母の浮気/9
良太は、焦ったような男の顔を見た。早くシたくてシたくて、たまらないといった表情である。男は、すぐにズボンをおろすと、トランクスも脱いで、下半身をあらわにした。改めて見たその肉棒は、父のモノよりも大きそうに見えたが、父のそれが勃起しているのを見たことはないので、あるいは、そうは違わないのかもしれなかった。
膝をついた男は、そこで、ハッとした表情になって、
「お、奥さん、すみません、ゴムが無いです……」
と言って、がっかりした色を目に浮かべた。ゴムというのが避妊具を意味することを、良太も知っていた。そうして、避妊具が、妊娠を避けるものであるということも。それをつけないと妊娠してしまう可能性があるのである。ということは……二人の交わりはここで終わりなのだろうか……良太は、がっかりするものを覚える一方で、とはいえ、母が友人の父親にはらまされるのを想像すると、気分が悪くなり、がっかりよりも、そっちの気持ちの方が大きかったので、しょうがない、とあきらめかけたところ、
「そのままでいいから、来てっ!」
と母が言うではないか。驚く良太の前で、同じように驚いた男が、
「い、いいんですか?」
と念を押した。
「いいから、早くっ!」
母が急かすような声を出す。
それでも、男がためらっている様子なので、
「今日は大丈夫な日だから!」
さらに母が言うと、ようやく、心が決まったのか、母の足の中に入ってきて、そのまま、肉棒を差し入れたようだった。角度のせいで、合体の瞬間のシーンは見られなかった良太だったが、初めて、目の前でセックスを見ることになった。興奮してもいいところ、これが、子どもができてしまう行為であることが分かっているので、興奮に乗り切れないのを良太は感じた。一人っ子の彼は、弟なり妹なりを欲しがってはいるけれど、その父親が、友だちのお父さんということになると、話はかなり変わってくる。
「はあああっ、いいっ、奥まで届いているわ」
母が、感極まったような声を出したので、良太の物思いは中断された。そうして、もうこうなってしまった以上は、二人の営みに集中するしかないと考えた。ここから飛び出していって、二人を止めるなんてことをするのなら別だけれど、ここで見ている限りは、じっと見ているしかない。母も、大丈夫だと言っていたわけでもあるし。
「おおっ、奥さんっ、す、すごいです……」
覚悟を決めた良太の目に、男が惚けたような顔をするのが見えた。