官能物語 2020/08/11 14:00

母の浮気/38

 そうして、その秘密の恋人関係とやらが、いったいどのように維持されたか、良太にはよく分からなかった。というのも、あれから、江藤さんと母の絡みを見ることがない期間が随分と続き、そのうちに、良太は学年を上がり、さらに学校まで上がってしまったからである。そうしているうちに、なんと江藤さん一家は、引っ越してしまった。仕事の関係らしい。

 引っ越す前に、良太は、江藤さんの娘から、引っ越してもSNSで連絡を取っていいか、訊かれた。良太は何の気もなくそれを許した。彼女とは、そこそこ話をして、引っ越し当時、クラスも同じだった仲である。

――おれのこと、好きなのかも……。

 などということは、良太は考えもしなかった。彼女はますます母親似の美人になっており、好きな男もいるというもっぱらの噂だったからだ。そういう良太の方が、同年代の女子に興味が無かったということもある。母の交わりを見過ぎたせいで、どうしても、年上の熟女としているところばかりを妄想するようになってしまったのだった。エッチ動画も、母子相姦ものや、熟女と少年ものばかりをもっぱら観るようになってしまった。

 良太は、もしもできることなら、母に童貞を卒業させてもらえないだろうか、ともやもや想像することがよくあった。しかし、いかに奔放な母でも、息子から、

「初めてをもらってくれないかな?」

 と言われたら、さすがに、

「いいわよ」

 とはいかないのではないかと思われた。浮気をするのと、母子相姦するのとではわけが違うだろう。母との関係は良好そのものであって、その関係を崩すに忍びない良太は、なかなか言い出せなかった。その「なかなか」のうちに、季節は巡り、良太は成長したわけである。

 江藤さんが引っ越してから、母と他の男性の絡みを見ることはなかった。あるいは、それは、良太が押し入れに隠れるということをやめたせいかもしれない。これは、隠れんぼうの趣味自体に飽きたということもあるけれど、相応に社会生活が忙しくなってきたからということもあった。

 一度、良太は和室に監視カメラをつけてみてはどうだろうか、と考えたことがある。そうすれば、わざわざ押し入れに隠れなくても母の浮気を見ることができる。しかし、直接的(?)なのぞきならともかくとして、監視カメラをつけるというのはどうなんだろうか、ちょっとそれは卑劣なのではなかろうか、と正当なのかどうなのか分からない道徳心めいたもののために、やめてしまった。

 その日、良太は、久しぶりに、押し入れに隠れた。

 体も大きくなってきたので、ちょっと窮屈だったが、それはそれでなかなか面白かった。今よりも子どもだった頃のことを、若者らしくもなく、なつかしく思い出していると、母の話し声がしてきた。

「あらぁ、良太に用じゃないの?」

 どうやら、来客のようである。
 誰が来たのだろうかと思っていると、

「今日は、おばさんにお願いがあって、来たんです」

 と高い声が、どこか聞き覚えのある調子で、響いてきた。

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