隔てなく、平等に降り注ぐものだと思っていた。時間と同じように、心も体も変わるものだと。

 そうじゃないと気づいたのは、中3の頃。
 男子に先んじて成長した女子達、そして、それに追いつこうとする男子たちにも置いていかれて、僕は、止まった時を過ごし始めていた。子供のような姿のまま、その背を見上げることしかできない。心細さは確信に変わり、それから諦念に変わって、けれど、その後も淡々と時間は続く。この、子供にしか見えない体のまま、小5程度の体を抱えて、中学生になり、高校生になり、青春の背中を見上げているうちに、卒業してしまって。

 結果、身長140㎝弱の男子大学生が出来上がることになる訳だけど。
「はいこれ。袋に入れっぱなしだったよ」
 望んで訪れなかった成長が、隣で僕と暮らしている。高校で見上げた、あの少女。小さく背を丸めて暮らす日々に、少なくとも今、光が掲げられているのは確かだった。

 ソファの上、ぽかんと見つめている僕に瑠菜は怪訝そう。小首をかしげ、大きな目を瞬かせた。
「どうしたの?」
「いや、その、……めぐり合わせって、わからないなって」
「?」
 キョトンとする少女は、かつて、僕のクラスメイトだった少女。瑠菜はどこまで覚えているのだろう。高校で出会い、大学で再開して、こうして今ここにいる。それは僕にとっては紆余曲折だったけれど、きっと瑠菜にとってはそうじゃない。とびぬけたチビということで認知はしていただろうけど、クラスの一隅でぽつんと座っていた僕を、果たしてどこまで覚えてくれているんだろうか。
 ……そう思うとなんだか、悔しくなってきた。

「あは♪ またウジウジ考えてる♪」
「……僕の習性だからね」
「キミのそういうとこ、好きだよ?」
 しゃがみ込んで僕を見下ろす瑠菜。ASMRのような澄んで優しい声が、耳をくすぐった。高校の頃と同じ、ぱっちりした目と儚い雰囲気。お姉さん然とした雰囲気で、僕を見つめている。
 ……エスカレーター二段分の身長差。生まれてこの方、人を見下ろしたことがない僕は、恋人の視界さえうまく想像できていない。ことあるごとに瑠菜はそれをからかった。それが僕をくすぐっていることを、瑠菜は知っている。
「見上げてるキミも案外悪くないよ」
「でも毎日見上げてると肩が凝って……」
「おじさんじゃないんだから」
「毎日見上げてたらわかるよ」
「じゃあキミも40㎝上の光景、試してみる?」
 そういうとひょいと僕を抱き上げる瑠菜。まるで重さを感じさせない所作に、なぜだか、心が少し浮き立った。そしてワンテンポ遅れて、羞恥心がこみ上げてくる。
「も、持ち上げるのやめてって!」
「ふふっ♪ ゆうくんにはご褒美だね♪」
「違うって……」
 男性ホルモンと無縁なまま生きてきて、初恋の同級生と同棲している。世の中何が起こるかわからない。別の世界で、功徳でも積んだんだろうか。……その世界に瑠菜はきちんと存在してるんだろうか?

「どうしたの?」
「いや、なんでもない」
 文化的な雰囲気の女子大生は、目をぱちくりさせるばかり。当たり前だ。何か言おうとして口に出来なくて、チビは黙ってしまった。
「……何か的はずれなこと考えてない?」
「……そうかも」
「ふうん?」
 瑠菜にしてみれば面白くなかったんだろう。勝手に話を終えてしまう僕の頬をつついた。

 それから、スマホを取り出すと。
「はいチーズ♪」
 鏡にカメラを向けた。……子供のように、恋人に抱き上げられている姿を。
「ちょ、ちょっと、恥ずかしいって!」
 気づいたころにはもう遅かった。スマホにはしっかり情けない姿が焼き付いている。パッと瑠菜が手を離した。床に転がる僕。それから、その裾に取りついた。
「か、返して、消して……!」
「あは♪ やだ♡」
 ぴょんぴょん飛び跳ねる僕を見下ろして、瑠菜はクスクス笑うだけ。手の届くすれすれの場所にスマホを持ち上げて、僕をもてあそぶのだ。何より、目の前のおっぱいにぶつかりそうで、僕はまともに手を伸ばすことすら出来なかった。
 そして、瑠菜が胸を張った時。
「えい……♡」
 僕は、お姉さんのおっぱいに跳ね飛ばされ。
「えーいっ……♡」
 壁に叩きつけられたところに、思いっきり爆乳を叩き込まれてしまったのだ。
「ぶっ?!」
「あーあ、おっぱいにも負けちゃった……♡ 重くて柔らかい私のお胸に潰されて、ゆうくん、動けないね? 香り、吸っちゃうね……♡」
 体をべったり壁に押し付けて、長躯で子供を押し潰す。胸までしか届かない頭を巨乳で包み潰し、無理やり自分の香りを嗅がせ、吸わせる。くらぁっとしてしまう、白百合のような華やかで甘い香り。ジンジン頭が熱を持って緩んだ。酸欠になりそうだった。でも、瑠菜はやめない。
「こんなことされても悦ぶの、ゆうくんくらいだよ? よかったね、イジめてくれるお姉さんがいて、よかったね~……♪」
 頭をヨシヨシしながらも容赦なくおっぱいでイジめる瑠菜。タイツ美脚がスリスリ股間を撫でて、それからぐりぃッと膝で押し潰した。
「犯してあげよっか……♡ トラウマになるくらい、私が怖くなるくらい、めちゃくちゃに、ぐっちゃぐちゃにしちゃおっか♡ 誰も来てくれないよ? 私の部屋だもん♪ このまま、死ぬほど抱きしめて、ヨシヨシしながら窒息しちゃうの……♪」
 くふっと息を漏らし、肺を潰されてしまう子供男子。体格差に任せて体重をかけられると、僕では太刀打ちできない。なんだか瑠菜が不穏だ。本当に何かされるんじゃないか。にわかに怯え始める僕を、長躯はクスクス見下ろすだけ。

