フリーセンテンス 2024/06/14 21:58

ちょっと、休話

こんばんは、フリーセンテンスです。

いま、こちらの方で「巴さまが酷い目に遭う」という内容の話を書いていたのですが、ちょっと気分転換に別の話が書きたくなりまして、今日の休みを利用して、一気に冒頭部分(となるのかな)を書いてみました。

架空世界のサスペンスのような、ホラーのような、ついでにSFも混じっているような内容でして、自分が好きなジャンルの詰め合わせみたいな冒頭となってます。
とりあえず、前編・後編にわけて全体と無料プラン(あまり活用してなかったので)で掲載したいと思いますので、もしよろしければ、暇つぶしに読んでください。

「巴さまが酷い目に遭う」は、次回、更新します(;´∀`)
それでは、どうぞ。


前編
 ・・・・・・現在、この惑星の頂点に君臨する生き物が人間であることはもはや疑いようがない事実である。高い知能を武器に世界中に棲息域を拡げ、旺盛な繁殖力で増加してゆき、地下資源を採掘して天楼の都市を築き、様々な機械を造って安寧の暮らしを享受する有り様は、さながら造物主そのものであって、まさにこの惑星の支配者にふさわしい振る舞いであるといえるだろう。むろん、様々な意見があるにせよ。
 だが、かつてはそうではなかった。この惑星には、かつて人類を「餌」と見なす上位捕食生命体がいて、ソレが猛威を振るっている時代があったのだ。
 その上位捕食生命体は、いまからおよそ一万二〇〇〇年まえ、進化の外側から突如として現れた。それも同時期に、三大陸(フローレシア大陸、ラザ大陸、アレクシオス大陸)に、ほぼ同時にである。
 新世暦一九九九年、サクソンバーク国立博物館に展示されていた上位捕食生命体のミイラの遺伝子調査をおこなったところ、なんと、このミイラから、未知の三重螺旋構造の遺伝子が発見されたのであった。このことから、現在では、この上位捕食生命体が、実は宇宙からやってきた侵略的外来種であったのではないかと推測されている。しかし、この上位捕食生命体に猛威を振るわれていた当時の人類にとっては、その正体よりも、いかにしてその脅威から逃れるかのほうがよほど重要なことであった。
 一万二〇〇〇年前――まだ農耕文明は開花しておらず、当時の人類は、狩猟と採集、そしてささやかな交易で生計を立てているていどの存在だった。当然、金属製品はまだなく、黒曜石を加工した槍や短剣が最上級の武器だった時代だ。肉体的には現世人類よりも優れていたとはいえ、人間よりも遥かに強い力を持ち、さらには様々な特殊能力を持つ上位捕食生命体にはとても太刀打ちができなかった。
 この上位捕食生命体は、別名で異形生命体と呼ばれることもある。理由は、この生物が特定の姿形を持たず、大きさも、生態も、有する特殊能力も、個体ごとになにもかもが異なるからであったからだ。そのため往々にして美麗よりも醜悪な見た目になる傾向が強く、古代の壁画にもおぞましい姿形に描かれているのが常であった。ゆえに、侮蔑を込めてそう呼ばれているのだ。ちなみに、サクソンバーク国立博物館に展示されている上位捕食生命体のミイラは、二足歩行の爬虫類のような見た目をしており、廃部からは枯れた無数の触手が生えていて、四本ある腕は人間のように手指が発達していて、その恐ろしい見た目から「プレデター」の名称で親しまれていた。
 上位捕食生命体による生態系への君臨は、実に数千年に及んだとされている。その間、人間を含む他の動物たちは、みな単なる「餌」であるに過ぎず、虐殺とも呼べるその捕食行為によって急速にその数を減らしていた。
 上位捕食生命体は「餌」を食べる際、獲物を生きたまま貪るように食べることを好んだと伝えられている。生き物は身体に苦痛を感じたさい、それを和らげようと、脳が快楽物質を分泌させることが多々ある。これが血流に乗って全身の隅々にまでいきわたると、肉が柔らかくなり、旨味が増すのだ。この現象は脳の発達が優れた生き物ほど顕著であって、ゆえに上位捕食生命体は人間を食べることを好み、その場合、何時間(時には何十時間も)もさまざまな苦痛を与えながら捕食するのが常であった。
 人類を含む他の動物たちにとって幸いだったのは、上位捕食生命体の数がそれほど多くなかったことであろう。彼らは単一生殖種であったが、その繁殖力は極めて低く、数年に一度、一匹か二匹ほどしか生まなかった。生まれたての個体は決して強くなく、また親の庇護もなかった。親の庇護がないということは、幼体期に狙われる危険が高いということでもある。ゆえに、彼らが星の支配者だった数千年間、上位捕食生命体の数はそれほど増えはしなかった。
 そしてこの間に、彼らにとっての不幸が生じてしまう。
 人類が金属を手に入れたのだ。
 金属を練成した武器は石器とは比べ物にならない攻撃力を持つ。特に鉄製の剣には上位捕食生命体の硬い外皮を切り裂けるほどの鋭さがあった。かくして人類は、上位捕食生命体と戦うことになるのだが、それは決して、種の存亡を賭けた崇高な戦いなどというものではなく、ただ単純に、自分たちの暮らしを脅かす存在を排除したいからであった。
 人類と上位捕食生命体との戦いは、ほぼ同時期に、三大陸のほぼすべてでおこなわれた。これは完全に偶然の一致であるのだが、この時期の人類が、ほぼ同時に金属を手にしたことから「何モノ」かの介入があったと主張する者は少なくない。しかし、重要なことは、金属を手にしたことで、人類が上位捕食生命体との生存競争に勝利したことであろう。
 上位捕食生命体と人類、種の頂点を賭けた戦いは、おびただしい犠牲を出しながらも怯むことがなかった人類側に天秤が傾いた。上位捕食生命体の最後の一匹は、フローレシア大陸のサクソンバークで殺されて、そのまま砂漠に放置された。この最後の一匹は、後に伝承を信じた考古学者の一団によって発掘され、後に博物館の目玉展示物となるのだが、人類にとって重要な点は、この日を境に、上位捕食生命体の脅威から解放されて新しい時代が訪れたことであったに違いない。新世暦の、これが始まりである。
 上位捕食生命体の脅威から解放された人類のその後の発展については、いまさら多くを語る必要はないだろう。生息域は拡大し、人口も増え、文明も発展した。特に大規模な機械革命が生じた以降の発展は目覚ましく、いまでは地上のみならず、海も、空も、そして地中すらも、人類が掌握するところとなっている。そしてその支配権は、二〇〇〇年代に突入した現在も、ゆるぎないモノと思われた。
 そんな刻である。上位捕食生命体の脅威が、再び人類に牙を剥きはじめたのは。


冒頭後編は無料プランにございます(´∀`)

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