尾上屋台 2016/09/27 04:31

「バッテリー」

・アニメ公式


まず思ったのが、野球作品ではなく、青春作品だなってことですね。
一応野球してるんですけど、メインはそっちではなく。

確か原作って小説なんですよね。
結構心理描写的な部分は多かったんじゃないかって推測してるんですけど。
ただ、こうやって淡々と描いて行くってスタイルは、自分としてはむしろ好きなくらいで。
でも原作と比較して、どこまで描けてたんだろうかっていう思いもあったりします。
このくらい抑えた感じがいいのか、もうちょい心情的な部分にフォーカスしてもよかったのか。

で、青春物語だと思うんですけど、かなりクセの強い作品でもありますね。
基本的に登場人物の内面が、なんというか、女の子っぽい。
バッテリーの二人にせよ横手二中の二人にせよ、男同士でああいう感じの喧嘩したら、双方謝らない限り絶対に元の鞘に納まることはないと思うんですけど、そこはこう、レアケースながらも、こういう子たちもいるんじゃないかって感じで。
あとまた、難しい年頃ですしね。

あとあれです、豪君みたいのキャッチャーだったら、絶対投げたくないよね?(笑)
自分だったらキツいなあーって思います。
だってホラ、巧が本気で投げなかったって言って、ヘソ曲げるじゃないですか。
それ言うんだったら、絶対取らなくちゃダメですよね。
これが、「今のお前の球は取れないかもしれない。でも全力で投げてくれ」みたいに言われれば、いっそこいつと心中してもいいかなって思えるでしょうけど、「取るから全力で投げろ」言われて取れないってのは、決定的に信頼できないなって、自分だったら思っちゃいますね。
ついていい嘘やかわいい嘘ってのはあるんですけど、これは絶対やっちゃいかんと。
で、試合後に殴ってくる(汗)。
まあ致命的に不器用過ぎるなあって思うんですけど、この手の不器用さは、巧の方で表現すべきでは?みたいな部分もあって。
で、豪君が巧の球取れるようになる部分の描写は相当大きな山場になると思ってたんですけど、月日は流れて、いつのまにか・・・ここ、原作ではどうだったんだろうって、気になります。

この作品の特徴って、とにかく優しい人間が異常に少ないってのはあると思います。
弟の青波君と、海音寺先輩くらいですもんね。
あとはみんな、自分のことでいっぱいいっぱいで、思いやりみたいのを持つ余裕がまったくない。
それぞれの母親とかにいたるまでみんなそうで、これは作者の人間観みたいのが、よく表れてるなあって思いました。
生きづらそう。
これはこの作品の大きな特徴だと思っていて、こういう世界観みたいのが通して描かれてるってのは、大きいことだと思いました。
僕はどちらかというと作品に対して憧れみたいのを欲しがるタチなんですけど、共感を求める人たちにとっては、特に今みたいな生きづらい時代にあって、強烈なシンパシーになったんじゃないでしょうか。
この狭さの中にそうした屈託を詰めていったってのは、作品として「なるほど」と思うことしばしばでした。
すごくこう、色のある作品ですよね。

なんとなく、綺麗にパッケージングされた作品の多い中、こういう大きな特徴を持った作品がアニメ化されたってのは、結構意義のあることだったんじゃないかって、そう思った次第です。

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