【連載】淫悦に堕した兄嫁~憧れていた義姉が牝隷になるまで#05
#05 痴○は去り、縄師が現す
「君は、炭酸飲料がだめだったよな」
そう言って、宗治は紗月にペットボトル入りのスポーツドリンクを手渡してくれた。宗治は向かいの座席に腰を下ろすと、缶コーヒーのプルトップを引き起こした。
「ありがとうございます」
そう言うと、やや行儀が悪いがボトルに直接、口をつけた。
今から紗月の住む垂穂町までだと、二時間ぐらいかかるだろうか。黄昏のなかを進む列車のなかは乗客もまばらで、紗月の乗っている車両内には彼女たち以外には、老夫婦と疲れた顔をしたスーツ姿の壮年の男性しかいなかった。
老夫婦は長年、連れ添っているのか、兄妹みたいだった。顔もそっくりで、仲良く隣り合わせに座席に座っていた。そのふたりを眺めながら、義充がもし、二十五歳の若さで亡くなったりしなかったら、あの夫婦のようになれたのだろうか、と紗月は思った。
壮年の男性は先刻からちらちらと、スマートフォンの画面を見ながら、紗月たちのことを窺っていた。紗月と宗治のことを、夫婦なのか、恋人同士なのか、それとも、訳ありのカップルなのか、想像をたくましくしているのかもしれない。
もし——もし、その壮年の男の隣に座って手を握り、「わたし、欲情しているの。トイレで犯してくれますか」と耳元で告げたら、一体どんな反応をするのだろうか、と紗月は妄想してみた。痴女と思われ、席を外すのか、それとも、本当に強○してくれるのか——。
そこまで考えて、紗月は皮肉げに嗤った。こんなこと、以前の自分なら決して思いもしなかったはずだった。……宗治と出会う以前の自分なら。
あの時はまだ、紗月は悦楽の扉にまだ、向こう側があるどころか、その扉すら見つけ出すことができないでいる、ただの娘でしかなかった。
いや——もしかすると、人妻である紗月よりも、今時の女子校生のほうが、ずっと性の扉を解き放ってしまっているのかもしれない。
もし、時を戻すことができるのなら——宗治と知り合うことのない道を歩むことができるのなら、紗月はその選択肢を選ぶのだろうか。
そうすれば、あの身を焦がすような快楽を一生、知ることのない人生を選ぶこともできるはず——だが、その仮定の問いは無意味であろう。
もう、紗月はあの世界を知ってしまったのだ。膣洞の気持ちいい箇所を深い雁首で擦り上げられ、女壺の扉を突かれながら、絶頂の訪れと共に、牝孔をおとこの精液でいっぱいに満たされる……。その、おんなとしての極上の悦びを知ってしまった今、過去に戻ることなど、できそうになかった。
「どうした。急に笑ったりして」
それに、紗月は宗治と目を合わせた。
「以前の自分なら、こんなことをするなんて、考えられなかったから」
「つまり、結婚もしていない——恋人ですらない相手と、種付けセックスをするために、婚前旅行へ行くってことか」
紗月は顔をあげた。老夫婦は車両のずっと向こうにおり、ふたりの会話が聞かれることはないはずだが、壮年の男性は聞き耳をたてていたらしい。座席越しに、目が合った。紗月が微笑みかけると、相手はすぐに顔をうつむかせた。
「ええ、その通りです。ご主人様」
紗月はわざと聞こえるように、そう言った。
「旅行前に、お前に言ったことは、覚えているか」
「……はい」
忘れるはずがなかった。これから——家にたどり着いたら、紗月は通隆とセックスをしなければならないのだ。
夫の弟と、淫らなことを行う。
きっと、紗月は通隆と義充のセックスを、比較してしまうのだろう。
どう違うのか、宗治は必ず、聞いてくるはずだった。
どのようなプレイをして、通隆がどんな反応をしたのか。紗月の口から直接、それを聞き出すのはもちろん、盗撮用の小型カメラで撮影するように、宗治からは告げられてもいた。
