官能物語 2020/08/12 14:00

母の浮気/39

 それは、同じ町内に住む、良太より二歳年下の男の子のものだった。近所のよしみで、昔からよく遊んでやっていて、兄弟のいない良太にとっては、弟のように可愛がっていたし、彼の方も、

「良太お兄ちゃん」

 と言って、なついてくれていた。家にも、何度も遊びに来たことがあるし、つい、一週間前も遊びに来て、ゲームをやっていった。その彼が訪ねてきたからには、当然に自分に用があってしかるべきだというのに、用があるのは、母だという。どういうことだろうかと、良太が思っていると、その思いを、

「わたしに用って、どんなこと?」

 母が、代弁してくれた。
 そのあと、しばらく沈黙が流れた。どうやら、かなり言い出しにくいことのようである。彼の用事について、まったく見当もつかない良太は、

「もう一杯、オレンジジュース入れようか?」

 母の声が聞こえたあとに、

「あの、おばさん、ぼくにセックスを教えてください!」

 彼の声を聞いた。
 良太は呆気に取られた。何を言い出すんだろうか、という思いは母も同じだったようで、

「ど、どうしたの、久司くん?」

 物に動じない彼女が、驚いた声を出していた。

「ぼくの、初めての人になってほしいんです!」

 少年は、はっきりとした声を出した。どうやら童貞卒業の相手をしてほしいと言っているようである。良太は驚いた。確かに、久司は、家に来ると、たまに母の体を目で追っていることがあったが、それは思春期の少年のやむをえないものであって、まさか、そこまでの欲求を抱いているとは夢にも思わなかった。

「お願いします、おばさん!」

 一度、自分の気持ちを話したからには、もう願いを聞いてもらうほかないと腹をくくっているのか、少年は、はっきりとした声を出していた。

「ちょ、ちょっと待って。久司くんは、何を言っているか、自分で本当に分かっているの?」
「はい、分かってます。おばさんとセックスしたいんです」
「そのね……セックスっていうのは、本当に好きな人とするものなのよ」

 母がたしなめるような声を出した。
 おいおい、と良太は、これには呆れた。さんざん、浮気セックスを繰り返していた母が言っても、なんの説得力も無い。

「ぼく、おばさんのことが好きです! お願いします!」
「……困ったわねぇ」

 良太は、二人のやり取りから意識をそらした。いかに、母がセックス好きだとは言っても、今回はありえないと思ったからである。あとに続くのは、母がたしなめる声と、久司がくいつく応酬だろう。そうして、最後には久司があきらめるしかない。もしも、まあ、ありえないとは思うが、興奮した久司が母を襲うことがあれば、そこは、もう押し入れから出て母を助けるしかない。こんなところに隠れていたことがバレてしまうけれど、背に腹は代えられない。そんなことを思って、一応聞くだけは聞いていると、

「誰にも内緒にできる?」

 聞こえてきた母のセリフに、良太は耳を疑った。

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