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おかず味噌 2020/03/18 03:46

短編「定番お漏らし『授業中』」

悪夢の始まりは、五時限目の世界史の「授業中」のことだった――。
「それ」は音もなく私の背後に忍び寄り、授業開始から二十分が過ぎた頃ついに私を捕らえ、やがて私の「お腹」を支配した――。



登場人物「長沢みち子」
 高校二年生。黒髪のストレートで、比較的小柄な、やや幼さの残る顔立ち。いわゆる「イケイケのギャル(死語)」ではなく、学校生活においては化粧をしていないが、休日に友達と出掛ける時は、周囲と同化するために不慣れなメイクを施す。人懐っこい性格のため友人は多く、クラスの男子にもそれなりにモテる。誰とでも分け隔てなく接し、交友関係は割と地味目な女子から、クラスのリーダー格の女子までと幅広い。高一の夏休みから付き合っている彼氏がいる。
 友人が多く、その上彼氏までいるということで、自分では「スクールカースト」の割と上位にいるんじゃないかと思っている。だが、元々は大人しめの性分のため、頂点の「パリピ女子」たちはいまいちノリが合わず、それでも少し無理をしつつも背伸びして同調している。かといって、あまりイケてないグループの友人たちを見下すわけでもなく、むしろ彼女たちと一緒にいるほうが素の自分を出せる気もする。
 だけどやっぱり、イケているグループに所属している自分の方が気に入っていて、彼氏もそのグループの女子たちと仲が良い。だから放課後や休日は彼女たちと遊ぶことで、充実した高校生活をエンジョイしている。
 今の彼氏が人生初めての彼氏で、付き合ってもう一年近くになるが、まだ「初体験」は終えていない。彼氏としてはやっぱりヤりたがっているみたいだけど、何となく痛いのは怖いし、彼氏が自分のことを「そういう目」でしか見なくなるのでは?という不安もある。
 胸はまだ発展途上(かも?)で、少し大きめのお尻と「幼児体型」気味のスタイルに、ややコンプレックスを抱いている。
 下着はママの買ってきてくれたものをそのまま付けていて、今のところ自分で下着を買いに行ったことはないし、その予定もない。それでも、たまに見えてしまう同級生の女子たちの派手な下着には、少しばかり憧れもある。ちなみに今日のショーツは、ピンク色の木綿生地。さすがに「キャラクターもの」や「クマさん」は、とっくの昔に卒業した。
 まさかそのショーツを数十分後に「うんち」で汚してしまうなんて――、まだ彼女は想像さえしていなかった――。



――お腹痛い…。
 みち子は心の中ではっきりと「異変」を自覚する。
 とはいえ、「腹痛」には幾つかの種類がある。小学生の頃、学校で「大便」を禁止された男子たちがよく言っていた「そういうヤツじゃない」というものから、少しでも「幼児体型」を克服するため、家でたまに思い立って「腹筋」をした翌日に訪れるもの、それから「女の子の日」のものまでと、様々だ。
 みち子は自分のお腹に訊ねる。「今の『それ』は、どんなものなんだい?」と。返ってきた答えは――無情にも「便意」を告げるものだった。
――どうしよう…。
 みち子は、教室前方の時計を見る。長い針はようやく円盤の「最下部」に差し掛かるところだった。授業の終わりまでまだ三十分以上ある。

「三十分」という時間を、色々なものに当てはめてみることにした。
 小さい頃に観ていた「アニメ」の放送時間がちょうどそれくらいだ。ということはつまり、同じだけの時間を耐えればいいということだ。だが、ここである問題に思い当たる。
 確かに、放送番組欄にはきっちり、前の番組と次の番組の間、ちょうど三十分の「枠」が用意されている。だけど実際は、二十六分くらいで番組が終わり、あとはコマーシャルなのだ。しかも、オープニングの後、前半と後半の間にもCMがある。
 CMの間、トイレに行ったり、ジュースを取りに行ったりと、テレビから離れる。そんな「休憩」を含めての三十分なのだ。席を離れることも、立ち上がることさえもできない「三十分」とはわけが違う。
 次に、もっと細かく分割してみることにする。
「カップ麺」の待ち時間が「三分(最近ではそれより短いものも多いが)」だ。ならば、その「十個分」がちょうど三十分に相当する。こちらはタイマーで測ってきっちり「3分×10」、間にCMが挟まれることはなく、しかもこれは純粋な「待ち時間」なのだ。だが、ここでもやはり問題はある。
 そもそも、一度に十個ものカップ麺を食べたことがないという問題だ。どんなにお腹が減っていたとしても、せいぜい二個、それが限界だ。「カップ麺を同時に十個食べてみた!」なんて、Youtuberの企画でもあるまいし、家でそんなことをしようものならママに怒られてしまうだろう。
 それに、もし仮にそんなチャレンジをするとしたら、一個三分以内では到底食べ終えられないので、もっと長い時間が掛かるだろうし、そのインターバルはもはや「待ち時間」とは呼べない。
 今度は、もっと長い時間の「一部」を切り取ってみることにする。映画の上映時間を「二時間」だとすると、その四分の一くらいで――。

 みち子は再び時計を見た。思考に耽っていたことで、思わぬ「長い時間」がいつの間にか経過していたことを期待して。
 だが、時計の針はさっきとほとんど同じ位置に留まったままだった。クラスメイトに聞こえぬよう、みち子は小さくため息をつく。
――どうして、こういう時って、時間が経つのが遅いんだろう…。
 これが「相対性理論」というやつだろうか?(違う。)友達と遊んでいる時や昼休みはあっという間に時間が過ぎるのに、授業中は時間の流れがとても遅く感じられる。本当に「同じ時間」なのか?と疑いたくなるほどに。ひょっとすると、時計の針がサボっているんじゃないか?と感じるくらいに。そして、今日の授業はいつも以上に長く思えた。

――先生に言って、トイレに行かせてもらおうかな…。
 世界史の本田先生は、そんなに厳しくない先生だ。申し出れば、きっとトイレに行くのを許してくれるはずだ。そうすれば、授業の終わりを待つまでもなく、すぐにこの苦しみから解放される。だけど――。
――恥ずかしい…。
 授業中にトイレなんて、子供じゃあるまいし。それこそ休み時間に済ませておけ、という話だ。それに、わざわざ授業中にトイレに行くということはつまり、自分の限界が近いことを告白しているようなものである。
「みち子、さっきの授業中、そんなに限界だったの?(笑)」
 きっと後で、美香に訊かれるだろう。
「そう!本当に限界で。漏らすかと思ったよ!」
 そんな風に笑い話で済ませることもできるかもしれない。けど、直接訊かれることのなかった他の友達や、クラスの男子たちはどう思うだろうか?
 みち子は選択を迫られる。「トイレに行くべきか、行かないべきか、それが問題だ」

――いや、待てよ?
 みち子は思いつく。もっと簡単に、もっと手際よく、スマートにこの問題を解決する方法がある。
――「体調が悪い」と言って、保健室に行かせてもらえば…。
 もちろん、彼女が行きたいのは保健室などではなく、「トイレ」だ。だけど、保健室に行きさえすれば、そこからトイレに行くこと自体はそんなに難しいことじゃない。というか、とても簡単なことだ。
――でも、授業をサボることになるよね…?
 真面目なみち子は、わずかな罪悪感を覚える。だが、そんな自分を納得させる論理はすでに構築済みだ。
「トイレに行きたい→お腹が痛い=体調が悪い」
 決して嘘をついているわけではないのだと、自分を納得させる。あくまで「緊急事態」であることに変わりはなく、違うとすればそれが「生理現象」によるものか、本当に「体調の異変」によるものかくらいだ。
 あとは、いかに体調が悪そうな演技をして、先生を騙すかだ。それにはやはり少しの抵抗感が伴う。先生はきっと心配するだろう。保健委員の付き添いを命じるかもしれない。友人たちもきっと心配してくれるに違いない。もしかしたら、授業終わりに「お見舞い」に来てくれるかもしれない。まさかその時に「本当は『うんち』がしたかっただけでした~!」なんて言えるはずもなく、私はそこでも友達を騙す演技をしつつ、「もう大丈夫」という体調が回復したフリをしなければならない。それはとても、カロリーが必要なことだ。

