母の浮気/37
「ああっ、ダメッ、ダメッ、イクッ、ああっ……イクーーーーッ!」
母は、ほどなくして、またクライマックスに到達したようだった。しかし、江藤さんは、まだイッていないようで、執拗に腰を振り続けた。
「ダメッ、もうダメッ、キツい、キツい、もうダメッ……あああ、また……またあああああっ!」
母は絶叫とともにイキ続けた。
何度かその絶叫を聞いたあとに、いよいよ、江藤さんがイクときが来たようで、
「イクよ、あやかっ!」
一声かけると、江藤さんは、腰の動きを、激しいものにした。母は、疲れ切ったようになって、顔を上げなかったが、
「ああっ、ああっ、ひああああんんっ!」
声だけは上げ続けた。
「出すよ、あやかっ!」
「出してっ、出してっ! ああっ、またイクッ、イグウウウウゥ!」
母の尻たぶを手でつかむようにして、最後に大きく一突きした江藤さんは、そのまま動かなくなった。
部屋の中は、しばらくの間、しんと静まりかえっていた。
やがて、江藤さんは、母の体から離れた。ずるりと引き出された肉棒は、射精したはずだというのに、なお衰えておらず、剛直を保っていた。
「大丈夫かい、あやか」
江藤さんが、母の体を仰向けにすると、その顔は、茫然自失といった風で、目は虚ろで、唇からはよだれが垂れているのが見えた。
母はしばらく動けないようだった。そのうちに、江藤さんは、コンドームを取り外すと、その口をしばるようにして、近くのティッシュ箱からティッシュを引き抜いて、コンドームをくるんで、畳の上に置いた。そうして、母の隣に横たわるようにした。片手で、肘枕を作って、もう一方の手で、母のお腹のあたりを撫でるようにする。撫でられているうちに回復したのか、
「ああ、すごかったぁ……」
母が声を出した。
「こんなの初めてよ」
「ぼくもですよ」
「本当?」
「ええ」
江藤さんは、爽やかな笑みを作った。それは、浮気という後ろ暗い行為をしているにしては、いかにも不似合いな笑みだったが、江藤さんにはよく似合っていた。
「わたし、裕也さんと離れられなくなっちゃいそう」
「ぼくもだよ、あやか」
「ふふっ、わたしたち、それぞれ結婚しているから人前では付き合えないけど、でも、秘密の恋人同士っていう関係はどう?」
「いいね」
「本当?」
「ああ」
「じゃあ、キスして。誓いのキスよ」
「きみをぼくの秘密の恋人にすることを誓うよ、あやか」
そう言って、江藤さんは、母にキスをした。
何が秘密の恋人だよ、と良太はアホらしく思いながらも、そのアホらしいことをこの二人がどこまで真剣に考えているのかは、分からなかった。