シロフミ 2020/08/06 22:51

犬のお世話・その4

「たっだいまー。シロー、ちゃんと大人しくお留守番してた?」
「ぉうんっ!!」
 可愛らしい振袖をはためかせたマキが玄関をくぐるなり、庭に伏せていた白い毛むくじゃらの塊はがばあっと跳ね起きて、鎖を引きちぎらんばかりの勢いで飛びついてゆきます。
「わぉおおーーんっ!! わふ、わうっ、わおんっ!!」
「きゃ……ちょっと、こら、シローっ!?」
 相変わらず元気なシローにマキも笑顔になりながら、姿勢を低くしてシローを抱きしめました。
「……もぉ。シローってばさびしがり屋なんだから」
「わぉんっ。わんわんわぉんっ!!」
 いつもより強くぶんぶんと尻尾を振りたてて、二日ぶりの再会を喜ぶシローはマキのほっぺに鼻先をこすりつけ、ぺろぺろと舐め回します。
「あんっ……こらぁシロー、くすぐったぁいっ」
 マキの家の恒例の帰省は、大晦日からお正月にかけて、電車で1時間ほどのおじいちゃんの家に戻るだけのささやなかものですが、それでもシローを一緒に連れて行くことはできません。
 毎年おとなしくマキのお家でお留守番をすることになっているシローなのですが、今年はちょこっと事情が違いました。大好きなマキと離れ離れになるのを嫌がったシローが、出かける直前まで暴れにあばれて、ぜんぜん言うことを聞かなかったのです。
 マキのお父さんもお母さんも、毎年のことなのにどうして今年になっていきなりシローがわがままになったのかと首を捻るばかりでした。
「ごめんね……おいてきぼりにして。寂しかったよね、シロー」
「わおん……くぅんっ」
 ただひとり、その理由を理解していたマキはシローの首に回した手にぐっと力を込めて、ふかふかの毛皮に顔をうずめます。
 白くてもこもこの冬毛に生え変わったシローの身体は、たっぷりお陽さまの匂いがして、顔を近づけているだけでとろんと眠くなってしまうほどでした。間近でシローの息遣いを感じているうちに、マキの胸もとくんと高鳴ります。
「シロー、あったかい……」
「くうぅん……」
 シローもうっとりと目を細めて、マキの首筋にぐりぐりと自分の首を押し付けます。シローもこの二日間、マキに会いたいと思い続けてくれていたのです。言葉は通じなくても、マキにはちゃんとわかりました。
 目を少し潤ませて、シローが『もう行かないで?』『いっしょにいようね』と訴えかけてきます。
「シロー……」
 そんなシローの仕草に、マキは切なくてたまらなくなってしまいました。マキはシローの前にひざまづいて、そっと首を上向けると、シローの唇に自分の唇をちょんと触れさせました。
「んちゅ、んむっ……れるっ……っふ……」
 すぐに伸ばした舌が絡まりあい、ふたりはちゅくちゅくと濡れた音を立て始めます。
 『ただいま』と『おかえりなさい』。
 そして『さびしかったよ』『いっしょだよ?』。
 言葉などなくても、なによりも雄弁に『だいすき』を伝え合うためのふたりのキスは、マキとシローの間にある種族の壁を取り払って、しっかりと心を繋ぎ合わせてゆきます。
 泡立ち、どろぉっと粘ついて喉に絡むシローの唾液を、こくりこくりと飲み込んで、マキはせいいっぱい、置いてきぼりにしてしまったシローに『ごめんなさい』を伝えました。
 けれど、マキはすぐにシローが怒ってはいないことに気付くのです。
 シローはただ、大好きなマキがお家からいなくなってしまったことを心配し、寂しさでいっぱいになりながらも、いっしょうけんめいマキのお家を守ってくれていたのでした。
「シロー……っ、んむっ、んちゅうぅっ……」
「わふ、わぅっ」
 温かいもので胸がいっぱいになり、マキは我を忘れてシローとのキスに没頭します。いつしかふたりのキスは、『だいすき』と『あいしてる』を伝え合うものに変わってゆくのでした。
 パパにもママにもナイショのふたりの関係。けれどいまや、マキとシローの心を繋ぐ絆は何よりも堅く強固で、決して離れないものになっているのでした。
「ふぁあ……っ♪」
 情熱的なシローのキスに、いつしかマキの脚からは力が抜け、甘くじぃんと溶け痺れた腰がとすん、と芝生の上に落ちてしまいます。
 ぶるっと震えた背筋をぞくぞくと切なさが這いのぼり、乱れた着物の裾の奥、防寒用のタイツの下に穿いた下着の内側にも、じわあっと甘い疼きが溜まっていきます。
 けれど、ぺしゃんと芝生の上に座り込んでしまったマキの上に覆いかぶさるように、シローは大きな身体をぴったりと寄せ、上向くマキの顔をぺちゃぺちゃと舐め回してゆきます。敏感な耳やほんのり色づいた首筋もいっぱいいっぱい舐められてしまい、マキの頭はどんどんふにゃふにゃになってしまいました。
「もぉ、……お着物汚したら、お母さんに怒られちゃうよっ……」
 シローの前脚に伸しかかられ、ほとんど芝生の上に倒れこみそうになりながら、マキはシローの首に回した腕に力を込めて、やめるように言います。
 けれどシローは器用に首を捻って、マキの胸元、襟の合わせ目にぐりぐりと鼻先を押し込んできます。
