一鉄工房のブログにおこしいただき、ありがとうございます。
管理人のOIGUMO(老雲)です。
今日は事務連絡から。
以前ご紹介した「Ci-en」サイトにて、今週から「アリサをつくろう!」の
企画が本格的にスタートいたしました。RPGツクールを用いたゲーム制作の
解説ですが、あまり堅苦しいものではなく、こちらの茶飲み話と
同じ感覚でお楽しみください。なお、記事を読むためには当サークルを
フォロー(無料)していただく必要があります。よろしくお願いします。
では本日は、先週に引き続きファムに関するこぼれ話、
2つ目のエピソード紹介です。
ネタバレ注意なのです。ついでに、長文注意なのです(笑)。
かつてなく長い記事になりました。無理をして読まないでくださいね。
関心のある方は、以下の「続きを読む」をクリックされてください。
(続き)
続きを開いてくださり、ありがとうございます。
ファムに関する後日談4の最初の方に、次のような文章がありました。
2人との付き合い方がわからずに、
毎晩のように、泣きながら相談してしまいましたね。
この文章の意味は、王宮という縦社会で生きてきた彼女が、
マリカやレンのような庶民と初めて接し、その付き合い方がわからずに
ボスに相談をしていた、という意味ですね。それ以外の解釈はないですね。
・・・こういう部分に、自分の文章力の弱さを感じます。
少し話が寄り道しますが、ヒロイン3人はそれぞれの故郷で、様々な困難に
直面していました。マリカは周囲に馴染めない辛さと寂しさを、レンは
肉親との縁を強○的に断たれた絶望を、それぞれ感じていました。
ではファムは、どんな「苦しみ」に直面していたのか。
ミッション7では、ファムの生い立ち、歪で閉鎖的な養育環境が明らかに
なります。ゲーム中で語られたファムの過去にまつわるエピソードは、
基本的にはこれだけです。そのため、ファムが故郷で経験した苦しみは、
この環境の中にあったと、思われた方が多数ではないかと思います。
でも実は、そうではありません。ファムの本当の苦しみは、
ボスの下で暮らし、そしてマリカ、レンと出会ってからが本番になります。
確かに、ファムが生後間もなく預けられた養育環境は歪んでいました。
虐○を窺わせる記述もあります。この環境自体、不幸だったことは確かです。
でも彼女は、その環境に「適応」しました。想像を絶する努力の末、
養育者の望む、王族の道具としての理想的な王女になりおおせたのです。
きっとファムは、自信に満ちて父王の下へ帰還したことでしょう。
でも、父王はその姿に悲しみの涙を流します。彼女は動揺したでしょう。
それでも、より一層の努力を誓いますが、その意思とは別に、
父王はボスの下で修業をするように、彼女に命じます。
父王の行為は、むろん彼女の回復を願ってのことですが、ファムはこの命令を
どう受け止めたでしょうか。父王に認められなかっただけではなく、
王宮の外へ暮らしの場を移し、これまでの生活とは無縁の学びを命じられた。
見捨てられた。そう感じてもおかしくはなかったでしょう。それでもファムは、
父王に認められることを夢見て、修行に励むことを心に誓います。
でも、ボスとの新生活は、ファムの想像とは大きく異なるものでした。
身分はファムの方が上ですが、父王の命によりボスが一時的に「格上」です。
しかしボスは、格上の威厳を示さず、ファムに対等な立場で接しようとします。
ファムはどう振る舞ってよいのかわからず、困惑するばかりでした。
ボスもまた、想いをどう伝えたらよいのか、行き詰りました。
そこでボスは、マリカとレンを生活の中に引き入れてきたのです。
新たな住人に驚くファム。そして元気を取り戻したマリカからの、
容赦ない「仲良くなろっ!」攻撃。レンの自由奔放な生活様式。
ボスに助けを求めても、「おお、一緒に遊んで来い」と言われる始末。
冷や汗にまみれ、ひきつった笑顔で町へ連れ出されるファムなのでした。
彼女は身分関係に縛られない他人との付き合い方も、自分自身の
好奇心や欲望を満たす遊び方もまだ知らない、不器用な人間だったのです。
ここで物語は、冒頭の2行に戻ります。
ファムが2人との付き合い方に悩み、いろいろボスに質問を投げかけては、
