Quietude. 2022/05/16 11:45

ORTF3Dマイクアレイ(コードネーム:矢追)

マイクを8本買った。しかも全部同じ奴。

さて、


シンメトリカルORTF3Dマイクアレイ・その名も矢追一号。図でいうと(b)のほう。
(b)セットアップが仮組みできた際、(a)もやってみようと思ったのだが12cmほどのマイクのシャーシが持ち運びやセットアップする際に都合が悪く、ようするにまあぶつかるとか、ぶつからないようにすると広角開いてるところが20cm以上ひらいちゃうとかそういう感じなのでリグを再思案中。サイズ的問題というやつだ。

(a),(b)2つのタイプは何が違うかと言うと、定位感と音場の広さという音の面でまず違うのと、20 * 10cmの方は屋外用のアタッチメントがついてるとか、取り回しの面で色々工夫されていたり。
ちなみにSchoepsの本家ORTF3Dマイクアレイは200万円以上するので買えるのはいつになるかは謎。絶対欲しいけどね。

クソチュートリアル2022Q1

サンプル収録後、お片付けするついでに撮ったので微妙に崩れているがこいつが矢追。
パンタグラフに似てる。

・軽さ
・セットアップの楽さ
・頑丈さ
・入手性

でRodeのマイクバー3本でどうにかした。


ネイティヴアメリカンのお土産にこういうのない?ドリームキャッチャーだっけ?

こういう便利そうなよだれボールも買ってあり、これで組んでも良いのだけれども、スタンドにバーを挿して、またバーを挿して最後にバーを挿して完成!のほうが明らかにラクなのでこっち。

材料

適当なマイクスタンドやブリンプ等固定具 / そんなものは床から生えてくる
ステレオマイクバー / 1,000〜5,000円くらい。 3個。もっと高いのもある。
XYホルダ /2,200円 4個。 3Dプリンタで作ってもヨシ。
スーパーカーディオイドマイク / 8本。 なかなか銘柄が無い。うちのはベイヤーダイナミックMC950 1本50,000円前後。
変換ネジとか雲台とかロッドとか / amazonで安いやつを。

200万以上が45万弱になったからといって安い買い物ではなかったな。正直。


組み立て方

①マイクを設置
スーパーカーディオイド(探すとなぜか見当たらない)のマイク8本をタテ方向、マイクのひらきが90°のXYペアを4つ作る。
で、それぞれを90°づつずらして配置。横なり上なり下なりから見てようするに立方体の形にする。隣のダイヤフラムとの幅は17〜18cmが最適なようだが、正直20cmでも15cmでもちゃんとそれなりに音がとれる。

※わかんなかったらSchoepsのカタログやLee Hyunkook先生のテキストをカンニングするように。
https://www.researchgate.net/publication/349554406_Multichannel_3D_Microphone_Arrays_A_Review


②ケーブルをつなぐ
ほんでもって下向になってるダイヤフラムの左の方から12345678とチャンネルを割り振って接続。前左、前右、後左、後右とかそんな順番。
XLRコネクタのブッシュをカラーブッシュにするとか、小学校の先生がれんらくちょうに貼るシールとか、あとなんかヒモとかを使うと視認性が良い。
あと、抵抗のカラーコードと同じカラーリングにしておけばたぶん我々は間違えないんじゃないかと思われる。

ちなみにウチで使ったのはこんなコネクタ。
https://www.windaudio.net/cabletechniques
Neutrikに比べて高いけど品質はとても良い。

③電気流す
レコーダーやアンプやオーディオインターフェースに思うさまプラグインして思うさま録音してOK。でも8本も同じものが並ぶので間違ったりうっかり逆相ボタンとか押さないように。(よくやる)
あとついでにこれをやる際に風防を掛けておくと外でもバッチリ。
おすすめなのはZoomのハンディレコーダ用。
2000円弱でRycoteもどきが買えてしまう。 ただ、巾着状になってはいるが、やや装着しづらいので輪ゴムがあるとなおよし。ヘアゴムをもう一本通してしまってもよいか。

④事後処理。
ぶっちゃけこれがないとかなり何の役にも立たない。
箱型の檻の中で捕虜に音楽を聴かせる○問とかでもない限り。
ソウルドラキュラが流行ったときに便乗してソウル怪人二十面相 っていうパチモノシングルが出てそれがなぜかウチに 2枚もある んだが、そういうのを大音量で掛けてやるべきかね?

あと、現段階だとマイクが定位置の収録なら問題はないが、歩きながらだとちと厳しい。
いや、歩きながらは振動拾う以外は大丈夫だが、1mの段差を飛び降りるにはだいぶ厳しいか? とりあえず何かしらの対策は講じたい。

さて、利点についてだが

前回までのあらすじ
とまあ、このように素材の素材の制作に便利である。


試運転したものが後述のサンプル置き場である。
早朝に窓の外へケーブルを引いて録音してみたらハトとカラスが対決していたとかそんな音。

ルーティングは
マイク -> Merging Hapi ADA8P -> Reaper 6.57
というマーシャル三段積みみたいな漢セットアップ。
うちに8chもあるアンプがオーディオインターフェースとレコーダくらいしかない。


で、さまざまな運用法についてだが…ちょっと長い。

事後処理サンプル置き場!