 濡れた鼻と、はあはあと伸びた唾液まみれの舌が、着物の下に滑り込み、れろんっ、れるぅっとマキの首筋と鎖骨を這い回るたび、まだブラも付けていないマキのちいさなふくらみは下着に擦れ、その先端をぴんと尖らせてゆくのです。
「馬鹿ぁ……ぉ、帯、解けちゃうっ、じゃないっ……。シロー、め!! ダメ!! ……ね? ぬ、脱がしたら、ダメだってば……あ、あたし、これ一人じゃ着れないんだから……っ」
 昨日の初詣に続いて、もう一度お祖母ちゃんにねだって着せてもらった振袖ですが、着慣れない上にこうまでシローにのしかかられては思うように身動きが取れません。マキが身をよじるたびに襟が崩れ、帯が緩み、裾が大きく乱れてしまいます。
 けれどシローはマキの抵抗がないものと勘違いし、いよいよ大胆に頭を下ろすと、マキの脚に鼻先を押し付けました。大きく割り拡げられた膝の間、めくれた裾の奥に頭を突っ込んで、べちゃべちゃの舌がタイツの上からマキの大事なところをまさぐり始めます。
 あっという間に白いタイツはぬるぬるのくちゃくちゃに湿って透け、マキの肌色をのぞかせます。シローの熱い吐息は、着物の奥にこもって、敏感な内腿をくすぐりました。
「ふぁ……っ、しろー、やぁ、着物、汚れちゃう……あとでおかあさんたちも帰ってくるのに、……シロー、あたしが着替えるの、手伝えないでしょっ……?」
「わぉんっ!!」
「わ、わぉんじゃないってばぁ……もぉーっ!!」
 ぎゅっ、と訴えるように胸元の毛皮を握りしめたマキにも、なぜか自信たっぷりに答えて、シローはさらにぐいっと顔をマキの脚の間に突っ込んできました。とうとう裾が大きく開き、同時に限界になった帯がするりと解けてしまいます。
「ぁ……っ、ばか、シロー、だめ、だめ!! こんな、お外で……っ」
 ぽかぽかと頭を叩くマキにも、シローはまったくいうことをききません。するりと開いた着物の合わせ目から、まだまだぺたんこの胸までも大きくあらわになって、マキはすっかり『召し上がれ』状態になってしまいました。
 着物というものは、いざというときにはひどく無防備なものなのです。
 腰の帯だけが辛うじて前を止め、おヘソとおなかを隠してこそいますが、タイツの下半身もほとんど隠れず、仰向けの胸にいたってはすっかり丸見え。柔らかなプリンのように揺れ、先端をほんのりとピンク色に色づかせています。
 誰かに見られてしまうかもしれない、おうちの庭のまんなかでこんなことになって、マキのほっぺも唇も、とろんと甘く蕩け、肌もうっすらと蜂蜜を混ぜたミルク色に上気していました。
「ふぁあ……ぅっ」
 巧みにうごめくシローの舌先が、タイツの合わせ目を擦るようにマキの大事なところを舐め上げます。マキは飛び上がりそうになるのをぎゅうっと目を閉じて耐えました。
 タイツと下着越しにも感じる器用な長い舌が、マキのあそこの敏感な突起を擦り、びりびりと鋭い快感を何度も打ち込んできます。マキは思わず悲鳴を上げそうになってしまいました。
 誰かに聞かれるわけにはいきませんので、マキはあわてて両手でじぶんの口を塞ぎますが、ぽかぽかと自分を叩いていたマキの両手が止まったので、シローはそれを『いいよ』の合図だと受け止めてしまいました。ますます夢中になって舌を動かしだすシローに、マキは気が気ではありません。
「や、ぁ、だめ、だめぇ……シローっ、こ、こんなとこ、で……み、見られちゃうっ……よぉ……っ」
 マキとシローがいる庭は、玄関の門を覗きこめばすぐに見えてしまうような場所なのです。植木が陰を作ってはいますが、たとえば郵便配達や新聞屋さんがやってくれば、あっという間に見えてしまうような場所なのでした。
 せめて少しでも庭の奥へ、と這いずろうとするマキですが、シローに女の子のいちばん敏感な場所をくちゅくちゅを音を立てるほど舐め続けられていては、それも思うようになりません。
「んぅっ……ふっ……ぁあうっ……だめ、ぇ……っ」
 着物の奥に篭ったマキのおんなのこの匂いに、シローはますます発情しています。すでにおなかの鞘から抜け出したおちんちんが、赤黒く色づき、びくびくと尖って膨らみ、シローの脚の間でぶるんぶるんと揺れていました。
 顔をそむけようとしても、身体の向きの関係で嫌でも目に入ってしまうそのいやらしいカタチに、マキもだめ、だめと思いながらも、自分の身体がいうことをきかなくなっていくのがわかりました。
「ぁ、…んぅ…っ、ふぁ、あぁあっ……」
 タイツ越しのもどかしい刺激は、けれどかえってマキのおなかの中を熱く煮えたたせ、くつくつと沸騰する切ない疼きがいつもよりもとろとろにおなかの奥深くを蕩かせてゆきます。
 べちゃあ、とタイツの股間に広がる染みは、けっしてシローの唾液だけが原因ではありません。小さな白い布地の内側では、もう秘密の場所はくちゅりと大きくほころびて、甘い蜜を次から次に溢れさせているのです。マキの身体は、もうすっかりシローを受け入れる準備を整えていました。
「っ………」
 これまでえっちをするたび、何度も繰り返されてきたシローの愛撫が、マキをますます昂ぶらせてゆきます。
