柱前堂 2020/10/31 00:10

いじめの延長でえっちなことするはずが

いつもの昼休み。いつもの体育倉庫。いつもの取り巻き。いつものイインチョ。全部アタシの思い通りにしているはずなのに、スカッとしたことなんか一度もない。

体育倉庫の奥へ追いやられたイインチョは、退屈そうにつっ立っている。
そろそろ暑い季節だというのに、襟までぴったり止められたワイシャツ。ネクタイは曲がりなく、ブレザーのボタンは一つ残らず留められている。
スカートは折り目正しく膝丈、靴下はくるぶしまで。
胸元まで届く長い髪はきつく三つ編みに結んで、上から下まで校則通り。
眼鏡に規制なんてないけれど、こうなると地味なメタルフレームも「これが正しい」と言わんばかりだ。

ウチは荒れてる学校なんかじゃないけれど、皆大なり小なり制服を着崩している。それぞれ好きにしてはいるんだけど、規則を押し付けてくる学校じゃなくて皆のクラスに属しているんだって連帯感を示す意味もある。
イインチョただ一人を除いては。
彼女だけが一分の隙もなく校則を守っている。我に罪なしと澄まし顔で、誰とも遊ばず自席で本を読んでいる。それがなんだか馬鹿にされてるみたいでムカついて、絡んでいたらいつの間にか体育倉庫で詰めるのが日課になってしまった。

「そんなんじゃ、男だって寄ってこないよ〜?」
「……」
「イインチョだって、エロいこと全然興味ないわけじゃないでしょ? オナニー、したことあるぅ?」
「……」

皆がせっせと煽ってくれるけれど、イインチョは相手にする必要なしとばかりに無反応。その冷めた目がまたムカつく。
変化のない日々にアタシも飽きてきたところだったけど、今日は話が珍しくエロ方向へ転がっていた。ここらで一つ、踏み出してみるか。

「イインチョ、パンツ脱いで」

アタシの一声に、皆がぎょっとして振り返る。そこまで直接的なことをするはずじゃなかったもんね。
一方のイインチョは、平然とスカートの中に手を入れて、黒いレースの下着をずり降ろした。
……え、黒? もっと真っ白の、つまんない下着かとばかり思ってた。

ええい、怯むな。隙を見せたら、あの仏頂面に屈したみたいじゃないか。
アタシもパンツを降ろす。普通のだから、比べられるとアレだけど。

「オナニー、したことないんでしょ? 教えてあげるよ。横になって」

イインチョは面倒事を嫌っている。アタシ達は言うことを聞くまで、昼休みを過ぎたって拘束するつもりでいる。そうなると午後の授業に遅れる。それは避けたいから、大抵のことは受け入れる。でもそれでイインチョをどうこうできるのは、昼休みの間だけだ。
だから、ここでイカせる。昼休みに一度イッたら、午後の授業をまともに受けるのは難しいだろう。あの大人ウケのいい澄まし面がどうなるか、今から楽しみだ。

横たわったイインチョと逆さまに、私も横になる。スカートの中の性器を互いに押し付け合う態勢。
偉そうなこと言ったけど、アタシもたまにオナニーする程度。女性相手なんて考えたこともない。
女性器をマジマジと見たこともなかったけど、なかなかエグい。顔を近付ければ、磯臭さが汗の臭いに混じる。

まあ、ウブなイインチョよりはマシなはず。おずおずと入口に指を伸ばして、周辺を撫でる。あんまり反応ないけど、まあ自分でやったってこんなもん。適当に触って昂らせたら、最後はクリでイカせればいいし。

「ほら……イインチョもやってみなよ……」

私のゴーサインを待っていたのか、イインチョも私の太ももを指でなぞる。こんなことされても従順でいる余裕が、また腹立つ。

「そんなとこ撫でたっ……って……っ?」

性器でなく太ももを狙うなんてカワイイ、と思えたのは一瞬だった。イインチョの冷たい指がアタシの太ももに沈み込むと、一気に意識を奪われた。滑らかに、けれど確かな質感を持って指が滑っていく。軽いタッチなのに、アタシの中身が絞り出されるような錯覚を覚える。その進む先には、アタシの一番敏感な部分。

脚の付け根を越え、来たるべき衝撃に備えてぎゅっと目をつむる。ところが、次にイインチョの指が触れたのは逆の太ももだった。
また同じように上がってきて、今度こそ性器に触れる? いや、そう思わせておいて突然来るかも。あるいは、また逆の脚へ飛んで、何度も焦らされるのかも。その動向から目が離せなくて、アタシの指は完全に止まってしまった。

イインチョの冷たい指が撫でた後が、焼かれたように熱い。アタシの中に、こんな気持ち良さが眠っていたなんて。これが指でするってことなら、アタシのオナニーなんて真似事にもなっていない。

何もできないうちに、イインチョの指がまた脚の付け根を越えた。今度は離れず、股間の敏感な肌を撫で進む。あの指がアタシのナカへ入ってきたらどうなっちゃうのか、想像しただけで胸が苦しくなる。
……期待している? イカせるのはアタシだったはずじゃ? でも、何のために?
考えが纏まらない頭の中で、今感じているイインチョの指先だけが確かだった。

「あっ、ひ……は、はぁああぁぁっっ!!」

そうこうしているうちにも、イインチョの指はアタシの性器へ辿り着いていた。縁をそっと半周して、ナカを掻き回すこと一周半。それだけで、アタシは皆が見ている前でイッてしまった。

「はっ、はっ、はひ、ふぅ、ふーっ……」
「オナニーとやら、随分と気持ち良さそうですね」

私が余韻に浸っている間に立ち上がったイインチョが、見下ろしていた。その目はいつもの退屈そうな眼差しに見えて、微かに優越感が滲み出ていた。それを見たアタシの胸から、さっきまでのムカつきがすっと消えていった。

ああ、初めてイインチョと同じ場所に立てた。

月別アーカイブ

限定特典から探す

記事を検索