赤羽決亭@木東有稀 2020/10/17 16:19

【ノベル】フシギナパラダイス1話:〜不思議な道〜6/9

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私は校庭に出て、辺りを見回し
ケホケホと咳をする

やっぱり、私の勘違いなんかじゃない
曇ってる原因の一つは確かに砂埃だ

でも、その中に火薬の匂いが混じってる
これは爆発が起きたことを意味している
つまり、聞こえてる私が正しいはず

だとしたらやっぱりなんとかしないと
少なくともこの爆発音は私にしか聞こえない

心矢とすれ違った後、何人かの生徒とすれ違った
でも、みんな地震のことは話しても、今のことは話さない

つまり中の生徒や先生は、火薬の匂いに気がついてない
このもやも砂埃だと思ってる

その奥には…さっき保健室から見えたよりもはっきりと人影が見えた。


危険に気がつけないのは、目に見えない危険は不幸だと思う。
だって気がつく危険は対応のしようがあっても、目に見えない危険は対応する機会もないまま、知らないままに最悪な事態になってしまう

防ぐためには、、、私がなんとかしないと、、、
状況理解している私が

でも、何か策があるわけじゃない
ここまできたはいいけど、あの人をどうやって止めればいいのかは
正直皆目検討つかない

でも…なんとかしないと…
とりあえず…気を失わせればどうにかなるかな…
なんか武器は…

「みぃつけた」

背後から声が聞こえる
慌てて振り返ると、そこには黒いフードを被った女の人がいた

「…っ」

言葉を発しようとした
でも、口にしたい疑問があまりにも多すぎて声にならない

相手はフードを深く被っていたので顔は見えない…
でも、なんとなく…楽しそうな表情を浮かべているように感じた
それがあまりにも不気味で、一歩後ずさる

「見れば見るほどそっくりね…
なるほど…あなたで間違いなさそうね
今代の*****は」

「え…」

大事なところが聞き取れなかった…

今代の…なに?
間違いないって…?
そっくりって…誰に?

でも、その答えを考えるよりも早く、何かが顔の横を通り過ぎた
私はそれに驚いて、小さく悲鳴をあげて尻餅をつく

「な…なに?」

「覚醒は…まだみたいね、これは好都合。
今のうちにやってしまえば、手間もかからない」


そういうと、フードを被ったその人の手のひらに大きな黒い球体が現れ、
それを私めがけて投げてくる

運よくそれを避けることはできたけど、
ズンッという大きな音と振動と共に、その場所は大きくくぼんだ、

そこでようやく、自分が狙われていることに気がつく。
事の重大さに気がついた私は、彼女の攻撃を避けながら、なんとか距離をとり、とっさに物陰に隠れた
なんとかうまく隠れることはできたけど、私を見失ったにもかかわらず、彼女は慌てない。


「あらあら、うまいこと逃げるわね…
鬼ごっこ?それともかくれんぼのつもりかしら?
私もその手の遊びは得意よ、おとなしく出ていらっしゃい」

優しい声音でそう問いかけた。

あんなことができる相手…私一人見つけるくらい、かくれんぼしてる子供より簡単に見つけられるとでもいうように
実際そうなんだろうけど…。

「まぁ、無理に探すこともないわね。
どうせこの建物の中のどこかにいるんでしょ?
攻撃をあなたに当てなくても、息の根を止める方法は…」

「どうしてそこま…っ!」

私は反射的に彼女の問いに反論してしまった。
しまったと思って急いで口を塞いだけど、もう遅い、声は発してしまった。
こちらに近づいて来る気配がある、もう居場所はバレたということだろう。

でも、むやみやたらにした攻撃が校舎にあたってしまうよりは幾分かマシだ。

…私に間違いない…

彼女はそう言った。
肝心なところは聞こえなかったけど、探してる人物がいて…それが私だったということはわかる。
でも、私には探される心当たりがない。

せめて、なんで自分がそうなのかわかれば…

「理由は?こんなことする理由は何?」

「知ってどうするの?死にゆくあなたに教えても無意味じゃない」

「…私「が」狙いなの?だったらむやみに攻撃するのはやめて」

「…」

私がそう答えると、彼女は少しだけ沈黙して
でもしばらくすると、クスクスと笑いだした。

「自己犠牲のつもり?美しいわね。
だけど、そんなことで攻撃はやめないわよ」

「どうして?」

「あなただけじゃないもの、用事があるのは…
それに…寂しいじゃない。」

「さみしい?」

それが、こんなことをする理由?
でも…それにしては、目的が漠然としすぎている。
今の状況を文章にすると『寂しいから、攻撃をしている』と言うことになる。

間違ってはいない…確かに誰かを傷つけることは、時にさみしさを埋めることがあるのかもしれない。
でも、さみしいは理由になり得ても、目的にはならない。
攻撃をして誰かを傷つけることは行動、行動を起こすためには、目的が必要…
『寂しいから、〇〇のために攻撃をしている』となって、初めて一連の騒動に理由がつく
その〇〇…つまり目的の部分がすっぽり抜けている。

彼女は探してる人がいて…でも、それだと寂しいと言う理由に繋がらない、矛盾。
つまり、こんなことをする理由は、寂しいと言う理由につながる行動が…

「…あなたにわかる?暗闇の中、誰にも気付かれず、相手にされないで存在し続けるのは…とても辛いのよ」


暗闇?

ふと疑問が湧いた。

話を聞く限り、突然さっき生まれた存在ではなさそうだ
なら、彼女は普段どこにいるのか、そもそも彼女の存在は何なのか、

気がつかれない?相手にされない?なぜ?見えてない?用事があるのは私だけじゃない?
そして…寂しい…

そこまで考えて、ふと彼女の存在の正体と…最悪なシナリオが浮かんだ。

と、同時に彼女は私の目の前に現れてセリフの続きを呟いた。

「ねえ、いいでしょ?これだけ大勢いれば、寂しいことはなくなるわ」

そして、手の中に何か黒い光の玉を作り出し、攻撃の準備を始めた
彼女は私だけじゃなく、この校舎にいる全ての人間の命を奪うつもりだ。

「そんなこと…絶対だめ!」

「何をいっても無駄、力を持たないあなたに私は止められないわ」

そして、彼女は攻撃をする

その様子が、スローモーションのように、ゆっくり動いているように見えた。

彼女のいう通り、なすすべのないことを悟った私は目を瞑った。


『今です』

ふと、耳に誰かの声が聞こえた。

その直後、何かが光って、あたりを白い光が包んだ。


「な、なんだこの光は!?」

フードを被った彼女は、あまりにも明るい子の光に腕で顔を隠す
この光で身動きが取れないらしい

ということは、彼女の攻撃というわけではなさそう…
じゃあこれは…

私はふと保健室でのことを思い出し、スカートのポケットに入れた勾玉を取り出した
やっぱりあの時と同じ…また緑色に光っている。

「もしかして、何か関係があるってこと?」

なんて考えていると、その勾玉は次第に形を変えていった。

それが形になっていくと同時に、あたりの白い光はだんだんと収まり、
さっきまで暗かった校庭は、今朝同様快晴の明るさに戻っていた

そして、目の前には槍が現れた

それをみた彼女は


「なに…覚醒しただと!?」

ひどく取り乱した様子だった。



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