 マキ自身もまだ気付いていないうちに、いつしかなにも知らなかったはずの無垢な乙女はすっかり大好きな相手を愛することのできる『おんなのこ』にされてしまっているのでした。
 可愛い顔を真っ赤にし、大好きなで、大事で、特別な相手にだけ見せる『おんなのこ』の表情で、マキはシローを見上げます。薄く開いた唇からは桜色の舌と、溢れんばかりの唾液が覗き、準備万端でシローを求めていました。
 じわ、と涙の滲む目で、マキはシローを見上げます。
 激しく高鳴る胸の鼓動は、一秒でも早くシローの『およめさん』になりたい、という思いを加速させ、マキの頭を熱っぽく支配してゆきました。
 マキは、俯いたままぽつりとつぶやきました。
「シロー……の、ばかぁ……っ」
「わぅ?」
「ばかぁ!! シローのばかぁ!!」
 マキの様子がおかしいのできょとんとしたところを、いきなり大声で叫ばれて、シローは耳を丸めて飛びあがります。
 それでもマキは、着崩れた着物を直すでもなく、芝生に座り込んだままぽろぽろと涙をこぼしながらシローをきっと睨むと、ぶんぶんと頭を振って言葉を続けるのでした。
「シローがいけないんだからね!? シローが、そんなんだから、……あたし、こんなふうになっちゃうんだよ?! お、おじいちゃんのところにいるときも、みんなとお話してる時も、シローのことしか、考えられなくってっ……!!
 今日だってそうなんだから!! あたしひとりで先に帰ってきたのだって、そうなんだからねっ!! し、シローに会いたかったからなんだよ!?」
 ごく、と口の中にあふれそうになった唾液を飲みこんで。マキはくしゃり、と表情を崩しました。泣きながら笑って、シローをじっと、じっと見つめ、あふれる思いを言葉へと変えてゆきます。
「さ、さいしょは、シローが、ひとりで、およめさんいなくて、さびしそうだったから!! ちょ、ちょっとだけ、手伝ってあげるつもりだったのに……なのに、っ、なのに!! ……あたしを、こんなにしちゃったの、全部シローのせいなんだからねっ……!!
 シローのこと、だいすきで、だいすきで、ヘンになっちゃいそうなのに……そ、それなのに、こ、こんなにされたら、も、もうシローとっ、……ぇ、えっちすることしか、考えられなくなっちゃうんだからぁっ!!」
 感情を爆発させながら、マキはシローの身体に飛びつきます。ちょうどさっきの逆の格好でした。
 けれど、あまりに事態が突然すぎて一体何のことか解らないシローには、ただおろおろと足踏みをし、目を白黒させるばかりです。困惑のシローに、マキはいつまでも泣きながらぎゅうぎゅうと抱きつくのでした。




 洗ったばかりの毛布を敷いた縁側、窓を開けた廊下の上に、うつ伏せになって膝をつき、お尻を上げ。マキはぎゅっと頼りない毛布を握りしめて、シローを呼びます。
「ん……いいよ?」
 いくぶん緊張しているマキとは対照的に、すっかりあたまに血を登らせたシローはマキの背中にがばっと飛び乗り、はあはあと息を荒げながらがちがちに膨らんだおちんちんをマキのおしりに押し付けてきます。
 丸く黒い大きな目は、すっかり濡れてマキを求めていました。
「……シロー、……っ」
 足首に下した濡れたタイツとパンツを絡め、下半身をさらけ出したまま、マキは切なく声を震わせます。
 服の上からのもどかしい刺激で延々と焦らされ、もはや限界のマキは、もう何も考えられずにシローの身体を受け入れようとしていました。シローが求めるとおりの四つん這いで、お尻を高く上げる獣の格好。恥ずかしさと、よく分からない恐怖感で、マキの心臓はばくばくと震えています。
「…………っ、」
「わおんっ……!!」
 けれど、そんなマキがためらうひまもなく。手の支えも必要なしに、びく、びくと震えるシローの固く尖って膨らんだおちんちんが、づぷん、とマキのあそこの中に沈んでゆきます。
 マキとはじめてえっちをしてから半年以上が過ぎて、シローはもうすっかりマキとのえっちの仕方を覚えているのでした。驚くほどスムースに、シローはマキの身体と、奥深くまで繋がってゆきます。
「ぁ、あっ、あ、あっ」
 あっという間に、硬く張り詰めたおちんちんがマキのおなかを貫いてゆきます。マキが知っているシローの肉の格好そのままに、柔らかく狭い『おんなのこ』の孔がくり抜かれてゆくようでした。
「あぁ、あっ、あぅ、シロー、すごいっ、ぉ、おちんちん、っは、入って、きてるよぉ……っ!!」
 必死に縁側にしがみ付くマキを押し潰さんばかりの勢いで、大きな身体を圧し掛からせ、そのままぐりぐりと体重を乗せて、深々とシローが腰を打ち付けてきます。
 尖ったおちんちんの先端がおなかの深いところを突き上げ、ごりっ、ごりっと貫く感覚が、マキの子宮をえぐるのでした。
「あ、あっ、あ。シロー、っ、あ、ぁ♪ あぁっ♪」
 そうして、いったん奥深くまでマキを貫いてから、シローは猛然と腰を振り始めました。その激しさと言ったら、押し込まれるときはマキの身体がべたんと床に押し潰され、引き抜かれるときは小さな腰がふっと浮かびあがるくらいです。
「っ、っ~~……ッ!! ふぁ、シロー、や、ぁんっ、お、おなか、おなかヘンになっちゃう……っ!!」
