小人になった貴族が淫靡になっていく婚約者へサイズフェチなご奉仕をさせられる話サンプル

2021年12月20日に販売した作品のサンプルです。
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「ユエル様、領主様より手紙が来ておりますが」

歴史ある王国の土地を与えられた貴族の息子であるユエルは、机上でチェックしていた書類から頭を上げて、今し方部屋に入ってきた若い女性の従者に目を向けた。

「ああ、そこに置いて……いや、机の上まで持ってきてくれ」

一度、扉の側にある書類台にでも置かせようと思ったが、自身の状態を思い出して指示を変える。

「かしこまりました」

その指示がわかっていたのかメイドもすぐにユエルがいる机まで来て、手紙と同じ程度しかない主人の隣にそれを置いた。机に置かれた紙の風圧で舞い上がって乱れた髪型を整えながら、「ありがとう」と従者に一言告げ、腰に下げていた短刀を取り出す。

手紙の封を切るためには大袈裟なようで、メイドからすれば小指の爪ほどしかない刃渡りのそれで器用に封筒を開けて、両手で手紙の端を掴んで引っ張り出す。折り畳まれたそれをもう一度両手で掴んで捲り上げると、インクの達筆で記された文面が姿を表した。

「さて、父上は何を言ってきたのやら……」

*     *     *

数百年続く名家の子息であるユエルが知性ある魔物から縮小の呪いにかけられたことは、表沙汰にはならずとも界隈では大きな事件として扱われた。

若くも優秀で、人格も良く、貴族として頭角を表し、将来有望と見られていた若者が無力な小人となってしまったのだ。常々抱えていた嫉妬心からユエルを嘲笑う者、素直に哀れむ者、慕っていた人の不幸に憂い嘆く者など、反応は様々であった。

これに対し、父である領主は冷酷な対処を取った。『小人に成り果てた者を貴族とは認めない、息子とてそれは変わらない。故に一切の継承権を剥奪する』と表明し、有言実行したのだ。

哀れ、ユエルは済んでいた屋敷を追い出され、数名の従者に運ばれて離れにある小さな館へと押し込められることになった。世間からの反応はこれもまたそれぞれであったが、ユエルと一部の人間はその真意を理解していた。

館へと移動する前、領主の寝室にて、

『ユエル、我が息子よ。其方の身に起きた不幸、替われるのであれば私自らが替わってやりたいものを……それがならぬ現実と、呪いをかけた魔物が憎らしくてたまらない……』

寝室の椅子に腰掛けた領主は、他者が知っている冷徹人間とは思えないような言葉を口にし、年齢以上に見える皺が浮かんだ頬に薄らと涙を流していた。実を言えば彼の内面は家族愛を持った父親であり、息子の不幸に老け込むほどに気を落としていた。

そんな父親の前、従者の持つ盆で片膝をついて話を聞いていたユエルが面を上げた。

『父上、これもまた一つの命運とでも言うのでしょう。起きてしまったことは変えられませぬ……しかし、この身でもやれることはあります。それを行うことで、せめて我が家名を少しでも汚さぬようにしたいのです』

その顔に悲壮感などはなかった。もう人間の身に戻れないとわかりながらも、その上で己の身分として成すべきことを成そうとする一人の貴族が、そこにいた。

『……わかった。では小さき存在となってしまった其方にも役目を与えよう。我が家は其方に代わり、妹のマイアに継がせる。だが彼奴はまだ幼く若い、貴族としての経験を積ませるにしても間に合わん。そこで、すぐ側からとはいかんが、其方から彼奴の手助けしてやってほしい。頼めるか?』

『はい、私の妹が立派な領主となれるよう、生涯をかけて支えて行きましょう』

『……すまんな』

と、このようなやり取りがあった。領主に親しい者は詳細を聞かずとも裏でどのようなやり取りがあったかは察せられていたので、逆に表立って騒ぐ者ほど疎遠な存在であることの証明となっている。

そんなわけで、元後継であったユエルは現後継となった妹を助けるため、日々書類を相手に格闘しているのであった。小さい身となってもよく働く、変わらず周囲から慕われる男だった。

*     *     *

ユエルが現在住んでいる館は表向きでは追放の身となった小人を保護するための最後の慈悲の場ということになっている。そのため、ユエル本人に関わる来客は本当に稀だ。すでに貴族としての存在価値を失った元人間に会いに来る者はほとんどいない。