ボスが丁寧に疑問に答えている、そんなシーンがありましたね。
もちろん、シーンで描写された質疑も存在しただろうと思われますが、
しかしながら2人のやり取りには、より苛烈な内容もあったと思われます。
本来であれば、今日ご紹介するエピソードは、この後日談4に
挿入されるものですが、このエピソードを組み入れると、
ただでさえ長いエピソードが膨らんでしまうので、断念しました。
・・・ファムは憤っていました。それ以上に困惑していました。
上下主従の関係こそが正しいこと、王族の風習と格式こそが正しいこと、
そのためには自己を捨て去らなければならないこと、それがファムにとっての
正義でした。事実、これに反すればファムは厳しく罰せられたのです。
それなのになぜ、ボスは自分の信じる正義を認めてくれないのか、
あの2人と同じ行動をとることを勧めるのか、いや、それだけではない。
自分よりも努力をしていない(かに見える)あの2人は、なぜ自分より
楽しそうに笑っていられるのか。納得がいかない。
ファムはボスに詰め寄ったはずです。あなたの教育方針は正しいのか、
あの2人をきちんと指導すべきではないのか、と。感情をあらわにした
ファムを前に、ボスはその都度、丁寧に回答していきました。
でもそれは、ファムの求めた答えではありません。
ファムは泣きながら、自室に逃げ込むしかありませんでした。
認めるわけにはいきませんでした。
自分と異なる価値観を持ち、そこで幸せに暮らしている人々の存在を
認めることは、自分が信じてきた秩序を否定されることでした。
それはつまり、あの地獄の日々を耐え抜き、それを支えにしてきた
自分自身を否定することでした。自分自身の全てが否定されることでした。
ファムは、無意識のうちに、そう思ってしまいました。
ボスは苦しむ彼女の話を受け止めます。自身に向けられた非難めいた
詰問にさえも丁寧に答えていきます。ボスはうすうす気づいていました。
ファムが発する言葉は、相談でも質問でもなく、ましてや糾弾でもなく、
「悲鳴」であるということを。
ファムはこの時、自分が信じてきた価値観の崩壊に直面していたのです。
疲弊したファムは、それでもこれは父王の命令であるということを思い出し、
必死にボスに、そしてマリカとレンに向かい合います。そして、
この共同生活の中で自身に向けられた素朴な好意――儀礼でもなく、
ましてや自分が「良い子」を演じた時だけに与えられる報酬的な
ものでもない――に支えられ、徐々に落ち着きを取り戻していきます。
そして、自分の過去と向き合うことになります。
過去の境遇への怒り、事情はあれど助けてくれなかった父王への恨み、
抱え込んだ狭い価値観の悲しさ、自分自身への情けなさ。
ファムはその後も、さまざまな感情に苛まれながらも、乗り越えていきます。
彼女の後ろにはボスがいました。また、無条件で笑顔を向けてくれる
マリカと、そしてレンの存在がありました。
この時、隣にいたのがマリカだったことも、幸運だったと思います。
出会ったころ、ファムは困惑で態度がぎこちなかったり、あるいは
不安定な時期には、怒りや苛立ちがにじみ出ていたかもしれません。
でもマリカは、それを感じつつも突進しました。他人と仲良くしたい、
そのために頑張りたいという気持ちが前面に出ていた頃でした。
またマリカには、自身の経験から誰かを「排除」することを嫌っていました。
仲の良いレンとだけ付き合い、ファムを仲間外れにするという発想は、
彼女にはなかったんですね。レンもまた、マリカの態度に学び、
ファムと真正面から向き合います。
そんな環境の中で、ファムは立ち直っていったんですね。
そんなファムのエピソードを、冒頭に示した後日談4の2行の文章と、
オープニングでマリカがファムのことを紹介した際の、最初はちょっと
関係がぎこちなかったという趣旨の文章に隠してみたんですね。
・・・って、それでプレイヤーに伝わるわけあるかぁ!!
(↑自己ツッコミ)
無駄に長文すいません。ここまで読んでくれた方、ありがとう。
まあその、「マリカ」の登場人物については、管理人がこんな妄想を
アレコレしていました、というだけのお話でした。
それでは今日は、この辺りで失礼します。