 肉の竿の途中の、膨らんだ部分が柔らかな襞を押し分け、天井の気持ちイイところを出入りの度にぞるるっ、ぞるるるぅ、となぞり擦り、マキの手足はそのたびにぴぃんと硬直します。
 さらには硬く熱いおちんちんがおしっこの孔を裏側から圧迫し、マキはあそこからはぴゅう、ぴゅううぅっと潮が吹き上げて、毛布をぴちゃぴちゃとと濡らしてゆくのでした。
「シローっ、しろーの熱いの、いっぱい出てるっ、でてるよぉ……!!」
 挿入と同時に、勢いよく射精をはじめたシローのおちんちんは、たちまちマキの狭い女の子の孔にどくどくと精液を注ぎ込み、赤ちゃんのもとでいっぱいにしていきました。
 すっかり敏感になった身体の内側全体で、シローのほとばしらせる白くどろどろの分身を受け止めるたび、マキの身体に言葉にできない悦びが湧き上がってゆきます。
「んぐ、っふ、ふぅぅぅあうっ♪ ……ん、むぐぅっ……ぅ」
 たまらず毛布を噛み締めて声を押し殺すマキですが、シローは容赦なく腰を動かし続けました。
 できたてほかほかのお餅に埋まった杵のように、しっかり絡み付いて離さないマキの腰が、シローの激しい前後運動にあわせて上下し、跳ね回ります。マキの『おんなのこ』は、ちょうどシローが腰を動かすのとは反対の動作を返していました。シローがおちんちんを引き抜くときはきゅっ♪ と締め付けて絡みつき、押し込む時にはひだひだを寄せ合ってぐにゅっと押し返すのです。
 ぬぶっ、ぢゅぷっ、といやらしい音を響かせて、マキもこの半年で覚えたシローとのえっちの仕方を、存分に披露します。
「わおぅ、わぉおんっ!!」
 マキを組み敷いたシローが、高く吠えます。
 づぷん、と深く沈みこんんだおちんちんの先端が、膨らんで降り始めた子宮の入り口をぐいっと押しあげ、そこに激しく白いマグマをぶつけます。
 一秒単位でびくびくと膨らみ、びゅるびゅると赤ちゃんのもとを吐き出すシローのおちんちんは、マキをすっかり虜にしてしまいました。
「んぅ、あ、シロー、しろおっ……シロー、すごい、よぉっ……!!」
 マキがうわずった声で名前を呼ぶと、シローも興奮した吼え声をあげます。誰よりも深くシローと繋がったマキには、シローが気持ちいいと叫んでいるのがはっきり聞こえました。
 そう、マキはシローのお嫁さんなのですから、いまはどんな女の子よりも一番、マキがシローを気持ちよくさせてあげることができるのです。
「シロー、だいすきっ、だいすきだよぉっ……♪」
「わっぉおんっ!!」
 興奮とともに大きく、ボールのように膨らんだシローのおちんちんの根本が、深くマキのあそこの中にねじ込まれます。シローのおちんちんのなかで一番敏感な場所であり、同時にマキのおなかをみっちりと埋め尽くし、無茶苦茶にかき混ぜてしまうそれが、しっかりとふたりを繋ぎ合せます。
 まるで、こうなるために産まれてきたように。
 シローとマキの身体は、一部の隙間もなく噛み合うのでした。シローのおちんちんの格好そのままに、狭くぬめるおんなのこの孔を身体の奥の奥まで深ぁくくりぬかれ、マキはぬぷぬぷと前後するシローのおちんちんに征服されてしまいます。
「あ、あぅ、シローっ、シローのっ、出てる、いっぱい出てるっ……おなか、シローでいっぱいにされちゃう……っ」
「わおぅ、わんっ、わんわんわぅんっ!!」
 背中にぴったりと押し付けられるふかふかの毛皮、耳元で響くシローの荒く熱い吐息。なにもかもが、マキの心を熱く激しく躍らせてゆきました。
 マキのおなかのなかを、ありったけ塗りつぶしてしまおうとせんばかりに、際限なく注ぎ込まれるシローの赤ちゃんのもとが、びくびくと元気に跳ね回り、マキの身体の奥へと注ぎ込まれてゆきます。
 火山が噴火するように熱く煮えたぎった射精をうけとめるたび、波のように打ち寄せる『おんなのこ』の悦びが、マキを侵略していきました。
「ぁ、あっ、あ。あーっ、ぅあ、んぁぅ、ぁっ、あぁあああァ……ッ!!」
 本当なら、これはいけないことなのだと。
 シローは犬で、マキは人間で。だから決して許されないことなのだと。そう思っていたはずのマキの心が、粉々に砕けてどこかに消えてゆきます。
 ただひたすらに、シローを愛し、大切に思い、大好きだと伝えたい。それだけがいまのマキの偽らざる気持ちでした。
「シローっ そんなにいっぱいしたら、できちゃう、……あかちゃん、シローとあたしの……、あかちゃんっ、できちゃうよぉっ!!!」
 イヌとヒトとでは、赤ちゃんができない。そんなのはマキだってずっと前から知っています。でも、それでも、それでも、マキは心の底からそれを望んでいました。

 シローの、赤ちゃんを産んであげたい。

 誰よりもシローを大好きでいることを、はっきりとカタチにして示すために。こうやって、シローとの関係を秘密にしなくても良くなるように。
 シローと自分が、どれだけお互いのことを大好きなのか。それを世界中のみんなに教えてあげるために。
「ぁああ、ぁあ、ぅあ、ふぁああぅぁ……ッ!?」
 それに応えてくれたのでしょうか。