「兄上! お元気でしたか?」

「マイアも変わりないようだね」

その数少ない例外の一人、ユエルの実妹であるマイアは「はいっ!」と元気良く頷いて満面の笑みを返した。
ユエルと同じ藍色の髪をおさげにまとめ、アーモンド型の瞳は快活そうな表情をより強調している。やっと少女らしさを卒業しつつある身体付きは、同年代より発育が少しだけ遅れているようにも見えた。

そんな彼女に取って、小人の呪いをかけられてしまいながらも自身を助けてくれる兄は頼れる存在である。それ以前に、呪いを受ける前から兄の武勇伝を人伝に聞き続けていたのだから、その実に何が起きようとも憧れの想いはちっとも揺らいでいないのだった。

「それで、僕に会わせたいっていうのはどんな人なんだい?」

「はい! とても素敵な女性です!」

「女性……?」

「兄上の婚約者となる方です!」

その一言で、訝しげにしていたユエルの表情が驚きに固まった。まさか小人となり継承権も失った自分に嫁いでくる異性がいるなど、予想だにしなかったのである。

「まさか、父上が無理矢理取り付けたのではないだろうね?」

「いいえ、そのお方は以前より兄上を慕っていらした方でして、今の兄上を是非ともお側で支えたいと、そう仰ってくださっているのです!」

「なるほど、そういうことだったのか……」

「これも兄上の持つ人徳だからこそです!」

まるで自分のことのように喜ぶマイアに対し、ユエルは冷静であった。その女性に何か裏がないか、自分に近づくことで何を得ようとしているのか、それらを考えてしまっている。貴族としては当然の思考であるが、

(……今の僕に取り入って良いこともないか、素直に受け取っておこう)

今のユエルに嫁いで利益を得ることは難しい。そのことはユエル自身がよく知っている。ならば変に懐疑的になることもないだろう。

「兄上、何か不都合なことがありましたか?」

「いいや、僕が不安症なだけだよ。さっそく会おうか」

「はい! それではお呼びしてきますね!」

言うが早いか元気よく部屋を飛び出して行った妹を見送る。それから数分ほど経つと、外から妹と女性の会話が聞こえてきた。どうやら、件の婚約者のお出ましらしい。ユエルが姿勢を整えるのとほぼ同時、ドアが勢いよく開け放たれた。

「さあ、お入りになってくださいまし!」

妹に手を引かれて入って来たのは、小柄な女性だった。まだ十代半ばの妹とそう変わらない背丈に見える。身体つきも華奢なもので、身につけているフリルが多い服装があってもそう感じさせる。露出している肌の白さも、その印象を強くした。

透き通るような長い銀髪を靡かせて入室した彼女は、机の上にいるユエルをすぐ見つけると、恭しく頭を下げた。ユエルを見た青い瞳は柔和さを湛え、仕草以上に物腰の柔らかさを主張している。

「ご紹介しますわ、こちらがお兄様に婚約を申し込んでくださったニーナ様です。さる名家の方なのですが」

「マイアさん、私は家から離れた身ですから、そのお話は……」

「そ、そうでしたわ……ごめんなさい」

「何やら事情があるみたいだけど、それは僕も似たようなものかな」

さり気なく会話に混ざったユエルに、ニーナが再度小さく礼をし「申し訳ありません」と謝罪を口にした。

「ある事情から、私は元いた家より放逐されることになったのですが、できればあまり話したくないのです」

「話し難いことかい?」

「はい……ですが、ユエル様やマイアさんには決して害を成すことではございません」

「ふむ……」

そう話すニーナの目を、ユエルはじっと見据える。温和そうな目元だが、その瞳には確かな真摯さが見て取れたように思えた。ユエルは表情を緩める。

「そこまで言ってくれるのだから、嫌々聞き出すことはしないよ。改めて、僕はユエル、しがない放逐貴族さ」

あえて自身も同じ立場だと言ったユエルに、ニーナも頬を緩めて小さく笑った。

「私も、放逐貴族のニーナです。これからどうぞ、よろしくお願い致しますね」

ユエルを見下ろして微笑む婚約者の表情は、小さくも美しい一輪の花のようであった。

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