ボロボロ 2020/11/27 20:56

【ラヴ・コラプション】番外編 過去③【先行公開】

異様なほど早い鼓動は、収まる気配がない。
目の前で人が死んだから? メグルが摩訶不思議な力を使ったから?
それもあるが、それだけではない気がする。

「ふふふ~、ねぇ、あんたたちはどうやってイきたい?」

獣のように瞳孔を鋭く光らせたメグルが囁く。恐怖を感じさせる威圧感を伴いながらも、脳がじんじんと痺れるような不思議な声音だ。

「ふごっ、ふごご~ッ!」
「アハハッ、やっぱり何言ってるかわかんないや。おまかせコースでいいよね?」

死に方を「おまかせコース」で決められるなんてたまったものではないだろう。しかし、彼らはそうなっても仕方ない生き方をしてきたはずだと自分に言い聞かせる。

「そういえばそろそろあの子たちのご飯の時間だね~。そいっ」

メグルが白く細い指をぱちんと鳴らすと、2人の男の足元に紫色の光を放つ魔法陣が現れた。すると、魔法陣と同じ色の粘液が湧き出るように男たちの足を包み込む。あっと言う間に彼らの体は大量のスライムに包み込まれてしまった。唯一空気と触れ合っているのは鼻水と涙に塗れたその醜い顔だけだ。

「そのスライムたちはね、私たちの"ご飯"を貯めておくためのものなんだ。貯めるときには私たちが直接精液を注入してもいいけど、一番手っ取り早いのはこうやって男を直接取り込ませちゃうことだよね♡」

メグルが説明する間にもスライムたちはヌチュヌチュ、グチュグチュという耳を○すような下品な音で男たちの全身を嬲っている。

「もう感じてもらってると思うけど、その子たちは効率よく精液を回収できるように耳・背中・太腿・乳首、もちろんチンコも、全身の性感帯を同時に責めるの。ヤバイくらい気持ち良いでしょ?」

「でもぉ、私がここに来る前にあんたたちに掛けた呪い、覚えてるよね? そ、『射精禁止の呪縛』! 死ぬほど気持ち良くて、死ぬほどイきたくて、でも絶ッ対にイけない♡ このまましばらくスライムちゃんたちに可愛がってもらってね♡」

「ン゛♡ ン゛ア゛アアァァ♡」

「あはは、イかせてほしいの~? じゃあアンタたちの新しいご主人様、美虹ちゃんにお願いしなさいよ♡ アンタたちが道具のように扱った美虹ちゃんにさァ!」

「ヒホッ♡ ヒホハハァ♡ ヒガヘヘェッ♡」
(美虹っ♡ 美虹さまぁ♡ イかせてぇッ♡)

突然向けられた必死の懇願に、思わず身を竦める。

「ヒッ…」

男。おとこ、オトコ。
汚い。気持ち悪い。怖い。

「美虹、大丈夫よ。」

暖かい声の主は、いつの間にか背中から抱きしめてくれていた"店長"さんだった。

「よく見て。この家畜共は、もうあなたが恐れていた"男"ではないわ。私たちサキュバスに食われることを望んでいるブタよ。」

ドクン、ドクンという鼓動はより明瞭な輪郭を帯びる。
それより、「私たちサキュバス」って?震える声を振り絞る。

「店長さん、わたしも、その、サキュバスなん、ですか?」

「ええ、どうやらそうみたい。先天的なサキュバスなんて珍しいけど。きっとあなたは本来の力が暴走して今まで男に酷いことばかりされてきたんでしょうね。
ほら、私が力の制御を手伝ってあげる。あのブタどもに『解除』って言ってごらんなさい。さっきの、見たでしょ?」

メグルが一人目の男を殺した光景が思い出される。あれを…私が?

「今まであなたを虐げてきた男どもを、今度はあなたが蹂躙してやるの。今日はその第一歩よ。手、貸して?」

私の手の甲は柔らかい手に包まれ、そのままスライムに包まれた男どもに向けられた。

喉の奥がキュッと締まる。

「か…<解除>ッ!」

「ン゛ッ♡ ン゛オ゛アアアア゛♡」

瞬間、男どもの悲鳴とも嬌声とも取れる絶叫が部屋中に響く。
紫色のスライムはみるみるうちに白濁液に満たされ、それに伴って男どもの体はミイラのように干からびてゆく。

「あはッ、大量大量♡ 美虹ちゃん、才能あるねぇ。」
「私に、才能…?」

そんなこと初めて言われた。
誰にも、私の才能を認められたことなんてなかった。

「ええ、そうね。元々制御が効かず溢れ出してしまうほどの魔力があったんだもの。これは立派な、美虹の才能よ。」
「あのっ…ありがとう、ございます?」
「ふふっ、なんで疑問形なのよ。ところで、憎いブタどもを成敗した気分はどう?」

そうだった。私は二人の人間の命を奪ったのだ。
常識的に考えたら、とんでもないことだ。しかし私にはあまりピンとこなかった。なんとも思わない。むしろ爽快にすら感じてしまった。

「なにも感じないのはね、人間は私たちとは違う生き物だからよ。私たちはいわば食物連鎖の頂点、人間は私たちの餌に過ぎないの。」
「人間が…?」
「ええ。この考え方は今のあなたには腑に落ちるんじゃないかしら?」

そうだ。人間の社会はずっと生き辛かった。
なぜ私はみんなと一緒じゃないんだろうと思うことが多々あった。
そのうえ、たった今殺人を犯したのにも関わらず全く心が動かない。

「たしかに、そうかもしれません。」
「そうでしょ? ミコ、今日からあなたは私たちの仲間。ここ、"ラブ・ハイヴ"の従業員よ。今日からビシバシいくから、覚悟してね?」

基本的に無表情な店長が、いたずらっぽくウィンクしてみせる。
かわいらしい。

「…よくわかりませんが、分かりました。」

サキュバス「ミコ」の新しい人生が始まった。

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