 びゅる!! びゅる!! とひときわ激しく、マグマの噴火のように、シローのおちんちんが爆発します。おなかの奥に直接叩き付けられるシローの熱いほとばしりに、マキはシローが懸命に、生命の素を絞り出してくれていることに、マキはなによりも深い歓びを感じました。
(シロー、あ、あたしが、ちゃ、ちゃんとっ、ぁ…赤ちゃん、産めるようにして、くれてるっ……♪)
 だから。
 あとは、マキが頑張る番でした。
 マキは、女の子が大好きな相手を気持ちよくさせてあげることのできる、身体の全部を、ありったけ、残さず余さずに使って、シローを天よりも高くまで気持ちよくさせなければなりません。
 シローの赤ちゃんのもとが、ちゃんと、自分のおなかの中の『タマゴ』にまで届くように。
 ……保健体育で習った、えっちのあとの“ジュセイ”と“チャクショウ”がちゃんと起きてくれるように、マキはからだじゅうをつかって、シローのおちんちんから赤ちゃんのもとを搾り取ります。
「あ、あぅ、あ、あっ♪ ぅあ♪ ふぁ、ふぁぁあぅぅあっ……!!!」
 びりびりと胸の奥で弾ける赤い実の衝撃。シローのおちんちんの根本の瘤が、すっかり皮の内側に隠れてしまったマキの敏感な突起を、おなかの裏側からごりごりと擦ります。
 まるで小さなマキのおなかを破裂させようとしているようでした。
 シローが逞しい四肢を踏ん張らせ、腰を動かすたび、マキのしなやかな両手足はぶるぶると震え毛布の上に沈んでしまいます。
 繊細で敏感な快楽神経の詰まった柔らかな孔を、まるで石臼のようにしつこくなんどもなんども丹念にすり潰され、マキは数えることもできないくらい、繰り返し快楽の頂の上に押し上げられます。
 際限のない快感は、マキのあたまをすっかりからっぽにし、言葉や思考、余計な不安や怖さ、『おんなのこ』としてシローと愛し合うために不必要なものを奪ってゆくのでした。
「ふあ、あぅ、あ、あ、ふあぁああ!!!」
 激しく迸るシローの赤ちゃんのもとが、マキの子宮を打ち据えるたび、マキの足元には透明な蜜がぱちゃぱちゃとこぼれます。痙攣してひしゃげた小さな穴からなんどもなんども潮を噴き上げ、小さな体をわななかせて、マキはシローを受け止めました。
「ぁ、ぅ、ぁ……~~~ッッ!!」
 なにもかもシローのものにされてしまうことへの、途方もない悦びは、まるで自分が薄れてどこかに消えてしまうかのようなものでした。
 終わることのないシローとの行為に、いつしかマキの意識はふかいふかい闇の中に落ちていきました。


 ……どれくらい経ったのでしょう。
 十年、あるいは百年――マキには本当にそんな長い間眠っていたように思えましたが、実際にはほんの数十秒、あるいは数分のことであったようです。
 マキは縁側に突っ伏したまま、動けなくなっている自分に気付きました。
「んぅ……?」
 じわっ、とおなかの奥に残る熱が、闇の中から浮かびあがったマキの身体を震わせます。
 ゆっくりと冷めてゆく熱と共に、マキの意識がぼんやりとカタチを取り戻していきます。
 いちどはどろどろに溶けた身体がもういちどもとの形にもどってゆくのを感じながら、のしかかっていたシローの重みが消えたことに、マキは気付きました。
「シロー……?」
 いっしゅん、いままでのことも、なにもかも、全部全部夢かと思ってしまったマキですが、そうではありません。マキの腰の下に敷かれた毛布は、マキが吹き付けた蜜でべちゃべちゃに汚れ、内腿から膝に糸を引いています。
 収まりきらなかったシローの赤ちゃんのもとも一緒にこぼれ、毛布はまるで水溜りに浸したような有様でした。
「んぁ……っ♪」
 そして、おなかのうちがわをちりちりと焦がすような、鈍い痛みにも似た感覚に、マキはぶるりと背中を震わせます。
 そして――マキはいまなお、シローのおちんちんが深々と自分の身体の中に突き刺さっていることを感じました。
「……シロー、?」
「わおんっ!!」
 そうです。シローはどこかにいってしまったわけではありません。力を失っていたマキから離れて、シローはマキの背中を覆っていた前脚を離し、マキの身体から降りて、首を反対側に向けていたのです。
「あ……」
 マキはふいに強い不安を覚えます。身体こそしっかり繋がったままでしたが、心の奥にぽっかりと穴があいてしまったようでした。
 あんなにぴったり身体を寄せ合って、マキをぎゅうっと抱きしめていてくれたシローが、マキに興味を失ってしまったように――離れていこうとしています。一生懸命、だいすき、だいすき、と伝えあったはずのシローとの間に、前触れもなく大きな壁が築かれてしまったかのようでした。
「シロー、……っ」
 せっかく繋がっていたシローとの心が、離れてしまった。一つに溶け合っていた心が離れ、言葉や、習慣や、何もかもが違うイヌとヒトに、戻ってしまった。そのことを悟り、マキの胸がきゅんと切なく痛みます。
 じわ、と涙が浮かび、急速に全身から熱が失われていくようでした。
(や……ぁ……っ)
 あんなにも、あんなにもマキは懸命にシローのことを想い、切なさで胸をいっぱいにして、大好きだと伝えていたのに。
 それは、シローには届いていなかったのでしょうか?
