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雰囲気味わいプランの記事 (434)

官能物語 2021/07/29 12:00

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官能物語 2021/07/27 21:00

美少女のいる生活/25

 それから、1週間ほどが経った。この間、貴久は昼は普通に仕事をして、朝と夜は美咲と一緒に過ごすという生活を続けたわけだが、一緒に過ごしているうちに、何ごとか気に障ることも出てくるだろうと思っていたけれど、そんなことは全く無かった。それどころか、まるで長年連れ添った夫婦ででもあるかのように息はぴったりである。

「無理してるんじゃないか、美咲ちゃん?」
「えっ、何ですか?」

 夕食時である。
 美咲は、箸で冷ややっこのかけらを口に運ぼうとしたところで、止めた。

「とりあえず、それ食べて」
「はい……食べました」
「生活のペースをおれに合わせようとしてないか?」
「全然してません」
「やっぱりそうか…………ん? してない?」
「わたし、貴久さんに合わせようなんてこれっぽっちもしてませんよ。伸び伸び暮らさせてもらっています」
「いや、でも、そんなことはないだろう。おれの面倒を色々と見てくれているわけだから」
「貴久さんの『面倒』なんて、全然見てませんよ。だって貴久さん、全部自分でやってくださるじゃないですか。面倒っていうのは、仕事以外何にもしなくて、家に帰ってくれば、部屋がきちんと片付いていて、洗濯が為されていて、食事の用意もできていて当然っていう顔をしている父のような人間を見るときに使う言葉です」
「でも、おれもきみのお父さんと同じようなものだと思うけど」
「そんなことないです。食べ終わったら片付けて食器を洗ってくださるし、服は脱ぎっぱなしになさらないし、お風呂やトイレだって――食べているときに失礼します――掃除してくださるでしょ」
「うーん……いや、美咲ちゃんが無理してなければそれでいいんだけどさ」
「わたし、無理しているように見えますか?」
「見え……ないけど、女の子はウソをつくものだから」
「それ、炎上する発言ですよ」
「つぶやく気は無いよ」
「わたし、本当に自由にさせてもらっていますよ。家にいたときよりも、ずっと開放的な気分で暮らしています」
「そうか……ならいいんだけど」

 食べ終わってから、しばらくテレビを見たり、互いに本など読んだりしていると、いつもの時間がやってくる。

「じゃあ、そろそろ寝ましょうか、貴久さん」
「そうだな」

 貴久は、リラックスできる少女と暮らす時間の中で、この時間だけは、多少緊張を覚えた。表面上は冷静にしているけれども、心の中はそれほど冷静なわけではない。貴久は、彼女と一緒に自室に行くと、先にベッドに入って身を横たえて、彼女を迎えた。

