官能物語 2021/01/16 14:00

母さんでもいいや/29

 里穂は、しばらくの間、茫然自失した状態だった。何を考えることも、何を思うこともできない。意識を取り戻したとき、まず息子の顔が見えて、自らの状況を確認すると、自分が今した振る舞いに対する自責の念が染みてくるのが分かった。

 何ということをしてしまったのか、快楽欲しさに息子の女になるなどという宣言をしてしまうとは。母親として、いや、母親がどうこうではなく、大人としてあるまじき振る舞いに、里穂は、大いに恥じ入った。

「何だよ、まだ、ごちゃごちゃ何か考えてんの?」

 息子が、見透かしたような目で言ってくるのに対して、

「『ごちゃごちゃ』って言い方無いでしょ!」

 里穂は、ムッとして反応した。そうではないか。近親相○を犯したのである。あまつさえ恥ずかしい誓いをしたわけだから、この状態で色々と考えることをしない人間などいるわけがないだろう。

「でも、考えたって、したことをしなかったことにはできないだろ?」

 それは、確かに息子の言うとおりだったが、過去のことは変えられなくても、未来を変えることはできるだろう。そのためには、やはり、

「本当に、どうしてこんなことをしたの!?」

 原因を特定したかったけれど、

「また、それ? くどいなあ。別に、どうしてもこうしてもないって。母さんがいい女だからヤった、ってただそれだけのことだよ」

 やはり、大した原因などないという答えが返ってきた。母親に対していい女というのも問題だが、いい女だからヤッたという理屈もかなり問題である。こういう行為はせめては愛情がなければならないはずではないか。つまり、里穂としては、

「昔から母さんのことが好きで、母さんのことを想ってずっと自慰をしていたんだ。さっきは、寝ぼけた振りをして母さんを襲って、一度セックスするだけでも願いがかなったわけだけど、その願いをかなえた今、母さんのことを自分のものにしたくて、おれの女になるって言わせたんだ。それもこれも、母さんのことが本当に好きだからなんだよ。ごめん」

 このくらいの告白を息子から聞きたかったわけである。これくらい言われれば、里穂としても納得はできないまでも、彼に同情するし、今度のことは一度きりということにして、お互いこれまで通りの関係に戻りましょうと、たとえ戻れないにしても、そうしようとしたという体裁を保つことができる。ところが息子は、そういう素振りを全く見せないのである。それどころか、

「お互い気持ちよければいいじゃん、な、里穂」

 お気楽な声を出すのだった。

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