九条の会 2021/07/31 19:52

ゲームデザインとゲームシナリオ、どう違うのだ…<<シナリオの才能が魅せる同人エロゲ>>

https://youtu.be/TJQolsb_ZW4

私も18歳からフリーゲームを作って来て、まぁ最近ではそれなりに目鼻が付いて来た、
ゲームデザインなんて本を読んだり、最近ではプログラムだなんてやっておる訳ですけど、
最近どうもコレはどういう作用なんだ、いかな力が働いて面白いのだと上手く咀嚼できない事があって。
それが、シナリオのもたらす力という奴ですね。

と言っても文章がただ上手いとかではなく、もっとゲーム全体に影響をもたらす物があるな、という話で。
最近それを、まぁ私のことなんで同人エロゲなんですけども、それを感じる事が多いので話したいと思います。

https://twitter.com/becomegame/status/1421064804379226117

という事で、今回取り上げるのは「神ゲー世界大戦~行商×デスゲーム~」という作品なんですが、
正直これは少しピンと来にくいと思うので、まずもっと有名な例を交えたいと思います。

例えば「淫界人柱アラカ~JK退魔師ホラー探索RPG~」とか、
その一つ前の作品「妻獲り迷宮~シェラリィドの異種姦終身刑~」といった作品もそうですね、
シナリオのもたらす力。

[アラカ]は心霊エロという難しいシチュエーションに、廃ビルで行方不明になった彼女の末路を、
物に触れる事で記憶が辿れるサイコメトリー能力を持った彼氏が追う、
ただ安全な状況でそれをやられても締まりませんから、そんな彼氏をもホラー演出が襲う、と構成しておりました。
そうして、まさか、まさか……と危惧した事が現実に目の前で再生されるという、
じわじわと嫌な予感が迫り来る、そして実際のエロも凄い尖っている、という形があった訳です。

一つ前の[妻獲り迷宮]においても、”迷宮の正体”が分かるまで延々無限に繰り返されるダンジョン、
そしていつかは負けてしまう、翻って言えば絶対勝てない戦闘と。
これも負けられない強いヒロインが、じわじわと定められた所に肉落ちしていく様な興奮があるものでした。

で、これは文章そのものの質の高さもあるんですが、こうして振り返った時に、
取っ掛かりとして分かり易い、語りやすい”要素”があるってのも特徴なのかなあと。。
そしてそれがゲームプレイをも深くする。
曰くありげなシナリオの雰囲気が、システムまでも底知れなく見せてるのだという。
仮に文章がとても上手であっても、ゲームの流れはRPGツクールのテンプレだったらと思うと、
そこが単純な文章力とは違う所でしょうか。

それで「神ゲー世界大戦~行商×デスゲーム~」の話に入りますが、
今作も本編に入る前、言わば前振りの段階から、かなり”曰くありげ”。
異世界転生者として王族に生まれた主人公、
これはお決まりの異世界転生モノかと思ったら、
どうも言葉の端々から元勇者の父親と、魔王の母親が結婚した事で、平和になった世界なんだなというのが汲み取れる。
ただこの時点ではまだシナリオが壮大そう、で留まるものですね。

ところがゲームを進めると世界は一変し、神によって仕組まれたとかで、
魔族と人間族、すなわち母と父もそれぞれの国で分かれ、争うように。
なんでも二つの国には平和期と戦争期が訪れ、
平和期では行商なんかをやり、戦争では相手を殺してポイントを稼がないといけない。
そして期の入れ替え時に、一定のポイントに届いてない国民は強○的に死んでしまうルールが課せられたと。
言わば魔族も人間も、自分の命が惜しいから、神に定められた様に争っている。
そして開き直ってポイントを沢山稼ぐと、神に特典もお願いできる。
実は主人公も一回命を落としたのだけど、多大なポイントを払って父親が生き返らせてくれた様子、と。