 改めて、みち子は時計を見る。時計の針は「坂道」を上り始めたところだった。あと三十分弱、二十数分、この場で耐えるのか、それとも救済への「一歩」を踏み出すのか。「放置」か「解放」か、そのどちらを選択するべきなのだろうか。
 もちろんこのまま何事もなく、変化を起こさずにいた方が「ラク」に決まっている。だけど「その時」まで、果たして「お腹」がもってくれるのか――。
――ギュルルル…。
 突如、みち子のお腹が悲鳴をあげる。楽観視する自分を突き放すように、胃腸が自己主張を始める。
 みち子は両手でお腹を押さえ、ただじっと「波」が過ぎ去るのを待つ。目を閉じて、苦痛に耐える。額には脂汗がにじみ、全身は小刻みに震えている。

――危なかった…。
 何とか「峠」を乗り越え、みち子は目を開く。平和な教室の中は、さっきまでと何も変わらない。けれど自分だけは人知れず、強大な敵との攻防を繰り広げていた。あともう一回攻め込まれたら、本当にヤバいかもしれない。
「現代では考えられないことですが――、中世のヨーロッパでは、みんな街中に汚物を平然と捨てていました」
 先生の言葉が聞こえてくる。それを聞き取れるくらい、あくまで一時的ではあるが、みち子は束の間の余裕を取り戻していた。生徒たちの「え~!」「不潔!」といった声さえ、耳に届く。現代では考えられないような「常識」を知って、みち子は思う。
――もし、ここが中世ヨーロッパだったなら…。
 もしそうなら、たとえここで「排泄」をしたって、それは常識の範囲内であり、誰にも見咎められることはないのに、と。
「女性の履く『ハイヒール』は実は、当時の人々が街中にばら撒かれた『汚物』を踏まないように発明されたものなんです」
――いや、違う。
 それは「ハイヒール」の成り立ちに、異説を唱えるものではない。
 いくら当時の人たちでも、まさか人前で堂々と排泄をしていたわけではない。もしかしたら、そうなのかもしれないけれど――、それにしたって、それなりに排泄部分を隠すなりのことはしていたはずだ。それに、ここは屋外ではなく、室内だ。先生が言っていたのは、あくまで街中つまり屋外の話であり、当時の人たちだって室内で好き勝手に排泄していたわけではないだろう。そして、今は中世ではなく「現代」なのだ。水洗便所が整っているからこそ、「排泄行為」はトイレでするのが当たり前であり、そうでなければ「野糞」であり「お漏らし」だ。
 みち子がこの場で「排泄」するとしたら、それは「ショーツの中」にであり、もしそれをしたならば、彼女のこれまでの人間関係は立ちどころに失われてしまう。それは何としてでも避けなくてはならない。

 みち子は改めて、時計を見た。長針は「一周」を三分割したところだった。
――あと二十分、イケるかもしれない!
 みち子の中に、初めて「希望の光」が差し込み始める。今では腹痛も収まりつつあり、「波」も比較的穏やかだ。これならば、恥ずかしさを耐え忍んで教室を抜け出さなくても、このままただ座っていればチャイムが鳴って、普段通り次の休憩時間にトイレに行くことで、事なきを得られるに違いない。
――簡単なことじゃないか!
 あと、二十分というのは確かにそれなりに長いけれど。腹痛さえ感じていなければ、耐えられない時間でもない。いつもの退屈な授業をやり過ごすみたいに、ただ座ってじっと待っているだけでいい。
 みち子はシャーペンを握った。中断していた板書をすることで、少しでも気を紛らわせようと、それによって「気がつけば授業が終わっていた」ことを期待するように、先生の声を耳でしっかりと聞きながら、うんうんと頷いて、ノートにペンを走らせる。ペンの色を使いわけ、テストに出そうな所にはマーカーを引き、いつも以上に真面目な生徒を演じる。鼻唄さえ浮かんできそうだったが、今は授業中、その気持ちをぐっと堪える。

――あと、十七分。
 あと十五分。その間も、みち子はしきりに時計に目をやる。いかに余裕があるとはいえ、いつこの状況が逆転されるとも限らず、時計の針の「足取り」はいまだに重かった。
――あと十三分。
 十二分、十一分――。そして――。
 ようやく、残り十分を切ったところで、眠っていた「悪魔」はついに目覚め、最後の抵抗を試みる――。

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おかず味噌 2020/03/10 18:36

ちょっとイケないこと… 第六話「性器と非正規」

(第五話はこちらから)
https://ci-en.dlsite.com/creator/5196/article/220840


 電灯から垂れ下がった紐に手を伸ばしたものの、中腰のままではギリギリ届かず。彼は仕方なく立ち上がってから、カチカチと電気を消した。

 部屋の中が暗くなった(常夜灯は点いたままなので完全な暗闇ではない)ことで、肌を晒す恥辱が軽減される。薄明りはさらに、敬虔な未経験である私の体に火を灯し情欲を丸裸にするのだった。

 彼はシャツを脱ぎ、ベルトを外す。ズボンを脱ぎ、下着姿(トランクス派)になる。これまで頑なに服を脱がずにいた彼もまた、ようやくここで「パンツ一丁」になる。それによって、彼のある部分のある変化が見て取れるようになる。

 彼は、勃起していた。

 トランクス越しでもはっきりと分かる。股間の一部だけがくっきりと持ち上がり、陰茎の陰影が強調されている。下着の中で窮屈そうにしながらも主張を露わにして、彼の男性としての象徴を表わしている。

――男の人のって、こんなに大きいんだ…。

 それが私の率直な感想だった。女体には存在しない物体は、少しばかりの恐怖心とある種の好奇心のようなものを私に植え付けた。

 彼が電気を消した時のように、私もまた彼のそこに手を伸ばす。立ち上がらずとも座ったままで手が届く。あくまでも布越しに、彼のペニスに触れる。


「うっ…!」

 私の掴み方が強すぎたせいか、あるいは握られることで微かな快感を覚えたのか、彼はわずかに腰を引く。私はとっさに手を離した。

「ごめんなさい、つい…」

 言い訳のような、己の欲情を告白するような言葉を吐く。

「いや、ごめん。ちょっとびっくりしただけだから…」

 彼もまた弁解する。ただ驚いただけなのだ、と。これまでずっと受け身だった私がいきなり大胆な攻めに出たのだから無理もない。私は自戒する。

――あまり女子の方から積極的だと、男性に引かれる。

 主に伝聞情報のみによって構成された私の教科書に改めてアンダーラインを引く。だけど今ばかりは「書を捨てて、町に出たい」という気分だった。

 私は再び、彼の股間に手を伸ばした。今度はゆっくりと両手でペニスを包み込む。硬いような柔らかいような、他にない奇妙な感触をしたそれは。一枚の布を隔てても伝わってくるくらいに確かな熱を帯びていて、微かに脈打っているかのような感覚(それもあるいは伝聞情報による錯覚なのかもしれない)があった。

 掴んだり、囲んだり、揉んだり、握ったりしながら、私は己の知的好奇心を弄ぶ。布越しの感触をしばらく堪能したのち。ようやく慣れてきた私は、彼のトランクスをいよいよ脱がしに掛かる。


「ポロン!」と間抜けな動きで棒が上下に揺さぶられる。振動が収まるのを待って、彼のペニスを凝視する。

 想像していた以上にグロテスクな物体が眼前に晒される。醜悪な造形をしながらもどこか凶悪さを秘めたようなその物体は、私に少しの戸惑いを感じさせた。

――これが、「おちんちん」なんだ…!!