「私から離れたらダメだよ? 怖い人に連れてかれちゃうよ♪ 男の人も女の人も、キミには大きすぎるんだから……」
 頬をぷにぷにと摘まんで弄ぶ。ずっしり全身を押し付けて、巨乳に埋もれていく。
「簡単に持ち上げられて、連れ去られて……」
 そして、抱き上げると。
「キスで、殺されちゃうよ♪」
 がっちりと、頭を掴まれた。大きな手に包まれて、長い指に固定されて、僕は動けない。お姉さんが舌でねっとりと唇を潤した。そのまま、僕の唇もなぞりあげる。焦らすようにゆっくり舐めて、それから、唇を重ねた。
 それだけじゃない。
 舌をねじ込み、思いっきり吸い付いたのだ。
「ん゛ッ?! ん゛──ッ!!」
 頭をしっかり掴まれて、容赦ないキス責め、舌責め。体格差に任せたキス凌○に僕は抗えない。キスに負けたくなくて必死にし返すけど、無駄。好き勝手に口内を犯されて、内側から愛でられるのだ。

 背は低い。力も弱い。顔だちも中性的で、心もそれに引きずられたまま、僕はこの感覚に、自分を肯定されてしまっている。
 それを瑠菜は、舌先でたっぷり堪能していた。
「……ん♡ ふふ♪ ごちそうさま♪」
 ぬぷんッと僕から舌を抜き出す。突き出した舌からとろとろ唾液を垂らして、飲ませる。
 それからまた唇を重ねた。
「瑠菜のヘンタイ……」
「キスだけでこんなになる男の人、世界でキミくらいじゃない?」
 半泣きの目元を拭うと、頬をすり寄せる少女。可愛くて、綺麗で、優しそうなお姉さん。それも今はいじわるなスイッチが入って、僕をもてあそべることに悦んでいる。
「どうする? このまま窒息死させちゃおっか?」
「な、何言って……」
「できちゃうよ? こんなおチビさん、キスだけで殺せちゃうんだから……♡」
 ──どうする? めちゃくちゃにされてみる?
 瑠菜が甘く囁く。囁き責める。その天性の美声を武器にしてひたすら囁き続けた。耳を舐められる。全肯定と全否定で愛でられる。
 
 そして、“ぎゅうぅ……ッ♡“と抱きしめると、
「なーんてね……♪」
 僕を下ろした。頭を“よしよし♡”と撫でてくる。チビは頭を押さえて、真っ赤になるほかない。
「あは、ドキドキしたでしょ? ……ヘンタイ♡」
「……食虫植物みたいなことしないでよ!」
「でもキミは食べられたい、そうでしょう?」 
 床に座ると、転がっている僕を見下ろし瑠菜はさっぱりとした顔をしている。
「瑠菜、高校の頃からこうだったの……?」
 その言葉に、彼女はジッとこちらを見つめてくる。なんだろう。ぱっちりと大きな目でこちらを見つめるものだから、妙な圧があるのだけれど。