道隆のことは、紗月もかなり意識はしていた。もしかすると、夫につきあっている彼女として紹介された時から、ふたりは異性として、互いを見ていたのかもしれない。
年頃の若い男の子なのだから、手の届くところに健康的で自分と年齢が釣り合うぐらいの女性がいれば、そういうことを考えてしまう、ということも理解している。また、道隆が母親と幼少の時に死別していることも、関係しているのかもしれない。
でも——だからこそ、道隆には魔淫に至る悦びを知らずに、兄嫁と義弟として、関係を終わらせてあげたかった。
★ ◆ ■
紗月が宗治と知り合ったのは、今から半年以上も前のことだった。
遺族年金の手続きのために、中心街の年金事務所まで、行く必要があったのだ。
紗月も義充と結婚する前は会社員であったのだが、地方の小さな会社であり、鴨井城(かもいしろ)市中心の殺人的な満員列車の洗礼を浴びたことはまだ、なかったのだ。
午前中に手続きを終えて、お昼はちょっと贅沢にレストランでとり、それから帰ろうと思っていたのだが、まったくはじめからつまずいてしまったような気分だった。
身動きのできない電車のなかで、紗月はお尻のあたりにもぞもぞと動くものを感じた。
——え……嘘。
まさか……痴○だろうか。
電車内で痴○に逢うのは、これがはじめてではなかった。だから、驚きはしなかった。
が、それが勘違いであれば、とは思った。今日ばかりは——夫の遺族年金の申請手続きに行く時に、痴○には逢いたくはなかった。
紗月はその日、黒のタイトスカートに白のブラウス、その上にはクリーム色のジャケットを着て、社会人として遜色のない恰好をしていたのだが、それが逆に、痴○に目をつけられてしまったのだろうか。
紗月が顔を伏せ、黙っていると、お尻に感じていた感触は明らかな意志をもって、撫でまわしてくるようになっていった。
——この人、痴○です!
そう言うことができれば、どれほど安堵することができるだろうか。が、その勇気は、紗月にはなかった。
紗月は救いを求めるように、満員電車のなかを見渡した、が、乗客のなかに紗月の様子に気づいた者は、ひとりとしていなかった。皆、他人のことなど、関わり合いたくないような顔をして、音楽を聞いたり、スマートフォンの画面に見入ったり、または窓の外をじっと眺めているばかりだった。
紗月は躰を揺らし、痴○の指先から逃れようとした。腕を掴むことができれば、さすがに痴○もそれ以上の行為に及んでくることもないと思われたが、姿勢を変えることすらできない満員電車のなかでは、そうすることは不可能に近かった。
紗月が大声を上げることがないと気づくと、痴○はスカートのなかのお尻だけでなく、太腿や腰などにも触れてきた。紗月はそれに、泣きたい気分になってきた。唇を噛みしめ、恥ずかしさに耐えた。
もう少しだ――もう少しすれば、電車も次の駅に停まる。そうすれば、人の波が押し寄せ、痴○から離れられるかもしれない。
が――実際はそうはならなかった。電車が停車し、人の流れも変わり、それを好機に、と紗月も立つ位置を変えたのだが、電車の扉が閉まり、発車するとすぐに、お尻を触れられるのを感じた。
それが、同じ痴○なのか、それとも紗月が抵抗していないのを目にした別の痴○が、獲物に定めたのか――それは、彼女にもわからない。どのみち、紗月にとっては、この屈辱の時間がしばらくの間、続くと言うことでは、何ら変わりがなかった。
痴○は片手ではなく、両手で紗月に触れてきた。痴○行為を告発されることはないという安心感からか、パンティーの横から指を入り込ませてきた。指が前に回り込み、陰毛に触れてきた。
――嫌! それは、やめて!