 そう、マキが思った時でした。
「わおん!!」
「え、?」
 マキは、自分がとんでもない早とちりをしていたことに気付くのです。
 シローはそのままぐるん、と身体の向きを変え、マキの身体におちんちんを根本まで突き入れたまま、マキにお尻を向けたのです。そしてそのまま、あろうことか縁側を飛び下りて、庭のほうに身体を進めだしました。
「っあぅあぁあッッ!?」
 マキのあそこが、深々とえぐりこまれたシローのおちんちんにかき回され、前触れもなくぐるんっとねじられ、柔らかな襞が容赦なくかき混ぜられてしまいます。
 まだシローのおちんちんは硬く張り詰めたまま、少しも衰えることなどなく、深々とマキのおなかの中を貫いたままでした。それどころか、太く膨らんだ根元までがマキのおなかの中に挿入されているため、シローがたっぷり放った赤ちゃんの素は、マキのおなかの中をぱんぱんに膨らませています。
 その上でなお、一番敏感な場所で、しっかりと身体を繋げたまま。シローは、マキのおなかの中で、おちんちんをグルンとねじり、ドリルのように回転させたのでした。
「ぁあぁあああああぅうぁっ!?」
 さっきまでの交わりで何度も何度も達してしまったマキが、その途方もない衝撃に耐えられるわけがありません。まるで天地が逆転したかのように、ぞるるるっ、と歪に変形したシローのおちんちんで、おなかの中を穿るようにの捻られて、マキは悲鳴を上げてしまいます。
「ぁ、っふっ、あぅ…っ!? や、だ、だめ……ッ」
 さっきまでベッドに押し付けられていた腰が、今度はシローに力強く引っ張られ、上下に激しく揺さぶられます。
「ぁぅ、あっ、かはっ……ぁっ、あ、あッ!?」
 身体が内側からひっくり返って、おなかのなかのものが残らず掻き出されてしまうかのよう。シローと繋がったまま、ベッドの上を引きずられそうになって、マキの頭は真っ白になってしまいます。
「だめ、ッ、シロー!? い、ひぁ、ぁ。、な、なに…これっ!? うぁ、ぁ、だっだめッ、だめ!! 引っ張っちゃだめぇ……っ!!!?」
 マキはたまらず背中を捻り、シローの腰をつかもうと手をのばします。
 しかし、シローはマキの言うことなどまったく聞かず、しっかりとおちんちんをマキのおなかに食い込ませたまま、毛布に四肢をふかぶかと食い込ませて力強く床を踏みしめます。
 狭いおなかの中で大きく膨らんだままのおちんちんを、そのまま引き抜かれそうになり、マキはのけ反りました。同時に、マキのあそこは反射的にきゅううっっ、と今日一番の締め付けを見せます。
 それに大きく息を荒げ、シローは繋がりあったふたりの結合部分から、さらにどぱぁっと、大量すぎるくらい大量に、マキの中に赤ちゃんのもとを注ぎ始めました。
「……な、なに、これ……っ…ふぁあああぅ!?」
 これまでの射精なんか、とても比べ物になりません。マキのおなかの奥で熱い濁流が溢れ、たちまちそれがおヘソのほうへとせり上がってゆきます。
「やぁ、あそこ、裂けちゃうぅ……し、しろーのおちんちん、な、なかで、ひっかかってッ……るん……ひぅぅううぅっ!? やぁ、だめ、だめ、シローっ!! だ、出さないでッ、もう出さないでよぉっ……ぉ、おなか、ヘンになっちゃうっ!?」
 シローとのえっちでも経験したことのない、初めての感覚に、マキはすっかり混乱し――我を失っていました。
 けれど。これが、ドッキングと呼ばれる、シローの本当のえっちの方法なのです。
 大好きなパートナーがちゃんと妊娠できるように、シローは大きく膨らんだおちんちんを女の子の身体の奥深くまで押し込んで、ありったけの赤ちゃんのもとをマキの胎内に注ぎ込んでゆくのです。
 つまり――これはシローが、マキの想いに。
 いっぱいの『だいすき』に。答えようとする証しなのでした。
「お、おなか……っ、ば、爆発しちゃうよぉ……っ!! ……あ、やっ、……だ、ダメぇっ!!! もうだめ、もう入らないぃ……っ!!」
 これまで、マキはシローのおちんちんを根本の瘤まで身体の中に迎え入れたことはあっても、そのまま繋がりつづけることはなく、えっちが終わればシローとちゃんと離れることにしていました。
 マキの知っているえっちの方法というのは、保健体育の授業や、えっちな本で知った、おんなのこのおなかの中におとこのこがおちんちんを入れて、激しく動かして前後させ、射精する――そういうものです。
 ですから、まさかシローがマキの上から離れた後こそが、ほんとうの本番であるなどということは、まったく知らなかったのです。
「あ、あぅ、あぐ、あぁう、あふ、あ!!」
 毛布の上にうつ伏せになったまま、おなかをシローのおちんちんで深々と貫かれ、マキは全身に鳥肌を浮かべたまま、まったく身動きが取れませんでした。
 びくびくと震え、根元の瘤をぱんぱんに膨らませたシローのおちんちんは、いつものように抜けてしまうことなく、小さなおなかの中にあきれるほど大きく膨張し、しっかりと繋がり合って、マキを逃しません。