「ふふっ」

 と楽しそうな声を出して、腕の中に入ってくる少女は、まだまだ大人とは言えないまでも、子どもとは全く言えない体つきを備えているのである。

「これより広いベッドもいいかもしれないけど、わたしはこのくらいでもいいですよ」

 そう言うと、彼女は足を絡めるようにしてきた。
 しなやかな太ももの感触が貴久の体の奥を熱くする。

「明日はよろしくお願いします」
「きみのお父さんはともかくとしても景子さんに会えるのが楽しみだよ」
「好きになっちゃダメですよ。一応、父の大事な人ですから」
 
 翌日は彼女の入学式で、式には彼女の父と継母も来ることになっていた。
 もちろん、貴久も出席する。

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官能物語 2021/07/25 10:00

美少女のいる生活/24

 約束した時間までに家に戻ると、

「お帰りなさい!」

 パタパタと近寄ってきた美咲が、薄手のパジャマ姿である。

「今日、色々荷物が届いたんです」

 そう言われた貴久が、彼女の部屋を見に行くと、「色々」と届いた割には、部屋の中はがらんとしていて、あまり変わらなかった。

「クロゼットの中に入れてありますから」
「何が来たの」
「主に服と下着ですね」
「やっぱりベッドがいるな。あと机」
「ベッドはいりません」
「布団派だから?」
「それもありますけど……わたし、昨晩みたいに、貴久さんと一緒に寝させてもらったらダメですか?」
「えっ、これからずっと?」
「はい」
「じゃあ、よっぽどベッドがいるな」
「え……」
「あれじゃちょっと狭いだろ。もう少し大きなやつに買い替えよう」
「いいんですか!?」
「約束の週末まで、おれを襲わないという約束をしてくれたらな」
「お、襲ったりしません!」
「本当に?」
「……多分」
「次の休みにベッドを見に行こう」
「はい!」

 貴久は、先にシャワーを浴びてすっきりとしたあとに、用意された夕飯を食べた。リクエストに応じてくれた純和風のメニューは、体に優しいものである。その中の一品をすすりながら、貴久は言った。

「しじみの味噌汁とは豪勢だな」
「わかめとお豆腐にしようかなって思ったんですけど、冷凍しじみっていうのが売ってて、そもそもお買い得な上に半額のセール中だったので、つい買っちゃいました」
「ああ、そうだ、そうだ。その買い物なんだけど、今日の分はあとで返すから。あと、そのうち、美咲ちゃん用のクレジットカードが届くから、身の回り品はそれで決済するようにしてくれ」
「えっ、でも、それって、貴久さんの口座から落ちるんじゃないですか?」
「そうだよ」
「そんなのいけません。わたし、自分の生活費は自分で払いますから」
「それは絶対にダメだ。二人で生活するために必要なものは、おれが払う。そのくらいの甲斐性はある。これに関しては議論は無しだ」
「……分かりました」
「おれたちいずれ結婚するなら、家計管理は美咲ちゃんに一任するから、その予行演習だと思えばいいんじゃないかな」
「あっ……はい!」

 貴久は、今日、婚約者がいるということを会社で伝えたというエピソードを話した。そうして、帰りに、それを全く信じていない女性の同僚に飲みに誘われたことも話した。

「その人、綺麗な人ですか?」
「美咲ちゃんほどじゃないよ」
「ひえっ」
「何だよ、ひえって」
「何でもないです、驚いただけです。そういうことよくあるんですか?」
「たまにね」
「全部断ってください!」
「了解」

 貴久は、その日も美咲とベッドを共にした。美咲からは芳香が漂って、まるで、花を抱いて寝ているようだと、貴久は思いながら眠りについた。

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官能物語 2021/07/23 10:00

美少女のいる生活/23

 外に出ると、空気が輝いて見えた。それは、春という気候によるものか、それとも自らの心持ちが華やいでいるからかは分からないが、おそらくは後者のような気がした。

 会社までは、最寄り駅まで歩いてから、電車に乗り、さらにそこから歩く格好になる。せいぜいが40分くらいの道行きであって、行き帰りで、1時間20分、もったいないと言えばもったいない時間だが、片道2時間かけてくる同僚もいることを思えば、恵まれている方だろう。

 毎日毎日満員電車に揺られて、出勤する自分を憐れんだことは無いけれど、何だかなあと思ったことはいくらでもある。しかし、そのおかげをもって、いくばくかの蓄えが持てて、少女を家に迎えられたわけだから、それはそれでいいことなのかもしれなかった。

 時間は未来から過去に流れているのだと、あるビジネス書に書いてあった。未来に何をするのかということで、過去の意味が変わってくるのだと。これまでは、何のスピリチュアルだと思って鼻も引っかけなかったけれど、美咲を家に迎えるという未来が、満員電車に揺られて仕事三昧という過去を肯定してくれた今となっては、まったくその通りだ、ビジネス書もバカにできないと思うのだった。