 女性器とは明らかに違う。比較にならないくらい、かなり大きく異なっている。(そもそも私は自分のアソコを、まじまじと観察したことなどないのだけれど…)

 恐怖心と好奇心とが葛藤する。その感覚はまさしくスリルとも呼べるものだった。ゆえに勝敗はすでに決していた。今度は布越しではなく直接、彼のペニスを握る。

 肌と肌が触れ合う感触。いやそれ以上の感慨がもたらされる。自分の秘部に触れ、触れられた時と同じような快感が私の脳を駆け巡る。

 そこから先はまさしく教科書通りに、男性が喜ぶであろう行為をそのまま演じる。彼のペニスを優しく包み込み、最初は小刻みに、次第に激しく前後に動かす。

 こういう時、片手か両手なのかは教科書に書いてなかったので。刀を握るみたいに私は両手で触れることにした。そのほうが一生懸命さと健気さが伝わるだろうという僅かな打算もあった。一、二分それを続けた後(時間も教科書に載ってなかった)、次なる局面へと打って出る。


 彼の股間に顔面を近づける。異形の物体が眼前に迫ってくる。だけどもはや恐怖は感じなかった。高まる興奮により緩和され、完全に麻痺していた。意思の赴くまま、私はそれを「パクッ!」と口に咥えた。

 口内が満たされる感触。食べ物ではないモノによって、口の中を支配される感覚。彼は微かに快感の声を上げたものの、私にそれを聞く余裕はなかった。

 苦いと聞いたことがある(それも伝聞情報によるものだ)それは意外にも無味で、匂いもほぼ無臭であった。ペニスを口に含んだまま、私は上下運動を開始する。

――チュポ、チュポ…。

 未だかつて経験したことのないその動きに、自分でも確実にぎこちなさを感じる。彼が気持ちいいと思ってくれているのか、下手と内心で笑われているんじゃないかと不安になる。

「気持ちいい、ですか…?」

 口を離してから彼に訊ねる。下から見上げることで、必然的に上目遣いになる。

「めっちゃ気持ちいいよ」

 彼は言ってくれた。それにより私は自らの行為を肯定されたような気分になって、ますます献身的に彼に「ご奉仕」するのだった。


――じゅぼ、じゅぼ…。

 私の唾液と彼の分泌液が混じり合い、いやらしい音を立てる。それと共にようやく苦みのような味を覚え始める。

「もう、大丈夫だよ」

 彼は呟いた。「大丈夫」というのは、果たしてどういう意味だろう?
 挿入する準備が整った、という意思表示なのだろうか。もう射精してしまいそう、という危機表明なのだろうか。あるいは私のクチに満足がいかず、半ば呆れたゆえの固辞なのかもしれない。

 真意不明のまま彼はペニスを口から抜き取り、そのまま私をベッドに押し倒す。

「結衣」

 彼は私の名前を呼んで、私の体を抱き締める。痛いくらいに強く、逞しさを感じる紛れもない男性の力だった。今夜何度目かの自己肯定感に私は満たされる。このままずっと朝まで彼の腕に抱かれていたいような、そんな気持ちになる。

 彼は私に「キス」をする。最初はフレンチに、その後ディープに舌を絡めてくる。舌戦を繰り広げるが如く彼の舌尖を追いかけ、私は実践でもってそれに応える。

 私はふと、彼が自分のペニスを咥えた口とキスするのは嫌じゃないのかと思った。だけどそれを言うなら、彼だってさっきまで私のアナルに「口づけ」していたのだ。もはやお互い様だろう。

 彼の手が私の胸に伸びる。服越しに「おっぱい」を激しく揉まれる。半分は快感ともう半分は演技で私は息を荒げ、微かな喘ぎ声を上げる。

 私の反応によって彼はさらに興奮を覚えたらしく、まどろっこしさを含んだ動作で私の服を脱がしに掛かる。ここでついに私の胸を隠すものはブラジャーのみとなる。残された防御はもはや数少ない。なんとかそれを死守しなければ…。


 だが彼は無慈悲にも、そんな私の最後の防衛線さえも突破しようと試みる。思えば当然の展開であり。それを拒むこと自体、他の女子には理解し難いことなのだろう。

 私はすでに下半身を露わにしているのだ。今さら善戦なんてあったものではなく、どこが前線なのかも分かったものじゃない。

 必死になりブラジャーを押さえ付ける。下着を剥ぎ取られることを全力で抑える。彼は当然のように戸惑いの表情を浮かべる。この期に及んで今さらどうしたのかと、怪訝そうな顔をする。そんな彼の疑問に答えるように私は言った。

「私、胸が『ヘン』なので…」

 羞恥を堪えながらも精一杯の勇気を振り絞ったつもりだった。だけど、それだけで彼に伝わるはずもなかった。

「小さい、ってこと?」

 彼は訊いてくる。まさに男性の発想。「胸が小さい=恥ずかしい」と思っている。私は今夜初めて、彼に幻滅した。雑誌か何かで見知ったのであろう情報に踊らされ、それを信じ込んでいる彼が哀れにさえ思えた。

 私の悩みはそんなステレオタイプのものじゃない。あるいはそれが原因で初体験が遠ざかってしまうくらい深刻なものなのだ。(それに私の胸はそんなに小さくない)


 胸に秘めたる事情を、私自ら告白することも考えた。だけど、そうはしなかった。「百聞は一見に如かず」。口で言うより実際に見てもらった方が話は早いだろうし、ここまで来たら露見は時間の問題にも思えたからだ。

 背中に手を回して、ブラジャーのホックを外す。後は胸に乗っかっただけのそれを勇気に後押しされながら、自棄に引っ張られながらも取り去る。

 ついに自分の胸を、おっぱいを、乳首を、生まれて初めて男性の前に晒す。

 恥辱にまみれた『陥没乳首』を――。

 私の秘密を知って、彼は驚いた様子だった。あるいはそれも単なる私の勘繰りで、実は驚いてなどいなかったのかもしれない。それとも薄暗い室内で一瞥しただけでは私の瑕疵に気づけなかっただけだろうか。彼はキョトンとし、ほぼ無反応だった。

 暫しの沈黙が、私の焦燥を掻き立てる。己の抱えた事情を正直に白状することで、いっそ楽になりたいという衝動に駆られる。

「私、『陥没乳首』なんです!」

 ついに私は言ってしまう。何度かネットで解消法を調べたことはあったものの、「OKグーグル『陥没乳首』を検索して」などと言えるはずもなく、言いたくもなく。自分の口からそのワードが飛び出したことに、私自身が驚きを隠せないでいた。


