母の浮気/33
それに応える江崎さんが笑顔である。
「ぼくも気持ちよかったですよ」
「でも、江崎さん、まだ出してないでしょ?」
「分かりますか?」
「だって、硬くなったままだし……ごめんね、わたしだけ先にイッちゃって」
「いや、いいんですよ。気持ちよくなってもらえたら。痛くはなかったですか?」
「全然。それどころか、どうにかなっちゃいそうだった……正直に言うと、旦那とするよりもずっと気持ちよかったぁ」
ぶっちゃけすぎだろ、と良太は思った。そんなことまで言う必要があるのだろうか。しかし、必要とか必要ではないとか、そういう尺度で行動する女性ではないのだということは、良太も知っているはずだった。天真爛漫が彼女のたちである。
「いやあ、嬉しいな。お世辞だとしても嬉しいですよ」
「お世辞なんかじゃないわよぉ。本当だって」
「では、ぼくも言わせていただければ、妻とするよりずっと気持ちいいです」
「あら、ありがとう。でも、由里子ちゃんに何だか悪いわね」
その夫と交わっておいて、今さらいいも悪いもないだろう。呆れた良太の耳に、
「今度は江藤さんが気持ちよくなる番よ。わたしのこと、好きにしていいから」
母の明るい声が聞こえてきた。
「そうですか、じゃあ、遠慮なくお言葉に甘えます」
そう言うと、江藤さんはつながったままで、母の片足を高く上げて、もう一方の足をまたぐようにして、母の体を横倒しにするようにしてから、母の足をおろした。
いわゆる、側位という体位だったが、良太は知らなかった。
「あー、わたし、この体勢好きなんだ。余計に感じちゃうかも」
母がうきうきとした声を出した。そのあとに、
「あ、ごめん、ごめん。江藤さんに気持ちよくなってもらう番なのに」
と慌てて謝った。
「いや、いいんですよ。奥さんが感じているところを見られると、ぼくも気持ちいいので。いっぱい感じてください」
そう言うと、江藤さんは、片手を伸ばして、横に張り出す格好になった母の乳房の一つをむんずとつかんだ。
「あっ……」
母がぴくんと反応して、愛らしい声を出す。
「可愛いですよ、奥さん」
「一つお願いがあるんですけど」
「何ですか?」
「『奥さん』じゃ味気ないから、名前で呼んでもらえません?」
「あやかさん?」
「『さん』はいらないわ」
「あやか?」
「うん」
「じゃあ、ぼくのことも名前で呼んでもらえますか」
「裕也さん?」
「『さん』はいりませんよ」
「でも、わたし、男の人を呼び捨てしたことないから」
「なら、さん付けで」
「はい、裕也さん」
二人は笑い合った。
なんだろうこれは。
本当に恋人同士のような雰囲気である。