思叫堂~ロア~ 2019/09/13 18:54

優しい改め、寂しがり狐もの予定8

《さー……》
(雨振る音)

《ぱたぱたぱた》
(走り寄って来る足音)

(縁側に腰掛け、雨が降る外を眺めている“あなた”。
強まる雨脚をぼんやりと見つめていると、足音が近付いてくるのに気付きそちらを向く)

ナコ
「おぉ、ここにおったのか! うむ、今戻ったのじゃ!
軽く外を見てきたのじゃが、ちと……雨脚が強くなりそうじゃったよ。
帰り道を教えてやると言っておいて何じゃが、この雨で帰らせるのはその……のぅ」

(ナコの様子に“あなた”は頷き、仕方が無いと返事をする)

ナコ
「んっ、そ……そうか?
そう言ってくれるのであれば、ワシとしては安心出来るのじゃが。
……すまぬのぅ、約束しておったというのに、今日帰してやれそうになくて。
泊まってくれるというのであれば……うむ!
今日も、お主の世話はちゃんとさせて貰うからの! うむ……うむっ!」

《……ぴと》
(※そっと近付き、“あなた”の横にナコが座る音)

(そろり、と。
ナコが”あなた”に近付き、ちゃこんと腰を下ろす。
視線は外の降り続ける雨へと向けられている)

ナコ
「んっ……隣、座っても良いかの?
……ふふ、有難うじゃ♪
……まだ雨脚が強くなりそうじゃのぉ」

ナコ
「普段ならば気にもしなかったのじゃが……こうしておると雨の音以外にも色々聞こえるものなんじゃな。
時折何処かの草むらががさりと揺れる音、木々に当たる雨粒が葉を弾く音。
雨の中にも色んな音が混ざっておるようじゃ……。
それに、何より……隣にいるお主の音が、よぉく……聞こえるの」

《さら……》
(衣擦れの音)

ナコ
「ふふ♪
こうして肩を寄せておると、お主の服が擦れて鳴る音。
とくんとくんという、お主の血が巡っておる鼓動の音。
雨音に混ざって消えそうになりながら、それでも……確かに感じられる音が、あるものなんじゃなぁ」

(”あなた“に体を預けながら、耳を揺らしながら聞こえる音に感じ入るように瞳を閉じるナコ)

ナコ
「ん♪ くぅぉ……ん♪
くふ♪ ……当たり前の事なんじゃが、妙にそれが嬉しいのぅ。
うむ……嬉しくて、ふふ♪
何故か……自然と頬が持ち上がってしもうのじゃよ。
お主を帰してやれずに、申し訳ない気持ちで仕方が無いはずなのに……何故か、胸が弾んでしまうのじゃ。
……本当に、度し難い狐じゃのぅ、ワシという奴は」

ナコ
「のぉ、お主……主様?
怖くは無い、かのぉ?
昨日、主様に情けを頂いてはしたない姿を……お主に縋る姿を見せておいて、今日はこの雨じゃ。
ワシが、主様を帰さぬために、何か策を弄(ろう)しておるなどとは、思わぬ……かの?」

(じぃ、と。
”あなた”の様子を伺うように、声をかけてくるナコ。
昨日の様子を思い返しながらも、ゆっくりと首を横に振る”あなた”)

ナコ
「……思わぬのか?
……ワシが、ろくに力などもうないと言ったからかの?
むぅ……実は、嘘をついておるだけで、力を隠してお主を誑かそうとしておる妖狐(ようこ)なのかもしれぬぞ?
……くやっ!? ……まぁ、確かに、そんな力があれば、昨夜にあんな醜態は見せぬじゃろうけど!
……ぅー、主様はよう見ておるのぅ……まったく、見透かされておって恥ずかしいのじゃ」

ナコ
「くやん……。
ご名答じゃよ、主様。 この雨はワシとは無関係じゃ。
もしかしたらそうと思われて怖がられてはおらぬかと思ったが、余計な事だったようじゃの、ふんっ!
……まぁ、怖がられておらぬのなら、ワシとしては嬉しい限りなのじゃけれどな? ……ふふ♪」

ナコ
「ありがとうじゃ、主様。
本当はの? ……ワシ自身がこの雨に、お主がまだここにいてくれておるのを喜んでしまったものじゃから余計に……。
お主が、怖がって……ワシから離れようとしてしまったらどうしよう、などと……不安になってしまっただけなんじゃ。
昨日のお主の優しさを知っておれば、そんな事ありえないと分かっておったはずなのにのぅ。
……そんな些細なもしかしたらが、今のワシには奇妙なほど恐ろしくて、仕方なくなってしまって……の」

《さらり……》
(より一層身を寄せ、肌を擦り合わせる音)

ナコ
「主様……。
まだ……昼餉(ひるげ)まで時間もある。
勿論夕餉にも……眠るにも、じゃ。
どうせこの雨では外になども出れぬし……のぅ?
時間を持て余しておるようならば、どうじゃろう。
……昨夜の続きを、ここで、というのは……嫌じゃろうか?」

ナコ
「思わぬ、まだお主といられるこの時間を……ワシは無為に過ごしたくないのじゃ。
主様さえ良ければ、時間の許す限り……雄と雌と重ね合わせ、液を交わらせ、滴り合わせ。
溶け合うように……主様の熱を、感じさせて欲しいのじゃ」

ナコ
「良い、かのぅ……?
昨日は人肌の温かさに、ただただ乱れてしもうたが。
今日はもう、お主がしっかりとここにいてくれておるのは、分かっておるから……。
お主をより一層感じられるようにより深く、淫らに、溺れるように……肌を重ねさせて貰いたいんじゃ」

ナコ
「んっ……ちゅぅ、んんぅっ♪
ふぅ、んっ、ちゅぅ……く、ゃ……ぅんっ♪
はぅ……んっ♪
ワシ、お主がそうしてくれる口吸い……やはり、好きじゃな♪
それだけで、心の奥がきゅっと締め付けられて、一緒に暖かくなってくるのじゃ……ふふ♪」

ナコ
「くぉん……♥
うん、では主様……♪
時間の許す限り、今度はお互いの存在を確かめ合いながら……深く、感じ合おう……のっ♥」

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