フリーセンテンス 2021/10/06 17:06

次回作の冒頭

 ・・・・・・人類が、神の領域とされてきた遺伝子工学の世界に足を踏み入れたのは一九七十年代のことである。遺伝子工学の発展は、生物学および医学の分野で人類に無限の可能性をもたらすことが示唆されていたものの、暴走する狂科学主義に警鐘を鳴らす声は当時から少なくなかった。
 警鐘を鳴らす声の中でも特に多かったのが人体に対する悪影響に関してであった。特に人間の生殖能力に及ぼす影響に関しては、科学者だけでなく、一般の市民からも強い懸念の声が聞かれたため、二十一世紀の初頭までは人間に対する人為的な遺伝子操作は禁忌とされて国際条約でも明確に規制されてきた。
 しかしながら、どんなに規制が強化されようとも、一度でも開け放たれたパンドラの箱は絶えず厄災を振り撒き続けるものである。しかもそこに人間の業が加われば、もはや暴走に歯止めはかけられない。当初は再生医療や特定疾患に対する「治療」が主な目的だった遺伝子施術も、時代の流れに沿う形で技術が進歩していった結果、ついに人の受精卵に遺伝子の改変をおこなうまでにいたる。強靭な肉体、明晰な頭脳、高い病気への抵抗力、そして端麗な容姿を持つ「デザイナーベイビー」は、当初、富裕層のニーズに応える形で「作成」されることが多かった。しかし、社会的な格差を増長させるという反発の声が高まると、世論の声を背景にして国際条約で禁止されるにいたる。しかしながら、一度動きだした技術の流れを完全に止めることは不可能であって、以後、暴走する狂科学は、理性と倫理の狭間でくすぶり続けることになる。
 デザイナーベイビーが戦場に「兵器」として登場したのは二十一世紀の後半のことである。この頃の戦争形態は、人工知能を搭載した量子コンピューターに制御されたドローン兵器群による戦闘が常態化していて、人間の兵士は戦闘の最後に敵地を占領する際に送り込まれる程度までその役割を低下させていた。
だが、二〇九二年にアフリカ大陸で勃発した「ボーワル戦争」にて、敵地占領のために送り込まれた「北米大陸統合合衆国」軍の海兵隊が、無人兵器では掃討できなかった現地軍による攻撃で大敗を喫した挙げ句、捕虜になった二万四千人が虐殺されたというニュースが世界中で報じられると、人々は驚愕し、さらにその背景を知って驚倒した。
 なんと、「北米大陸統合合衆国」軍の精鋭である海兵隊を撃ち破ったのは、受精卵の段階で遺伝子組み換えを施された「改造兵士」で構成された部隊だったのだ。「デザイナーベイビー」の作成に関しては、国際条約で禁止されてはいたものの、闇の世界では禁止後も公然と流通しており、軍需企業や犯罪組織などでは、戦闘用に特化された「デザイナーベイビー」が「改造兵士」として運用されていたのだ。そして今回、ボーワル戦争にて、その戦闘能力が広く知られると、世界中の「戦場」で「改造兵士」の需要が一気に高まった。
 受精卵の段階で戦闘用に特化(高い身体能力、悪意に満ちた知能、死に対する恐怖や道徳心の排除、そして狂暴性と残虐性)した彼ら「改造兵士」たちは、犯罪組織の対立から国家間の全面戦争にいたるまで、世界中のありとあらゆる戦場に投入されて活躍した。そして需要が高まるにつれてその戦闘力も強化されていき、後天的に他生物の遺伝子を注入するという蛮行が平然とおこなわれた結果、二十二世紀になる頃には、彼ら「改造兵士」たちは、人間とは似ても似つかぬ姿をした「怪人」として戦場を跋扈するようになったのである。
 怪人たちの登場によって世界は一変した。強い残虐性と凶暴性、そして比類なき悪意に満ちた彼らには、その行動を制御するため、遺伝子に「服従」の因子が組み込まれており、それが目に見えない鎖となって彼らを縛っていた。だが、強い自我と欲望がその鎖を引き千切ってしまうと、彼らは本能赴くまま破壊と殺戮を愉しむようになり、それは無力な一般市民にも向けられて、世界中で大勢の犠牲者が出た。
 犠牲者の中でも特に若い(しかも端麗な容姿や魅力的な肉体の持ち主)女性が多かった理由は、怪人たちの欲望が、「肉欲」に直結するものこそ強かったからである。犠牲となった女性たちはみな例外なく身体中の穴という穴を強○されただけでなく、その後も長い時間かけて残虐な方法でもって肉体を弄ばれ続け、心身共に文字通りの意味でボロボロにされることが常であった。
怪人たちが凌○に飽きると、女性たちは生かされたまま解放されることが多かったが、これは慈悲によるものではなく、その後も彼女たちを精神的に苦しませるためである。そのため、犠牲となった女性たちの直接の死因は、怪人たちの凌○に起因する「自殺」であった。
 後に「怪人災害」と呼ばれることになるこの問題に、世界は当初、通常の治安維持組織で対応していた。しかし、百人単位の犠牲者を出しながらも、ほとんど成果が上がらない状況が続くと、各国は共同で対怪人用に特化した部隊を編成してこの問題に対処するようになる。
 目には目を――ということで編成されたその部隊は、隊員全員が戦闘用に特化された「デザイナーベイビー」で構成された。その際、全員が女性で、しかも類稀な美少女で編成された理由は、上層部の趣味嗜好というよりは、人々の不安や懸念を払拭させると同時に、怪人たちの欲望の耳目を彼女たちに集中させるためでもあった。
 北欧神話に登場する戦乙女にちなんで「ヴァルキリー」と名付けられた彼女たちは、区分けされたエリア毎、複数の部隊に分けられて世界中に配置され、人々の期待に沿う形で続々と戦果を挙げていき、多くの怪人たちを駆逐していった。
 しかし、怪人たちもただただやられているばかりではなかった。地下に潜り、徒党を組み、情報を交換し、犯罪者やならず者どもを飼いならして使役して、ヴァルキリー部隊の美少女たちに対して、反逆の機会を虎視眈々と狙っているのであった。
 全ては、強欲なまでに黒い欲望を、彼女たちにぶつけるために・・・・・・。

後でエロくなりますけど、真面目に書いています。
読んでいただければ幸いです。

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