官能物語 2020/07/26 14:00

母の浮気/22

 それから、二週間ほどした後のことである。良太は、その日、久しぶりに和室の押し入れに隠れていた。良太は、いつも押し入れに隠れているというわけではない。彼にも社交的生活というものがあって、学校が終わったあとや、休日には友だちと付き合わなければいけないときがあった。誘われて遊びに行かなかったらどうなるか。付き合いが悪いやつということになって、コミュニケーションが取りづらくなり、徐々に孤立するというのは、大人の社会とまったく変わらない。

 その二週間に、父母のピロートークのときに出た江藤さんの家にもお呼ばれする機会があった。良太だけが招かれたわけではなくて、クラスメートの女子数人と、男子数人で、みんなで行ったわけである。良太のクラスは、男女間の交流があって、たまにそういう機会があるのだった。江藤さんは、目元が涼しげでスタイルもいい綺麗系の女子で、ちょっと高飛車なところがあるのが玉に瑕であるが、悪意があるわけでもないので、それほど魅力を損なうことなく、男女ともに人気は高かった。

 そのときに、江藤さんのお父さんとお母さんにも会う機会があった。二人とも美男美女を絵に描いたような夫婦で、背が高くスタイルもよかった。二人のうちでは、やはり良太は江藤さんのお母さんの方に心引かれるものがあった。心というか、体というか。江藤さんのお母さんは、江藤さんの上位互換とでも言うべき存在で、綺麗さはそのままに、さらに性格も穏やかで優しかった。近くに来ると柑橘系のいい香りがして、良太は思わず、股間が硬くなるのを覚えた。

 良太は自分の母親もかなりの美人だと思っているけれど、この江藤さんのお母さんも負けていなかった。このお母さんも、自分の母のようにセックスするのだろうかと思えば、股間はさらに硬さを増して、みんなから勃起を見られないようにするために、苦労した。

 江藤さんのお母さんに比べれば、良太にとっての魅力は格段に劣るお父さんの方だったが、子どもから見ても、ハンサムな好青年だということはよく分かった。

「江藤さんのパパって、本当にかっこいいよね!」

 と女子がきゃぴきゃぴと騒ぐのも、よく分かる気がした。このお父さんが、こんなに綺麗な奥さんがいるにも関わらず、うちの母親のことを気にかけているというのだから、不思議である。

 そうして、その不思議が、その日、良太の前で展開されようとしていた。

「どうぞ、どうぞ、今お茶でも淹れますから」

 押し入れに隠れていた良太は、母の楽しそうな声を聞いた。いつも軽快な調子であるけれど、今日は、いっそう軽やかである。

「いえ、お構いなく。すぐに失礼しますから」

 相手の声は、江藤さんのお父さんのものだった。

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