 無事会社に到着して仕事をしていると、同僚から、

「何かいいことでもあったのか。鼻歌でも歌い出しそうだぞ」

 と突っ込まれた。どうやら、かなり機嫌良く仕事をしているらしかった。

「もしかして、彼女でもできたんですか?」

 別の同僚からのツッコミに、

「いや、この年だよ。もしもできるとしたら、婚約者だろ」

 と答えてやった。
 そんな風に言うと、返って信憑性が無くなったということで、みんな興味を無くしたようである。それにしても、もしも、美咲と結婚ということになったらどうなるだろうか。今時、年の差婚など珍しくもないけれど、それはあくまで他人の話であって、それが自分の身の上に起こったら恥ずかしいと思う気持ちはあるのだった。

――まあ、恥ずかしいときは、恥ずかしがればいいか。

 貴久は、そんなことを適当に考えながら、5時にきっかりと仕事を終えた。貴久の会社では、基本的に残業を許していない。勤務時間内で仕事を終えられるように自己研鑽を積めというのが社訓の一つなのである。まことに有り難い会社である。

 会社を出ようとすると、後ろから声がかけられた。
 同僚の女性は年下の妙齢美人である。

「お夕飯を一緒にどうかと思いまして」
「申し訳ないけれど、約束があるんだ」
「じゃあ、明日はどうですか?」
「実は明日もなんだ」
「婚約したって本当なんですか?」
「すでに同棲もしているよ」
「ええっ!」

 びっくりする彼女を残して、貴久は帰路を取った。

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官能物語 2021/07/21 14:00

美少女のいる生活/22

 目が覚めると、一人だった。
 ベッドに起き上がった貴久は、昨夜はあのまま、美咲を腕に抱いた状態で何となく寝てしまったのだということに気がついた。時刻は6時30分である。小用を足すために部屋を出ると、

「おはようございます」

 と美咲の元気の良い声が聞こえた。
 どうやら、朝ご飯を作ってくれているようだった。

「あっ、そうか、言わなかったか。おれ、朝は食べないんだよ」

 貴久は言った。中年にさしかかってから、一日三食を食べるのがつらくなって、ここ数年は、一日二食で過ごしているのだった。

「そうなんですね……」

 美咲は、しまったという顔をした。昨日久しぶりに会ったばかりではあるが、何にも動じそうにない彼女がそういう顔をすることがあるというのが新鮮である。

「せっかく作ってくれたんだし、今朝は食べることにするよ」

 見ると、食卓に並んでいるのは、サラダにスープにハムエッグといった軽く食べられそうなものばかりである。

「でも、それで体調が悪くなったら」
「そんなことにはならないと思うけど」
「じゃあ、お昼のお弁当もいりませんか?」
「作ってくれたの?」
「はい」
「もらうよ」
「すみません、先走ってしまって」
「何にも悪いことなんてないよ。ありがとう」

 貴久は、小用を足して、顔を洗った。朝から何もしなくても、テーブルがセッティングされているというのは、ちょっとした魔法である。そうして、もちろん、それは魔法などではなくて、人の手によるものに違いなかった。

「作ってくれてありがとう」
「どういたしましてです」

 朝食の席に着いた貴久は、美味しく朝ご飯をいただくと、彼女に部屋の合い鍵を渡しておいた。

「仕事は5時に終わるから、6時には帰ってくるよ」
「お待ちしてます。今夜は何か食べたいものがありますか?」
「今日はおれが作るよ。昨日作ってもらったんだから」
「でも、今日は貴久さん、お仕事でしょう。わたしは、お休みですから、わたしが作ります」
「じゃあ、お言葉に甘えるよ」

 貴久は、和食をリクエストしておいた。

「了解しました。行ってらっしゃい」
「行ってきます」
「あ、貴久さん」
「ん?」
「『行ってらっしゃいのチュウ』は、まだ早いですか?」
「早いな。まずは、普通のチュウをしてからじゃないと」

 貴久が真面目な顔で返すと、美咲は頬を赤らめた。

「来週の週末が楽しみです」
「おれもだよ」

 貴久は、上気した顔の少女に見送られて玄関を出た。

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