 これでまた、初体験が遠ざかってしまうかもしれない。『放屁』の時と同じ恐怖に私は怯えながらも、だがそれに対する彼の反応はまさかのものだった。

――チュパ、チュパ…。

 彼はおもむろに私の乳首を舐め始めたのだ。醜く惨めな『陥没乳首』に吸い付き、あろうことかそれを吸い出し始めたのだ。

 本来なじられるべきである私の瑕疵を、彼の意思により舌で舐め回されることで。再び想定外の羞恥を感じつつも、負の感情が瞬く間に絶対値へと変換されてゆく。

 引っ込み思案な私の部分が突起に変化する。それは勃起の様子にも酷似していた。私の乳首が隆起している。外気に晒され、彼の舌技に犯されることで奮起している。

「全然、『ヘン』なんかじゃないよ」

 彼は言ってくれる。秘密の恥部を普通の一部へと昇華させつつ、隠し続けた問題を何でもないことだと認めてくれる。

 私はアソコが熱くなるのを感じた。愛液が溢れて、そこが拡がるのが感じられた。

――彼になら、抱かれてもいい。

 あくまで処女喪失の手段として。自らを納得させていた感情が今や確信に変わり、やがて目的へとすり替えられていった。


「もう、挿入れてください…」

 はっきりと己の口で懇願する。アンダーラインを引くことで強調された文言など、もはや関係なかった。私は自分の中の教科書を捨て去る。知識ではなく経験として「はじめの一歩」を踏み出すことが叶う。

 再び、彼は私を四つん這いにさせた。最初は向かい合う体勢でして欲しかったが、彼がそちらの体位を望むのなら仕方がない。どちらにせよ挿入自体に変わりはなく、姦通であることに違いはないのだ。

 彼は私の腰に手を添え、挿入の位置を整える。彼のペニスがお尻の肉をかき分け、割れ目をまさぐり、やがて「穴」の場所を探り当てる。そして…。

――!!!???

 突如激しい痛みに襲われる。初めての行為は苦痛を伴う、分かっていたことだが。その痛みは私の想定とは異なり、私がかつて経験したことのある種類のものだった。

 幼い頃に高熱を出して座薬を入れられた感触。だが座薬とは比べ物にならないほど太いそれ。それが出て行く感覚を私は知っている。


『排泄行為』

 生物として当たり前の生理的欲求でありながら、老廃物排出作用。生命維持のため必要だからこそ快楽を感じるその行為は、だがとても他人に見せられる姿ではない。

 そして。本来不可逆であるべきそれが、可逆として存在しているという不可思議。まるで時間の巻き戻しのように、排泄した『うんち』を再び腸内へと戻される感覚。確かな異物感を覚えつつも、それが不確かな快感を呼び起こす違和感。

 私は「アナル」に挿入されていた。

 その行為が、多くの女子が経験することのない性体験であることは明らかだった。一度は捨て去ったはずの教科書を私は拾い上げる。ほとんど空白のままのページ。

――そもそも、すんなりと入るものなの…?

 お尻でするのは準備がいる、と聞いたことがある。きちんとほぐしてからでないと痛みでとても入らないし、ペニスに余計な付着物を付けてしまう可能性だってある。

 にも関わらず。彼は何の準備も遠慮もなく、私のアナルに突入を試みたのだった。スキンと俗称されるコンドームさえ用いずに、生の状態で腸内に挿入したのだった。

――そんなに私のお尻の穴って、ユルいのかな…?

 彼の侵入をあっさりと許してしまったことにより、私は己の肛門に疑問を覚える。同時に、これまで過ごしてきた「ヒトリノ夜」が今まさに「白日」の下に晒される。


 差し迫る焦燥を静め、性的衝動を鎮めるため、私は幾度となく自慰行為に耽った。時には性器のみならず、非正規の穴さえも己の指で侵すことで。知らず知らずの内にショーツに『ウンスジ』が刻まれりして初めて、犯した罪を知るのだった。

――もしかしたら、さっき彼に舐められていた時…。

 私はお尻の穴に『うんち』を付けていたかもしれない。いや、そんなはずはない。何しろ、今日はまだ一度も『大』の方をしていないのだから。だけど、わからない。私のアナルが彼のペニスを楽々と飲み込んでしまうくらいに緩々だったとしたなら、不可逆のそれが勝手に漏れ出していた可能性だってある。

 彼が舐め続けていたことで、逆説的にそんな心配はないのだろうと安心していた。だけど今となってはそれもわからない。彼に『うんちまみれ』のアナルを舐めさせ、彼の舌に『ウンカス』を舐め取らせていたのかもしれないのだ。

 堪らない羞恥に私は襲われる。けれど、まさか彼に訊ねるわけにもいかなかった。「私のお尻、『うんち』付いてませんでしたか?」なんて訊けるはずもなかった。

 無言の疑問に答えることなく、彼はやがて前後運動を開始する。最初は慎重に、徐々に加速されていく律動とそれに伴う振動。

 ペニスを抜かれる時は排泄感が、入れられる時は奇妙な遡行感がもたらせられる。既知と未知。押し寄せる波状攻撃に溺れてしまいそうになりながらも乗り越えつつ、私はかろうじて彼に抗議する。


「そっち、じゃないです…!!」

 講義に依らない私の中の教科書によると。「童貞さんは初めての性行為に及ぶ際、ペニスを挿入する穴の選択をしばしば誤る」らしい。

 だけど彼はまさか「童貞さん」ではないだろうし、後背位で間違えるはずもない。その選択が彼の私的な興味によるものならば、私の指摘は無意味なのだった。

 それに。挿入前ならまだしも、すでに私は腸内の奥深くまで侵入された後なのだ。それが正しいのだと言われれば、受け入れる他ないだろう。

――違う、違う!そうじゃ、そうじゃない!!

 お尻の穴でセックスなんて間違っている。そこは性行為に使う穴なんかじゃない。私は処女なのだ。ヴァギナの姦通を済ませる前に、アナルの貫通を終えるだなんて、どう考えても普通ではない。いかにビッチといえど、そんな経験はないはずだ。

 だとしたら、私は彼女たちに対して優位性を得ることができるのだろうか?
「初体験は『お尻』で済ませました!」と堂々と胸を張って、他の者にはない経験を自慢することができるのだろうか。いやそんなの望んでない。私はあくまで一般的な同年代の女子たちに追い付きたいだけなのだ。追い越すことなんて求めていない。


「こっちです!こっちに、挿入れてください…!!」

 私は彼を誘導する。指でヴァギナを拡げて「こちらですよ!」と先導する。

 私のアソコは熱く湿り、ダラダラと涎を垂らしている。とっくに準備万端なのだ。彼を受け入れる用意はできている。今か今かと待ち侘び、待ち惚けを喰らっている。これじゃ私のそこがあまりにも可哀想だ。

――パン、パン、パン…!!!

 けれど彼のピストンは止まらない。激しい突きによって、体全体を揺さぶられる。こうなったらもういっそ、最後の手段とばかりに私は叫ぶ。

「そっちじゃないんです!『オマンコ』に入れてください…!!」

 口から出た下品な言葉も、背に腹は代えられない。このままだと、本当にもう…。


「もう、出そう…!」

 彼は宣告する。セックスのクライマックス、これも何度か自習でやったところだ。だけどやっぱり範囲外、こんなの習っていない。ここで女子なら自分の身を守るため「外に出して!」と言うべきところだが、こちらの穴なら妊娠の心配はないだろう。

「中に出してください!大丈夫だから」

 何が「大丈夫」というのか。さも避妊の準備は出来ているかのように私は言う。

「私も、イっちゃいそうです!」

 私は宣言した。自分の口でそう言ったことで、私の体は増々誤解を強めたらしい。射精を受け止める準備が整ったのだと、疑似的な受精が喜びとなって押し寄せる。

「お尻の穴で、イっちゃいます!」

 私は宣誓した。誰に向けたものかも分からない実況をして、己の羞恥を周知する。そして…。


――ドピュ!ドクン、ドクン…。

 彼は私のお尻の穴に射精した。腸内に彼の精液が迸る。『浣腸液』のような、だがそれより熱い液体が私の中に注ぎ込まれる。同時に私も発射した。

――ジョロ、ジョボボ~!!!

