HARE / define 2021/03/26 12:00

M.C.制作話(6回目)

//■6回目

 初めましての方、読んでくださっている方、ありがとうございます。

 MC製作話の6回目となります。

 なんか、思っていたより伸びそう……という状況から、さらに回数が増えそうです。

 興味の無い方は華麗にスルーしてください。

 たぶん、今書いている感じだと10回を超えることはないと思います。

 ……ないと思います(二度目)

 さて、前回からの話の続き、HARE達にとっては貴重な業界人の知り合い、Y氏の受難について。

 隣人は関係ありませんよ?(※注1

 Y氏は、defineがM.C.(仮)を制作していた当時は業界歴は2年程度(※注2)だったはずで、本業(?)は、グラフィッカー(彩色)だったはずです。

 StitchがY氏にとっても、二(もしかしたら三かも)本目のディレクション作業だったはずなので、今から考えると、よく付き合ってくれていたと思います。

 それ良いことに、ことあるごと(※注3)にY氏に助けを求めるHARE。

 さっそく、本格的に製作が始動したところで、相談と言う名の助けを求めます。

 ここでちょっと横道にそれます。

 またかよ、という感じですが、またです。

 スタンダードなPC18禁のADVゲームに、最低限必要な素材について解説しましょう。

 ・原画
  言わずとしれた、絵です。ゲームの顔です。
  売り上げに直結するので、もっとも扱いに注意をされる人です。


 ・背景絵(ゲーム)
  立ち絵と呼ばれる絵を表示する時など使用するものですね。実は見ている時間がながいので、全体のクオリティに直結します。
  縁の下の力持ち的な存在でしょう。


 ・シナリオ
  こちらは、ゲームで表示される文章です。

  「日本語なんだから、誰でもかけるだろ?」、「簡単な作業だよな」、「絵が描けないのでシナリオライターになります」等、よく言われることのある仕事です(※注4


 ・プログラム
  ゲームを動かすために必須で、重要な部分です。


 ・BGM・SE
  音楽、効果音などです。物語を彩り、盛り上げる力のあるものです。


 ・ボイス(※注5
  作品に命を吹き込んでくれるものです。

  声優さんの演技次第で、多少の齟齬や矛盾点も綺麗に丸め込んでもらえるという、ライター的には「最終防衛ライン」みたいな存在です(※個人的考えです


 この辺りまでは、誰もが想像するものでしょう。そして、defineのメンバーもここくらいまでは、考えていました。

 ここから先、当時の知識になかったことです。


 ・彩色
  主に原画に色を付ける作業です。

 そうです。絵には色を付ける必要があるのです。
 ちなみに、HAREは、最初「原画」をやる人が色を塗ってくれると思っていました。


 ・ゲーム画面
  ゲームをプレイする時に必要な素材です。スタートボタンとか、テキスト表示ウインドウとか、そういうものです。


 ・ロゴ
  どのようなゲームなのかを端的に表し、原画の邪魔にならないようにしなければいけないという、実際に制作するのは難しいやつです。


 ・HP(ホームページ)などのウエブ用の素材。


 え? そんなの用意するのは、当然でしょう?

 そうですね。当然です。ですが、当時は忘れていたり、知らなかったことだったりします。

 ここまで脱線してきましたが、一応は前フリ……になっていないかもしれませんが、Y氏の受難関わりのあることです。

 原画はStitchを担当していたウチの一人に決定し、おくとぱす氏の作成した指定に基づき、作業に入ってもらうことに。

 当時、原画はデジタルではなく紙に手書きだったので、当然、彩色のための処理が必要(※注6)となります。

 原画が仮宿にしていた部屋に、自宅から電車で数駅分だったHAREは、自転車で(早朝が多かったため)受け取りに行き、その足でY氏に手渡しに行っていました。

 そう、彩色をしてもらう宛てがないので、HAREはY氏に「彩色お願いしますね」と強引に作業を押し込んでいたのでした。

 Y氏はディレクターではありましたが、グラフィッカーとしての技術もあります。

 他社さんのディレクターに、同人ゲームのグラフィッカーをしてもらう。

 Y氏の上司、S氏の許可を得ていたとはいえ、無茶ぶりもよいところです。

 次のゲームの準備などで忙しかったはずのY氏に、こちらの都合で何度も、原画が暮らしている街まで出てきてもらうことになりました。

 原画が1枚あがるたびに、渡すためです。

 恐ろしいことに、当時はスキャンしてデジタル化してメールなどで送付、という手順も踏めずに全て手渡しでした。

 さっそく彩色作業に入ってもらうことになったのですが、ここまで繰り返してきたように、最初から製作スケジュールは破綻しています。

 彩色作業も、開始と同時に破綻しています。

 不可能を可能にする――というと格好いいですが、無知の尻拭いをしてもらうために、Y氏の知りあいまで巻き込み、二人体制でやってもらうことになりました。

 これで、どうにか最低限の体裁は整いました。

 ……そう思っていたのはHAREだけだったかもしれませんが。

 事実、彩色作業間に合わなくなるので、のちに作業は3人体制になります。

 いかに状況がおかしかったのか、よくわかるエピソードですね。

 Y氏には良い迷惑でしたでしょう。

今、自分がシナリオで似たようなことを依頼されたら、迷わずに発売延期を提案するのは間違いありません。

 次回は、当然のように発生する、知識が足りないことによるミスや、素材不足などについて。







※注1 古い漫画に「Y氏の隣人」というのがあって。それをネタにしました。M.C.制作には全く関係がありませんが、面白い作品なので機会があれば、ぜひ。


※注2 確認していないので、違うかもしれませんが、ゲーム制作に慣れている、というほどの時期ではなかったはずです。

※注3 発注方法、資料の作り方など「何をどうすればいいのか」を、かなりの頻度で質問をさせてもらっていました。

※注4 個人的偏見です。とはいえ、全部、HAREが色々な人から言われたことのあるセリフではあります。

※注5 当時は、同人ゲームはボイスがないものも少なくありませんでした。M.C.もついていません。


※注6 紙に描かれた原画を彩色するための準備として、ものすごくざっくりですが、以下の作業が必要です。

 1.スキャナーで紙に書かれた絵を取り込む。
 2.ゴミ(スキャンした時の埃や目立つゴミや、描いたときの汚れなどの除去。
 3.かすれや消えた線の修正や追記。
 4.差分の位置を調整し、1枚の絵に統合しておく。


 ここまでやってから、やっと本来の作業の開始となります。

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