母さんでもいいや/4
里穂は驚きに目を見開いた。とっさに体を離そうとしたけれど、息子の手がしっかりとうなじをとらえて離さない。もう一方の手は背中に回されていて、がっちりとホールドされている格好である。里穂は、再び、息子の舌が自分の口内へと入り込んでくるのを感じた。にゅるりとした舌が、まるで自分を食べようとでもしているかのように、口内のいたるところに当てられると、再び、うっとりとしてしまう自分を里穂は認めた。
――いけないっ!
と思ってみても、がっちりと抱き締められているせいで、身動きが取れない。ディープキスを受けているうちに、里穂は、どんどんと体から力が抜けていくのを感じた。息子のキスが巧みなのか、あるいは、久しぶりの快感に体が反応しているのか分からないが、ともかくも思考回路が飛びそうになってしまう。
里穂は、息子の手が、自分の尻たぶに当てられるのを感じた。ぐにぐにと尻を無遠慮に揉まれると、自然と体が応えて、震えるようになってしまう。
――ダメッ!
里穂は、消えかけていた理性のひとかけらを行使して、脱力した体にむち打って、なんとか息子の体を引き離すようにした。そうして、
「な、なにをしているのっ!」
強い声を上げようとしたが、出てきたのは、ひっくり返ったような調子の声である。
「まだ、なにもしてないよ。これから、するんだから」
そう言うと、息子は巧みに母親の体を下にして、自らを上にした。その目は、まるで獲物を前にした、肉食動物のそれであり、たくましい裸体にも野性味があった。
「じょ、冗談でも、していいことと悪いことがあるわよっ!」
さっきよりは、はっきりとした声を出すことができた里穂は、
「別に冗談をしている気は無いよ。ずっと母さんのことを抱きたいって思ってた。だから、抱くよ」
息子の落ち着いた声を聞いた。言葉通り、冗談を言っているようには聞こえない。
――えっ、えっ……?
里穂は、パニックに陥りかけた。ずっと抱きたいと思っていたとはどういうことだろうか。そんな素振り、今まで一度も見たこともなければ、母親に欲情している様子など全く感じられなかった。あるいは、それは、息子をまったくノーマルな子であるとみなしていたがゆえの鈍感さによるものだったのか。
「母さんもおれのこと嫌いじゃないだろ?」
息子が、自信たっぷりに言った。
それは、嫌いなわけがない。あるいは、自分の命よりも大事かもしれない。しかし、だからと言って、母子で抱き合うなどできるわけがない。
「と、とにかく、落ち着きなさいっ!」
「落ち着いてるよ、おれは。じゃあ、そういうことで」
里穂は、みたび、息子の顔が近づいてくるのを見た。