 それは射精なんかじゃない。潮吹きとも違う。私は絶頂により『失禁』していた。さっきあれほど出したのに、私の『放尿』は尚も勢いをもって水流を迸らせた。

——私、また『おもらし』しちゃってる!!今度は、○○さんのベッドの上で…。

 私の『おしっこ』はシーツに染み込み、巨大な水溜まりを形成した。


――ヌポッ…!!

 そこでようやく私の願いが聞き届けられたように、彼はペニスを引き抜く。

――ブピッ!プスゥ~。

 ぽっかりと空いた穴から『おなら』が漏れ出す。あまりに間抜けで間延びした音。

 私はそのままベッドにうつ伏せで倒れ込む。脚を開いたまま、お尻を突き出して、『小便』の上にダイブする。全身がピクピクと痙攣して、事後の余韻を感じている。傍から見ると「カエル」みたいだろう。

「スカンク女子」、「カエル女子」。次々と姿を変える、だがその実態は?
 未だ処女を捨てきれず、大人になれなかった「ヒヨコ女子」の成れの果てだ。

――ドロ…。

 肛門から精液が逆流する。むしろ、そちらこそが順流なのかもしれない。

――おひりのあにゃ、きもひいい…!!

 非正規の穴による性行為に。未知なる快楽の坩堝に飲み込まれそうになりつつも、またしても「お預け」にされた哀れな肉壺を私はいつまでも弄り続けていた。


――続く――

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おかず味噌 2020/03/04 23:14

ちょっとイケないこと… 第五話「放屁と羞恥」

(第四話はこちらから)
https://ci-en.dlsite.com/creator/5196/article/217778


――どうしよう。『おなら』出ちゃいそう…。

 私の思いとは裏腹に、思いがけず高まる腹圧に、腹立たしささえ感じる。

 人生において何度か訪れる転機。根気よく待ち続け、ようやく待ち侘びたこの時。今夜、私は処女を喪失する。彼に抱かれて、大人の女性となるべく一歩を踏み出す。それなのに…。

「ちょっと、止めてください!恥ずかしいですよ…」

 言葉で周知すると同時に、私は手で彼の頭を押し退けようと試みる。あくまでも「お尻を舐められる」という行為自体に羞恥を覚えるというように。
 建前もあったが、恥ずかしいというのは本音だった。こういう状況になった以上、ある程度の事態は覚悟していたつもりだったのだが…。

『おしっこまみれ』の股間を嗅がれたり舐められたりすることは、私の人生において前例のない経験でありつつも、前戯としてはまだ少し理解できる部分がある。
 だけど、まさかお尻の穴を舐められるなんて。想定も想像も全くしていなかった。

――そもそも、お尻って舐めるものなの!?

 本来、最も汚い部分であるはずなのに。私はまだシャワーも浴びていないのに。
 彼はそんな私の一部を執拗に、必要以上の執着をもって丹念に舐め続けている。

 彼の舌が縦横無尽に私の中を這い回り、何度も出たり入ったりする。その度に私は得体の知れない快感と不快感の間を行ったり来たりするのだった。


「あっ…!」

 つい煩悶の声を漏らしてしまう。出す専門の肛門を詰問されることで、そこで私にある疑問が生まれるのだった。

――そんなに私のお尻の穴って、美味しいのかな?

 そんなはずはない。何たって『うんち』が出る穴なのだ。今日は一度もしていないとはいえ、それだって決してキレイだとは限らない。

 私は見た。自分の下着を洗っている時に、そこに刻み付けられた『ウンスジ』を。
 ショーツを汚していたということは、触れていた部分。元凶ともいえるその部分が汚れていたことはもはや間違いない。

 今日はなんとか下着を汚さず(『おしっこ』についてはともかく)に済んでいる。だけど内側までは分からない。もしかすると自分でも気づかない内に、すぐそこまで『ブツ』が迫ってきているかもしれない。

 このまま舐め続けられたら、彼の舌に『大便』を付けてしまう。
 もし仮にそんなことになれば、大変なことになってしまう。

 精神的な忌避を感じながらも、今の私はより具体的で切迫した危機に瀕していた。


――ヤバい!!本当に出そう…。

 いよいよ、お尻の穴が言うことを聞かなくなってきた。彼の唾液にふやかされて、拡がった私のそこは痺れたように感覚を失いつつある。括約筋に力を込めようにも、力の入れ方が分からない。腰をくねらせ、拳を握り締め、かろうじて放出に耐える。

 彼の目に、今の私の姿はどのように映っているのだろう。
 服を着たまま四つん這いになり、剥き出しのお尻を突き出し、割れ目を拡げられ、その奥さえ露わになっている。

 きっと私の肛門は、だらしなく口を開けたままになっているのだろう。
 菊門のみならず、その深淵さえも彼に覗かれてしまっているのだろう。

 思えば、行為に及ぶ前に「電気を消してください」と言うのを忘れていた。女の子として当然の恥じらいであり、最低限の権利の行使。明るい場所で裸体を晒すのは、女の子ならば誰だって恥ずかしいものだ。きっと私だけじゃなく、それなりに経験のある女子であっても。(ビッチならば、あるいは気にならないのかもしれないが…)

 だけど、今夜の私に限っては少々事情が違っていた。すでに最大の羞恥なる解放に身を焦がした後なのだ。そして、さらなる絶望に火を灯されつつある。


――もう、限界…。

 逼迫したガスの放出の予感を悟って、私は最期の抵抗を試みる。腕に力を込めて、彼の顔と舌を穴から引き剥がそうとする。だけどそこは男性の力であり、ただでさえ気の抜けた私の微力である。ちっとも、びくともしない。

「本当に嫌なんです!!」

 私は語気を強めた。「イヤ」という言葉を用いる。決して好ましい選択ではない。
 女の子はこういった状況において(『おなら』を我慢するという意味ではなく、「エッチ」という場面において)、あまり積極的になるべきではない。かといって、完全に拒絶をするというのもまた違う。

 もちろん本当に嫌ならはっきりと断るべきだが、そうではない場合。むしろ自らもそれを望んでいる場合においては。
 女の子には「え~」とか「ちょっと…」とか恥じらいを見せつつも、けれど徐々にそれを受け入れていってしまうという絶妙な演技が求められる。

 過剰に好戦的だと痴女と思われ、相手を引かせてしまうかもしれないし。
 逆に消極的過ぎると、それもまた行為を止めさせてしまうかもしれない。

 だからこそ、あくまで八百長じみた「出来レース」を演出しなければならない。
 その点、男性の方は楽だ。相手の反応を窺いつつも、一直線に突っ走ればいいだけなのだから。


 それでも私はつい拒絶とも受け取られかねない反応を見せてしまう。それによって今夜はもうその機会を失ってしまう可能性だってある。
 そうなればまた次回、いつ来るかも分からない一期一会を待たなければならない。

 でも違うのだ。私はただ「お尻を舐める」という行為をやめて欲しいのであって。その理由も決してそれ自体が嫌なのではなく、あくまで自らの身に迫る危機的状況を回避するため、緊急避難的にそれを求めているのだ。

 だが幸か不幸か。彼はそんな私の拒絶によって行為を中断することはなく、むしろこれまで以上に貪欲に肉欲を貪り続けるのだった。

 アソコがじんわりと、いや激しく濡れているのが分かる。腰を浮かせているため、もしかしたら股間から愛液が滴りシーツに垂れているかもしれない。けれど、それを確認する余裕さえ私には与えられなかった。本当なら、そっちを舐めて欲しいのに。そしたら私は、何の拒絶もせずにそれを受け入れることができるのに。

 それでも彼は、あくまで望まない穴を刺激し続けることで私に羞恥を与えてくる。己の身にも危険が迫っているとも知らずに…。

「何か、出ちゃいそうなんです…!!」

 警鐘を鳴らしつつ、括約筋に精一杯の力を込める。無駄だと分かっていながらも、なんとか開き切ったその部分を閉じようとする。そして…。

――ブボッ!!