そこで本編のシステムとなりますが、主人公は人間・魔族のどっちにもツテが効く身ではあるんで、
平和期に双方の街に顔を出し、売れそうな商品を仕入れて行商をして稼ぐ、というのがメイン。
ただ行商はあくまで取っ掛かりで、その途中、
世界がまだ平和だった頃の知り合いが今どうしてるだろうと足を運んだり、
そもそも父と母のなれそめ、1000年前の魔族と人間の和平の日の事などを、歴史の本とかを読んで知っていく。
行動ポイントというのがありまして、それが0になるまで平和期で活動できる。
行動ポイントは行商でも消費されますが、情報を集める事でも消費されると、いかにもポイントを稼ぐか・情報を知っていくか、と掻き立てられるものです。

でここからが凄いなあと感動した所なんですが、
行商で沢山ポイントを稼げば、父親が自分をそうした様に、
本で読んだり知ったりした1000年前の英雄とかも現世に復活させられるんですね。

英雄の中には、一人だけ寂しい墓で祭られてる虐殺者とかも居るんだけど、
じゃあコイツを復活したらどうなるんだろうとか、
あと平和期が終わり、戦争期に入ると父親、人間の王を操作する側になるんだけど、
こいつが馬鹿強いんで、戦場で積極的に相手魔族をぶっ殺してポイントを稼いだり。
それは良いんだけど、行商と違ってここで稼ぐのは、明らかに恨みを買いそうだよなとかが想像できたり。

そして主人公は異世界転生者であると語りましたが、
その出自からして、やはり何となく意識させられるのが、最終目標として、神にどう反逆していくのか? ですね。

どうにも行動値の消費では、行商で稼ぐか、あるいは何を知っていくかってのに微妙に導かれてたり、
異世界転生者であるという異端の存在である主人公なら、神に対抗できるかもって事だったり、
こう、多様で壮大な物語の中で、プレイヤー自らが目的を見いだして行きやすいって構造もありますかね。

喋ってて思いましたが、これもいわゆるゲームシナリオのテクの一つ……ではあるのかな。

自分が稼いだポイントをどう費やしたら、シナリオに接続されるだろうかという、
神のルールだ、1000年前とか言われても、普通だったら絵空事になっちゃうかと思うんですが、
それがゲームプレイで感じられるっていう。
これがやっぱ違う所だよなあと……上手く言えないんですが。


私がやったのは体験版なんで、実際にどうなるかは分かんないです。
もしかしたら誰を復活させても、戦場で殺しまくっても、何の変化も無い、ただの一本道なのかも知れない。
でももうこの時点で、何というか、物語が自分の”身近”になってますからね。
これをしたらシナリオがどうなるんだ、って分岐への期待感がハンパ無くて。
これって[アラカ]のじわじわ嫌な予感がせり上がってくる、でもそれを期待しちゃう……ってのに同じく、
成功してるって事だよなあと。

私は元来システムに着目する人間なんですが、
どっこい良いシステムでも30分、1時間触ると、
あぁこの条件を達成したいけど、すぐには出来ないからここを強化したいのね、で、その為にこの一連のルーティンを
繰り返すのねって感じで……先が見えちゃうってのはある。
勿論そのルーティン自体が楽しいよ、ってゲームの在り方もあるんですけども。

だがそこに、今回挙げた様な、[アラカ]も[妻獲り迷宮]も[神ゲー世界大戦]みたいなシナリオの凄さが絡むと、
先がワクワクと気になるのに、その先がどうなるかまったく読めないという。
そんな特徴的な事が起きていますね。

システムだ、プログラムだとやって来た私ではあるんですが、
ちょっとゲーム制作としてはこれが分からないと、
今後付いていけなくなるんじゃないかみたいな、危機感を抱いてたりもします。

うーん、さっきもチラッと言いましたが、これって広い目で見たらゲームシナリオの範疇なんですかね……
一応かなり前にゲームシナリオの本とかも数冊読んでるんですが、今いちしっくり来てなくて。
こういう話でゲームデザインとゲームシナリオって言った時、突き詰めたらどう違ってくるんだ? とか迷ったり。
今回挙げた例には、しっかりと文章の強さも概念の強さも、システムに絡んでる手応えはあって。
文章が表す概念を、システムで言う要素とイコールにした事で、
システムでの操作でシナリオを左右する事を可能にしたって事だろうか……って語ろうとするほど、「それって普通にゲームだろ」というか、陳腐になるなあ。

うーん、今後ももっと言語化していきたい所存ですねえ……

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