母さんでもいいや/10
里穂は、息子から離れると、部屋を出た。そのまま、シャワーを浴びに行こうと思って、着替えがなかったことに気がついたところで、今まさに、自分がショーツを身につけていないということにも気がついた。息子に脱がされたままだったのである。息子の部屋に取りに帰ろうかと思ったのだけれど、
――もういいわっ。
後回しにして、シャワーを浴びることにする。先に、息子との交わりによる痕跡を消したかった。シャワーを浴び始めると、少しホッとしたが、安心していい事態では全然無
い。まさか、息子に犯されるとは。しかも、たとえば、これが互いがお酒に酔ってなどというシチュエーションであれば、まだしも、朝の起き抜けなのである。酔っ払った勢いでセックスというのは聞いたことがあるが、寝ぼけた勢いでなどということは聞いたこともない。
さらに言うと、この事態に対して、息子は大した感慨を抱いていないということが、里穂の悩みの種でもある。母親と体を交えたというのに、それに対する罪悪感がない。里穂が問いただしたいのはまさにそこだった。いったい、どういうつもりで母親を犯したのか。マザコンが極まってというならまだしも、そんなことはないし、そもそも、彼は何て言っていたか。
「母さんでもいいや」
などと言っていなかったか。それはつまり、性欲を晴らすためだったら、誰でもよかったということであり、たまたまそのとき彼の目の前にいたのが、自分だったというそのことではないか。だとしたら最悪である。
里穂は、秘唇の中を探った。まだ、さきほど注がれたオスの体液が残されていたようである。大丈夫だろうか、と安全日を指折り数えながら、ナカからかきだそうとすると、先ほどの息子との交わりを思い出さずにいられない。
――すごかった……。
というのが、それ自体に対する率直な気持ちである。あんな快感は初めてのことだった。どうにかなってしまいそうだったけれど、あるいは、すでにどうにかなってしまっていたのかもしれなかった。あれほどの快感があったなんて、今日まで全く知らなかったことであって、なんだか随分と損をしてきた気持ちにさえなった。
「はあっ……」
秘唇をいじるようにしていたら、少し感じて来てしまったようである。
乳房に指を当ててみると、乳首が立っていた。
――少しだけ……。
さきほどの交わりによる性の残り火を感じた里穂が、それを鎮めようとして、乳房と秘所に指を当てていると、後ろから、ガラガラと蛇腹のドアが開く音が聞こえてきた。