 ただ、瑠菜はそれ以上は言わず、
「……おいで?」
 と、腕を開いた。包容力あるお姉さんの、優しそうな胸元。恋人なのに、こんな、子供扱いされるなんて。
 ……瑠菜はハグ魔だった。その愛情表現に、僕は、抗えない。
「……♪」
 恋人の実在を確かめるように胸元に収まる小人を見て、瑠菜はどう思っているのだろう。自分でも厭になるくらい中性的な僕に、瑠菜は何を求めているのか。それがなんとなくわかるからこそ、僕は年甲斐もなく甘えてしまう。もう、ダメになりかけかもしれなかった。
「ハグ、大好きになっちゃったね♪」
「……瑠菜のせいだよ」
 僕は情けない人間だった。抱き返しながら、胸に包まれながら、その存在感に安堵する自分がいる。被虐的な気持ちとは別の、母性へのそれとも違う、ここにいてくれているという安堵。それを瑠菜は知らない。
 瑠菜は答えない。
 ただ、指に指を絡め、僕の手を握り締めるだけ。
「手、ちっちゃ……♪」
「……当たり前でしょ」
「でもキミは、私のおっきな手に包まれるだけで、気持ちがとろんっとしちゃうんだ……♪」
 額を当てて囁きながら、しっかり僕の手を包み込む瑠菜。胸に抱き留め、思い切り胸に押し付ける。心音を聴かせ、直接囁き声で包み込む。思わず抱き返してしまう。おっきなおっぱいに甘える感覚が身を貫いた。いい匂いがして、包容力に圧倒されて、優しくされて。

 でも、それが、だんだん、僕の呼吸を妨げ始めた。

「ふふっ♪ 息は吸いにくいけど窒息もできない、私の匂いしか吸えない、吸っちゃう、どんどん吸っちゃう……♡」
 催○ASMRのように、ゆっくり、説き伏せるような囁き声。ぽそぽそと鼓膜にそよぐ甘い風が、脳を溶かしていく。
「私に包まれて、甘やかされて、ダメにされて、メチャクチャにされて……」

 あまつさえ、完全に僕を包み込むと、
「私に、犯されちゃう♡」
 長いタイツ美脚が腰に絡まる。胡坐に収めるように僕を抱き寄せると、
「えいっ♡」
 “ぐりぃっ♡”と、股間を押し付けてきた。
「ひうっ?!」
「こら、勃つな♡」
 服を着たまま、対面座位みたいにグリグリ股間を押し付けてくる。タイツの膨らみに包まれる感触、弄ばれる焦燥感。抵抗できない相手にエッチなイタズラをされてる感覚が、脳をゾワゾワ撫でてくる。
 タイツを下ろそうとする手ははたかれた。そのまま、素股のように擦り付けられる。
「暴れるな♡」
 気持ちいい、フニフニする、えっちな気持ちにさせられる。でも、興奮するなと言われて興奮したら駄犬みたいだ。そう思えば思うほど長身お姉さんはお股を押し付けてくる。顔と顔が近い。おっぱい越しに覗き込まれて、表情を全て観察されてる。手玉に取られてる。動けないのに。逃げ出せないのに。
「イッちゃダメだよ? 服、汚れちゃうから……。抱っこされただけでイクなんて、気持ち悪いことしないよね♪ ゆうくん、カッコいいもんね〜……♡」
 美声で囁きながら、耳を食む瑠菜。ゾワっとする僕をさらにきつく抱きしめて、ねっとり耳を舐め始める。もう耐えるためにはお姉さんにしがみつくしかない。そして、タイツお股でふにふにふにふに擦り付いてくるのだ。
「ほら、感じろ♡ お姉さんのお股、タイツの感触、襲われてる恐怖……♡ 全部感じろ♡ 感じろ~……♡」
 目がぐるぐるする。命令されてる。馬鹿にされてる。弄ばれてる。この人が好きだと確認したらするほど、気持ちよさは膨れ上がっていった。恥骨をグリグリ押し当てられて攻められたり、柔らかなところでもっちり包み込んできたり。もう耳はベトベト、唾液が垂れて首筋に垂れる始末。変だ、汚されて喜んでる。これじゃまるで……。
「変態♡」
 ビクッと、矮躯が跳ね上がった。

「あは♡ 汚さないでね? 私を汚さないで? 汚れるのはゆうくんだけでいいよ〜……♡」
 胸で圧し潰されながら、半泣きで股責めされる小男。むちむちのおっきな体に包み込まれて、僕は快感を注ぎ込まれるだけ。その様が瑠菜は大好きだった。自分でいっぱいになってて、溢れてしまう僕の小ささ。体格差を教え込むむちむちハグは、もう、息が出来なくなるくらいに続いてしまう。
「かわいい♡ す〜っごくかわいい♡♡ これだけで追い詰められちゃうんだ? 男の子なのにグチャグチャにされちゃうんだ♡ どうする? 誰も助けに来ないよ? このまま私にグチャグチャにされちゃうよ♡」
 タイツお股をむにむに押し付けて、すりすり擦り付けて、それでも僕を逃がしてはくれない。体格差に任せて恋人を責め立てる少女。その胸の中で僕は、呼吸を乱し顔を赤くして、ほとんど哀願のように出してと叫んでいた。
「出してッ、やめてぇっ♡!!」
「あは♡ やだ♡」
 そう言うと、瑠菜は僕の上にのしかかり。
 “むにいいいぃッ♡”と、お股で圧し潰すと。
 
「やめ゛ッ♡ やめ゛て゛ッ、♡ あ、あああああ゛あ゛っ♡?!!」
 僕は、敢え無く。
 恋人の嗜虐心の、おやつにされたのだった。

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