 マキの小さくすぼまったお尻の孔も、ぱくぱくと小さく膨らんでは透明な粘液をこぼし、シローのおちんちんの形に内側から押し潰されていきます。
「わぉおおおおおおん……っ!!」
 シローはうっとりと目を細めながら、そんなマキの胎内に赤ちゃんのもとを注ぎつづけました。焼けるように熱いシローの精液が、もう入る場所などないはずの狭い孔の奥、びゅーっ、びゅーっとマキのおなかの一番奥に浴びせ掛けられます。
 どく、どく、どぷ、どぷ。
「ぁあう、あっ、あ……ぁ」
 マキの胎内は、シローが吐きだし続ける赤ちゃんのもとでたぷたぷと揺れ、細いおなかはふっくらと膨らみ始めていました。まるで本当に、一足先にシローの赤ちゃんを妊娠してしまったかのようです。
 いつしかマキは、身動きのできない身体を見下ろすように、うっとりとその感覚を楽しんでいました。シローはマキの願いに答えるため、シローのやりかたで、マキを最後まで気持ちよくさせようとしていてくれたのです。
 シローが呆れるくらいに吐き出し続ける赤ちゃんのもと詰まってゆくにつれ、普段は意識することもないような、赤ちゃんのための揺り篭――子宮のカタチがはっきりとおなかのなかに感じられました。
 シローの旺盛な生命の分身は、今この瞬間にもマキの熱く疼く子宮を満たし、その奥の未熟な卵を隙間なく包囲し、おなかのなかを徹底的に蹂躙しているのです。
「んぅうううぁああっ!?」
 がくん、と揺さぶられたマキのあそこから、ぷしゅぅと激しく熱い液体が吹き出しました。身体中が、おなかの内側から裏返ってしまいそうです。
「わおんっ!!」
 シローが再度脚を踏ん張って、前進を再開します。けれどマキとシローは相変わらずしっかり繋がりあったままですから、マキはそのまま引きずられていくしかありません。がくがくと痙攣する手足は言うことをきかず、マキはもう毛布を掴んで抵抗することもできませんでした。
 ぬるぬるぐちゃぐちゃになった毛布の上をぐりぐりと引きずられながら、びくん、びくんとシローが脚を踏ん張るたびに、マキはまるで獣のように、甘い甘い声を上げるだけででした。
「ぁふぁああああ、ぁふ、ああぅあ、ぁああ!?」
 どくどくどくっ、とまるで心臓が動いてきたように、マキのおなかの奥が脈動します。
 特濃の赤ちゃんミルクは凄まじい勢いで、まるでいつだったか、マキがシローにおっぱいを飲ませてあげなかったことの仕返しのようでした。おっぱいが出ないなら、マキを妊娠させて、ちゃんとおっぱいが出るようにしてあげようというかのようです。
「あ、あ、あぁ、だめ、しろー、もうだめ、、あ、あたし……ッ」
 マキを繋げたまま遮二無二前進するシローに引っ張られ、ついにマキは縁側から半分ほど、身体を引きずりおろされてしまいます。
 毛布の上にべちゃり、と腰を沈ませたマキは、もう何も考えられません。ただただ、おなかを膨らませるシローの赤ちゃんのもとだけが、どろどろと凝って固まり、マキを塗り潰していきます。
「ぁあああああああぅあぁあああ!?」
 シローがさらに前に一歩、脚を踏ん張らせました。
 さらにすさまじい勢いで赤ちゃんミルクがどくどくと注ぎこまれ、とうとう限界を迎えたマキの身体から溢れ出します。がっちり繋がり合っていたシローとマキの接合部分から、じわじわと白く、行き場をなくしたどろどろの液があふれていきます。
(あ、あぁ、あっ、あっ)
「――――――――――ッッ!?」
 同時に、ごぽりっと音を立て、沼地から無理やり脚を引き抜くみたいに、シローのおちんちんが、マキの柔孔からとうとう抜けだします。
 がっちり絡み合っていた接合部分が外れ、まるでおなかの中身をもぎ取られるような衝撃に、マキは悲鳴を上げて毛布にしがみ付きました。
 ひっくり返ったあそこは、シローのおちんちんのカタチのままぱっくりと開き、ごぴゅるるっ、とおなかの中にたまった白い塊を勢いよく吹き出します。
 それはまるで、一足早く赤ちゃんが生まれてきたかのようでした。
「あ……ぅ……」
 マキは何度も何度も身体を痙攣させ、未体験の衝撃に身体を震わせ続けました。こんどこそおなかに突き刺さっていた熱い肉の塊から解放され、ぐったりと疲れ切ってもう一度意識を失ってしまいます。
 小さな身体からは力が抜け、強張っていた手足からはゆっくりと緊張が抜けてゆきます。
 その、最後の一瞬。
 マキは、はっきりと感じたのです。女の子が生命をはぐくみ、育てるいちばん大切な場所。そこに殺到するシローの分身が、マキのおなかの作り出した『タマゴ』の場所まで届く、その瞬間と。
 ぷちり、とタマゴに突き刺さったシローの赤ちゃんのもとが、なによりもしっかりと結びつくのを。
(シロー……っ♪)
 くるりと暗転する視界の中、ゆっくりと眠りの中に沈んでゆくそんなマキの側に、シローはくるりと顔を寄せ、どろどろに汚れた顔を舌でぺろぺろと綺麗にしてあげようとします。