 ついにやってしまう。『放屁』してしまう。豪快な音を立て彼の顔に『おなら』を噴き掛けてしまう。熱い空気の塊がたやすく、穴を突き抜けていくのが分かった。

――ゲホゲホッ…!!

 私の思わぬ反撃に彼は堪らずむせる。言わんこっちゃない。警告したはずなのに、まさに自業自得だ。

 それにしても。彼の嗚咽にも似た咳払いは暫く止まない。

――そんなに、私の『おなら』クサかったのかな…?

 私は途端に申し訳ない気持ちになる。同時に、今日食べたものを脳内で思い返す。
 いや、それほどキツい臭いの原因となるものは食べていないはずなのだが…。

 それでも『おなら』が臭いものであることに違いはない。しかも本来なら衣越しに空中に放たれるべきそれを、彼は直で嗅がされたのだから。
 今や彼の呼吸器は大気とは異なる、私の腸内で醸成された気体に満たされている。新たに息を吸い込もうとも、暫くは周囲に充満した毒ガスから逃れられない。


――終わった…。

 淡い期待と儚い希望が消失したことを知る。処女喪失の機会であったはずなのに。今夜こそはと思っていたのに。これで友人たち、もしくは顔も知らない同世代たちに追いつけると思ったのに。これでまた振り出しだ。

 いくら彼でも顔に『おなら』を噴き掛けるような女(スカンクじゃあるまいし)とこの先一夜を共にしようなどとは思わないだろう。
 そして。きっと彼は同性の友人たちの前で、今夜の失敗談を披露することだろう。

――バイトの後輩と良い感じになってヤろうとしたら、そいつどうしたと思う?

 己の過失など決して語ることなく、あくまで自分は被害者であるかのように装い、私という加害者を口汚く罵ることだろう。

「スカンク女」と。

「おもらし系女子」という字名を得てから間もなく「スカンク系女子」という悪名を襲名した私に、これからどんな顔をして表を歩けというのか。
 処女という重い足枷を嵌めたまま、次々と怒涛の勢いで汚名を獲得していく私に、どうやってその錠を外してくれる男性を見つけろというのか。

 こうなったらもういっそ、なんて思ったわけではない。
 むしろこれ以上の罪を抑止するべく再犯を防止するつもりでいた。だがそれでも、会心の一撃を放った私の肛門はそう簡単には改心してくれなかった。

――ブチッ!プゥ~~。

 意思とは裏腹に、二発目が放たれてしまう。緩んだ穴がまるで呼吸するみたいに。
 息をするように犯行を重ねる非道の重罪犯から、さらなる追撃がもたらせられる。

 初撃に比べてガスの残量が少なかったためか、威力はやや物足りないものだった。
 だけど勢いが弱まった代わりに。彼の唾液によって湿らされた私の肛門から出た『おなら』は水気を含んだ下品な音となり、いじらしくも長い余韻を残すのだった。

 豪快な一発目よりもある意味で恥ずかしい二発目に、穴があったら入りたい衝動に襲われる。だけど、そこに穴はなく。穴というならば、ぽっかりと口を開けたままの私のアナルがあるだけだった。

 思わず泣き出してしまいそうな羞恥に耐え、溢れ出しそうになる涙を必死で堪え、脱いだ下着とショーパン(そこにも私の前科が刻まれている)を手元に引き寄せて、それを履いて敗走しようと試みる。だが彼は、私の逃走を許してはくれなかった。

 ようやく嗚咽混じりの咳が止んだ彼は、私の腰をがっしりと掴んだ。

 突然の拘束に私は戸惑う。私にこれ以上、どんな屈辱を与えるというのだろうか。
「武士の情け」というものを彼は心得ていないらしい。あくまでどこまでも徹底的にトドメを刺すつもりなのだろう。


 私の腰を掴んで再び「四つん這い」にさせた後、彼の手はやがて臀部へと移動し、受刑者を痛めつけるみたいに激しく揉んだ。だけどその刑罰は義務的執行によるものではなく、そこには明確な意思があるのだった。

 彼は私のお尻をただ乱暴に揉むのではなく、尻肉がひっくり返るように押し広げ、割れ目を剥き出しにする。

 弛緩し切った穴を視姦されることで、未知の性感を刺激されつつ。
 そこで彼は、私の静観を突き崩すように…。

「結衣の『おなら』食べちゃった」

 悪戯を茶目っ気まじりに告白する子供みたく彼は言う。だが、その言動はまさしく常軌を逸していた。

――そんな言葉、私は知らない…!!

 今までの人生においても、この先の人生においても、恐らく聞くことのない言葉。(経験を重ねればそれほど不思議なことではないのか?いや、そんなはずはない)

 まさか「おならを食べる」なんて行為が、そんな比喩が一般的であるはずがない。
 私が世間知らずなのかもしれないが。それでもそんな常識が存在し得ないことは、これまで雑誌やテレビなんかで見聞きした情報からも明らかだ。

 だが彼は言った。「おならを食べちゃった」と。あくまで不可抗力でありつつも、さも自らも望んでそれを咀嚼したのだというように。


 予期せぬ発言により硬直状態の私に、彼は次なる一手を与えてくる。

――ヌポッ…!!

 憎むべき罪人である私の肛門に、彼はあろうことか指を差し入れてきたのだった。

「ひっ!!」

 思わず、ヘンな声が出てしまう。舌とは比べものにならない異物感。

「い、痛いです…!!」

 痛みを忌避しながらも、だが私の懸念はむしろ別のところにあるのだった。

 彼があれだけ舐め続けたということは、穴の周囲は汚れていなかったのだろう。
 今日『大便』をしていないことに私は安堵する。だけど穴の中までは分からない。

 一日出していないということは『宿便』が溜め込まれている可能性だってあり。
 彼にほじられることで『うんち』が掻き出されてしまうかもしれないのだ。


 腸内を指で掻き回される。そこに快感はなく、ただ不快感のみが私を支配する。

 私はどうしていいかも分からずに、ただ彼の意思と指に身を委ねるしかなかった。
 すっかり敏感になったお尻の穴。不快感の中にある微かな快感の糸を手繰り寄せ、それを享受することでしか私は私という存在を自覚することが出来なくなっていた。