さすがに、紗月はそこまで許すつもりはなかった。身をよじり、痴○から逃れようとした。
が――どうしたことか、躰が動かなかった。激しく抵抗すれば、周りの人たちにも紗月が痴○行為をされていることに、気づいてもらえるかもしれない――そう思うのだが、どうしても躰は動いてくれなかった。
呼吸が乱れ、汗がどっと流れるのを感じた。が、それだけだった。声をあげることすら、紗月にはできなかった。
痴○の被害を受けたことが明らかになったら、紗月はどうなるのだろう。警察で不必要なことまで訊かれ、それから通隆くんにも当然のことながら、知られてしまうだろう。
もちろん、悪いのは痴○であって、紗月ではない。それなのに――痴○をされてしまったということは、自分にも非がある、ということになるのではないだろうか。
どうして、痴○にあった時に声をあげなかったのか。痴○に触れられて、気持ちよかったのか。本当は痴○行為をしてもらいたくて、満員電車に乗り込んだのではないか——などなど。
今、考えると、どうしてそんなことを考えてしまったのか、不思議なのだが、鉄道事務所や警察署で、男性職員に責められているシーンが頭に浮かび、躯が動かなくなってしまったのだ。
痴○のもう片方の腕が、紗月のお腹に触れてきた。撫でまわされ、嫌悪感はピークに達している。が、それでも、躰は動かなかった。
——あぁ、そッそんな……。
痴○に後ろから抱かれるような形になり、紗月はとっても嫌なのに、心臓はさっきからどきどきと高鳴り続けていた。
そう言えば、義充とセックスをする直前は、こうして後ろから抱かれることが多かった。だから、肢体が反応してしまっているのだろうか。
いや——いや。そんなこと、絶対にない。これは、顔を見たこともない、身動きできない女性を嬲るような、卑劣な男に身を任せてしまっているという意識から、そうなっているに違いなかった。
痴○は大胆に、紗月が恋人であるかのように、愛撫をしてきた。下腹部の陰りに指を忍ばせ、さらにブラジャーの上から胸を揉んできた。
夫の義充が亡くなってから既に二ヶ月以上が経過しており、もちろん、その間、男の人に触れられたことは一度としてなかった。見ず知らずとはいえ、男の人に躯を求められている——その事実に、紗月の呼吸が乱れるのと同時に、こんなことで興奮するような、ふしだらな女などではない、と必死に言い聞かせていた。
そんな紗月の思いとは裏腹に、痴○はますます、積極的に紗月の躯を弄(もてあそ)んできた。胸を揉んできた指が乳首をさぐりあて、思わず声をもらしそうになった。顔が真っ赤になるのが、わかった。
痴○の指先は乳首をしつこく、乳輪をなぞるようにして触れてきた。焦れったいと思うほどのソフトなタッチで、紗月は吐く息に熱が帯びるのを意識した。乳首が痴○の愛撫で硬くしこっていくのを、紗月は別人のように、驚きをもって感じていた。いくら、男ひでりが続いているとはいえ、こんなことで乱れるのは、信じられないことだった。
思えば、紗月が経験があるのは夫の義充ひとりだけだった。
初恋は実りづらいとはいうが、それを叶ったと思ったのも束の間、幸福な蜜月はわずか二年で終わりを告げた。
だからこそ、夫に先立たれてしまった今、他の男と再婚するつもりはないし、ましてや、躯だけを求める関係など、考えたことすらなかった。
それが、痴○相手にこんなことになって、紗月は混乱していた。
これは、躯が刺激に勝手に反応してしまっているだけ。心は決して、こんなことを求めてはいない。そう言い聞かせてはみるが、痴○から与えられる悦楽を断ち切ることが、できずにいた。
下腹部の陰りに触れていた指先は、乳房の愛撫と連動するように、さらに奥へと搔き分けてきていた。それ以上、撫でさすられるのを阻止しようと、腕をつかもうとするが、またしても、躯が震えてしまった。
やがて、痴○の指先は紗月の女芯にまで、達してしまった。縦に割れた女芯を擦られると、夫以外には決して許してはいけない場所を触れられているという背徳感が忍び寄ってきた。が、どうすることもできない自分に、紗月は屈辱を覚えるのと同時に、何か別のものが目覚めはじめるのを感じていた。
「や……やめ」
囁くような声だったが、紗月はようやく、言葉を口にすることができた。
「やめて下さい」
「やめて下さい?」
痴○が紗月の耳もとに口を寄せ、彼女にだけ聞こえるように、言った。
