赤羽決亭@木東有稀 2020/10/30 04:51

フシギナパラダイス 2話 不思議な鳩 1/9

「え、嘘でしょ!?」

入学式で居眠りをしてしまうという醜態を晒した私。

その帰り道、なるちゃん、心矢、洋太の3人に、今日のことを確認した。

私がいつから教室にいたのか、眠っていたのか、その記憶がなかったからだ。

でも、私の言い分と3人の言い分は全く違っていた。

「本当よ、地震があったら忘れたりしないし、学校行くまでトラブルなんかなかったし、保健室に用事なんか何もなかったわ」

「そ、そんな…今朝頭ぶつけて記憶がないって…みんなが行けっていうから…」

「夢と現実がごっちゃになってるんじゃない?第一頭なんかぶつけてないじゃん、どうしたら、記憶がなくなるくらいの衝撃なんて普通受けないでしょ」

「そ…そんなこと言われても…」

でも、それだとつじつまが合わない。

だって、その話が本当なら私がなんでまだ昨日の夕方から朝まで…

いや夢の時間をプラスしたら、さっき目を覚ますまでの間の記憶がすっぽり抜けたままなのか、説明がつかないからだ。

だから私はムキになって、昨日の近道の話をしようとその場所へ向かった、でも…

「あれ…ない…」

今朝突然現れたあの道は、再び跡形もなくなくなっていた。

「おかしいな…間違いなくこの辺りに…心矢が言ってた道が…」

「ルイ、本当にどうしちゃったのさ?僕そんな道見つけてないよ?
こんなところ、どうやって通るのさ?」

「それにそこ、私が昨日みちこちゃんの故障であるはずのない道指してるって言ってた場所じゃない…それも忘れちゃったの?」

心矢となるちゃんが私にそう諭す。

そう反論して聞いてくれなかったのが、今朝の私の気持ちだったのに、今はすっかり逆転してしまってる…

わかってる、正しいのは皆、私がおかしい、でも

「でも、本当に通ったんだって!本当に覚えてない?神社あって、男の子と私がぶつかって…!」

「神社なんかこの辺ないでしょ?一番近くて商店街の向こうだよ?男の子だって見てないし…」

心矢は表情にこそ表さなかったけど、呆れているのか少しため息を吐いた。

「でも…本当に…」

「ないものはないんだからしょうがないだろ」

洋太のその一言は、腹立たしかったけど

それ以上私は何も言えなくなってしまった。

「じゃあ、僕らこっちだから」

「ルイちゃん、ちゃんと休んでね。」

「明日は居眠りすんなよ」

「もー、わかってるってば!」

私がそういうと、まるでそれが合図かのように、各々自分の帰り道へと散って行った。

でも…本当にあの夢…なんだったんだろう…

結局、顔にできた傷の理由もわからずじまいだし…まぁ…これ以上考えても無駄か…

色々考えながら、すぐ近くにあった一軒家の家に向かって歩くと、家の前で誰かが立っているのが見えた。

「あれ…お兄ちゃん…?」

高校の制服着て何してるんだろう…始業式明日だって言ってなかったっけ?