というわけでやっていこう。
まずは全部ZIPしたやつ。

Sample_ORTF3D.zip (146.48MB)

ダウンロード

聞いたりいじくったりしながら聞いていただければ幸い。
Macで圧縮したので7zipやWinRarで解凍しないと化けるかもしれん。
あと、環境音なので基本的に小さいがカラスがギャーと鳴く部分はややうるさいかもしれない。

ちなみに使ったソフトはFLUX:: SPAT Revolutionというサラウンド十徳ナイフとPlogueのBidule、あとはIEMSPARTA(この2つは無料なので是非)。

チャンネルアサインは

1 下段前左 茶
2下段前右 赤
3下段後左 橙
4下段後右 黄
5上段前左 緑
6上段前右 青
7上段後左 紫
8上段後右 灰

なのでよろしく。



■1/2(下段左右)

90°にひらいた下向きのNOSもどき。
指向性のせいか中抜けが結構する。
が、すでに結構いい音に聞こえなくもないところに驚きである。
動画の真ん中に誰彼がいて喋る場合は問題ないか。

■1/1

モノ。
実は音質については安ペンシルにありがちなハイ上がりの硬質プラプラしい特性であろうとタカを括っていたのだけれども決してそこまでそうでもなかった。
思ったよりいいぞこれ。でも正直な話、スパカーという微妙な指向性なので汎用性がsE8やNT5なんかに比べて無いことか。

■1/5(左側の上下段。縦になったXY)

如何ともし難い謎の音源。奥行きのあるモノラル…?
使い方募集中。

■(1+5)/(2+6)

ならばこんなふうにしてNOSっぽい感じになるかと思えば割となった。
地味にこれよくね?
ついでにZIPの方に(1+5)/(2+6)/(3+7)/(4+8)の4chのファイルも同梱。
試す限りでは「だいたいORTF-Surround」


ただ後述するように2回も破壊編集噛ませて使うものでもない。
クアッドスピーカーで鳴らすことになったときは有効か。

1/8

向きがチグハグになったペアはどうか?
というわけで向きも距離も遠いやつのペア。
漂流教室の最終回付近で顔が半分未来に飛ばされた男が聞いている音はおおよそこんなだろうかというと、必ずしも違う音ではないくらいの精度でコスれ合っている。


■8ch→バイノーラル

地元に帰ってきたような安心感。
特筆事項なし。

■8ch→バイノーラル(Yaw 130°)


つまり上の音源でリスナーがそっぽを向いていてはどうかという話だが、かなり違和感はない。180°つまり左右の入れ替えではなし得ない角度もこの通り。
バイノーラルの場合、こんな風なことをしようとすると延滞補正入れたりフィルタ入れたり左右が独立したフェーダついたものを使ったりと色々大変なのだが、パラメータ一個で済んでしまう。
当然オートメーションを掛けばそのままリスナーが大回転を始めたり地面に寝そべったり等のことができるのだが割愛。めんどいから。

■8ch→Dolby Atmos 7.1.2 SMPTE配列

これ自体の変換は良好。
まずそんなスピーカーだらけの部屋なんかに住んでいるやつがめったにいないウンヌンの話の前に、Ci-enが単純に対応してないと思われるので上のZIPにて。
うちだって普段なにか聞くときに使うチャンネルは2chが9割7分くらいだ。

8ch→Dolby Atmos 7.1.2 SMPTE→バイノーラルというデコードもついでに試す。
わかってはいたが破壊変換を二度も噛ますものではないという結論。
あと8chからAmbisonicsとか5.1とかやってみたけれども基本的に何でも柔軟に対応できゃするので割愛。

まとめ

使ってて思ったんだが完全に数学的に各チャンネルを処理して好みのフォーマットにするAmbisonicsよりも、このORTF3Dは音響心理学的なファントム定位ウンヌン寄りのアプローチにちがいない。より人間がわかりやすいと言うか消費される形態に近いまま収録され加工されお披露目されるとかそんなだろう。

そして現段階だと最終的な出力結果が3次AmbisonicsマイクのZyliaよりもほぼ確実に良い。やはりそれなりのマイクとはいえちゃんとしたコンデンサマイクで拾うというプロセスは非常に重要か。マイクカプセルの数が半分くらいで済んでしまう。
Zyliaのほうが得意な処理や用途(たとえば音源から特定方向の音を抽出とか)もたくさんあるにはあるが、単純にバックグラウンドに流す音に対して可塑性のあるフォーマットで録りたいとかそんなことを考えたらこっちのがいいだろう。

あと、可塑性があるなしに関わらず軽い。
NeumannのKU100が3.5kg、ケース込だと11kgくらいあるのでプラ製の耐衝撃ケース一つとロケーションバッグで出かけられるのはでかい。
まあとにかく素晴らしいオモチャを手に入れたのでこれからさまざまなものを録りつつ素材にしたりそのへんで売ったりあと自分の作品に役立てよーと思う。

やおい(BLの方じゃない)

あとなぜ矢追なのか?
最近ずっと環境映像として矢追純一のDVDを垂れ流しにして作業しているから。


君たちも見なさい。

ジャケ、ガルフブリーズのUFOの隙間に挟まったブラウン管モニタにいる個体、なんか妙にマッチョなんだが何でだろう。
そういうことばっかり気になって夜も眠れん。だから昼間寝たい。

この記事が良かったらチップを贈って支援しましょう!

チップを贈るにはユーザー登録が必要です。チップについてはこちら

記事のタグから探す

月別アーカイブ

記事を検索