「ここはもう、すっかり濡れているぞ。あんた、もっとして欲しいんだろう」
紗月は首を横に振った。
「そ、そんなこと、ないです。お願いです。これ以上は――」
「これ以上って、こんなに躯は求めているのにか。中途で放り出したら、かえってつらくなるんじゃないのか」
「あぁッ、やめて……下さい」
紗月は自分なりに強い口調で言ったつもりでいたのだが、痴○の指先はそれからも彼女の躯を弄り続けた。ブラジャーのホックが外され、痴○は直接、乳首に触れてきた。乳首を指先で揉み込まれると、鋭い官能の波が生じ、頭へと突きぬけていった。紗月は一瞬、上体を反らし、それから顔をうつむかせた。満員の電車のなかで、淫らなことをされている――それを拒否することもなく、受け入れている事実に、紗月の頭の中は屈辱的な快感に浸されていった。
背後から男が股間を押しつけてきた。パンティーとスカートの生地越しに感じるそれは当然のことながら、エレクトしていた。瞬間、紗月の脳裏に、隆々としたペニスに貫かれ、悦びの声をあげながら蕩けた顔を晒すおんなの表情が閃き、肌が震えた。
「あッ……!」
肥大した陰核がパンティーと擦り合わされ、思わず声を上げてしまってから、紗月は慌てて顔を下に向けた。
もしかして、今の声を聞かれてしまっただろうか。そう思うと、恥ずかしさで顔をあげることができなかった。
紗月は今、どうしようもないほどに、性感が高まってしまっている自分を意識した。ついさっき、紗月の頭の中に閃いた、肉の悦楽に震える女の顔が、単なる妄想なのか、それとも紗月の望みなのか、わからなかった。
もし、背後の男に強引にラブホテルに連れ込まれでもしたら――紗月は拒否することができるのかどうか、自信はなかった。
と、紗月は男の指が伸び、クリトリスの尖端に触れるのを感じた。そのまま、押し込まれるように捏ねられ、背骨を電撃のような快感が一気に突き抜けていった。呼吸が乱れ、唇をしっかりと閉ざした。今、口を開きでもしたら、涎が滴り落ちてしまうかもしれなかった。
乳首と陰核を同時に刺激され、夫とのセックスでも感じたことのない、目眩すら起こしそうな快美感に、紗月はその場に崩れ落ちそうになった。もし、今、背後の男に求められたら、キスすらしてしまっていたのかもしれなかった。
夫とのセックスはごく普通のもので、どちらかというと官能のためというよりも、愛情の確認、という側面が強かった。だからだろうか、義充も淫らな行為は望まなかったし、紗月もはしたないと思われるようなことは決して、求めたりしなかった。
おんなとして、快楽を与えてもらえる相手として、見られたことは一度として、なかったように思えた。義充の精を子宮に受けたことは何度もあるが、紗月が逝かされたことは、数えるほどしかなかった。
背後の男が、電車のなかで性行為に及んでくることはないと思うが、手をつなぎながら、またはキスをしながら、逝かされたりしたら、どうなってしまうのだろう——紗月は想像したこともなかったことが突然、目の前に迫り、頭のなかが痺れたようになってしまった。
と――。
「おい!」
別の男の声がした。
「何をしている」
その声に、紗月ははっとなった。それまで感じていた快美感が消え去り、冷や水をいきなり、浴びせかけられたような気分になった。
「おまえ――痴○だな」
紗月の躯をまさぐっていた男の腕が退いた。が、もう一人の男は見逃したりしなかった。痴○の腕をしっかりと掴み、腕を掲げさせた。
「や――やめろ。おれは、痴○なんかじゃ」
「じゃ、この人に聞いてもいいんだな。お前が何をしていたのか、本当のことを」
「じゃ、じゃあ、聞いてみろよ」
「わかった。二人とも、次の駅で降りてもらうぞ」
その痴○を告発したのが、宗治だった。
宗治は駅員を呼び、紗月に付き添い、鉄道事務所まで一緒に行ってくれたのだ。男はそのまま、警察に引き渡され、紗月は後日また、呼び出しなどがあるかもしれない旨を聞かされた後、解放された。
紗月は鉄道事務所まで行ったのははじめてだが、宗治はその場で見聞きしたことを冷静に話してくれたので、それほど緊張することもなく、駅員や鉄道警察官と喋ることができた。
もちろん、紗月は痴○の指先に感じてしまったことなどは、話はしなかったが、誰もそのことは疑いもせず、話題に出ることもなかった。
こんなことなら、さっさと痴○を捕まえて、告発しておけばよかった――そう思えるほどのあっけなさだった。