 存分に「違う穴」を愛撫し、ほぐしたところで彼は言う。

「もう、挿入れていい?」

 私は戸惑いを隠せぬまま、未だ非現実の中を彷徨いながらもコクリと頷く。

「電気消してください」

 今更ながら消え入りそうな声で、私はかろうじて乙女としての矜持を保つ。
 それがすでに失われたものであったとしても、やっぱり建前は大事なのだ。


――続く――

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おかず味噌 2020/02/25 00:12

ちょっとイケないこと… 第四話「前戯と共感」

(第三話はこちらから)
https://ci-en.dlsite.com/creator/5196/article/214847


 足元の水溜まりを踏まないように気を付けつつ、下半身を不格好に固定したまま、彼に導かれるがままに部屋へと戻り、そのままベッドに押し倒される。

 ありがちな展開(なのかは分からないけれど、映画やドラマなんかではそう)だ。幾度となく想像し、妄想してきた想定の行程。

 ただ予定と少しだけ違うのは、私の手を引く彼の力が終始遠慮がちであったこと。勢いに身を任せることで、むしろ私自らの意思で仰向けになったこと。そして何より私の体が『おしっこまみれ』であることだった。

「ベッド、汚れちゃう…」

 申し訳なさから私は呟く。

「洗えば、大丈夫だよ」

 心配ない、と彼は言う。そんな未来の問題より、あくまで現在に期待するように。

 彼は服の上から私の体をまさぐり、それから強引に唇を重ねる。私は目を閉じて、彼のキスを受け入れる。

 呼吸を止めて一秒、ならぬ三秒間。(体感としてはもっと)彼はそっと唇を離す。こうして私の「ファーストキス」はあっさりと奪われたのだった。


 済んでしまえば実にあっけないものだった。どうして頑なに守り続けてきたのか、なぜ私にそうした機会が訪れなかったのか、不思議なくらいに…。

 キス自体は不快なものではなく、かといって快楽を感じられるものでもなかった。それでも頭の奥が痺れるような気がした。日常と地続きの非日常の扉を開くような、そんな気分だった。

「初めて」の余韻に浸っている中、彼は再び私の唇を奪ってくる。二度目の口づけ。(「セカンドキス」なんて言葉はあるのだろうか?)私はまたもそれを受け入れる。やや余裕が生まれたためか、今度は少しばかりの快感を得ることができた。

 さらに。唇を重ねたまま、彼はわずかに上体を浮かせて私の胸に触れる。
「おっぱい」と呼ぶには控えめな、それでも腰との対比でそれなりに大きく見える、私の自慢の部位の一つ。だけど、そこに秘められた事情があることを彼は知らない。

 このまま服を脱がされずにいたならば、あるいは明かされずに済むかもしれない。だがもはやそんな段階ではない。私は今夜また一つ、彼に秘密を晒してしまう。

 紛れもない私のコンプレックスの一つ。私を初体験から遠ざけていた一因。
 日常生活ではさほど気にならないその特徴も、いざ男女が裸を見せ合う場となれば異端として。行為の発端を妨げる要因になり得るのだった。

 彼はそんな私の先端を見て、何を思うのだろう。まさか笑ったりしないだろうが、内心でどう思われるかまでは分からない。私はそれが怖かった。


 続いて彼はベッドと体との隙間に手を差し込み、私のお尻に触れてくる。そちらに秘めたる事情こそないものの、今だけは少々状況が異なる。

 私は、ついさっき『おもらし』をしたばかりなのだ。ほんの数分前のことなのに、それは遥か昔の出来事のようにさえ思える。だけど粗相の証拠は確実に残っていて、股間から広がる染みはショーパンの後方まで浸食しているのだった。

 濡れた着衣の上から、お尻を揉まれる。彼は私の失態をどう思っているのだろう。大学生にもなって二度も『失禁』した私に対して、果たして何を思うのだろう。

 彼が私をベッドに誘ったということは、少なくとも嫌悪を抱いてはいないらしい。それもそのはずで、私が自らの体を穢すことになった原因はそもそも彼にあるのだ。
 彼がトイレに行くのを阻止しなければ。私は悲惨な目に遭うことも、陰惨な性癖に目覚めてしまうこともなかったのである。

 だがそれにしても。なぜ彼は二度も(二度目については私にも大いに責任がある)私の生理的欲求を邪魔しようと試みたのだろう。 
 その悪戯自体に何の意味もなく、彼の悪名を高めるものでもないのにも関わらず。ただ私を醜悪に貶め、ともすれば心に傷を負わせかねない悪行を働いたのだろう。

 鼓膜を揺らす残響に耳を傾ける。決壊の間際、彼は私の耳元で呟いた。
「いいよ」と。三文字のその承認は私がトイレに行くことを許可するものではなく、あくまで『穿いたまま』出すことを彼は了承したのだ。

 そこでふと、ある違和感に思い当たる。

――もしかして、○○さんも…?

 静観しつつも、共感の予感を抱くのだった。


 一頻り尻を揉みしだいた後、彼はついに私の服を脱がせにかかる。と見せかけて、着衣状態のまま私の膝を掴んで開脚させる。

――このまま、挿入するつもりなの…?

 疑問というか、怪訝が一瞬脳裏を掠めたものの。まさかそんなはずはないだろう。
 私が穿いているのはデニム生地のショーパンだったし、その下にはショーツだって身に着けている。下着は手で破れるだろうが、さすがに服まで破くのは不可能だ。

 脚を開かせたまま、彼は私の股間を注視する。私は身動ぎし、微かな抵抗を示す。

 正直言ってやめてほしい。そこは盛大に濡れて、色が濃く変わってしまっている。それに臭いだってするだろう。私の最も恥辱に塗れた部分。であるにも関わらず…。

 彼は私の局部に顔面を埋めてきた。ついさっき『おもらし』したばかりの恥部に、今や本能の溢れる陰部に、理性を司る頭部を押し付けてきたのだった。

「やめて、ください!!」

 はっきりと私は拒絶する。彼の行為に対してというよりも、主に私自身の問題からそれを拒もうとする。けれど…。

 今さら脚を閉じようしたところで、もう遅い。すでに彼の頭は私の股の間にあり、両脚で挟み込むことで、よりガッチリと固定する格好となる。

 まさに恰好の餌食ともいうべき、ショーツでいうところのクロッチに当たる部分を生贄の如く彼の眼前に捧げ、忸怩たる汚染を食餌のように彼のお膳に捧げることで。私は、彼に『おしっこの匂い』を直接嗅がれてしまう。

――フンス…。スンスン。

 彼が鼻を鳴らし呼吸するのが、息の音と温度で伝わってくる。

「結衣のココ、おしっこクサいね!」

 おどけた口調で彼は言う。

――やめて、言わないで…。

 既知の事実を改めて口に出されることで。顔から火が出そうな羞恥を覚えつつも、これまでとは比にならない情痴に私は身を焦がすのだった。


 そこからさらに、彼はとんでもない行動に出た。

 ただ嗅ぐだけでは飽き足らず。そこに溢れるものを知った上で、それを物ともせず。彼はショーパンに舌を這わせ、私の『おしっこ』を舐め取ったのだ。

「やっぱり苦いね」

 彼は苦笑する。その反応によって、ようやく私自身の疑心に確信を得る。

――やっぱり、○○さんも『おもらし』が好きなんだ。

 あくまで自分がするのではなく、「女の子が漏らす」という行為に興奮する性質を彼は持ち合わせているのだ。

「もしかして、○○さん『も』おもらしが好きなんですか?」

 勇気を出して彼に訊ねてみる。直後、後悔に襲われる。同調を表わすその助詞は、女子としてあるまじき私の所思を強調してしまったのにも等しかった。

「えっ?結衣も好きなの?」

 案の定、彼に指摘される。私的な性癖について、正直に告白するしかなかった。

「はい、まあ…。この前、○○さんの家でしちゃってから」

 消え入りそうな声で私は呟く。かつての自分に別れを告げ、追悼を捧げるように。

 それまでの私は正常だったのだ。孵化を待つ雛の如く未体験に浮かされながらも、決して異常な性癖など持ち合わせてはいなかったのだ。
 だが今となっては。奇禍に感化されることで、思わぬ変化が私に付加されていた。

