官能物語 2020/12/04 17:00

母さんでもいいや/11

 見るまでもなく息子である。

「な、なにをしているのっ!?」

 振り返った里穂が、乳房と秘所を隠すようにして、問いただすと、

「やっぱり、おれも一緒に入ろうかなと思って」

 とあっけらかんとした顔で彼は答えた。

「脱衣所のカギも開いてたし、入ってもいいのかなって」

 確かに、里穂は、浴室に併設する脱衣スペースの鍵をかけなかった。しかし、それは、故意にそうしたわけではなくて、早くシャワーを浴びたいばかりに、つい忘れてしまっていたのである。

「す、すぐ出るから、出て行きなさいっ!」

 里穂が声を荒げると、しかし、息子は、その声に押された風でもなく、かえって近づいてきた。

「ちょ、ちょっと! 聞こえないの、拓実!?」
「やっぱり怒ってるんだろ、母さん?」
「えっ、な、なに?」
「さっきのこと、怒ってるんだろ?」

 里穂は、さらに息子が近づいてきて、体が触れそうになるほどになるのを認めた。

「おれのこと、嫌いになった?」

 息子が、その目に悲しそうな色を滲ませて、訊いてくる。
 里穂は、胸の奥がきゅんと鳴るのを聞いた。嫌いになどなるはずがない。お腹を痛めて、ほとんど女手一つで育ててきた子である。どうして嫌いになどなるだろうか。

「嫌いになんてなってないわ」
「本当!?」

 息子は、パッと目を輝かせた。まるで、子どものような所作に、里穂はホッとした。そうして、考えてみれば、襲われたのが自分でよかったのではないかとも思えた。これが、誰か、他の女性だったとしたら大変な問題になってしまう。

 もちろん、さっきの件は、自宅で寝起きという状況で起こったことであって、そういう状況に居合わすことは、まずもって母親である里穂しかいないわけで、他の女性が被害に遭うことはないのだけれど、里穂はそこまでは考えなかった。

――よかったんだわ、これで。

「母さん……」

 里穂は、息子の腕が、自分の背を抱くようにするのを感じた。

「ちょ、ちょっと、拓実!」
「いいだろ、仲直りのハグだよ」
「な、なによ、それっ」

 振り払いたいけれど、乳房と秘所をそれぞれ抑えているため、そうすることもできない。里穂は、息子の片手がしっかりと背中を抱いて、もう一方の手が尻たぶを掴むのを感じた。

「た、拓実!」

 がっちりと息子に抱き締められる格好になって、里穂は、身動きが取れない状態になった。

「母さんの体、気持ちいいな」
「も、もういいでしょ。離れなさいっ!」
「ねえ、母さん?」
「な、なによっ」
「もう一回シてもいいかな?」

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