 まだまだおちんちんは大きく膨らんでいましたが、そこには荒々しい獣の欲望は少しもありません。むしろ、愛する相手を思いやるような優しげなしぐさでした。
「わおんっ」
 まるで『がんばったね』と言わんばかりのその様子は、目をとじたマキにも確かに伝わっていたことでしょう。
 どこか嬉しそうに目を細め、シローはマキの頬をいつまでもいとおしげに舐めるのでした。



 ◆ ◆ ◆



 ごうん、ごうん、と洗濯機の音を聞きながら、マキはほうっと息を吐きます。暖かいお湯が、疲れきった身体を包み込み、伸ばした手足をじんわりとほぐしていきます。
 お風呂の天井からぽたりと雫が落ちて、湯船の水面を揺らしました。
「もぉ……あんなにいっぱい出すんだもん……びっくりしちゃうよ?」
 シローのおちんちんが深く刺さっていたおなかをそっと撫でて、マキはシローに言いました。本当に壊れてしまうかもしれない、と思っていたはずなのに、マキのそこはだいぶ平静を取り戻しています。もちろん、まだ涙が出るくらいじんじんと痛かったのですが――
「……ねえ、シロー?」
「……わぅ」
 頭からお湯を浴びたシローは、けれどどこか神妙に、マキの側におとなしくちょこんと座っていました。
「ホントに……死んじゃうかと思ったんだから……」
「くぅん……」
 ごめんなさい、と頭を下げているシローは、いたずらを叱られているときとそっくりで、大きな身体なのにやっぱり子供みたいに見えました。
「…はあ。シローってば」
 マキは、そっとお湯から上がると、洗い場のシローにそっと抱きついて囁きます。
 濡れた毛皮がぺとりと肌にくっつくのはあまり気持ちよくはありませんが、シローの体温を直接感じられて、マキは胸が熱くなるのがわかりました。
「シローは、……お嫁さんできたら、どこかにいっちゃう?」
「あぉん?」
 よくわからない、と首を振ってみせるシロー。察しの悪いパートナーの鈍感さにちょっと文句を言いたくなりながらも、マキはそのまま先を続けることにします。
「だから、……あたしじゃなくて、ちゃんとした犬のお嫁さんができたら、あたしのことなんか、シローは忘れちゃう?」
 今年のおじいちゃんの家への帰省は、シローのことを話すためでもあったのです。マキのお父さんとお母さんは、おじいちゃんの家で――シローのお嫁さんの話を始めたのでした。
 マキのお父さんは、春には転勤っすることが決まっており、マキもいっしょに遠くの学校に転校することになっています。そこにはシローを飼っておけるような庭がなくて、だからシローは一緒にいけないということでした。ですから、おじいちゃんの家へ行く途中の車の中で、パパとママは、『やっぱり、シローにもわかるのかな?』と、どこかさびしそうに言っていました。
「シロー。どう思う?」
 もし本当にお父さんたちがその気になったら、今すぐにでもシローとお別れをしなければならないことを、マキは知っていました。
 ぎゅっと、小さな身体をぴったりとくっつけて。マキはシローにもう一度、囁きかけます。
 もちろん、シローの答えは、決まっていました。
「わんっ、わぅ、わおんっ!!」
「あは……ありがと、シロー」
 力強く吼えるシローに、マキの頬をひとすじ、涙がこぼれました。

 ――どんなことがあっても、ずっと、いっしょ。

 シローはためらうことなく、そう答えてくれたのです。
 ぺしゃんと洗い場の床に腰を下ろしたまま、マキは切ない胸の高鳴りのまま、シローをぎゅうっと抱きしめました。
 そして、ゆっくり、話し出します。
「あのね、シロー。……あたし、本当に、シローのあかちゃん……おなかに、いるかもしれないんだ……」
 今月、マキちゃんの『お月さま』はとうとうやってきませんでした。
 これはマキも知らないことですが、たとえ犬と人間であっても、ちゃんと精子と卵子は受精しますし、受精卵は子宮内膜に着床することもできるのです。
 そして、その間はもちろん、生理も止まることになります。
 だから、マキのおなかの中には、今この瞬間、確かにシローの赤ちゃんがいると言ってもいいでしょう。ふたりの赤ちゃんのタマゴを育てるため、マキの子宮はいまもうっすらと熱を保ちながら、いっしょうけんめい頑張っていました。
「だからね、シロー……」
 ひとならば十月十日。
 だったら――この、マキのおなかの中にひっそりと息づいた生命は、いったい、いつ産まれてくるのでしょうか。
「シロー、ずっといっしょだよ……」
「わぉんっ!!」
 そっと小さなおなかを撫でながら、マキはシローとキスを交わしました。
 いつかかならず、シローの赤ちゃんを産んであげる、と。そうかたく心に誓いながら。



 (了)

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