「実は俺、あの時めちゃくちゃ興奮したんだ」

 彼もまた自白する。私から訊いてもいないのに勝手に自爆する。

「そうなんですね。でも、ヒドイですよ~」

 あくまで自分のことは棚に上げつつ、私は彼に抗議する。

「ごめんね。まさか本当に、おもらし『してくれる』なんて思わなかったからさ」

 徐々に彼の本音も漏れ始める。互いに少しずつ打ち解けるように…。

「あの後、大変だったんですよ?」

 家(ウチ)に帰ってからのことについて、彼に打ち明ける。

 いい歳して夜中に一人汚れた下着を洗うというその惨めさが彼に分かるだろうか。
 あるいはそれさえも、彼にとっては興奮の材料なのかもしれない。

「本当ごめんね。俺、結衣が帰ったあと我慢できなくて…」

 彼もまた、事後のことについて自供する。

「つい、一人でしちゃったもん!」

 秘めたるべき行為を「イケないこと」を包み隠さず供述する。

――私と同じだ!

 口にこそ出さないものの、私は内心で共鳴する。
 私も下着の事故処理を終えた後、部屋に戻ってから自己処理に耽ったのだった。

「変態ですね」

 私は彼を断罪する。だがその断定は自刃の如く、自身にも向けられた弾丸だった。


 彼はいよいよ、ショーパンに手を掛ける。ホックを外し、ファスナーを下ろして、私の下半身からズボンを抜き取る。私は腰を浮かして、それを手助けする。

 黒タイツに透けたショーツが露わとなる。『おしっこ』にまみれた、濡れた下着。彼はそれさえも、私の一部として愛してくれるのだろうか。

 残念ながら今日の私の下着は彼の興奮を大いに高めるものではないかもしれない。普段通りの、飾り気のない、ごく普通のショーツ。「もしかしたら」と思ったけれど、下着にまで拘る気にはなれなかった。(そもそも私は勝負下着なんて持っていない)

 私が穿いていたのは、奇しくもあの日と同じ、黒のショーツだった。濡れたことで若干色が濃くなっているものの、染みはそれほど目立たない。それを不幸中の幸いと捉えるべきか、あるいは「残念でした」と斜に構えるべきだろうか。

 彼はそこでさらに私の予想の斜め上をいく行動に出た。ショーツには目もくれず、私の脚を舐め始めたのだ。

 黒タイツ越しの太腿から膝にかけて舌を這わせ、それはやがて足首にまで達する。続いて彼は私の足を手に取り、足の甲から指、指の股、足の裏さえも舐めに掛かる。

 まるで別の生き物であるかのように徘徊する彼の舌にくすぐったさを感じながら、妙な征服感を満たされつつも。またしても未知なる羞恥を私は覚えるのだった。


 まだシャワーも浴びていないし。『おしっこ』の汚れについては言うまでもなく、ごく当然に汗だってかいている。新陳代謝による今日一日分の穢れ。その味と匂いを彼に覚えられてしまう。

 再び股間が湿る感覚を自覚する。そこはもはや彼を受け入れるための領域であり、彼のモノを迎え入れるための聖域なのだった。

「もう、入れて欲しいかもです…」

 私は懇願する。本来ならば女性側から口にするべき台詞ではないのかもしれない。それでも確かな勝算と、僅かな打算を込めて私は言う。
 男性にとってはその言葉こそが前戯の完了を告げる合図なのだと、準備万端だと、その相互確認に他ならないと分かっていたからだ。

「結衣、四つん這いになって」

 彼にそう指示される。その方が脱がしやすいから、と彼は言う。仰向けの体勢から私は一旦起き上がり、ベッドに膝をついて彼に言われた通りの姿勢を取る。

 高く突き上げられ、突き出さされた、黒タイツ越しのお尻。
 彼の手が私の腰に掛かる。そのままショーツ諸共脱がされるのであったが…。

 この期に及んで、私は怪訝と懸念を感じるのだった。


『ウンスジ』

 それは不慮の事故によるものではなく、完全なる自己責任により描かれたものだ。

『大』をした後ちゃんと拭いているにも関わらず、なぜかショーツを汚してしまう。あるいは力を入れた際に、思いがけず括約筋が緩んでしまったのかもしれない。
 拭きの甘さか、お尻の緩さか。どちらの理由にせよ、肛門付近の許されざる痕跡を余すところなく知り得てしまったのだった。

 ふいに私は思い返す。本日の「排泄状況」を…。

 今朝はトイレに行った。さすがデートの最中、事前に催した尿意を抱えておくには無理があったからだ。その後『おもらし』へと至るまで『おしっこ』はしていない。
 そして。『うんち』については今日はしていない。便意を感じなかったからだし、私のそれは不定期に訪れる。

 私は一安心する。少なくとも彼に『ウンスジショーツ』を晒す心配はない、と。
 そんな風に、私の気が緩みかけたところで…。

――バチン!!

 突如、お尻に衝撃が走る。不意打ちに私は「あんっ!」と声を上げてしまう。
 直後、彼が私のお尻の頬を平手打ちしたと知るのだった。

「何するんですか!?」

 私は抗議する。それに対して、

「『おもらし』したお仕置きだよ」

 彼は加虐的な笑みで答え、そこからさらに私のお尻を二、三度叩く。その度に私は「やんっ!」とか「ふんっ!」とか、いやらしい声を漏らしてしまう。

 ようやく「お仕置き」を終えた彼は、私の股間ではなくお尻に顔を埋める。
 まだまだ続けられる彼の「前戯」に、別の事情から私は眉をひそめる。

――もし何かのきっかけで、お尻を汚していたらどうしよう…。

 さすがの彼も『おしっこ』に関しては寛容であり許容範囲内なのかもしれないが、それが『うんち』となれば話は別である。
 彼の興味を萎えさせ、あるいは行為を中断させてしまうかもしれない。

――大丈夫、今日はまだ『大きい方』をしていない。

 それでも。あの日の不始末と同じように、不信は完全には拭い去れなかった。


 そんな私の不安をよそに彼は肛門を舐めにかかる。俗にいう「クンニ」とは違う、お尻の穴を舐められるという行為。その不快さと不可解さに胸騒ぎを覚えながらも、私はただ彼に身を委ねるしかなかった。

 彼のお尻舐めは予想以上に長く続いた。穴の周囲を丹念に舐め回したかと思うと、両手で割れ目を押し広げて、やがて彼の舌は穴の中へと差し向けられる。

 私は何度目かの抵抗をした。だけど私に出来るのはお尻を左右に揺することのみ。彼はそんな抵抗など意にも介さず、私の肛門の味を堪能する。

 長時間そうされていたことで、やがて私の中にある変化が訪れる。
 それはお腹の奥底から来る焦燥であり、乙女として催してはならない衝動だった。

――どうしよう。『おなら』出ちゃいそう…。

 あるいはその失態も『おもらし』のそれと比べればずっとマシなのかもしれない。だが私の粗相を受け入れてくれた彼の前では『放屁』の方が羞恥に他ならなかった。

 今や敏感になりつつあるアナルを刺激されながら、私は欲求を必死で堪えていた。


――続く――

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おかず味噌 2020/02/09 22:07

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