美少女のいる生活/19
「あっ……」
美咲が小さく驚きの声を漏らす。
「男が可愛い女の子にすることって言ったら、決まってるだろ」
貴久は、腰に回した腕に力を込めると、美咲をじっと見つめた。
「えっ……えっ……」
「目を閉じて、美咲ちゃん」
「ま、待ってください……まだ、心の準備が……」
「いいから」
美咲は、素直に目を閉じた。
貴久は、目を閉じて心なし唇を突き出すようにしている彼女の、そのおでこに、もう一方の手で軽くデコピンした。
「えっ!?」
「こういう目に遭うんだよ」
「ど、どういう目ですか。からかわれる目?」
美咲はムッとした顔をした。
貴久は少女の細い腰から腕を放した。
「わたしのドキドキを返してください!」
「ドキドキしてもらえるとは光栄だな」
「わたしが貴久さんのこと好きだってこと、信じてないんですか?」
「いや、信じているよ、モチロン」
「本当は?」
「ちょっと信じられない部分もある」
「ちょっと?」
「いや、かなり」
「シャワー浴びてきてください。そのあとに、お話があります」
「体のこと?」
「そうです」
「分かった」
貴久は、勧められたとおりにシャワーを浴びた。そうして、どこかわくわくとしている自分を感じた。これから素晴らしいことが起こるような、そんな感覚である。こんな感覚は久しぶりだった。小学校の時以来かもしれないと思えば、随分と平凡な人生を歩んできてしまったものだと、げんなりした。
シャワーから上がって、Tシャツと短パンを身につけて、ダイニングテーブルに戻ると、相変わらず露出が多い少女が、
「炭酸水飲みますか?」
と訊いてきたので、一杯いただくことにした。炭酸水にレモンジュースを少し入れてくれたものを飲むと、シャワーをしたことと相まって、体が爽快になるようだった。
「さて、と。じゃあ、話を聞こうか」
貴久は、ダイニングテーブルで彼女と向かい合った。彼女の表情は、これまでのものとは違って緊張しきっている。これはよほどの病状なのだろうと、貴久は考えた。そんな病状がどうして父親である友人にバレていないのか不思議であるが、まずは話を聞いてみてからのことだった。
「あの……」
美咲は、口を開きかけて、すぐに閉じた。
「急がなくてもいいよ」
「はい……約束していただけませんか、貴久さん」
「分かった」
「まだ何も言っていませんけど」
「どんな約束でも守るよ。おれに無茶な約束はさせないだろうって、美咲ちゃんを信頼している」
「これから言うこと、誰にも言わないでもらえたらと思って」
「それはお父さんにも?」
「ち、父にですか!? もちろんです! 一番言っちゃダメな人です!」
「そうか……ショックを与えるからかもしれないからだね」
「ショック? まあ、ショックはそれほどではないと思いますよ。『そうなんだ、ふーん』くらいで」
「その程度のことなの?」
「わたしにとっては違います!」
「なるほど……」
何のことやら貴久は、さっぱり分からなかったが、すぐに分かることになった。
「わたし、処女なんです」
美咲が、思い切った声を出した。