それとも今から学校に?でも…部活とか委員会も今ないはずだけど…

しばらく家に近ずくでもなくその場で一歩も動かず様子を見守っていると

「あれ、ルイ、今帰り?」

兄の方が私の気配に気がついたのか、こちらの方を振り返った

「うん…お兄ちゃん…高校明日からじゃなかった?」

「あぁ、カレンダーに書き間違えたって…今朝言わなかったっけ?」

「あ、そうだったっけ…?」

やっぱり何も覚えてない…怪我したわけじゃないなら、なんで未だに私の記憶は戻ってこないんだろう…

居眠りでこんなに記憶すっぽり抜けるかな…

「ルイ?鍵空いたよ?入らないの?」

「あ、待って!」

兄にそう声をかけられて私は急いで中に入った。

なんか…疲れちゃったな…

こういう時、3階建ての一軒家って嫌になる。

しかもよりによって自分の部屋は3階。

めんどくさいし体力が削がれる。

かと言って、リビングのソファーで寝転がるのもなんかやだし…色々やらなきゃいけないことが目について、休むには適さない。

仕方がない…部屋行くか…私は重たい足を無理やり動かし、階段をのぼる

さっさと着替えよ、そんでもって、さっさとベット潜って今日は寝よう。なんにもやる気が起きない。

あーでもご飯……

まあ…それまでに起きればいいか…

でも気分じゃないなぁ…

ほんと…散々な1日だったなぁ…せっかく夢にまで見た入学式だったのに…

私はようやくたどり着いた自分の部屋の扉をガチャっと開きながら、そう心の中で呟いた。

ベットの方へ視線を送ると、視界に誰かが映った。

知らない子だ

「…」

「こんにちは〜!」

見知らぬ金髪で不思議な服を着た少年は、私の部屋で私を出迎えた。

笑顔で

「…」

私は無言で部屋を出てバタンと部屋を閉じた。

「…………………………誰?」

この家には今、私とお兄ちゃんしかいない。

さっきお兄ちゃんが鍵を開けたところを見たからそれは間違いない事実だ。

だから、私達より先にお客さんがいるはずがない。

疲れてて、幻でも見たのだろうか

私はもう一度扉を開ける

「はぁい☆」

「きゃああああああああああああああああああ!!!」

私は大きな悲鳴をあげて部屋を出る

誰かいる!!!知らない誰かが!!!!私の部屋に!!

あれ、だれ!?

見た目は…小学五年生くらい?男の子?

私に弟はいない、じゃあ親戚?私の知らない間に親戚増えてた?

でも、金髪ってことは外人!?外人の親戚なんかうちいたっけ!?それとも染めてるのかな?

やばい、親戚情報がわからなすぎて見当がつかない!!

「ルイ!?」

「はい!!」

私は名前を呼ばれて条件反射で返事をする。

下の階にいたお兄ちゃんが、私の悲鳴に心配したのか、急いで階段を登って着てそう声をかけた。

「どうしたの、大声出して」

「な…なんでも…あ、お兄ちゃん!うちに金髪の男の子…親戚にいる?」

「な…何急に…いないけど…親戚の子と聞くなんて珍しいね…本当にどうしたの?」

「…なんでもない」

「そ…そう?」

なんか納得がいかないような顔をしながら、お兄ちゃんはまた階段を降りて行った

なーんだ…やっぱり親戚に金髪の男の子なんかいないんじゃん…

…………

「じゃあ、やぱあれだれ!?」

だいたい、仮にあれが親戚だったとして、私の部屋にどうやって入ったのかなぞだ。

だって、ついさっきまで家には鍵がかかってて、密室だったのだから…

「まさか…幽霊…」

「幽霊じゃありません!!」

「きゃあああああああああああああああ!!!!」

私はまた悲鳴をあげる。

それは男の子が私に声をかけたことに対してではない。

その男の子が、壁をすり抜けて出て来たことと、空中を浮いていることに対してだ。

再び階段からドドドドという音がして「今度は何!?」とお兄ちゃんが私に声をかけた

「お、お兄ちゃん!!し…知らない男の子がうちに!!」

「…」

私はそう伝えるけれど、兄はキョトンとした顔を浮かべるだけだった

「この子!!今目の前で浮いてるあの男の子!!」

私は男の子にビシッとしてしっかりと伝わるように説明をした、ここまで言えば伝わるはず…なのに…

「…誰も…いないけど…」

と、呟いて、静かに階段を降りて行ってしまった。

どういうこと…?

こんなに目の前で、はっきり見えるのに…お兄ちゃんに見えない?

見えてるのは…私だけ?

ゆっくり振り返り、私は男の子をもう一度見る。

「君は…?」

すると男の子はにこりと笑って、

「お話…聞いていただけますか?」

そう言った。

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