母さんでもいいや/2
これまで、と言っても、里穂には、それほど男性経験があるわけではない。夫と結婚する前に、1人付き合っていた人がいただけである。その夫と、息子がごく幼い時に、死別してしまったあと、他の男性と付き合ったこともなかったので、息子のモノが客観的にどの程度なのかは分からないけれど、ともかくも、大きく感じたことは事実である。
里穂は、思わず、この大きな肉棒に自らの体を貫かれたらと想像してしまった。
一体どんな気持ちになることだろう。
――わたしったら……。
里穂は、軽く頭を振るようにした。
よりによって、血のつながった息子の肉棒を見て、なんということを考えてしまったのかと反省した。
「んー……」
覚醒しようとしているのか、息子は、また声を上げた。里穂は、放っておいたほうがいいのだろうかと、思った。この状態で起こしたら、気まずいことにならないか。向こうは、全裸で寝ているくらいだから、見られてもどうということもないのだろうけれど、こっちが見ていたということを知られるのは気まずい。
このまま立ち去った方がいいかもしれない、あるいは、もう一度部屋の外に出て、ノックして起こす方がいいかもしれないと思った里穂は、そうする前に、もう一度だけと思って、息子の肉棒を見た。
皮もしっかりと剥けた一人前のそれは、すでに、女の味を知っていることだろう。親の欲目かもしれないが、息子は整った顔立ちをしており、性格にも陰湿なところがなく、そのせいか子どもの頃から、カノジョに不自由したことはなかった。現に今も付き合っている女の子がいて、この前、紹介を受けたばかりである。里穂がいないときに、この部屋に呼んで、行為に及んだこともあるだろう。
里穂は、にわかに寂しさを覚えた。夫と死に別れてから、彼女は、息子のために生きてきた。息子の健康な心身の成長の責任を一身に負って、自分の幸せを後回しにしてきたのである。そうして、息子は、彼自身の世界を持ち始めていた。大学を卒業したら、この部屋からも出て行くことだろう。そうすると、里穂は一人になる。
あるいは、そこからが、新たな人生のスタートなのかもしれない、と思った彼女は、息子の勃起を前に感慨にふけっている自分にげんなりして、とにかく、部屋の外に出ようと思った。そのとき、里穂は、腕をぐっとつかまれるのを感じた。息子の腕である。
びっくりした里穂だったが、起きたのだろうかと思った息子は、まだ目を閉じていた。
「拓実?」
そっと声をかけた里穂は、次の瞬間、ぐいっと腕が引かれたかと思うと、息子の腕の中に招かれた自分を認めた。