「平家物語」
・アニメ公式
https://heike-anime.asmik-ace.co.jp/
一応文学部出てるくせに、何気に平家物語ってちゃんと読んだことないんですよね。
受験はもちろん、大学でもこれに関する講義受けたような気がするんですが、一部分抜粋でそこについてあれこれと、まあ通してちゃんと原文に触れたことがなかったりするんですよ。
なんか恥ずかしい感じですけど。
ともあれ、アニメ化ということで、見てみました。
で思ったのが、この近辺の話って、歴史モノでも創作的なものでも、源氏サイドで描かれる理由がなんとなくわかったというか。
平家側からだと、なんかこう、面白くないんですよね(笑)。
読む者が偏ってるのかもですが、そもそもあんま平家視点の話って、聞いたことないような。
その理由の一端が、この作品にも出ていたかなって。
原文読んでないから当然わからないんですが、多分アニメの方も、物語の開始時期ってそんなにずれてないですよね?
だとすると、隆盛を極めた一族が滅びに向かってく様ってのは、どっかに大きなカタルシスがないと、なんか虚しい作品になってしまうというか。
まあ元は軍記物語であり後の視点からは史書なわけですから、変にフィクション入れるようなものでもなく、つまり歴史っていう事実では、時に振り返ってもそんなに盛り上がる展開になってるとは限らないわけで。
翻って、平家が敗れる様を、源氏視点で描く後世のやり方って、つまるところ物語として作ろうと思うと、やっぱそっちが正解なんだろうなって。
あと、平家に寄り添った視点にしたことで(平家物語だから当然として)、ああ、こういう良い人たちが、追いつめられていくみたいのも、見ててあんま気持ちいいものでもないっていうか(笑)。
驕れる者も久しからず、の驕ってる部分が最初の数話除いてほとんど描かれてなかったのも、ラスト近辺の後味の悪さに繋がってるかなって。
と、基本的にアニメや漫画に向いてない題材だったなあと思いつつも、アニメとしての描き方には、卓越したところもあって。
まず画面の切り取り方が、明らかに他の作品よりも行間を感じさせるものでしたよね。
キャラが見切れてる絵が多いってのも特徴で。
滅茶苦茶右下、左下にキャラの顔だけとか、人が動いてるのにカメラ動かさずとか、ワンカットワンカット、随分練り込んで作ってるなあって。
それとちょっとした動作、10話目最初なんかの、焼け落ちた家屋を表現するのに、それを背景として見せるだけじゃなく、落ちた焼炭を足でこすって見せたりとか、こういうの最高に上手いなあって。
見たものをそのまま描くんじゃなく、見てる側の触感にまで訴えかけてくるような。
細かいの忘れちゃいましたけど、序盤からこうした演出は多々あって、その度にこの作品はちょっと違うなあって、感心してました。
逆に言うと、そのまま描いてしまうともうひとつな題材なんで、こういった素晴らしい演出が方々に入ってるのかもですよね。
昔の時代劇にもこういう行間を感じさせる撮り方ってのはしばしばあって、そういや子供の頃に、こういう演出に惹かれてたなあみたいのを思い出しました。
その手のものを見てたのは本当に子供の頃になってしまうのできちんとした比較になってないかもですが、なにかこう、日本的な作品の描き方として、こういった手法ってのは、伝統的なものなのかもしれないですね。
ともあれ、難しい題材を、よくアニメの形にしたなあって。
で、それを可能にした描き方ってのに、とても感心させられた作品なのでした。